西洋文明と真っ向から対立し続けたのは、荷風こそが最後の人物だったのかもしれない。

彼の作品群は、「負け犬の遠吠え」「曳かれ者の小唄」と評されることもあるが、その徹底したリアリティには目を見張るものがある。

ああいう世界を築き上げるには、相当な資金と労力が必要だったろう。

また、荷風が生きていた時代には、わずかにではあるが江戸文明の面影が残っていたことは、彼にとって幸運だったと言えるだろう。

現代の私たちにとって、妾宅のような場所はどこにも存在しないのだろうか。