>>18のつづき
鈴木「たしかに「みっともないこと」は微妙な変化を繰り返してあちこちで幅をきかせてきたから、彼はそれに
   は敏感だったと思う。彼は早く結婚したし、そのときはまだ大学生だった。当然の事ながら髪結いの亭主
   なわけなんだけど、子供も出来て、すぐロングヘアーを切ってサラリーマンになるわけ。で、印刷屋に入
   るんだけど、それが酷い会社だったらしくて、その頃は日本にパンクディスコに朝まで入り浸りの変なサ
   ラリーマンだよね。そのうち会社も辞めてしまう。だから丹生谷さんが言ったアウトロー、インローの問
   題は彼の中に常にあって、彼自身は見透かしているし、見透かしてしまった当の現状も嫌だし、辛かった
   かと言えば、多分とても辛い所があったと思う。時々、暴発してたし…。その後コピーライターになって
   広告の仕事を始めるんだけど、ある時僕の家に来て、酒飲みながら「コマーシャルっていうのはランボー
   までもちだしやがった。こんな事は赦せねえ!」って怒ってるのね。そんなに怒らなくてもいいのにね(笑)
   それとも、僕がランボー好きだったから怒り狂うと思って気を使ってくれたのかな。彼にはそういう紳士
   的な優しさがあった。それでいつも酩酊状態なのか分らない状態にあって、実際の日常生活でも彼特有の
   情動の揺れ動きがあって、それでも一応子供も育てたわけだし、営業マンとしても優秀だったらしいから、
   そういう所はきちんとやれたんだよね。でも頭がいいからすぐ仕事を覚えちゃって、そうするとすぐ「く
   だらねえ」ってことになって、結局すぐ辞めちゃって、という感じだった。そんなことの繰り返し。その
   うち気がついたら有名になっていましたという感じじゃないかな。だからこそバッドチューニングなんだ
   な、多分。」