「ぶどう酒つきければ母イエスに言いけるは、彼らにぶどう酒なし」

という声がアリョーシャに聞こえた。

『ああそうだ、僕はここを聞き落とした。聞き落としたくなかったん
だがなあ。僕はここのところが大好きだ。これはガリラヤのカナだ、
はじめての奇跡だ......ああ、この奇跡、本当になんという優しい奇跡
だろう。キリストは初めて奇跡を行う時に当たって、人間の悲しみで
なく喜びを訪れた、人間の喜びを助けた......「人間を愛するものは、彼
らの喜びをも愛す......」これは亡くなった長老が絶え間なくいわれたこ
とで、あのお方の主な思想の一つだった......喜びなしに生きて行くこと
はできない、とミーチャは言った......そうだ、ミーチャ......すべて、真実
で美しいものは、いっさいをゆるすという気持ちに充ちている、――こ
れもやはりあのお方のいわれたことだ......』

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(我)この「第四 ガリラヤのカナ」はカラマーゾフ中もっとも美し
く、もっとも示唆に富む箇所だと思います。

その瞬間アリョーシャの心に、なにが起きたのか?そこをいっしょに
追体験していきましょう。