ウェルナー・ゾンバルト著『ユダヤ人と経済生活』から 恒木健太郎訳

[「アレクサンドリア出のユダヤ商人」に、無記名条項をその証書に加える気にさせたのは
いったい何であったのか? 前掲のシュトラッケの伝えるところによれば、それは船荷をめ
ぐる不安であった。これらの積荷はとりわけ、キリスト教徒の海賊やカトリック王国艦隊
の提督やプレフェクト(Präfekt)によって拿捕される危機に瀕していた。というのも、彼
らはユダヤ人(Hebräer)やトルコ人の商品を自由に略奪してよいものとみなしていたから
である。そこで「アレクサンドリア出のユダヤ商人」は証書に任意で捏造したキリスト教
徒の名前を、たとえばパウルスやスキピオといった名前を書きこみ、たしかに商品を受け
とったのである――つけ加えられた無記名条項のおかげで。〕