ことに、彼が満面照り輝いて胸のときめきをとどめ得なかったのは、長老に会って祝福を受
けるためにロシアの全土から流れ寄って、庵室の門口で待っている平民出の巡礼の群へ、し
ずしずと長老が姿を現わす時であった。

彼らはその前へ打ち倒れて、泣きながらその足に口づけし、その足の踏んでいる土
に口づけし、声を上げて 慟哭した。また女房どもは彼の方へ子供を差し出したり、病める
狂い女を連れて来たりする。