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 藤井王位・棋聖からは「押されている内容の将棋が多くあった」という言葉もあったが、豊島竜王自身はさほどそう感じてもいない。「王位戦の3局目は一瞬だけ、ソフトだけが気づいているすごくいい手があったんですが、それもお互い気づかないままスルーしていた。感触としては、そんなに押しているというか、多少模様がいいぐらいの話なので、そこまでうまくいっている感じではないです。叡王戦なら第1局のように序盤から工夫されて、押される展開もあるので」。将棋ソフトの評価を見れば差が出ていても、対局者からすればそれほど感じないというのもよくある話。超トップレベルの対戦であれば、些細なことが数手、数十手、さらには対局の結果を変える。そんなぎりぎりの戦いが両者の中では繰り返されている。

 13日の叡王戦第5局、勝てば二冠維持、負ければ竜王の一冠となる。さらに竜王まで失冠すれば、無冠にもなり、現在の「4強」体制から遅れを取ることにもなる。「順位戦もあるし、王将リーグも始まります。挑戦権に絡むような活躍ができればと思います」と、防衛だけでなく三冠、四冠の獲得にもはっきりと意欲を示した。早指しの将棋日本シリーズ JTプロ公式戦でも、前年覇者として出場し初戦を突破。連覇に向けて好スタートを切った。藤井王位・棋聖が目立ちまくる2021年度。まもなく迎える下半期、ずっと主役の座を譲るつもりはない。