「今日の若い作家を、《スタンダールのように書く》からといってほめることは、二重の不誠実を意味するものである。一方ではまず上にものべた
ように、そんな曲芸にはいささかも感心すべきところはないし、他方ではまた、そんなことは、まったく不可能なことである。スタンダールのよう
に書くには、まず一八三〇年に書かねばならないだろうからである。ある作家が巧妙な模作に成功し、かりにそれがいかにも巧妙で、スタンダール
がその時代に自分のものと認めたかもしれないほどの何ページかを書けたとしても、その作家が、おなじその何ページかをシャルル十世の治下に書
いた場合、今日もなお彼のものとして認められるような価値は、どうみてももつことができないはずなのである。」ロブ=グリエ『新しい小説のために』