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安価・お題で短編小説を書こう!2
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0001進行 ◆Ujy3nQuLmg
垢版 |
2017/11/23(木) 12:47:42.59ID:p7FSJVm5
安価お題で短編を書くスレです。

■投稿方法
投稿する際は、1行目に【】でタイトルを付けてください。決めていなければ【無題】でも可。
作品は2000文字以内で。レスが2つに別れる場合は分かりやすいよう番号を振ってください。
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■前スレ
安価・お題で短編小説を書こう!
http://mevius.2ch.net/test/read.cgi/bookall/1508249417/
0257この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/05(金) 00:03:10.69ID:9KtUwqdU
おいコラw

『新年』
0261進行 ◆Ujy3nQuLmg
垢版 |
2018/01/05(金) 08:34:55.56ID:kyN21cT3
お題『大晦日』『新年』『闇金』『聖なる銀』『殺人鬼』

締め切りは1月7日 22時です!
0263この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/05(金) 23:26:19.18ID:ENbcNqZA
使用お題:『大晦日』『新年』『闇金』『聖なる銀』『殺人鬼』

【ダークストーカーズ】(1/3)


 男はこれ迄にない程焦っていた。その服はあちこち切り裂かれ血に染まっている。
 さらに、首に一筋の傷があり、そこからドクドクと血が流れ出していた。

「畜生! 治りが遅い! ヤツは何をしやがった!!」

 傷口を押さえ、必死に走りながら男が叫ぶ。本来であれば、この程度の傷など何の支障もない筈なのだ。
 だが今、確実に男の生命は削られている。

「クソ!! だいたい何なんだアイツは!!」

 正直な話、男には狙われる心当りがあった。いや、有りすぎた。

 快楽殺人者…………男はそう言われる類の者だったからだ。

 どれ程の人をその手で殺したのか、それは自分でも覚えていない。
 その復讐の為に狙われる事など日常茶飯事であったし、彼に掛けられている賞金目当ての賞金稼ぎもちょくちょく襲って来ていた。

 だが、それらを全て返り討ちにして彼は今、ここにいる。

 そう言った類いの者達も、男にとっては良い獲物だったからだ。
 いや、むしろ向こうから自分の所へ来てくれるのだから“美味しい”獲物と言えた。

 だが、今、彼を追って来ているのは、それら有象無象とは一線を画して居たのだ。

 彼は今、生まれて初めて命の危機を感じていた。

「……あまり、手を焼かせないで下さい。私としても、年が代わる前にはケリを着けたいのですから」
0264この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/05(金) 23:29:35.01ID:ENbcNqZA
【ダークストーカーズ】(2/3)


 ブワリ……と、男の背に悪寒が走った。後ろから追って来ていた筈の人物が、目の前に居たからだ。
 品の良いチョークストライプのダークスーツを着た痩身の男。
 それが、息も切らさず自分の前に回り込んでいる…………その異常さに、底知れない恐怖を感じた。
 スーツの男の手には、レイピアにも似た細身の剣が握られている。この剣が、自身の身に傷を付けた得物だと確信し、ゴクリと喉を鳴らす。

「あぁ、この剣が気になりますか? そうでしょう、貴方に傷を付けられる武器等、そうそう有りはしないのですから……えぇっと、ハインズさん?」

 その言葉に、ハインズと呼ばれた男はビクリと反応した。当たり前だろう。その言葉が本当であれば、ダークスーツはハインズの名前どころか秘密すら知っていると言う事なのだから。
 そしてそれは、ハインズの方も全力でやらなければ成らないと言う事でもあった。

 ギリリと、奥歯を鳴らす。筋肉が膨張し衣服を弾き飛ばすと、同時に全身に月色の体毛が生え体を覆う。
 鼻面が伸び犬歯が発達し、耳が尖り爪が伸びる。
 その筋肉の収縮で全身の傷が塞がった。

 人狼……闇に祝福された、聖別された銀の武器でしか傷付けられない怪物。

 つまり、彼を傷付けられたと言う時点で、ダークスーツが持つ剣は、聖なる銀で作られた武器と言う事になる。
 そんな物は、普通の人間が用意できる物ではない。

「グ、キサマ、きょうかいノてノものカ?」
「は? 私は只の金貸しですよ?」
「なんダト? なにヲばかナことヲ……」

 思慮外の言葉にハインズが眉根を寄せる。第一、金貸しに狙われる様な覚えもない。

「いえいえ、私の仕事はお金を回収する事です。ハインズさん、貴方から取立てに参りました」
「おれハかねなど!!」
「ええ、ええ、分かっております。ですが貴方の為に取立てが出来なく成ったのですから、その責任は負って貰わないと」
「ばかナ!!」
0265この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/05(金) 23:32:11.50ID:ENbcNqZA
【ダークストーカーズ】(3/3)


 つまりはハインズが殺した者の中に債務者が居たと言う事だろう。だからと言って、ハインズには代わりに支払うつもりなど起きる筈はなかった。
 そもそもハインズに手持ちの金など無かったし、恐らくスーツの男がハインズの賞金で借金を補填しようとしている事が読めたからだ。

「くそ! ソンナばかナりゆうデやラレテタマルカ!!」
「ふう、大人しく支払っていれば良いものを……」

 人狼の、文字通り人智を超えたスピードで跳躍し、ダークスーツにハインズが迫る。ダークスーツは気追った様子も無くそれを迎え撃った。

 一瞬の交錯。

 ダークスーツの首から上はその場に無かった。
 着地したハインズがニヤリと笑う。

 ボトリと、地面に頭が転がった。

 上下が反転した視界の中「なぜ」と、掠れた呟きが漏れる。その目は驚愕に見開かれていた。

 ダークスーツの男の体がゆらりと動く。

「何故……ね、寧ろどうして有り得ないと思ったのでしょうね」

 口元まで“再生”を果たした顔がそう言った。

 吸血鬼……闇の祝福を受けた者の頂点。ダークスーツの金貸しはそれだった。

「貴方だって、人の世に紛れていたのに」

 ゴーン、ゴーンと新年を告げる鐘が鳴る。闇に祝福された金貸しは、人狼の頭を鷲摑みにすると街の闇へと消えて行った。
0266この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/05(金) 23:35:21.09ID:ENbcNqZA
新年一発目からダークな話ですみません
“鷲掴み”が文字化けをしてしまいました
何故でしょうorz
0267この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/06(土) 08:48:00.73ID:TAn6pNak
>>263
冬眠から覚めた短編スレにやってきた新春一番、ダークストーカーズ・デュエル!
戻ってきたお題5〜ルールは簡単5つのお題から使用お題をチョイスして作品を仕立て上げる〜年明け早々『闇金』とか『殺人鬼』とか誰書いたw
物語は『大晦日』に急襲される男を追っていく〜傷つけられぬ筈の身体に奇妙な残痕、『聖なる銀』の武器に追い詰められた狂気の『殺人鬼』人狼が姿を現す! 迫力描写うめえ!
アクションの名手263氏が首のすっ飛び描写を誤読させ、闇の住人の殺し合いは『闇金』吸血鬼に軍配を上げて『新年』が明けていった〜
まあなぜ吸血鬼が闇金なのかという些細な疑問はあるがw 支離滅裂なお題フルチャレンジは艶やかに達されたあ! 祝!
0268この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/06(土) 13:49:54.00ID:mZOrlseh
いつも楽しい感想、有難うございます
闇に紛れて生きる怪物達と言うイメージです
闇金をどうするか悩んだ末にこうなりましたw
0269この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/07(日) 01:36:35.05ID:kkyqxpLx
使用お題:『大晦日』『新年』『闇金』『聖なる銀』『殺人鬼』

【年越しの夜】(1/3)


 カラカラとルーレットを回し、コマを先に進める。

「イベントマスか……嫌な予感しかしないけど」

 そう言って、手元のイベントシートの指定されたイベントを読む。

「……ぐわ!!」
「え? 何? 何が書いてあったのぉ?」

 イベント内容は『闇金から借金、今後、自分の回に成る度に利子を払わなければならない』と言う物。一時的には資産は増えるが、この後は毎回利子分を払い続けなくてはいけなくなった。

「くふっ、くふふふふ! 闇金になんかお金を借りるから」
「自分の意志じゃねーよ!!」
「おにぃドンマイ!」

 新年を控えた大晦日の夜。普段は夜遅くまで起きている事の無い子供達も、この日ばかりは年明けまで起きている。

 ご近所で、親同士も仲の良い宮内 博子と大川 小凪、大森 勇也とその妹の優衣は、時間つぶしも兼ねて双六をやっていた。
 父親同士は酒盛りで盛り上がり、母親達は紅白を見ながら黄色い声を上げている為、TVゲームをすると言う訳にも行かず、かと言って携帯ゲームでは全員一緒にゲームが出来なかったからだ。
 因みに小凪には兄と姉とが居るのだが、兄はイベントで街の方へ行っており、姉はクラスメイトと二年参りをするとかで今日は来ていなかった。

 当然の様にハカセこと博子が……

「くふっ、くふふふふ! こんな事も有ろうかと!!」
「却下!」
「何故に!!」

 自作のゲームを作って来ていたのだが、それは勇也に却下されていた。
0270この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/07(日) 01:40:07.12ID:kkyqxpLx
【年越しの夜】(2/3)


 カラカラ……

「あ、ボクもイベントだよ! おにぃと一緒だ!!」

 そう言ってイベントシートに目を通した優衣の顔がクシャリと歪む。

「? どうした?」
「おにぃ……おにぃが死んじゃったぁ!!」
「は?」
「えーと、どれどれ?」

 勇也に縋り付いて泣き始めた優衣の代わりに、博子がイベントシートを読む。

「『殺人鬼に家族が殺され、皆から香典をもらう+3000』くふっ、成程、くふふふふ!」
「いや! これ、俺限定じゃないよね?」
「だ、大丈夫だよ? 優衣ちゃん! お兄ちゃん死んで無いからね? ウソっこだからね?」

 小凪にそう言われ、ぐすぐすと鼻を鳴らしていた優衣が顔を上げる。

「本当?」
「あ、うん、ほら、ちゃんと生きてるだろう?」
「じゃぁ、誰が死んじゃったの?」
「……えーと、親父?」
「……なら良いや」

 とばっちりで父親が殺されたが優衣は泣き止んだ。

 ******

「ぐわ! 聖なる銀のアミュレットを30万で買わされたぁ!!」
「ハカセぇ、資産がマイナスに成っちゃったよ?」
「よーし、これでハカセは強制収容所送りぃ!!」
「ぐぬぬ! ゴール間際で強制収容所……逆転の目が無いじゃない!!」
「ふっふー、ボクが一番だ!」

 双六は順調に進み、全員がゴール間近となる。今の所トップが優衣。このままいけばビリは博子だろう。
0271この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/07(日) 01:42:46.90ID:kkyqxpLx
【年越しの夜】(3/3)


「あなた達〜。そろそろ年越しそば茹でるから降りてきなさ〜い」
「「「「は〜い!」」」」
「……おばさんが呼んでるからここまでと言う事で」
「はっはっは、何を言っているのかな? ハカセくん。もう少しで終わりなんだから最後までやらないと」
「おにぃの言う通りだよ! ボクが一番になるんだからね!」
「ぐぬぬ……」

 大森兄妹が結託し敵に回った為、救いを求め小凪に目配せをする。だが、彼女は困った様に苦笑するだけで援護はしてくれなかった。

「ぐぬう」

 どうにか有耶無耶に出来ないかと博子が知恵を巡らしていたその時……

 ドオオオオオォォォォォォォン!!!!

 三人が一斉に博子の方を見る。

「ちゃ、ちゃうわい!!」

 発明品の爆発は博子の専売特許ではあるが、流石に今の爆発は身に覚えがない。博子はブンブンと首を振った。

「じゃあ、誰が爆発なんてさせるんだよ!」
「ちゃ、ちゃうもん!!」
「ハカセ姉ぇ?」
「ねぇゆうくん、ハカセもここに居るんだから関係ないんじゃぁ?」
「いや、でも小凪……」

 子供達がそんな事を話していると、家の玄関がガラガラと開かれる音がする。どうやら親達が外へ様子見に出たらしい。

『おい! 何の爆発だ?』
『あー、家の方ですね……ああ、だったら大丈夫だ』
『何がですか? 宮内さん』
『たぶん、僕の作ったセキュリティー“セキュリオンMK-3”の自動攻撃システムですから』
『お、おい。大丈夫なのか?』
『はっはっは、最近は爆発なんかさせてないでしょ? 大丈夫大丈夫』
『……まぁ、昔ほど爆発はしてないみたいですけど……空き巣ですかね?』
『まぁ、朝に成ったらわかるか……じゃぁ、飲み直しましょう!!』

「「「「……」」」」

 ゴ〜〜〜〜〜ン……

 新年の鐘が鳴る。勇也は(今年も色々ありそうだ)と、盤面がぐちゃぐちゃになった双六を見ながらそう思った。
0272この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/07(日) 09:15:31.80ID:c24yRAH2
>>269
待ってたぜェ!! この瞬間をよぉ!! 愛すべきあいつらより新年のご挨拶〜お題は全使用! 興じるは年越し人生ゲーム〜
さあ名シリーズ、大森 勇也と愉快な仲間たち、舞台は『大晦日』の夜、例のやつらが集まって大騒ぎの年またぎ!
ゲームは親父がささっと殺されて進んでいく〜しかし闇金とか殺人鬼とか……コレ子どもにやらせるゲームじゃねえぞ!
『聖なる銀』のアミュレットを買わされて強制収容所へぶち込まれたハカセの父が、オチでセキュリオンMK-3による自動攻撃システムを発動〜何それw
「だったら大丈夫だ」←何が大丈夫だよ大晦日に空き巣が居るかよ絶対爆発してんだろうw いつもどおりの先行き不安、新年初笑いで幕引きだ〜!! 人生ゲームでお題を消化するとかいう作者269氏の反則的発想を見よ、全消化に違和感ナシだぜ!
さあノリにノって弾けるシリーズ、キャラも個性派揃いでどこまでも拡張できそう、次は小冒険編にしてオチも挟みつつ連作したりとか(期待の眼差し
0273この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/07(日) 12:39:44.70ID:kkyqxpLx
いつも感想有難うございます
短編連作も、出来ればやってみたい所です
自分の力量が許すならではありますが……
これからも精進して、精度を上げて行きたいと思います
0274進行 ◆Ujy3nQuLmg
垢版 |
2018/01/07(日) 22:00:43.21ID:7Wu8isUw
お題『大晦日』『新年』『闇金』『聖なる銀』『殺人鬼』〆

作品一覧
>>263【ダークストーカーズ】
>>269【年越しの夜】
0276この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/07(日) 22:05:19.77ID:jiuI8jdx
キス
0279この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/08(月) 00:03:08.32ID:PFnpCgBk
正月
0282進行 ◆Ujy3nQuLmg
垢版 |
2018/01/08(月) 00:30:38.42ID:UcrkrCK/
お題『キス』『オーロラ』『初夢』『正月』『カズオイシグロ』

締め切りは1月11日 22時です!
0283この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/08(月) 13:00:27.93ID:5oTFMdpo
使用お題:『キス』『オーロラ』『初夢』『正月』『カズオイシグロ』

【泡沫】


(あぁ……夢か)

 そこに立つ自身を見て、俺はそう思った。
 年が明け、初めて見る夢が明晰夢な上、こんな回想じみた物である事に苦笑する。
 場所はカナダの北部で、確かオーロラ見学ツアーだったはず。その証拠……と、言う訳でもないが、自分の頭上には赤色に近いオーロラが輝いている。

 もっとも、だからこそ夢だと気が付いたのだが……

 アイツと一緒に参加したツアーでは、結局オーロラなど見る事はなかった。
 なら、これは願望なのだろうか? 自身ではどうする事も出来なかった過去に対する……

「ねぇ! 凄いわよね!! こんなの日本じゃ見れないわ!!」
「いや、確か日本でも観測したって記録があったはずだ」
「そうなの?」
「ああ、北海道と、新潟だったかな?」

 キラキラとした瞳で俺を見るアイツ。他のツアー客のカップルが感極まって口付けを交わす中、照れ臭くて肩を寄せる事しか出来ないのが、自分らしいと苦笑するしかない。
 どうせ夢なのだから、情熱的なキスくらいしてやれば良いのに……

 ******

 ピッピッピッピと電子音が響く。

(あぁ、やっぱり夢だったか)

 規則正しい電子音と自らの呼吸音、薄らぼんやりとした視界が、否応なしに自分の現実を突き付ける。
 様々な管に繋がれたこの体が、自由に動かせたのは、いつの事だったか。

(悔恨……なのかもしれない)

 結局、アイツとの最期の旅行となったオーロラ見学ツアーを楽しかった想い出としたかったのだろう。
 自身の行く末が決まってから、美化された過去を思い返すなど、まるでカズオイシグロの小説の様じゃないか。
 だか、それも良いかれない。

「何言ってんの? そんなこと無かったでしょ?」

 そんな風にアイツに言われるのも悪くないと思える。
 ああ、そう考えれば、まだ先に楽しみもある。
 なあ、色々と話したいことが沢山でき……

  ピ──────
0284この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/08(月) 19:38:10.44ID:DIBheAZt
使用お題:『キス』『オーロラ』『初夢』『正月』『カズオイシグロ』
【ダメ男と彼女の正月】(1/3)

ああ、今年が始まる。
正月の、めでたい朝だというのに、俺の気分は暗い。
布団から出ないように体を起して、時計を確認するが、もう昼だ。でも、まだ眠い。冷たい外気が入ってこないように、布団にくるまりなおしてまた目を閉じる。
そもそも、起きる気がしないのだ。初夢が良くなかった。寝なおして、良い夢を見たら上書きされないだろうか? 俺はぎゅっと目を閉じて、また夢を見ようとする。
どうか、今年こそは。今年こそは、俺の小説が売れてくれますように。

「……ちょっと、まだ寝てるの? いい加減、起きたらどうなの?」
冷たい声に、うとうとしていた眠りから俺は目覚めた。
目を開けて見上げると、恋人が、まるでダメな人間を見下ろすかのような表情をしていた。
「……あー、だるい」
「もう、夕方だよ。全く、正月だっていうのに、どんだけ寝てるのよ……」
のそのそと起き上がって彼女を見ると、コンビニの袋を片手に持っていて、ちゃぶ台にそれらを置くところだった。
「どっか行ってたの?」
「実家に顔見せに行ってた。正月だからね……朝からずっと寝てたの? ああもう、折角作り置きしたのが無駄になっちゃった」
「お腹すいたし、それ食べていい?」
「夕飯食べられなくなるでしょ?」
「夕飯も食べる。みーちゃんの作るご飯はおいしいから、いくらでも食べられるよ」
「まったく、寝て食ってばっか。ほんとにダメ人間なんだから……」
彼女は溜息をつきながら俺を見るが、その顔にしょうがないなあという笑みが混じって見えるのは、彼女がダメ人間好きだからである。
0285この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/08(月) 19:41:05.98ID:DIBheAZt
【ダメ男と彼女の正月】(2/3)
彼女がご飯をレンジで温めてくれる間に、俺は彼女が持ってきたコンビニの袋をガサガサと漁る。お菓子があったので、勝手に開けてほうばる。
「はー、小説のネタ考えないとなー」
小説家と言う職業は、年中無休だから辛い。なんて、俺の場合は年中無給だから辛いのだが。
「売れてる小説家が恵まれない俺に金くれないかなー」
コンビニ袋をしつこく漁っていると、中からノーベル賞が出てきた。
「カズオーイシグ↑ロ↓ー!」
俺はそれを勢いよく部屋の隅っこに放り投げた。
「俺はノーベル賞を投げた男だぜ!」
「なに馬鹿なことしてんの!」
「あいてっ!」
後ろから頭を殴られた。
「あー! 何でお菓子食べてるのよ!」
お皿をちゃぶ台に乱暴に置いてから、彼女は勢いよく俺を睨んだ。
「もう! ご飯食べられなくなるでしょ!」
「食べるよ食べる。俺がみーちゃんの作ったご飯を残すはずないだろ?」
「もう……」
「昔母さんにも同じようなこと怒られたけどさ、今まで一度もご飯残したことないんだぜ」
「馬鹿!」
みーちゃんはぷんぷんと怒って台所に戻って行った。
「頂きます」
俺は、明日はちゃんと外に出て運動しなきゃと思うのだった。

流石に夕飯まで食べ終えると、俺は腹が膨れて動けなくなった。
だから、彼女と一緒に名作映画をまったりしながら鑑賞した。
「いいよな。オーロラの彼方」
「ねー。私この映画好きなんだぁ」
彼女は俺の肩に頭をのせながら、いつもより甘ったるい声を出した。目の前の酒が原因で、少し酔っているのだ。
「今夜はやれそうだな……」
「そういうこと、普通声に出す?」
頬を思いっきりつねられた。
「ごへんごへん」
「そういうところ、嫌い」
「俺はみーちゃんのいろんなところが好きだよ」
「もー、セクハラー」
「割とガチで内面の話だったんだけど……」
0286この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/08(月) 19:43:59.38ID:DIBheAZt
【ダメ男と彼女の正月】(3/3)
そんな風にイチャイチャしてると映画はいつの間にか終わっていた。それはともかく、俺達は酒をすすめながらまだイチャイチャと喋り続けた。
「もし子供の頃のみーちゃんに交信出来たら、セクハラしてーなあ」
「そんなことばっか考えてるんだもんなー」
「あ、これは次の小説のネタに使えるな」
「パクリじゃーん」
つまみを食べながら、どんどんと酒がすすみ酔いがまわっていく。
「パクリでも売れてーよー」
「私は、たかしの小説好きだよ。そこそこ」
「そんな事言って、カズオイシグロの方が好きなんだろー」
「まだ読んでないからわかんなーい」
「オーロラの彼方の方が好きなんだ……うう……」
「ああ、もうほら、泣かないでよぉ。ほら、ちゅー。ちゅー」
そうやって遊びでやってたら熱が入り、俺達は布団に場所を移した。
「ああ、これが昨日だったら、嫌な初夢なんて見てなかったのに……」
「嫌な夢を見たの?」
「うん。売れなくて、ヒモ生活を続ける夢」
「現実通りだね」
「俺はもう嫌なんだよぉ。ちゃんと金稼いで、結婚したいのに。初夢がこれなんて……」
「あ、でも、違うよ?」
彼女の甘い声で耳元に囁かれる。
「初夢って、本当はこれから見る夢のことなんだよ。正月から二日にかけた夜」
「ああ、なんだ……。良かった。あれは初夢じゃなかったんだ」
「どうする? ちゃんと初夢見る?」
「いーや。どうせ嫌な夢を見るだけさ」
「ネガティブ思考」
クスクスと笑いながら、彼女は俺をじっとみつめる。
「じゃあせめて、夢見心地にさせてあげる」
そう言って、彼女は俺にキスをした。
0287この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/08(月) 20:48:57.42ID:5oTFMdpo
>>284
相性の良い二人で羨ましいですね
お互いがお互いを必要とする様な関係、良いと思います
たかしさんの小説を読んでみたいです
0288この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/09(火) 11:51:37.13ID:nDk0fupl
>>283
新年早々スレ民の暴投によって生まれたキラーお題、『カズオイシグロ』w コイツを取り込みフルチャレンジするは、涙の明晰夢〜
語り手が自覚する『正月』『初夢』! 『オーロラ』の下で、幻となった『キス』が交わされる〜
響く電子音は目覚ましではなく病室のベッドサイドモニター、この摩り替えはオチに使いたいほどうまいなw 物語は憂鬱モードへと暗転し、こんなのまるで『カズオイシグロ』だと暗然たる雰囲気を纏う〜心迫る描写でお題を綺麗に消化!
ん、え、話したいことが沢山?? ってことは、二人は別れたわけじゃなく、まさかコレ彼女さんツアーで死んでるんか!? でも死んでないとすると唐突なENDだし!?
題目クリアは違和感ナシ! だが、これは解釈次第で評価の分かれる一品か〜俺は「何言ってんの? そんなこと無かったでしょ?」が死後の会話を予期したものだと解釈してうわ美品じゃんと思ったが〜どうなの283氏!?

>>284
キラーお題で火が点いたかスレ住人が貪欲に全お題使用を選択していくぞ〜ダメ小説家のラブストーリーが開幕だあ!
ヒモ生活を続ける完全なるダメ人間こと俺君が尽くし系彼女に飼われておる〜、おい作者の願望かこれw
小説好きの彼女が難題『カズオイシグロ』をパパッと料理し(こんなの最高じゃん)、物語は淡々としながらも心地よいダラケムードに満ちていく〜
『オーロラ』を映画で消化、でもどう落とすのかと思っていたらラスト! なあにが「夢見心地にさせてあげる」だw 何がw 作者284氏がスナイパーの様に狙い澄ましたラブオチは、まったりムードを「ここからは18禁なので見せられませんエンド」に繋げていったァw
ラストは『初夢』『キス』の二重掛け! お題消化は違和感ナシ! 男の願望が多々入っている気もするけど、はい正直このオチは良いですね〜
0289この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/09(火) 12:25:48.12ID:YiQJ2C0h
いつも感想有難うございます
ご想像通り亡くなっています
具体的には飛行機が……
本人もその時にと言う感じです
カズオイシグロの小説については個人的な感想なので、異論もあるかと思います
0290この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/09(火) 13:25:32.92ID:nDk0fupl
やっぱり亡くなってるんだ
短いながら雰囲気あると思うよ
0291この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/09(火) 22:03:51.50ID:ks/DOmSf
おお、感想ありがとうございます
映画の題名でお題消化は汚かったかな……タイトルちょっと間違えてるし
ていうかたかしはないですねたかしは
0293この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/10(水) 23:00:22.32ID:8tgIkLrj
使用お題:『オーロラ』『初夢』『正月』『カズオイシグロ』

【お楽しみ会ドリーム】(1/3)


「ぎゃあぁぁぁ!!」

 紫色の鎧が吹き飛び白い肌をさらけ出す。3夢将、序列3位の紫将ナースは吹き飛ばされたまま壁へと激突し気を失った。

「ふむ、やるでは無いか、ナースは3夢将の中でも最弱とは言え、並みの戦士ではまともに戦う事も厳しいと言うのに」

 大西 勉はナースによって傷つけられた頬の血を拭うと、呼吸を整え眼前に残る3夢将の二人を睨む。序列1位の富岳将フジィは、自らの玉座で勉を見下した様な視線で眺めながら頬杖をついていた。

「フッ、この3夢将、序列2位、翼将タッカー、ナース如きと同じだと思わぬ事だ!!」

 そう言って、タッカーがマントをなびかせ宙を舞った。
0294この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/10(水) 23:03:19.97ID:8tgIkLrj
【お楽しみ会ドリーム】(2/3)


 ******

「って言う初夢を見た」
「お、おう……そ、そうか」
「凄いねぇ! 勉くん、縁起が良いんだよぉ!!」
「一富士二鷹三茄子?」

 どう反応したら良いか分からず、困惑する大森 勇也とは裏腹に、大川 小凪は素直に賛辞を述べる。どちらかと言えば勇也よりなのか、笹川 美亜も首を傾げていた。
 年を明けての三日、子供達はお楽しみ会で学校に集まっていた。
 学校行事とは言え、児童が集まってお菓子を食べながら、カルタやトランプ、双六などをするだけのリクレーションでしかない。
 遊び道具は皆で持ち寄るのだが、流石にTVゲームやそれに類する物、キャラクター玩具などは禁止の為、昔懐かしの遊具が並ぶ事に成る。

「返答に困る話ですね……想定外……と言う程ではありませんが」

 文庫本をパタリと閉じて加賀 清がそう言った。そんな清を勇也はジト目で見る。

「お前、この期に及んで持って来てるのが本だけとかさぁ」
「……面白いですよ?」

 そう言って、持ってきた中の一冊を勇也に手渡した。

「カズオイシグロ?」
「知りませんか? ノーベル賞作家の……それはブッカー賞作品ですが」

 渡された本をパラパラとめくる。

「文字が小さい」
「清ぃ、挿絵が無いぞ?」
「君達ね……まぁ、想定内ですが」

 清がため息を吐く。

「くふっ、くふふふふ! 底が浅いわね、勇也!!」
「……なら、お前は読んだのかよ」
「…………映画なら見たわ」
「一緒に見に行ったよねぇ、ハカセぇ」

 視線を逸らしたハカセこと宮内 博子をフーンと言う視線で見ていたが、すぐに勇也はニヤリと笑うと博子に訊ねた。

「なぁハカセ? 今日はお得意の発明品は無いのかぁ?」
「ぐぬう!」

 それを聞き、博子は悔しそうに表情を歪める。『ノー発明、ノーライフ』が座右の銘の博子である。当然の様に遊具を作って来ていた。
 だがその遊具の尽くは、登校早々、担任に全没収されていたのだ。

「あ、あんただって趣旨と外れた物じゃないの!?」
「残念でした。俺はちゃんと『TVゲームでもキャラクター玩具でもない、皆で遊べる遊具』だ」
「ん、肯定」
「美亜!? お前もか!!」

 そう言う二人の手に握られているのはトレーディングカードゲーム。ある意味で趣旨と外れてはいない。
 基本、1対1でのゲームではあるが、愛好者が多い事も有って“みんな”で遊べる遊具ではあった。
 勇也は、お年玉で買った新ブースターを使ってデッキを組み終えると、同じ様にデッキを取り出した美亜と対峙する。

「さて、今日こそ勝たせてもらうぞ美亜ぁ!!」
「笑止」
「「デッキセット、レディ!」」
0295この名無しがすごい!
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2018/01/10(水) 23:05:57.70ID:8tgIkLrj
【お楽しみ会ドリーム】(3/3)


 二人の掛け声に合わせ、いつの間にか集まっていた下級生達が「ゴー!!」と唱和する。博子は(えぇぇ、何このノリ)と、口元を引くつかせた。

 ******

「おおお俺のレアカード、『極光のオーロラナイト』ォォォォ」
「ふむ、このデッキ『オーロラエクストリーム』と名付ける」

 白鳥座なポーズで、勝負に勝った美亜が勇也からアンティを受け取り、それを早速デッキに組み入れた。

「バッカじゃないの?」
「うるさい! 真剣勝負だったんだ! ぐあ!! でも、俺のオーロラナイトォォォォ!!」
「ユウちゃ〜ん、今度、一緒に買いに行こう? ね?」

 二人の対戦の後、勉と下級生達がアンティ無しでゲームをする横で、崩れ落ちる勇也に小凪がそう声をかける。

「自業自得なんだから、放っときなさいよ」
「え〜、でも、ハカセぇ」

 何と無く気に入らず、ハカセが突き放す発言をし、小凪が困った様な表情をする。
 と、その直後の事だった。対戦を見ていたギャラリーからワっと歓声が上がる。

「え? 何?」
「ん、ワンターンキルだった。勉、無残」

 下級生に負け、呆然とする勉。

「お、おい、勉、1ターンでやられたからって気を落とすなよ」
「……一富士二鷹三茄子……」
「は?」

 初夢の事かと勇也が首を傾げる。

「ん、逆夢」

 相手のデッキは、一富士二鷹三茄子に因んだ“初夢デッキ”だったのだ。
0296この名無しがすごい!
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2018/01/11(木) 08:48:15.43ID:6Dy3k2FR
>>293
さあ〜やってきましたヤツらの正月! 選択お題は『オーロラ』『初夢』『正月』『カズオイシグロ』、初夢インザNew Year!
近年モニターゲームでしか遊ばないと嘆かれる子供たちを矯正してやるとばかり、例のお子様らの集いが始まった〜3夢将ww 大西君の脳内ムチャクチャじゃないか
って思ってたら『カズオイシグロ』をお楽しみ会に持ち込んで「面白いですよ」←これ清もムチャクチャだな……さあ小凪のイチャつきにハカセが嫉妬を滲ませ微ハーレムノリの物語は、
カード最強、美亜の猛威を描きつつ、オチで富士、鷹、茄子によるお題『初夢』を使い尽くしたデッキENDへと収束だw 1ターン瞬殺ワロタ
作中『オーロラ』をゲーム内単語で唐突に消化するとかいう反則技wがあったものの、大きな違和感は持たせないスラップスティックなノリに目が離せない〜各キャラに見せ場を作って華麗に回していく名シリーズ、ドタバタ感が抜群だあ!!
0297この名無しがすごい!
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2018/01/11(木) 12:17:36.36ID:AkTmebdI
感想をいつも有難うございます
一番最初に思い付いたのは白鳥座のポーズをする美亜だったりしますw
因みに、お楽しみ会は、自分が子供の時あったイベントです
0298この名無しがすごい!
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2018/01/11(木) 17:54:40.67ID:rNomOg/H
【吉兆】(1/2)
『オーロラ』『初夢』『正月』『カズオイシグロ』

 気がつくと私は、境界線のぼやけたあやふやな世界に立っていた。なんだか温かくて、どこか優しい世界。
 目の前には子どもがいた。何かモヤのようなものに覆われていて、顔がよく見えない。その子は私の視線に気がつくと、嬉しそうに微笑んだ。

 それを見ると私まで楽しい気分になってきて、思わずその子に手を伸ばす。
 しかしその子は私の手をひょいと避けると、こちらに背を向けて走り出した。そして少し離れた所で立ち止まると、振り返ってこう言った。

『ここまできてよ! つかまえてみて!』

 私の体はその言葉に導かれるように、自然と子どもを追いかけていた。

 あれ。そう言えば私は何故分かったのだろうか。
 顔が見えないのに、子どもが微笑んだなんて。





 私はゆっくりと瞼を開いた。休止していた脳が少しずつと動き始める。

「あぁ、夢か……。いつの間にか寝ちゃってたのか」

 分厚い寝袋のジッパーを下ろして、薄暗い室内で体を起こす。

「良い夢……だったな」

 呟いて、夢の中とはずいぶん違う現実に目を向ける。寒々しくひび割れた床に、散乱したコンクリートの破片。割れた窓ガラスを通して見る外の風景は、瓦礫の山で埋まっていた。
 すぐ近くには焚き火の跡があり、その横には愛用している大きなリュックが置いてある。
 そうだった。思い出した。一人旅の途中に珍しく屋根が残ってる建物を発見して、そこで寝ることにしたのだ。

 久しぶりに快適な環境で眠ることができた。おかげで体が軽い。
 私は一つ伸びをすると、手早く寝袋を畳んでリュックに詰めた。さぁ、先を急ごう。

 ガラスのない窓から、リュックを外に放り投げる。そしてその後を追うようにして、瓦礫の上に降り立つ。肌を刺すような冷気に、ふぅと吐き出した息が白く凍りつく。
 空を見上げると、いつものように綺麗なオーロラが揺らめいている。
0299この名無しがすごい!
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2018/01/11(木) 17:55:43.46ID:rNomOg/H
【吉兆】(2/2)

 いざ出発、というところで、あるものを発見した。

「お、ラッキー。本だ」

 瓦礫の隙間に埋まるようにして、一冊の本が砂を被っていた。周りの瓦礫がうまいこと雨風を凌いでくれたらしく、新品同然と言えるほどに状態が良い。もっとも、新品の本がどういう状態なのかは全く知らないのだが。

 私は本が好きだ。本は色々なことを教えてくれる。
 昔大きな戦争があったこと。そのせいで地球から冬以外の季節が消えてしまったこと。昔の日本にはオーロラがなかったこと。

 全て本が教えてくれた。
 
 私は瓦礫の隙間に手を差し込み、本を拾った。表面を払って砂を落とし、タイトルを確認する。カズオイシグロ著の、『わたしを離さないで』という本。
 そのタイトルは、今朝見た夢を思い出させるものだった。思わず頬が緩む。あれは本当に良い夢だった。

 私は良い気分のままリュックを開け、拾った本をその中に仕舞おうとする。その時、中に入っていた亡き父の遺品が偶然目に付いた。『時計』という、時間と日付を表示するだけの小さな機械だ。それによると、今の時刻は午前六時十五分、日にちは一月二日であるらしい。

 旅をしていると日付の感覚がなくなってしまう。どうやら気がつかないうちに、年を越して正月になっていたようだ。

「ということは、今朝のあれは初夢だったのか」

 これも本で知ったことだが、昔の日本では初夢で見ると縁起が良いものとして、『一富士、二鷹、三茄子』というものが言われていたらしい。
 ということは昔の日本人からすると、それらが出てこなかった私の初夢は特別縁起が良いものではないのだろう。
 しかし、私にとってはこれ以上ないほど縁起が良いと言える。

 なんたって、夢に『人』が出てきた。

「うん。今年は良い年になりそう」

 私はリュックを背負い、もう一度空を仰いだ。
 相変わらず空いっぱいにゆらめくオーロラを、一心に見つめる。

 壊れた地球の証明だからと父はオーロラを嫌っていたが、実を言うと私はそんなに嫌いではない。

「まだどこかに居るといいな。私以外の人類」

 私は努めて明るく声を出し、再び歩き始めた。
0300この名無しがすごい!
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2018/01/11(木) 19:42:51.04ID:AkTmebdI
>>298
終末1人旅と言った雰囲気ですね
今までどんな旅をしてきたか、これからどんな旅をするのか見たくなります
0301進行 ◆Ujy3nQuLmg
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2018/01/11(木) 22:00:05.84ID:QjdjO4Zt
お題『キス』『オーロラ』『初夢』『正月』『カズオイシグロ』〆

作品一覧
>>283【泡沫】
>>284【ダメ男と彼女の正月】
>>293【お楽しみ会ドリーム】
>>298【吉兆】
0304この名無しがすごい!
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2018/01/11(木) 22:04:09.05ID:2KVMp43o
おっぱい
0306この名無しがすごい!
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2018/01/11(木) 22:08:37.25ID:Lj8XKSxs
セクハラ
0307この名無しがすごい!
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2018/01/11(木) 22:21:13.06ID:7QQ99m5M
犯人はヤス
0308進行 ◆Ujy3nQuLmg
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2018/01/11(木) 22:50:40.02ID:QjdjO4Zt
お題『鬼怒川温泉』『おっぱい』『誰かが何かを発表する』『セクハラ』『犯人はヤス』

締め切りは1月14日 22時です!
0309この名無しがすごい!
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2018/01/12(金) 08:46:02.51ID:jwBzUtsL
>>298
さあ前回お題『オーロラ』『初夢』『正月』『カズオイシグロ』にチャレンジだ、オーロラの黙示録〜
ストーリーは象徴的な『初夢』で幕を切る〜夢の中で微笑みかける子供の笑顔が謎めきながらも優しいぞ
終焉を思わせる廃墟的世界で『オーロラ』を消化、おおっとやや唐突な『カズオイシグロ』出現か、と思いきや「私を離さないで」に因縁を付けて後処理w これは妙手! 298氏が丁寧にお題を消化しきったぞ〜
ラスト、時間の感覚すら忘失されたひっそりとした『正月』を彩るは戦乱のもたらした遺恨、オーロラ〜幻惑的な空が主人公の心をかたどり、父親の言葉へ逆らうように語られるは希望だァ!
瓦礫に埋もれ朽ちる世界、夢が見せるは自身の幼少、あるいはまだ見ぬ巡り合いの吉兆か、静かな余韻の中に幼い希望の萌芽を角ぐませ、物語は立ち上がるようにEND!!
0310進行 ◆Ujy3nQuLmg
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2018/01/12(金) 08:50:31.74ID:IiDmVS8w
あ、お題おっぱいとはいえダイレクトな性描写は控えてくださいね!
0312この名無しがすごい!
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2018/01/13(土) 16:57:14.56ID:jKLkqjc6
【ただ、おっぱいを揉みたかった】(1/3)
『鬼怒川温泉』『おっぱい』『誰かが何かを発表する』『セクハラ』『犯人はヤス』

鬼怒川温泉は、栃木県日光市の鬼怒川上流域にある温泉。 かつては箱根や熱海と並んで「東京の奥座敷」と呼ばれ、現在でも年間200万人以上の観光客で賑わう。
ほかほかの湯気が立ちこめるそんな最高の温泉に、今は二人の客が浸かっていた。

「おっぱい揉みたいなあ……」
祐二は温泉につかりながら、手をわきわきとさせた。
「なんで俺はおっぱいを揉めないんだろう?」
祐二はじっと手をみつめて、ずっと何もない空気を揉みしだいている。やがて虚しくなったのか、連れに向かって情けなく声を上げた。
「なあ、おっぱい揉んだことある?」
「ない」
そっけない返事だった。祐二の方を見もしない。
準は祐二に背中を向けて、鬼怒川温泉から見える景色を一心に眺めていた。
「もうちょっと話にのってくれてもよくね? 折角の卒業旅行だぞ? しかも男二人ときたもんだ」
「近寄るな」
「冷たいねえ。無理に温泉に連れ込んだのは悪かったけどよ」
か細く溜息をついて、祐二は湯に肩までつかった。
「そこから見える景色は綺麗か?」
「綺麗だよ。鬼怒川温泉から見える景色はとても綺麗だ」
「さすがは鬼怒川温泉だな。鬼怒川温泉に来てよかったな……」
祐二は嘆息しながら、夜空を見上げる。そして唇をアヒルのように尖らせる。
「……ま、男二人だけどな」
「不満なら来なければ良かっただろ」
「不満なんてねーよ。お前は俺の生涯の親友だからな」
「そうかい」
「ただ、こうして大学生活を終えて、なぜ一人の彼女もできなかったのかと鬱になっていたのさ」
祐二は切なげに自分の二の腕をつまんだ。
「知ってるか? 二の腕はおっぱいの感触なんだぜ?」
「どうでもいいわ」
「そうだな。どうでもいいよな。こんなのは本物のおっぱいじゃない」
「……」
「女の子のおっぱいはもっと柔らかいんだぜ? おっぱいを揉んで恥じらう女の子は最高なんだ」
「母親のしか知らないくせに」
「やめろ! 凄い言葉の暴力だぞそれ!」
「悪かったよ」
0313この名無しがすごい!
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2018/01/13(土) 16:59:19.60ID:jKLkqjc6
【ただ、おっぱいを揉みたかった】(2/3)
「……中学生活、高校生活全く駄目だった。彼女なんて全然できなかった」
「オレと遊んでばっかだったしな?」
「そうだな。四六時中お前と一緒だったな。ヤスも連れ回したりなんかして、死にそうになったこともあったな」
「ヤスが両手両足骨折して大変だった」
「なんだかんだで楽しかったから、俺は後悔はしていないんだ……大学生活に懸けていたところもあったし……だが現実はどうだ」
「いろんなサークルに入ったな。ころころ変えやがって、ついていくのが大変だった」
「ついてきてくれてありがとな。アタックして破局してを繰り返して……」
「そのうちブラックリストに入れられて、どこのサークルもお前を入れなくなった」
「うう……お前も巻き添え食らってたよな……すまんかった」
「いいさ。親友だろ?」
「そうだな。お前と一緒だったから、それでも大学生活も楽しかった。ヤスとはいつのまにか疎遠になってたけど」
「……」
「なんでかなあ……なんで彼女できんかなあ……」
祐二はグスグスと泣きだした。
「おい泣くなよ」
「努力してるのに……彼女できない……」
「……」
「自分では気付かない人間的欠陥があるのかなあ……」
0314この名無しがすごい!
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2018/01/13(土) 17:02:24.16ID:jKLkqjc6
【ただ、おっぱいを揉みたかった】(3/3)
「……ヤスがさ」
「え?」
「お前がホモだってずっと周囲に吹き込んでたんだ」
「は? マジで? 何で?」
「両手両足骨折した時の恨みらしい」
「謝ったじゃん! 治療費と慰謝料も払ったもん!」
「犯人はヤスだったんだよ!」
「うわあああああああああああ!」
「そしてオレも……」
「え? え?」
「オレはお前とずっと一緒にいた。だからホモ説に説得力があったんだ」
「確かに……べったりだった……」
「オレは全てを知りながらお前と一緒にいた。なぜだかわかるか?」
「……なぜ?」
準はずっと景色の方を向いていた体を、ゆっくりと祐二に向けた。
親友の祐二に向ける表情は切なかった。
「わかるだろ?」
「わかんないよ」
「お前の事が好きだったんだよ!」
「うわああああああああああああ!」
準は突然立ち上がった。祐二は準の狂暴な股間を見て驚愕した。
「うわあ! お前それ!」
「お前のせいだ……お前が無理に温泉に連れ込むから!」
「やめて! セクハラだよお!」
「大丈夫だから! オレよく女顔だって言われてるから!」
「でもお前おっぱいないじゃん!」
「うるせえ!」
「アーッ!」

その日、鬼怒川温泉で一組のカップルが誕生した。
二人はその後も仲睦ましく愛し合いましたとさ。
おしまい。
0315この名無しがすごい!
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2018/01/13(土) 20:19:54.08ID:OBc/YjD+
┌(┌^o^)┐ホモォ...
0316この名無しがすごい!
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2018/01/13(土) 20:25:41.60ID:F0ROj4FT
よもやのカップル成立w
渋谷でお幸せにとしか言えません
勢いがあって面白かったです
0317この名無しがすごい!
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2018/01/13(土) 20:34:46.84ID:F0ROj4FT
使用お題:『鬼怒川温泉』『おっぱい』『誰かが何かを発表する』『セクハラ』『犯人はヤス』

【鬼怒川温泉事件簿】(1/3)


「ちくしょう……」

 男が崩れ落ちる。
 老刑事は苦々しげな表情で煙草の煙を燻らせた。

「……後味の悪い事件だ」

 ******

 山岸 民雄は鑑識の所見を読みながら煙草を咥えていた。

「ヤマさん、ここ、禁煙ですよ?」

 頭を押さえた若い刑事にそう言われ、民雄はジロリと顔を見て舌打ちをする。

「火なんざ点いちゃいねえ」
「マナーですよ、マナー……鑑識の所見ですか?」
「…………マナーなぁ。ああ、さっき上がってきた」

 民雄が溜息を吐く。先日起こった事件の被害者は彼の顔見知りだった。
 そうは言っても、何度か顔を合わせた事もあると言った程度であり、それほど親しい間柄という訳では無かったのだが。

「良いおっぱいだったんたがなぁ」
「何すかヤマさん、セクハラですか?」
「男同士で何言ってやがる! ガイシャの事だよガイシャの!」
「いや、それもどうかと……」

 老刑事が舌打ちを1つ吐く。
 被害者の女性、筒見 晶子は、元温泉コンパニオンだった。
 その為、民雄が顔を合わせる時は、大概、仕事絡みのトラブルであり、女は扇情的な格好をしていた事もあって、その印象が強かったのである。

「まぁ何にせよ、聞き込みだ……行くぞ」
「はい」
0318この名無しがすごい!
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2018/01/13(土) 20:38:05.26ID:F0ROj4FT
【鬼怒川温泉事件簿】(2/3)


 ******

「……情報、上がりませんね」
「…………」

 昔は、音に聞こえた温泉郷だった鬼怒川も、今では半ばシャッター街となって久しい。
 冬の寒い時期と言う事もあって、犯行時刻と思われる午前1時前後の人通りも乏しく、目撃情報は、ほぼ皆無だった。

「……犯人の目星も付きませんね、ヤマさん……」
「……」

 民雄は渋い表情で煙草を咥えた。

「お前、仕事は嫌いか?」
「は? 何を……」
「いや、気にするな」

 若い刑事、陸郎が首を傾げる。当然だろう。むしろ率先して動いていたのは陸郎の方である。だが、民雄は黙ったまま歩き始めた。

 ******

 それからも刑事達は地道に聞き込みを続けたが、新しい目撃情報は出て来なかった。

「……迷宮入り……ですかね」
「……あの日」
「は?」
「あの日、珍しく酒を呑んでたな」

 民雄の言葉に陸郎が眉根を寄せる。

「だから何ですか? そりゃ僕だってお酒くらい呑みますよ」
「……お前の事だなんて、言ってないんだがな」
「うっ」
「“あの日”と言われて、いったいいつの事だと思った?」

 そう言われ言葉に詰まる。

「事件のあった日を思い浮かべたんじゃないのか?」
「いや、それは……」
「不自然なんだよ、ここまで情報が集まらないなんてな。お前、恣意的に誘導してたな」
「……」
「……刑事さん」

 ピクリと陸郎が反応する。それを見て民雄が煙草を咥えた。

「何度言っても名前を覚えやがらねぇ女だったよ」
「何を……」
「発作的に殺っちまったのか?」
0319この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/13(土) 20:40:48.90ID:F0ROj4FT
【鬼怒川温泉事件簿】(3/3)


「……」

 陸郎の視線が泳ぐ。

「いつから重荷だった?」

 ギリッと、奥歯が鳴る。

「何の……事ですか?」
「気付いてないと、思ったか? 刑事さん」
「クッ……」

 瞬間、陸郎の表情が歪む。民雄は視線も向けずに言った。

「聞き込みで話を聞く時は、あんな顔をしてたら駄目さ……刑事さん?」
「止めて……下さい」

 ブルブルと陸郎が震える。だが民雄は、おどける様に方眉を上げると言葉を続けた。

「どうした、顔色が悪いぞ? け・い・じ・さん」

「やめろぉ!!!」

「…………」
「僕は、刑事さんなんて名前じゃ……ない」

 脱力し、陸郎はそう呟いた。民雄は悲しげに口許を歪める。

「そうだな、ヤス……いや、安浦 陸郎。お前はただの……犯人だ」

 陸郎が晶子と会ったのは偶然だったらしい。晶子の方が民雄を見知っていた事もあり、その相方らしき若い刑事に話しかけたのだ。
 アルコールが入っていたせいもあるだろう。この所、刑事と言う役職でしか自分を認識されない事にストレスを感じていた陸郎は、何度自分の名を言っても「刑事さん」としか呼ばない晶子に苛立ち、つい衝動的に突き倒してしまったのだ。

「気が付いたら、死んでたんだ」
「……」

 その後、刑事としての知識を利用し、監視カメラ等を避け自宅まで戻ったのである。

「僕は……」
「……人を殺めた所までは事故だっただろう。だが、刑事である事を利用した時点で、ヤス、お前は刑事の資格を失ってたんだ」
「くっ……」

 民雄は煙草に火を点けると、上を向いて紫煙を飲み込んだ。
0320この名無しがすごい!
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2018/01/14(日) 06:58:20.17ID:R0KvT+YI
>>312
爆笑必至! 最悪のテルマエロマエがお目見えだ〜選択お題は全使用! 鬼怒川温泉の怪〜
物語るは卒業旅行で温泉に浸かる二人の旅情〜いわく日本の奥座敷とほかほかの湯気、うん『鬼怒川温泉』の景色が綺麗、うんうん、さすがは『鬼怒川温泉』、うん…『鬼怒川温泉』に来てよかった、ってしつこい!コマーシャルかよww
さあ二人の頭に浮かぶのは、『おっぱい』触れざる非業の大学生活だ〜両手両足骨折ヤスの笑顔が脳裏をよぎり、すぐさまその陰険さが明かされる〜ホモ説てオイw
ヤスの件で笑いきる暇もなく、待ち受けるは悪夢の虹色発表だw 作者312氏が勢い任せに『セクハラ』消化、ラストのナレーションはいい話風に締めてるが拭えない強引さにワロタ
肝を潰したスレ民が何とも言い難い反応を返し、うん、分かったとりあえず温泉汚すなよ! って感じで抱腹絶倒ENDだあ、やるな312氏w

>>317
続いてお題五つにフルチャレンジ! 『鬼怒川温泉』に女の無念、コンパニオン殺人事件だ!
さあ今回のキラーお題『犯人はヤス』、この消化に刑事もので挑む賢明な317氏、焦点は早くも他のお題消化に絞られたか〜
と読んでたらマナーのない老刑事が『おっぱい』に言及して死者を冒涜w そこに良いおっぱいって自分のことだと誤認した部下が『セクハラ』を批判、いやどういう発想だよw
民雄さんの狡猾な誘導尋問にまんまとかかった真面目系部下こと真犯人ヤス、語られるは名前を覚えない被害者への衝動的な殺意、なるほど刑事さん呼びだけでキレるヤスのマナー感覚が事件の要だったか、であれば『セクハラ』発言もおかしくはないw
よしお題は消化、オチはどうか、てめえは刑事の資格を失ったんだとイブシ銀、迷宮入りを食い止められた殺人事件、ガイシャの無念はベテラン刑事の嗅覚が救い上げ、線香の様に立ち昇る煙がオチを決めたァ、うーん南無!!
0321この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/14(日) 09:23:16.13ID:lbAYpY+z
いつも感想有難うございます
最初はギャグにしようかと思っていたのですが
いつの間にか普通に刑事ドラマに……
何故でしょう?
0323進行 ◆Ujy3nQuLmg
垢版 |
2018/01/14(日) 23:58:55.44ID:kcgHcq9/
お題『鬼怒川温泉』『おっぱい』『誰かが何かを発表する』『セクハラ』『犯人はヤス』〆

作品一覧(1/2)
>>312【ただ、おっぱいを揉みたかった】
>>317【鬼怒川温泉事件簿】
0326この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/15(月) 00:36:48.67ID:8yQmMh08
幽体離脱
0327この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/15(月) 00:40:33.67ID:F78HRxI+
声が遅れて聞こえる
0330この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/15(月) 08:30:16.66ID:52JzK6Vs
お題『かまくら』『幽体離脱』『声が遅れて聞こえる』『妖精』『最後の一撃は切ない』

締め切りは1月18日 22時です!
0332この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/18(木) 10:57:28.29ID:7afpW+VT
使用お題:『かまくら』『幽体離脱』『声が遅れて聞こえる』『妖精』『最後の一撃は切ない』

【最後の願い】(1/2)


「ワたシをコロして下さイ」

 彼女は最期にそまう言った。
 夫に先立たれ、しかし、笑顔を絶やさない女だった。

「あの人の忘れ形見だからさぁ」

 そう言って、愛おしそうに眠った娘の頭を撫でていたのを覚えている。

 今思えば陽動だったのだろう。やけにあっさり退いた魔王の眷属に、嫌な予感を覚え、急いで集落へと戻った。
 元々、俺達がこんな北の果てまで来たのは邪妖精の反応を感知したからなのに……

 俺達が集落に着いた時には、殆どの村人が食い散らかされ、手の施しようもない有り様に成っていた。
 そしてその時、彼女は血の涙を流しながら、自らの娘の腸を啜っていたのだ。

 ******

 体が肥大化し、面影すら失った眼前の怪物は、その巨体を裏切る、えらいスピードで走り回り、その衝撃波でイグルー……いや、かまくらと言った方が馴染みが深いか。既に主を失った“彼ら”の住居であるソレを吹き飛ばしながら攻撃してくる。
 俺は導師に掛けて貰った【身体強化】の魔法の効果もあって、辛うじてそれをかわしていた。

『グオオォォォォォ!!』

 その巨体が通り過ぎてから、怒声とも思える叫び声が遅れて聞こえる。
 衝撃波に体を持って行かれそうになるのを必死で堪える。
 普通の攻撃では俺には当たらない事に気が付いたのか、身に纏う衝撃波による攻撃に切り替え、どれ程経ったのだろうか?
 お互いに決め手に欠ける状態で無為に時間だけが過ぎる。
 回復、補助特化の導師や、攻撃魔法特化の魔導士。いや、耐久力の低い彼らだけじゃない。防御力の高い重機士だとしても、回避が困難な彼には下がって貰っている。
 1tを軽く越す音速の物体がぶつかれば、彼らでは危険だからだ。
0333この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/18(木) 10:59:22.87ID:7afpW+VT
【最後の願い】(2/2)


「ぐっ……」

 意識が飛びかかる。いや、衝撃だけで幽体くらい離脱しそうな勢いだ。
 だが俺は、かわして、かわして、かわして、かわす。
 確かに防戦一方だろうが、しかし、攻撃が当たらないと言う事実に向こうの苛立ちが募る。

 そんな中での一撃。一旦距離をとると勢いをつけ、避けられない様にだろう。両手を広げて囲い込む様な感じで俺に迫る。

 だが……

「それを待っていた」

 俺は、詠唱終了し、待機させておいた設置型の魔法を空中にばら撒く。等間隔に、互いの範囲が重ならない様に。攻撃魔法を避ける事が出来る事は分かった。
 だが、自分のスピードで突っ込む事、それ自体を止める事は出来ないだろう。

『グオァァァァァァァァ!!!!!!』

 両手までを広げていた為に、真正面から、その全身に設置型魔法が衝突する。
 そして、誘爆してムダ撃ちに成らない様に設置した魔法が正しくその威力を発揮した。

 ……彼女は……彼女だったモノは、爆炎に包まれる。

 ******

「まだ、生きてるの?」

 仲間の魔導士が、俺に訊ねる。俺はそれに対して首肯した。
 黒焦げになり、辛うじて人形だと分かるそれは、しかし、人とは著しく違う部分を見せている。

「やはり邪妖精か……」

 ピクピクと蠢くケシズミの腹部から生えた、闇より尚暗い色の“邪妖精”。
 俺は、彼女はから離れて生き伸びようとするソレに刃を突き付ける。

「逃す訳、無いだろう!」

 剣を振り下ろし、動かない俺の肩を重戦士がポンと叩き、導師がハンカチを差し出した事で、俺は自分が泣いている事に気が付いた。

「なぜだ……」

 答えのない呟きが口から漏れる。魔王が何を考えて邪妖精をバラ蒔いているかは分からない。
 だか、同じ悲劇を繰り返さない為にも、魔王は倒さなくては成らない……俺はそう、決意を新たにした。
0334この名無しがすごい!
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2018/01/18(木) 21:55:53.18ID:7afpW+VT
連続ですみません

使用お題:『かまくら』『幽体離脱』『声が遅れて聞こえる』『妖精』『最後の一撃は切ない』

【男達の哀歌】(1/2)


「くそぅ! 道が分からん!!」
「フフ、何故だろう? 何だか僕、眠いや……」
「草尾ぉぉ! 眠るなぁぁ!」

 二人の馬鹿が遭難した。

「あ! 妖精さん? 君は筋肉の妖精さんだね?」
「しっかりしろ! 草尾ぉぉ! 俺だ! 矢追だ!」
「ああ、矢追だったのか……凄いや、矢追は妖精さんだったんだね?」
「そんな訳有るかぁ! 気をしっかり持て! 草尾ぉ!」

 しかし、山中の吹雪の中で自身の方向感覚すら危うい為、にっちもさっちも行かない。
 だが、大自然は容赦なく二人を襲う。
 吹雪は横殴りとなり、もはや猶予は無かった。

「な、何か手を!! 手を考えねば!!」

 その時天啓が下った。

「!! かまくらで吹雪を凌げば!!」

 思い立ったが一直線。矢追は急いでかまくらを作り始める。

 だが……
0335この名無しがすごい!
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2018/01/18(木) 21:57:25.03ID:7afpW+VT
【男達の哀歌】(2/2)


「ぐう! 思ったより時間が掛かってしまった! !! 草尾は!?」

 吹雪の中放置されていた草尾は、半ば雪へと埋まっていた。だが、よく見れば口が少しだけ動いて居る。

「…………『矢追、僕は平気だよ〜』」
「く、草尾ぉ!! お前、本当に平気なのか!?」

 どこか焦点の有っていない目で草尾は話すが、しかし、思っていたよりもしっかりした話し方の為、矢追はホッと息をつく。

「…………『はは、何て顔してるんだ矢追』」
「? なんだ? 何か口の動きと声が合って無い様な?」
「…………『ははは、あれ? 天使様?』」
「何を言ってるんだ? 天使? いや、それより、やっぱり声が遅れてないか?」

 その時、何か不自然な物を感じ、背筋に冷たい物がはしった。

「…………『何処へ? あれ? 矢追、何で下に……あれは……俺?』」
「草尾ぉぉぉ!! ちょ、おま!! 幽体離脱しるぅぅぅ!!」

 ガクガクと肩を揺すり、草尾の意識を取り戻そうとする。だが、草尾の声がだんだん遠ざかって行く。

「ぐ! この手だけは使いたくなかったのだが!!」

 そう言うと矢追は思い切り振りかぶり、男が絶対に衝撃を受けるその急所を渾身の力でぶん殴った。

「『!!』」

 声に成らない叫びが響く。

「く、草尾?」

 恐るおそる草尾の顔を覗き込む矢追。草尾は真っ青な顔で口を動かした。

「……『フッ、俺の仰天顔に驚いて、天使様は逃げちまった』」
「って、まだ幽体離脱してるぅぅぅ!!!」
「……『腹の下が切なくて、身体に戻れねえんだよぉぉぉ!!』」
「マジすまんかった!!」
0337進行 ◆Ujy3nQuLmg
垢版 |
2018/01/18(木) 23:27:59.04ID:8xHJHsNp
お題『かまくら』『幽体離脱』『声が遅れて聞こえる』『妖精』『最後の一撃は切ない』〆

作品一覧
>>332【最後の願い】
>>334【男達の哀歌】
0344この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/19(金) 18:56:46.10ID:1nHssZIt
0345進行 ◆Ujy3nQuLmg
垢版 |
2018/01/19(金) 19:09:51.39ID:SjPzQ4CP
お題『擬人化』『文房具』『鯖缶』『猫娘』『歌』

締め切りは1月21日 22時です!
0346進行 ◆Ujy3nQuLmg
垢版 |
2018/01/19(金) 19:10:47.79ID:SjPzQ4CP
安価にも時間かかるようになっちゃったね…
このスレも今月で〆かなぁ…
0347この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/19(金) 19:49:10.35ID:UGyIyz+w
こんなスレがあったのか
>>345のお題を全て使わないといけないの?
それとも一部を使えばいい?
0348進行 ◆Ujy3nQuLmg
垢版 |
2018/01/19(金) 19:51:13.56ID:SjPzQ4CP
1つからでも5個全部でもいいですよー
文字数は2000文字以下です
0349この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/19(金) 19:56:56.10ID:UGyIyz+w
了解しました
ただまだ会社で、家に帰り着くのは日付が変わる頃になります
なので、1時頃に初投稿してみます
2000字なら、一時間くらいで書けると思うので
0350この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/19(金) 20:10:14.42ID:FYeyoIq+
最近忙しくて書けてない…ごめんね

>>349
21日の22時までだったらいつでも、何作でも投稿していいのよ
0351この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/19(金) 23:11:59.35ID:B1/FzD/a
なんで投票やめたんだっけ?
書く人以外も参加できる方がいいし感想多い方が書く人も増えると思うわ
安価の出し方とかルールもいろいろ変えてみたらどうだろう
0352進行 ◆Ujy3nQuLmg
垢版 |
2018/01/19(金) 23:15:35.11ID:SjPzQ4CP
集計するのはなかなか面倒だったし、投票より普通に感想書いてあげてねって方針に変えたんですよね
最近5お題ばっかりだから、やりたいって安価方法があればどんどん意見出してくださいね
0354この名無しがすごい!
垢版 |
2018/01/19(金) 23:43:30.55ID:B1/FzD/a
普通に感想が少ない…
やってることは面白いしできれば気長に続けて欲しいけどねー
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