彼が僧院生活に入ったのも、ただこれ一つのみ

が当時の彼の心に驚異の念を呼び覚まし、世界悪の闇から愛の光明を目指して驀進(ばくしん)する彼の心に

究極の理想として映じたからである。また僧院生活が彼に驚異の念を呼び覚ました訳は、当時彼が

稀有の人物と考えていた有名な長老ゾシマを、その中に発見したからである。彼は乾いた心の初恋に

も似た熱情を捧げて、この長老に傾倒したのである。