松浦さん 泉鏡花文学賞授賞式 「荒野聖」書いてみたい

泉鏡花文学賞を受賞し、山野之義市長から賞状を受け取る松浦理英子さん(右)=19日、金沢市の金沢市民芸術村で

(中日新聞プラス)

 金沢市が主催する第四十五回泉鏡花文学賞と第五回泉鏡花記念金沢戯曲大賞の授賞式が十九日、金沢市大和町の市民芸術村であった。
小説「最愛の子ども」(文芸春秋)で受賞した松浦理英子さんはスピーチで「現在の選考委員に選んでいただき誇りに思う」と喜びを語った。
 式前の会見で「鏡花のこの一作をあえて挙げるなら『高野聖』。二、三日前に『荒野聖』とした自分なりの作品を書いてみようかと思いついた」と明かした松浦さん。
スピーチでは鏡花作品に登場する「歌」に着目して自作との共通点を指摘。「鏡花の描く人間には聖と俗、美と醜が当たり前のように同じ人間に併存している。
そこに倫理性を感じる」とも語った。
 式で選考委員の山田詠美さんは「松浦さんの小説は性的な描写はないのに官能的。多くの物書きを感嘆させてきたが、より多くの読者が触れてくれたら」。
五木寛之さんは一九九四年に松浦さんが「親指Pの修業時代」を出版したころの思い出を披露。「自分のラジオ番組にゲストで招いたのは当時、作品を評価しなかった文壇への抵抗だった」と、今回の授賞を喜んだ。
 五年に一度の戯曲大賞は、鏡花の「外科室」をベースにした佐々木透(とおる)さん(東京都足立区)の「世界はあなたの物」が受賞。金沢市民文学賞は、ともに市内在住の紫藤幹子さんの「ニキチ」、
皆川有子さんの「ダイヤモンドな日々を」で、山野之義市長がそれぞれを表彰した。式後は選考委員に文芸フォーラムもあった。 (松岡等)