安価・お題で短編小説を書こう!4
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
安価お題で短編を書くスレです。
■お題について
現在、毎週日曜日の午後22時に前回のお題を締め切り、新しいお題を安価で決める方式を取っています。現時点での募集お題はスレ主によるレスを確認してください。
■投稿方法
投稿する際は、1行目に【】でタイトルを付けてください。決めていなければ【無題】でも可。
作品は3レス以内で。レスが2つ以上に別れる場合は分かりやすいよう番号を振ってください。
■「小説家になろう」等への投稿について
同一内容を別サイトへと投稿する行為は認めています。
その際、著作者以外が5ch上から無断で転載したものと区別するため、出来る限り【本スレへ投稿する前に】投稿してください。ご協力よろしくお願いします。
■前スレ
安価・お題で短編小説を書こう!
http://mevius.2ch.net/test/read.cgi/bookall/1508249417/
安価・お題で短編小説を書こう!2
http://mevius.2ch.net/test/read.cgi/bookall/1511408862/
安価・お題で短編小説を書こう!3
http://mevius.2ch.net/test/read.cgi/bookall/1522770910/ >>125
バラバラお題全使用に125氏が挑戦、アチアチなメモリー!
舞台は二泊三日の林間学校、親友女子の二人組による、思い出づくりの夏きたる〜、さあ、一日め夜は肝試し!
おどかし役の二人の父が、『アチアチ』アドベンチャーを熱唱し、第三者『視点』では完全な変態にw 女子らはこれに涙目制裁〜
二日め夜のキャンプファイヤー、配管工のアイツとかヘッジホッグなアイツが登場し、ネズミ花火・『ナイアガラ』花火で阿鼻叫喚w
なるほど、他のキャラクターを並列させることで、『ドラクエ』仮装の唐突感を均したか、125氏の技が炸裂〜
ラスト、誰もいない夜の『図書室』、演出されるは二人だけ感! お題を全クリした夏の物語は、涙と笑いを通過して山あり谷ありメモリアル、ダークネス・イン・サマーENDを決めたぞ! >>125
一夏の思い出ですね
お父さん達の事も、その内よい思い出に成るでしょうw >>126
初期案では一泊二日の図書室でサボり組がドラクエに興じていたとするつもりでしたが、
話をこねているうちに仮装させて以前の二人組を出すことにしました
ちなみに赤い配管工の高校生はファイアボールと叫んでネズミ花火を放っていますw
>>127
自分の父親が女装してHENTAI行動をとったとしましょう
それを間近で見た同じ地域の多数の同世代からはずっとからかわれる事になります
あの日のことがいい思い出となるかは……ちょっとわかりませんw お題『ナイアガラ』『ドラクエ』『図書室』『視点』『アチアチ』締切
【参加作品一覧】
>>113【白紙の本】
>>117【夏休み】
>>125【夏の夜】 今回の投票作品一覧はありません。
俺に投票してくれた人ありがとうね
ミスをよくしてしまう不甲斐ない進行ですが、これからも宜しくお願いします…… さてではいつも通りお題安価行きます
>>132-136 ☆お題→『配管工』『ユニオニオン』『誰かが冗談を言う』『ドラムンベース』『ジャンル:ローファンタジー』
☆文字数→3レス以内に収めれば何字でも可。
最大文字数の目安としては、3レスで5000〜6000字程度。
もちろん文字数が少なくても分割OK
☆締め切り→7/29の22時まで
☆平行して前回お題作品について投票を行います→安価もしくはタイトルで一人一票までレスしてください。
作品一覧は>>129より。
【見逃し防止のため、作品投稿、投票の際はこのレスに安価してください】 お題:『配管工』『ユニオニオン』『誰かが冗談を言う』『ドラムンベース』『ジャンル:ローファンタジー』
【都会の龍神】
古来より、人は水を恐れた。
豪雨を、氾濫を、津波を。
その恐怖、教訓から過去の人々は、荒れ狂う奔流を龍神に例え、祀った。
現代では、そのメカニズムが解明され、龍神信仰はもはや形骸化してしまっている。
「て、しなきゃねぇ」
青年はぼやきながら、レンチを担いだ。
地下深く、光が差し込まない世界で彼は破損した配管を修理する。
それは、巨大な配管だ。
トンネルと言っても過言ではないほどの、大きさ。
「神様の手伝いしてる割には、俺達はいつまでたっても日が当たらねえな」
誰かが冗談を言う。
青年は頬についた泥を拭って、笑った。
冗談にしては中々、的を射ている。
その時、重低音が作業場を支配した。
空気を振動し、臓腑を叩く。
「急げぇ!来るぞぉ!」
現場監督が叫んだ。
青年は受け持ちの区間を急いで仕上げる。
一瞬でも間に合わなければどうなるか、目に見えていた。
重低音はリズミカルに、さながらドラムンベースのように響き続ける。
「っし!終わり!」
青年はボルトを締め上げると、すぐさまその場から離れた。
後方で組んだ足場に飛び込むや、配管は直ちに振動を開始した。
来る。
配管に等間隔に配置された窓をとてつもない速さで何かが通り過ぎた。
水滴と蒼い鱗を撒き散らし、それは配管を駆け抜けていく。
数秒後、配管と作業場に再び静けさを取り戻された。
あれが、龍神。
いつ見ても、美しく、荒々しい存在。
青年は彼等をそう捉えていた。
「点検開始!」
監督が再び叫ぶ。
今の通過で、またどこか破損しているかもしれない。
青年は配管に飛び乗り、レンチを構える。
「いつもニコニコ、ユニオニオン!」
会社のコマーシャルを口ずさみ、彼は配管を小刻みに叩く。
「水の問題なんでもござれ!」
リズミカルに、繊細に。
「配管工のプロなら全て解決!」
青年達の仕事は、配管工。
そして、龍神の通り道を作る者。 >>138
はやい! 前がかりの138氏が、お題決定より半日おかずに全選択の速攻だッ、崇め奉れ水の神のレジェンド〜
さあ舞台は光届かぬ地下世界、修理に励む『配管工』が、この仕事光あたらんと『冗談』会話〜、おもむろに、臓腑を叩く振動はじまり、
迫る轟音リズミカル、さながら『ドラムンベース』の重低音が、いやがおうにも緊張高め〜!? 水滴と蒼い鱗を撒き散らし、辺り揺るがす轟水の神が自然の威厳そのままに、荒ぶり駆け抜け現世に顕現〜!
美景に打たれた配管工が、まさに龍神だと『ローファンタジー』をクリアして、口ずさむのは、いつもニコニコ『ユニオニオン』w お題ネジ込み感も速攻ゆえのご愛嬌w
かつて猛威を振るった龍神も、パイプで制御し飼い慣らし〜、それでも本能からくる恐れこそ、138氏が描き出したドデカいパイプの龍の神、って感じで、配管工らがゴクリ畏敬の大自然ENDだ! 速攻・全お題突破に敬礼〜 >>138
現代に生きる龍の祭司と言うところでしょうか
日に当たらぬ者こそ、現代の基盤を支えているのですね >>139
ありがとうございます
こんなものでよろしかったのでしょうか >>140
祭祀、神職をイメージしました。
現実はかけ離れたものだと思いますが、合わせてみると意外とかけました >>138
さっそくのお題制覇だなんて素晴らしい!
英雄としてチヤホヤされるということになれば、それだけ災害が多いということの裏返しにもなるんだよね
荒神を鎮める、日のあたらない英雄たちはこれからも人知れず活躍することでしょう >>138
すぐさまお題全消化作品を投稿するとは!
いやーさすがです >>137
使用お題:『配管工』『ユニオニオン』『誰かが冗談を言う』『ドラムンベース』『ジャンル:ローファンタジー』
【入国管理】(1/2)
「あぁ! ここが日本か!」
飛行機から降りるなり、流暢な日本語でそう言ったのは、アングロサクソン系の若者だった。
ユニ・オネオナ。今年で19才になる、オクラホマ出身の青年である。
感慨深そうに口にしてはいるが、飛行機を出こそすれ、未だ空港の室内ではあるので、言うほど日本日本した感じではない。
それでも空気の違いを感じているのか、彼はそれを堪能するべく大きく深呼吸をした。
「さて、入国手続きをしないとな!」
初めての海外旅行。それで日本を選んだのは、ひとえに彼が日本文化が好きだったからだ。
「ヨウカイ、オンミョウ、ヤオヨロズ〜!!」
少し……いや、かなり偏っては居る様ではあるが……
BGMだろうか? 空港の通路にはノリの良い音楽が流れていた。彼の記憶によればドラムンベースのナンバーだった筈だ。
そんな彼が浮かれ気分で入国カウンターに着くと、そこには20才半ばの男が仕事をしていた。
ネームプレートには“土御門”と書いてある。土御門……その名前に彼はピンと来る物が有った。かの大陰陽師、その子孫がそんな苗字だったのではないか?
「Oh! ツチミカド!! セイメイ・アベ!! オンミョウリョウ!! 貴方は子孫では無いですか?」
入国管理官であろうその男は若者をジロリと見るが、取り立てて感情を浮かべないまま「パスポート、プリーズ」とだけ言った。
まったく相手にしてくれない土御門に苦笑しつつ、彼がパスポートを渡す。
「……ユニオニオンさん?」
「違います! ユニ・オネオナです!」
「入国目的は……観光ですか?」
「はい! 観光です」
「配管工? これ、観光ビザですから、配管の仕事じゃ入れませんよ?」
「違います! 観光です!!」
「はは……冗談ですよ」
全く表情を変えないまま土御門はそう言う。
そうすると、最初に自分の名前をどこぞのイメージキャラクターと間違えたのも冗談の類だったのだろうか? どちらにしろ面白くも無い冗談ではあるが……第一、冗談だと言うなら、少しは笑ったらどうなのか? 【入国管理】(2/2)
東洋人には感情が無い等と言われているが、それは本当だったんだなと、ユニは思った。
金属探知機の後、荷物をチェックされる。思ったより手こずって居る様で、結構な時間が掛かっていた。
あまりの退屈さ加減に、ユニは流れている曲に合わせて鼻歌を歌う。
と……
「!!」
「? 何ですか?」
感情が無いと思っていた土御門が目を見開いて彼の顔を凝視していた。
「その……曲は?」
「え? いや、今流れているでしょ? ドラムンベースの……」
「……ああ、そうでしたね……流れて……いましたね……」
歯切れ悪くそう言う土御門を訝しんでいたのだが、しかし、その音楽は既に聞こえなくなっていた。
ユニは(あれ?)と思ったのだが、彼が疑問を口にする前に、土御門が「結構ですお通り下さい」と口にした。
「あ、はい」
「では、良い配管工を……ユニオニオンさん」
「…………あー、もういいです」
全く面白くない冗談を繰り返してくる土御門に多少げんなりしながら、ユニはオリエンタルジャパンを堪能しようと、気持ちを切り替えたのだった。
******
「はい、カテゴリーE【テレパス】でしょう。観光とのことですが、実際はどうなのか……はい、荷物には不審なところは……はい、よろしくお願いします」
通信機のスイッチを切り、土御門はユニの消えたロビーの方に視線を送る。彼の“術”にも引っかからない様な些細な能力の発現なのだから、問題にはならないだろう……そう考える。
もしかしたら、能力を隠蔽していた可能性もあるが、だが、それならば“曲”を口ずさんだ事は矛盾する事に成る。
土御門にしても、アレは油断のし過ぎだったと冷や汗をかく思いだった。何せ、“脳内で”ヘビーローテーションをしていたドラムンベースの曲を“聴かれ”てしまっていたのだから。
「精神遮蔽の術からやり直しですね」
国民に知らされていない『陰陽省』。平安時代から続くこの国家機関の目的は、海外から入ってくる“穢れ”からこの国を守る事だ。
今日は瀬戸際で素通しする事は無かったが、気を抜いていて同様の事が有れば、次は大問題になるかもしれない。
「ぬるま湯につかり過ぎて、腑抜けて居た様ですね……褌を締め直さねばなりません」
この数年、なんの問題も無かった事で記が緩んでいたらしい。
自分が最初の砦であると気合を入れ直し、土御門は次の入国者のチェックを開始するのだった。 >>145
魑魅魍魎が跋扈した平安時代を現代風に仕立て直すぞ、お題全選択! イミグレ陰陽隊!
さあ、遠路はるばるオクラホマからやってきた、趣味はオカルト、安倍清明リスペクト、ユニ・オネオナさんが来日だ〜
高速ビートの『ドラムンベース』が流される、奇妙な空港降り立って、浮かれ気分のユニさんが、『ユニオニオン』って名前の『配管工』に間違えられるw
OH分かりにくい、これがジャパニーズ『冗談』ですか〜、って訝しむ彼が、空港に響くハイテンポの曲目を鼻歌混じりに、…ってテレパス発覚!?
空港似合わぬドラムンベースは、策士145氏による巧妙な伏線だ! 土御門家・清明の系譜に連なる審査官が脳聴で炙り出されラスト〜、陰陽省とかいう『ローファンタジー』の姿あらわな短編が、お題をフルクリアしながらも、愛国・セーマンドーマンENDだッ >>147
感想有難うございます
仕事中に脳内でBGMを流しているのは、自分の癖だったりしますw >>137
お題:『配管工』『ユニオニオン』『誰かが冗談を言う』『ドラムンベース』
全選択のつもりだけど、ローファンタジーかどうかは自信がない
【ユニオンリンク】1/2
会議室に並べられた料理がオフィスに似つかわしくない香りを漂わせていた。
壁の一面はガラス張りで隣接フロアを見渡せるようになっており、これまた場違いな一面の緑が整然と広がっている。
外観はオフィスビルのままであったが中身は随分と様変わりしたものだ。
「一般の見学者を呼び込むのもアリです。科学館よろしく演出を凝らせば――」
担当の男は落ち着かない様子で眼鏡を上げ、こちらを窺う。
「――下層には養殖用の水槽がありまして、水耕栽培と循環連動してまして。将来的にはレストランも併設して、ここで生産した野菜と魚を提供するコンセプトです。お味はどうです?異国の方の口にも合うでしょうか?」
こいつらの顔はどうも好きになれん。不機嫌面で睨んでやろうかとよぎったが、ここは話を持ってきたジャックの顔を立てることにした。
「植物工場にレストランか。まぁ、廃ビルにしておくよりかはマシでしょうな」
土地の少ないサルどもらしい発想だ。まったく妙な知恵だけは働く。
「おいおいマックス、俺が目をつけたビジネスにケチ付けないでくれよ。お前はどうも排他的っつーか差別的でいけねえや。面白い試みじゃないか?なんなら地下に温泉でもつけたらいい。ハハハ! おっ このフライもいけるぜ?」
「……これも野菜か? 初めて食べる味だが」
「それは、えーオニオンですね。球根を輪状にスライスして、揚げて、オニオンリングって訳です、はい」
得体の知れないリングを注視する私を見て、料理を気にいったとみたのか緊張の色が薄らいだようだ。
「まずまずだな……時間もない。残りのフロアも見せてもらおうか」
階下の栽培エリアは、いかにも工場然としたパイプが張り巡らされ、温かみのない照明が緑を照らしていた。
「太陽と土がなくても問題ありません。人工光と水の徹底した管理により、味はもちろん栄養素の調整も可能です」
無農薬を謳っているようだが、この嗅ぎ慣れない匂いは薬品のようではないか?オニオンの香りか? だがそれよりも――
「このBGMは見学ツアーの演出か?もう少し落ち着いたものにはできんのかね?」
「ああ、音楽を聞かせているんです。植物に。研究成果も出ていましてね、オカルトじゃありませんよ。ちなみに今流れているのはいわゆるドラムンベースといいまして」
「ハハハ、いいじゃないか。俺は好きだぜ。若者ウケもいいんじゃないか?」
ジャックの興味はガラス越しのオニオンプラントに移っていたが、体の一部は自然とリズムにのって左右に揺れていた。本能には抗えん、か。
その後いくつかのプラントを見廻り、視察は完了した。水槽は配管メンテのため立ち入れず、ジャックは残念そうな顔をしていた。
「このモデル工場を足がかりとして各地に展開するにあたり、もちろんお二方に所縁のある企業様に配慮する所存でございます。が、先に申し上げたとおり配管工事だけは我々の方で手配させていただきたく」
「技術立国だもんなぁ。譲れんところは構わんよ。なぁマックス?」
「では当初の取り決め通りということで。本日はありがとうございました。こちら、お土産です。お気に召されたようでしたから……」
「ほう、オニオンチップス? こいつもうまそうだな! いや〜有意義な視察だった」
狭苦しい島国で、ちょっとした食の楽しみができる程度には。そう思いつつエントランスを出た。
ジャックが消息を絶ったのはその1ヶ月後だ。 【ユニオンリンク】
2/2
まったくどうかしている。ジャックのやつめ、急に連絡をよこしたかと思えば一人で会いに来いだと?よりによって、あの工場で。こんな真夜中にどういうつもりだ。
小腹が空いたせいか、いらつきが治らない。車に常備したオニオンチップスをひとつまみ。……もう空か。まぁ明日にでも贈られてくるだろう。
敷地内は静まり返った様子で警備員の姿すら見えない。改装してしばらく経つというに、暗闇の中では寂れた廃ビルのままに思えた。
「ジャック、俺だ! どこにいる? お前の家族も心配しているぞ」
ガラス越しにプラントから漏れる人工光があってなお廊下は薄暗く、怪しげな研究施設のような雰囲気が不安を煽る。一方で耳障りなはずの電子音楽は不思議と心地よさがあり、私は高揚感と妙な使命感すら覚えた。
どこに行くべきかは分かる。パイプを辿ればいい。その先にいるはずだ。匂いが強くなっていく程に期待と確信も強まっていく。そうだ、この扉の先にあるはずだ。
視察のコースから外れ、しかし迷いなく進んだ先は予想どおり水槽が並ぶフロアだ。だがそこには魚の姿など見えず、巨大な水槽と得体の知れない何かが鎮座していた。
水槽内を埋め尽くすほど張り巡らされた根。天井まで飛び出した葉は碧く発光し、中心には無数の皺が刻まれた球根が、音楽に合わせるかのように脈動している。
「何をお探しですか?」
物陰から眼鏡ザルが覗いていた。訝しむような、嘲るような、言い様のない表情。
「いくらマックス様といえども不法侵入はいただけませんねぇ」
「とぼけおって。ジャックをどこへやった?そしてこいつは何だ!?この工場は一体何なのだ!?」
「そうですねぇ……尖兵工場ですかね。あなた方の支配からこの国を解放するための」
かつての印象とは真逆。自信に満ちた不敵な態度に悪寒を感じた私は、本能に任せて奴の喉笛に喰らいかかった――
「グォォッ!?ウゥ……ぐッ……ガハッァ!?」
躱された!? 顔に、何か…クソ! 目を開けられん!どうなってる?! 組み伏せられた?
誰に? 奴は――待て、この体臭と毛並みは間違いなく
「ジャック、何の真似だ。放せッ!」
「……よ……ごう……ハァ……ごう……」
視覚も嗅覚も覚束ない。締め上げられ、息苦しい。電子音に混じり友の呼吸音とうわ言がやけに大きく響く。
「犬人は野蛮でいけませんなぁ。気に食わないとあればすぐに吠え散らかし噛み付こうとする。ですが、キキキッ……特製のオニオンスプレーはさぞかし効いたようだ。どうです?涙が止まらんでしょう?」
「糞猿人……がッ……」
振りほどけないはずがない。ジャックとは犬種が違う、力で負けるはずがない。何かおかしい。クソ!軍で教わったろ、野生を開放しろ。従わななければ、本能うに、い意思に。ダレのい意思しに?
「オニオンはですねぇ、中毒を起こすんですよ。で、うまく調整してやると、犬人をトランス状態に陥らせることができるんです。そしたらあとは簡単。大いなる『ユニオン』へ統合し、
我々の意思の代弁者ができあがる。脳のリミッターを外すのも容易い」
トウゴウセヨ トウゴウセヨ トウゴウセヨ
「ジャック氏と違って、あなたはどうも効きが悪かった。まだまだ準備が必要だと教えられたわけです。感謝していますよ、貴重なサンプルだ。
ですが、今あれこれと嗅ぎ回られるのは都合が悪い。残念ですが中毒死コースです。あの世で見守っていて下さい、犬人の時代が終わるのを」
心地よい脈動のリズム。自然と尾が揺れる。
口腔に広がる香ばしさ。涎が溢れる。
ああ、悪くない。悪くないぞ。
ジャック、お前の感覚が、今ならとても良くわかる。 >>149
149氏がお題『配管工』『ユニオニオン』『誰かが冗談を言う』『ドラムンベース』を選択したぜ、落日の球茎〜
さあ、BGMに『ドラムンベース』が流れる謎ビルで、こりゃ地下に温泉でもつけたらいいと、『冗談』飛ばして二人が登場〜
ビルの中には植物工場、レストラン〜、水槽は見れなかったものの、オニオンチップス土産に貰い、『配管工』事だけは自己手配するという、低姿勢の説明マンに見送られ〜、
問題は後日! 行方知れずの相棒探し、チップス片手の再潜入だ〜、例の水槽エリアに鎮座するのは…だ、大球根!? 襲い掛かるは、正気を失くした相棒と、説明マンの玉ねぎ噴射w 大いなる、オニオンユニオンに統合だと〜?(『ユニオニオン』)
『ローファンタジー』も込みだねって感じで、みなし全選択・消化! 犬人・猿人の権力闘争が前半隠され後半あらわ、イヌに玉ねぎやったらダメだよね〜、そんな伏線たぐり寄せ、アリルプロピルジスルフィドENDだァ! >>149
犬猿の仲……と言うところでしょうか?
世界の裏で暗躍する勢力図。果たしてこの反逆のレジスタンスは成功するのでしょうか? >>145
無自覚な超能力者というやつでしょうか?
大勢いる中をピンポイントで捉えるあたりよほど波長が合ったのでしょうね
>>149
獣人同士の戦いも随分と仕込みがあるのですね
これはもう行く所まで行かないと終わりそうもない? >>150
野生を開放しろ
この時点ではまだ理性があるようですし、単純に
野性と間違ったように見受けられますね。
気をつけて下さい。 >>137 滑り込みセーフ
お題:『配管工』『ユニオニオン』『誰かが冗談を言う』『ドラムンベース』『ジャンル:ローファンタジー』
【春踏(しゅんとう)】
冬の寒空のもと、夕暮れ時の広場で赤と青を基調としたオーバーオール姿の男たちが大勢集まっていた。
その中央部分で20人程のむさ苦しい男たちは直径10メートル程の輪を作り、中心を向いて片膝をつけ頭を垂れる。
さらにその輪の外側でひと固まりになっているのは、8人程の演奏者たちだ。
ドラムセットや電子キーボード、エレキギターなどが並んでいる。
バスドラムから始まった軽快な生演奏に合わせ、頭をあげて立ち上がると踊りだす。
ドラムンベース調のリズムに乗って足を伸ばし縮め、その場で回り飛び跳ねる。
足運びに大切なのは身振り手振りだ。大きな足運びをするならば手振りも自然と大きくなるもの。
彼らはニ時間も続けると、輪のすぐ外側から入れ替わる交代要員とダンスの中で手を叩き合わせ、休息を得る。
これを三日三晩のあいだ繰り返す。
神聖なる儀式なのだ。一瞬たりとも音楽と踊りを絶やしてはならない。
★ ★ ★
三晩目を明かした早朝、ついに輪の中心部分の土が盛り上がり、緑色の土管が生えてきた。
もう一息だ。そこに集まった全員が輪を作り、踊りに加わる。
五分もしないうちに土管から這い出てきたのは、玉葱頭をした精霊だ。名前は恐れ多くてとても言えない。
男たちは全員地べたに正座し、精霊に向かって頭をふせる。
その姿に満足した精霊は土管の縁に寝そべって、甲高い声をあげた。
「ようお前らご苦労なことだな。今年も賃上げは成功させてやるから、もっと御布施を寄こせよな」
老齢の男が一人、目を伏せつつも素早く精霊の視界の中央へと移動し正座する。
「我らが精霊様の意のままに」
「今年はやる気が起きないからもういいよな。来年はオペラで出迎えてくれ。そんじゃまたねぇ〜〜〜」
精霊が土管の中に転がり落ちると、土管も地面の中へと沈んでいく。
「気難しい方だ。だがこれで今年も賃上げは約束されたも同然だな」
男たちは皆やり遂げた満足感で溢れていた。
「増えた分以上に精霊が掠め取るのにな」
などと誰かが冗談を言うものならば、そいつは間違いなく団体の裏切り者であるが、幸いこの場にいたのは同志達だけだ。
現世とは異なる世界をつなぐ彼らは、配管工と呼ばれていた。
〈おしまい〉 お題『配管工』『ユニオニオン』『誰かが冗談を言う』『ドラムンベース』『ジャンル:ローファンタジー』締め切り
【参加作品一覧】
>>138【都会の龍神】
>>145【入国管理】
>>149【ユニオンリンク】
>>155【春踏(しゅんとう)】 ☆お題→『うさぎ』『パイロット』『鰻』『そらまめくんと仲間達』『偽進行』
☆文字数→3レス以内に収めれば何字でも可。
最大文字数の目安としては、3レスで5000〜6000字程度。
もちろん文字数が少なくても分割OK
☆締め切り→8/5の22時まで
☆平行して前回お題作品について投票を行います→安価もしくはタイトルで一人一票までレスしてください。
作品一覧は>>156より。
【見逃し防止のため、作品投稿、投票の際はこのレスに安価してください】 >>166
お題の話ね
偽トリップでたまに現れる人だと思う >>155
呼び出す為のまさかの儀式w
繋ぎをつける為に、こんな苦労が有ったなんてw >>155
刻限30分前に滑り込んだ155氏が、前回お題を全選択、土管deダンス!
さあ書き出しは、片膝ついて円陣うつむく男ら描く〜、はじまる演奏、顔上げて、『ドラムンベース』のリズムに乗って、刻むステップ、高速で、踊り地を蹴る、シンコペーション!
動き続けて三日三晩(長w)、生えた土管に、ラフな口調の玉葱精霊(『ユニオニオン』)あらわれて、かわす約定、気まぐれ賃上げww しかもピンハネw
精霊に掠め取られるから結局マイナスなんだが、などという、ダンスをだいなしにする『冗談』言う者もなく、オーバーオールの『配管工』らによる、対価に見合わぬ労働オチ〜
古代の儀式を彷彿とさせるダンス&ミュージック、電子音楽のデジタルテイストが『ローファンタジー』をクリアして、春闘ENDで力作揃いの連戦をしめたァ、155氏乙! >>153
感想、有難うございます
主観では気が付かない異変と言うやつです
普通の人でも、色彩感覚は3倍近く違うそうなので、果たして自分の感じている物と人の感じている物が同かどうかは、分からないですね >>164
【都会の龍神】に一票
現代の民間伝承っていいよね 感想ありがとうございます!
>>168
異世界とのつなぎを作るので、とても大変です
ちょっとでも間違うと、気難しい聖霊様はへそを曲げて出てこないとか?
>>170
初期稿では七日七晩にしてました
流石に長すぎだなあということで交代しながらの三日三晩にしたのですが、それでも長いですよね >>164
使用お題:『うさぎ』『パイロット』『鰻』『そらまめくんと仲間達』『偽進行』
【フリーマインド】
幼い子供の思考と言うのは本当に自由で、自分なんかは驚かされてばかりだ。
念願かなって保育士になった私だが、彼等の柔軟な発想力には、とてもじゃ無いがま追いつかない。
「さぁて、みんなぁ! 大きくなったら何に成りたいかなぁ?」
そう言う私の声に保育園の皆は思い思いの声を上げる。
「おれ、やきゅうせんしゅ!!」
「くっきーやさん!!」
「パイロット!」
「うん、そうだね、成れる様に頑張らなくっちゃね」
微笑ましい夢を聞いて思わず顔がほころぶ。
「ぼく、らいだーのみぎがわ!」
「わたしぽぷり!」
「え? あ、うん。成れると良いね」
「うなぎ!」
「え? 鰻? うさぎじゃなくて?」
「うなぎ!」
「え〜と、何で?」
「にゅるにゅるしてるから!!」
「あ、うん」
この辺はまだ夢と現実がごっちゃ……なのかな?
と、ツンツンとエプロンを引かれ、絵本が目の前に差し出される……「そらまめくんと仲間達」……
「えっと、『そらまめくん』に成りたいのかな?」
フルフルと首を振られる。
「そらまめくんのお友達に成りたいのよねぇ?」
「あ、先輩!」
先輩の言葉に、コクリと頷く。
そっか、お友達に……か、そう言う発想は私には無い。やっぱり子供ってすごいや!
ほっこりして頭を撫でてあげていると、別の子が「ハイッハイッ」と、自己主張する。
「う〜ん? 君は何に成りたいのかな?」
「偽進行!」
「は?」
「偽進行!!」
「え?」
「偽進行!!」
「…………あ、うん」
……………………子供の発想ってなんかすごい。 >>174
子供の時って突飛な思考をするからなあ
にしても偽進行になりたいって、なにか憧れがあるのだろうか >>164
なんかどっかで見た話…………悔しい、でも投稿しちゃう! びくんびくん
お題:『うさぎ』『パイロット』『鰻』『そらまめくんと仲間達』『偽進行』
【巨大怪獣は南からやってくる】
四機編成を組む戦闘機パイロット達が南部離島地域のはてまで愛機を飛ばしてその目に映したのは、海面上をムーンウォークするうさぎだった。
そのうちの一機を操る新人が思わずこぼした、なんてデカさだという言葉は、それぞれのヘルメットに内蔵されたスピーカーを震わせた。
実に200mを超える白い体高の持ち主は、時速40kmという巨体の割には微妙な速度で離島に近づく。
このままでは人里が荒らされるのも時間の問題だ。
予測では遥か南東―東側の海上を通って何事もなくやり過ごせるはずだった。
『くそっ、偽進行ルートを掴まされてるじゃないか! 観測所は何を見てたんだ!』
そう叫びたくなるのはわかるが、巨大怪獣は気ままに進路を変えるものであり、意表をついて直角に曲がることだってざらにある。
そんな進行ルートを正確に予測することなどとても無理だ。
だからこそ彼らがいる。
『そらまめリーダーより各機へ。これより対怪獣ミサイルによる攻撃を行う。攻撃目標はうさぎの鼻っ柱とする。各機攻撃準備せよ』
そらまめリーダー麾下となる二番機、三番機が応答するのに続く。
『そらまめ4、攻撃準備完了』
『よし、これより攻撃に移る。続け』
そらまめリーダー機が右に傾けて高度を落としつつ、ムーンウォークのために後ろを向いている怪獣の真正面に合わせる。
『発射準備、5、4、3、2、1、今!!』
各機が両翼に搭載している、全機合わせて16発ものミサイルが5秒の間にすべてうさぎへと向かっていく。
発射したら離脱のために高度を上げるが、新人の機体は追従が遅れた。
機体がうさぎの攻撃範囲をかすめると、うさぎの目から赤い怪光線が放射される。
幸いうさぎの視線が定まらなかったために、回避行動せずとも当たることはなかった。
そらまめリーダーは新人の鍛え直しを決めた。
新人とは言え、優秀なパイロットの中から選ばれたさらにひと握りなのだ。これ以上の失敗をさせてはならない。
だがうさぎの注意を逸らすこととなっていたためか、対怪獣ミサイルは迎撃されることなく全弾がうさぎの鼻へとねじり込まれ、爆発のエネルギーを余すところなく巨体に叩き込むことになった。
うさぎは顔面から煙を上げて前のめりに倒れると、光の粒を撒き散らしてかき消えた。
『ふう。そらまめリーダーより管制、目標の消滅を確認。こちらの損害は無し。これより帰投する』
こうして彼らは国民を守っている。
☆ ☆ ☆
そんなそらまめ隊の活躍は、そらまめくんと仲間達というマスコットキャラクター化されていることもあり、さらなる期待と羨望を集めていた。
そして今この時も国民を守るために、南の大空を舞う。
『今日はまたとんでもないデカさだな』
彼らの眼下には2,000mを超える体長の鰻が海面よりも上を泳いでいた。
そらまめくんと仲間達の戦いに終わりはない!!
〈おしまい〉 >>174
進行氏への恩返し回なるか、174氏が早々にお題・全選択を宣言だ、キッズダンスを踊ろう〜
さあ、子どもらの夢おうかがいする保育園にやってきたぞ、キッズらに翻弄される保育士の弁を聞いてみよう〜
子供らからキラキラの夢が飛び出すぜ、なりたいものは!? 野球選手、うんうん、『パイロット』、うん、クッキー屋、うん、『鰻』、うんウナギ!? 『うさぎ』とかじゃなくてウナギw まあちょっとダークヒーローっぽいかもw
『そらまめくんと仲間達』を提出したおとなしげな子からは、まめくん自体ではなくお友達になりたいと、癒しの回答を頂きました〜、さあ次の子は!? なりたいのは『偽進行』! 何だそれw
短編スレで一日早く嘘期限を告知するなどお騒がせ、トリックスター・偽進行氏のフォロワーか? 今日も笑い絶えない保育園、預かり、大喜利、ミステリー! 174氏がアグレッシブにお題を使い切り、大喜利、さっくり、一番乗りィ!
>>178
なに、今回もムチャクチャなお題ばかりだと、知るか吶喊!! 全選択で燃ゆる短編! 遊撃せよ、南方のスピットファイア!
さあ、物語は怪獣を観測する決死の『パイロット』隊を描いてフライト開始〜、観測対象は、海面上をムーンウォークする『うさぎ』w 緊張感どこいったw
200mを超える超巨大うさぎが後ろ向きで人里方向に侵攻し、クソッ観測所の情報は『偽進行』ルートじゃねえかと、にわかに血騒ぎ急撃態勢〜
迫る怪獣、兵装熱おび、飛び交うミサイル16発、回避の遅れた新人がヒヤリ旋回、怪獣撃破ァ! 『そらまめくんと仲間達』にキャラ化され、国民愛するそらまめ隊!
お題を撃墜した178氏の遊覧飛行だァ〜、飛行隊は今日も超巨大『鰻』を眼下におさめ、警戒開始w がんばれ空軍、がんばれ新人、エマージェンシー・発進END! >>178
怪獣退治に命をかけるパイロットですね
果たして、巨大な獣達は、大自然の反逆のなのでしょうか?
>>177
感想有難うございます
因みに偽進行以外の回答は、実際に有った答えだったりしますw
>>179
感想、いつも有難うございます
背徳に憧れる子供も一定数は居るものです
特に中二位にw 感想ありがとうございます!
>>180
台風を巨大怪獣に見立ててしまえというわけで、たんなる自然現象のつもりですw
時速40kmなのも台風なので移動速度が遅いというわけですね
>>179
ゴジラやモスラを代表する巨大怪獣も、台風を暗喩しているとどこかで見たのを思い出したのは書き上がった後でした
それと緊張感は夏の暑さでへばってますw お題『うさぎ』『パイロット』『鰻』『そらまめくんと仲間達』『偽進行』締切
【参加作品一覧】
>>174【フリーマインド】
>>178【巨大怪獣は南からやってくる】 お題『配管工』『ユニオニオン』『誰かが冗談を言う』『ドラムンベース』『ジャンル:ローファンタジー』投票締め切り
【得票数一覧】
>>138【都会の龍神】一票 今週は作品数少な目か
そらまめくんと仲間たちとか偽進行とか中々カオスだったね、書いた人すごい
さてお題安価とります
>>186-190 ☆お題→『線香花火』『おっさん』『空軍』『キャプテンTOBBY』『イケメン』
☆文字数→3レス以内に収めれば何字でも可。
最大文字数の目安としては、3レスで5000〜6000字程度。
もちろん文字数が少なくても分割OK
☆締め切り→8/12の22時まで
☆平行して前回お題作品について投票を行います→安価もしくはタイトルで一人一票までレスしてください。
作品一覧は>>183より。
【見逃し防止のため、作品投稿、投票の際はこのレスに安価してください】 お盆だからなのか、そうなのか……
ここまでゼロは珍しいね、作品投稿お待ちしてます! >>191
使用お題:『線香花火』『おっさん』『空軍』『キャプテンTOBBY』『イケメン』
【異界の空軍参謀】(1/2)
バチバチと火花を散らしながら落ちる炎の塊を目にし(線香花火みたいだな)等と、少し的外れな感想を抱く。
地面に落ちたそれは、あたかも水滴の様に飛び散り、あちこちで白煙を上げる。
それを成した蒼天に隊列を組む航空戦力を眺め、私は少しの間惚けていた。
「どうしました? マジマ航空参謀」
「あ、いえ、大した事では……」
私の名前は馬嶋 弘義、一年ほど前にこの異世界にやって来た地球人だ。
私は今、このアリセラ王国で、士官をしている。肩書は【航空参謀】……空軍の……相談役である。
私が眺めていたのが今の私の成果である航空兵団……の実験小隊。
このアリセラ王国の有る世界は、所謂剣と魔法のファンタジー世界であり、私が幻獣なんて言うくくりで認識している生き物が数多く生息している。
だが、そんな世界でも世知辛い物で戦争なんかは、むしろこちらの方が多いだろう。群雄割拠……と言うやつだ。
さて、何で私がそんな世界で航空参謀なんて事をしているかと言えば、まぁ、航空戦力の有用性を示してしまったからだ。
******
「…………んが?」
会社帰り、何時もの様に同僚と飲んだ所までは覚えている。
気が付けば私は何処から持って来たのかキャプテンT〇BBYを抱きしめて目を覚ました。
酔っぱらって記憶が無くなるのもいつもの事だ。戦利品だってケ〇ちゃん、カーネ〇・サンダースと色々ある。
社会に疲れた中年のおっさんには良く有る失態だろう。(全裸で公衆便所に突っ伏していないだけ今日はマシだったな)なんて事を考えていたのだが……
「どこだ? ここは?」
石造りの部屋、周りを見渡せば見知らぬ人々が立って居る。それも、コスプレとしか思えない様なローブ姿の人々だ。
「あの、勇者様?」
目の覚めるような美人が目の前に居た。それが、この国の王女、エルメシアだと聞いたのはその後の事だった。
******
「……伝説……ですか……」
「はい、女神ラーナフのお導きです……」
紅茶を飲みながら、私は冷や汗を流した。うっすらと記憶に有る。酔っぱらった勢いで何を安請け合いしてしまった記憶だ。
(……あれが、この世界に来ると言う契約だったんだなぁ)
つい遠い目をしてしまう。酒の上での失態なんて星の数ほどあるが、まさか異世界に送られる事に成る等、露程も思っていなかった。
「……あの、勇者様?」
「あ、いえ、何でも無いです」 【異界の空軍参謀】(2/2)
******
ラナーフと言う女神は、いわゆる人間を守護している神様であるらしい。この世界には人間以外の人種が数多く居て、それ等が国を作り覇権を争っている。
そんな世界の一国……アリセラ王国に、私は召喚された事に成る。今この国は周囲三国との戦争状態になっているらしい。
形勢は一進一退から、やや不利な状態。何処か一戦場が崩れれば、最早すり潰されると言う状況だった。
(……それで、神に縋ったって所ですかね)
話を聞き、溜息を吐く。しかし、酔っぱらっていたとは言え、この国に力を貸すと言う契約は覆らない。
私は観念して、彼等に手を貸す事にしたのだ。
******
「初めまして、ミヒャエル・グーテンバッハです」
「……ヒロヨシ・マジマです」
軍官だと言うミヒャエルに引き合わされた私は、早速この国の戦力について確認する事にした。
……なぜかエルメシア王女同伴で……
ミヒャエルは金髪碧眼の好青年で、いわゆるイケメンと言うやつだ。だが、王女が少し頬を染めているのを見て、軽く目の前の青年に殺意が湧いたのは仕方のない話だろう。
ともかく、先ずは戦況をひっくり返さなければいけない。
私は彼に質問しつつ、思考を巡らせた。
「……グリフォン部隊が居るのに、何故、爆撃を行わないんですか?」
「は? バクゲキ? 何ですか、それは?」
「え?」
聞けば、グリフォン部隊は偵察任務でしか使って居ないとか。戦場に於いて、上空を制する事がどれだけ優位に立てるかと言う事は説明などいらないだろう。
だが、このアリセラ王国の人々は、その事に全く気が付いて居なかったのだ。
******
グリフォン爆撃部隊の活躍はすさまじい物だった。何せ、それまでいた航空戦力と言えば、グリフォンを筆頭に、ヒッポグリフ、ベガサス、ワイバーンと言ったくらいで、その運用方法としては騎士が乗って、同じ様な空中戦力の相手と槍を合わせる位のものだったのだ。
つまりは、普通の騎兵と同じ様な扱いである。
だが、爆撃なら好きな所にとんで行って、頭上から攻撃し放題な訳である。それこそ蹂躙と言って良い結果だった。
「流石です! マジマ殿!」
感極まったのか、ミヒャエルが私の手を取ってブンブンと振る。
「あぁ、いや、今は運よく退けられただけです。今後はもっと考えないと」
「と言うと?」
「航空戦術の有用性は各国に知られてしまった……と言う事です。今後は他の国もこぞって投入して来るでしょう」
私の言葉にミヒャエルの顔が青くなる。この劇的な有用性を見せつけられたのだ。当たり前だろう。
「ですが、運用方法については私に一日の長があります」
「マジマ殿!」
ミヒャエルの顔が明るくなる。まぁ、これも、契約してしまった自分の落ち度でもある。精々、この国を勝利に導かなくては…… >>194
つまらないとは思わないけど、ボッコボコに勝ったのなら人質でも取ってこちらに有利な条約を結んだ方がいいと思う。
条約という概念がないなら約束でもいいし。 >>191
倫理的な問題、および残酷そうな(?)表現があります。
お題:『線香花火』『おっさん』『空軍』『キャプテンTOBBY』『イケメン』
太平洋上の高度8,000メートル上空を時速750kmで飛行する七機の航空機があった。
護衛としての四機はよく見慣れた双発と単発の戦闘機だが、一機は中型旅客機ほどの随伴機、一機は大型旅客機を思わせる空中給油機で、残りの一機は尾翼を一切持たない全幅30メートル程の白い全翼機である。
空中給油機の後部下から伸びるホースが全翼機の中央部分にある給油口へと差し込まれ、燃料を受け取っている最中だ。
随伴機に乗り込んでいる技術者たちは、空軍の協力のもとに行われている実験のための全翼機を眺めている。
「このあたりは順調だな」
おっさん技術者は試験の一つである自動給油がうまくいっていることに満足顔だ。
この全翼機は風防がないどころか、その部分がエアインテークになっている。
UAVやドローンと呼ばれる無人航空機だからだ。
風防があって然るべき場所には申し訳ない程度にパイロットの絵が描かれることがあるが、この全翼機にはキャプテンT○BBYが描かれていた。
もっともこの全翼機は、完全な無人機というわけではない。
五人ほどが同乗している。いや、五人相当だと言うべきだろうか。
そもそも脳を残して肉体を無くした者たちなのだから。
そしてパイロットとしてではなく同乗しているというのも理由がある。
飛行制御や攻撃判断などはすべて人工知能が担当する。
ならばこの五人の脳が行うのは何か。
それはただ、人工知能の戦闘機動について良かったか良くなかったか逐次評価するためにある。
人間はどれほど鍛えてもプラス9G、逆立ち状態となるマイナス方向では3Gを短時間で耐えられるのが限界だと言われている。
つまり、人間が乗っていなければそれを超えた機動を行うことが出来ることになる。
だが即時に行動を評価するためには人間の搭乗が必要となり、そのために必要な機動が出来なくなるのではどうにもならない。
死刑制度が無くなったのに合わせて、代わりとなる刑罰の整備が行われたのは丁度よかった。
元々は重犯罪者であり、社会復帰は不可能とされた者たちだ。
そんな彼らをタダで養う事など、とても認められるはずがない。
結果、脳を取り出され、チョロっと教育・訓練を施して戦闘機に積み込まれることとなった。
彼らの脳は互いに孤立しており、他者とのやり取りは一切行えない。
あまりにずれた評価をするとお仕置きが待っているため、従順な彼らはそれなりに価値のある評価を下すようになっている。
給油が終わるときに無人機が姿勢を崩した。その拍子に外れたホースの先端から出火すると、線香花火のように火玉が出来て火花を飛ばす。
幸いすぐに消火剤が散布され、それ以上の被害にはならなかった。
『現刻をもって試験を中止。全機基地へと帰投せよ。繰り返す、…………』
「重大インシデントですね」
随伴機に乗るイケメンの技術者は手元のボードに発生状況と今現在考えられる原因を書き記していった。
そんな状況の中、全翼機はいつの間にか少しずつ距離を取り、給油機をロックオンしていた。
給油機の内部では甲高い電子音が鳴り響き、給油機のパイロットはすぐさま回避行動に移る。
もっとも無人機に本物の空対空ミサイルを積んでいるわけでも、機関砲の弾丸が装填されているわけでもないため、攻撃を受けるわけではない。
攻撃できないことで人工知能がパニックが起こしているうちに、護衛する四機により撃墜されて海の藻屑となった。
後日、海中から回収されたフライトレコーダにより、囚人たちによる恫喝によって人工知能が支配されていたと分析される。
技術者たちは次の人工知能の自我を強く、そして自己判断を優先させるように組み替えた。
〈おしまい〉 お題『線香花火』『おっさん』『空軍』『キャプテンTOBBY』『イケメン』締め切り
【参加作品一覧】
>>194【魔界の空軍参謀】 【参加作品一覧】(訂正)
>>194【魔界の空軍参謀】
>>197【無題】 >>197氏とまさかの1秒差で締めちゃった、ごめんなさい
さて今回はどうしようか
5つお題でも良いし、たまには変化球入れたい気もするね ジャンル指定、穴埋めお題、
最後の一行を指定するとか、お題復刻? 穴埋めお題ってどんなのだろう
復刻はこの間やったばかりだから、いつものに追加して最後の一行を指定でやってみようか
とはいえ安価の方法が難しいな……
>>204-207 お題安価
>>209 最後の一行
でお願いします! >>194
特異な猛暑を記録した2018年夏季、うだるような熱帯の日々を皆いかがお過ごしか、短編スレより熱戦を投入だ、お題全選択! 炎空に舞うグリフォン!
さて主人公は、酔った勢い『キャプテンTOBBY』を抱きしめる、社会に疲れた中年の『おっさん』こと馬嶋さんだ〜
演習場で撃墜された塊を見て『線香花火』みたいだな、と語る彼の身分は、異世界アリセラ王国に召喚されし、『空軍』の相談役〜、うん安定した書きぶり、このままなろう小説にできそう
馬嶋さんが『イケメン』のミヒャエルさんにグリフォン部隊の爆撃を指揮し、未開の戦場で喝采をうける〜、194氏が丁寧にお題をクリアしてラスト!
ちょっとくたびれたおっさん風味、精々がんばるかあ、と馬嶋さんは腰を上げる〜、防衛作戦にいそしむ空軍参謀、智謀の瞳は、異世界でも仕事じゃねえかと、少しさびしげ…? よし、次はエルメシア王女を簒奪し、もえもえ元気回復のドーピング展開で一つよろしくw
>>197
短編スレ住人のチャレンジング魂、夏を呑み込むか、刻限1分オーバーでぶち込んだ、お題全選択! 敵機はいずこにあるものぞ〜
太平洋上、高度8,000メートル上空で、テスト部隊が飛行している〜、主役は半分ドローン・半分脳の実験機、パイロット代わりと描かれた『キャプテンTOBBY』は無人の証〜、
『空軍』協賛の実験は、自動給油を成功させ、満足顔の『おっさん』が描かれるw
突如『線香花火』のように飛び散る火花、随伴機の『イケメン』技術者が事故を記録し〜、ってドローン機が反逆ゥ!? 重犯罪者の脳を転用して作られた監視装置が悪逆に働き、撃墜されてしまった〜
しかし…これは反逆か、それとも機械の一部になることへの拒絶と自己破壊か〜? 197氏が皮肉な問いを投げかける、本当に監視すべきは人工知能なんでしょうか、それとも人間を機械のように扱う人間の冷徹さなんでしょうか? ブラックな笑みでお題全消化をキメたァ! 最後の一行!
強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない。 ☆お題→『深海』『女体化』『氷河期』『人形』から一つ以上選択
+最後の一行を『強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない。』とすること
☆文字数→3レス以内に収めれば何字でも可。
最大文字数の目安としては、3レスで5000〜6000字程度。
もちろん文字数が少なくても分割OK
☆締め切り→8/19の22時まで
☆平行して前回お題作品について投票を行います→安価もしくはタイトルで一人一票までレスしてください。
作品一覧は>>199より。
【見逃し防止のため、作品投稿、投票の際はこのレスに安価してください】 >>197
ダークな世界観は、一時期有ったデストピア系のSFを思い起こさせました
果たして犯罪者すら兵器開発に利用する世界に未来は有るのでしょうか?
>>196
感想有難うございます
少し起伏の無いお話になったなと反省しています
何にせよ練り込み不足でした
精進します
>>208
何時も感想有難うございます
何とかファンタジーが書けないかと四苦八苦していました
途中、何度も王女の貴腐人オチが頭を過っていましたw >>194
王女様よりも青年軍官の好意値の方が高そうですね。ガクブル
ところで女神様はどこで勇者勧誘していたのでしょうか? 居酒屋ですか?w >>208
受刑者達が刑に納得できず歯向かったというわけで、反逆でしょうか
この数年後に自我を強めすぎた人工知能が人間を不要なものとして殲滅戦を仕掛けることになる…………かは不明です
>>211
未来が明るくなるか暗くなるかは、倫理を大きく逸脱するかどうかでしょうね
それと世界観を言うと、PSのエースコンバット3を意識しています
お気に入りの機体は無人戦闘攻撃機であるXR-900 Geopeliaです
それにしても慌てすぎて題名すら忘れていたことにいまさら気づきました…… >>213
感想を下さり有難うございます
多分、居酒屋で意気投合したのだと思いますw >>210
使用お題:『深海』『女体化』『氷河期』『人形』
+最後の一行を『強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない。』とすること
【深海に生き延びた者達】
若い男と年老いてはいるが威厳のある男が睨み合い、口論を繰り広げている。
「おい! ふざけるな!」
「……ふざけてなどいない。状況は分かっているはずだ」
「だからって、なんでこんな選択肢なんだ!?」
「そうしなければ我らは生き残れないからだ」
記録のある範囲で分かるのは地球上の全ての生物の脅かす氷河期が訪れたのが500年ほど前。人類は生き残る為に、いくつかの手段を取った。
卓越した技術を持ったあるグループは地上で耐寒フィールドを作り上げ、その内部で生存を図った。またあるグループはまだ見ぬ新天地を求めて宇宙へ旅立った。
言い争いをしている2人の男の所属するグループは海の中へと逃げ道を求めた。ただの深海ではただ死ぬだけであり、海底火山の地熱を利用して生き残る術を確保したのであった。
深海であってさえも、それに耐え抜く場所を作る事は不可能ではなくなっていた。だが、氷河期という極大な自然の猛威に対してまではなす術を持たなかったが……。
そして、今まさに彼らは絶滅の危機に向かって進んでいる。深刻な男女の出生率の偏りが発生しているのだ。現在の男女比は9:1。このまま進めば、氷河期が終わるまでには男しかいなくなり、やがて滅ぶであろう。
「……男女比が偏り過ぎているのはわかっている! だからといって男の4割を女体化はないだろう!」
「ならば人形のように眠りにつく事を選ぶか? コールドスリープ装置ならあるぞ?」
「そういう事を言ってるんじゃねぇよ!?」
「ならばどうする? 無理矢理にでも少ない女性達に子供を産ませ続けるか?」
「それは……!」
密閉された海底の作られた生存圏。それにより彼らは生き残る事自体には成功した。だが予測では氷河期が終わるのはまだ数百年は先とされている。だが、その内部で発生した極端な男女比の偏りにより人口は減少の一途を辿っている。
「ならクローン技術を再び復活させてだな!?」
「それは駄目だと何度言わせる気だ! それが今の原因だろうが!」
「……すまん、つい……」
「……もう二度とあれを使うな。遺伝子異常もだが、あの人を人とも思わぬ、人形扱いなどもう二度と見たくない」
「……そうだな。その通りだ」
今の出生率の極端な偏りの原因は、五十年ほど前に行われた人口減少を食い止める為のクローンを使っての母体作り。
そしてそのクローンの女性から生まれた子供は総じて男ばかりとなった。詳しい原因は判明していないが、それがクローンを使った事であるのは明白であった。
……そして不要となったクローン達は食料も無尽蔵という訳ではないため、処分された。それこそただの人形のように……。
「こんな環境だ。心が強くなくては生きてはいけない。だがな、それ以上に人道を外れて優しさを忘れてしまえば俺たちに生きていく資格はないんだよ!」
「……そうだな。確かにその通りだ。……拒むのであればここで滅びを待つのも1つの選択肢か……」
「……どうするかは、若いお前たちに任す。ただし、クローンだけは許さん!」
「……分かったよ、爺さん。……婆さんがクローンだったんだよな……」
「もういい、行け! 今はお前がここのリーダーだ!」
「あぁ分かったよ」
その後、性転換による女体化を受け入れたのが2割、コールドスリープを選んだのが2割。即座に男女比の偏りが改善された訳ではないが、世代を重ねて徐々に比率は正常に戻っていった。そしてその時の決断を後世に伝える言葉が残されて続けている。
『強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない』と……。 >>215
極限の選択……と、言ったところですね
実は現実世界でも、紫外線による染色体損傷で、男子の出生率が低下していると言う話が有りますが……
男体化とかをする様に、成るんでしょうかね? >>215
もしかして全球凍結状態でしょうか
コールドスリープの方は、外に出しておけばあんまり管理の手間がかからなそうだなと黒い考えがよぎりましたw >>216
感想ありがとうございます。
極限の選択ではありますが、それでも選ばないという訳にもいかないという状況ですね。
実際にそこまで極端な割合になった場合はどうなるんでしょうね?
>>217
感想ありがとうございます。
全球凍結のつもりで書いてますね。
……外に出したら管理は楽だろうけど、二度と起きられなくなる可能性が物凄く高そうw >>215
世はお盆の只中〜! 短編スレのデッドヒート、今回は、お題4つから1個以上を選択+最終一行縛り、どう仕上げる、全選択だ! 215氏が描き出す二人の優しき海底人〜
舞台は、死の星なった地球の『氷河期』! 『深海』逃げ込む人類残党、二人の男がグループの未来を話し合う〜!
男女比9・1の偏りにより絶滅寸前となった海底グループ、起死回生のアイデアは、『女体化』ww リーダーめっちゃ否定w ワロタ
かつて試みられた女体クローン作戦は、母体となった彼女らが、ただの『人形』として廃棄される非道を孕み、妻を看取った爺さんが、二度と使うなと釘を刺す〜!
誰が犠牲となるべきか〜、強さ優しさどっちを取るか〜、極限の回答は…!? 人である限り、やっぱどっちも捨てられねえ! 未来の前には性転換をも辞さねえぞ、生きろ海底人類、どこまでも人らしく! 215氏がフルクリアで命と尊厳つないで魅せたァ〜! >>219
感想ありがとうございます。
たっぷり堪能してくれたなら嬉しい限りです >>219
いつも感想ありがとうございます。
即座に全滅する訳ではないけれど、ジワジワと確実に滅びが迫ってくるのは確実ですから、極限の選択になりますね。
最後の1行縛りが地味に難しい!
……ところで勝手に別の人が感想の返しをしているんですけど、これはどうすれば……? 最近なりすましというか偽物というかそんなのが多いな >>210
お題『深海』『女体化』『氷河期』『人形』+最後の一行が『強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない。』
【歌うシャチとオモチャの人魚】(1/2)
霞がかっていた意識が晴れ、目を開けると水の中だった。
泳ぎ方はなぜだか分かる。両腕は自然な形で後ろに伸ばし、両足の代わりとなる尾ひれを上下させて水を蹴るだけだ。
しかし上半身の姿勢を維持するのが難しく、その場でもがくようになってしまう。
とは言え、両手を若干広げてうまく舵を取れば良いことにはすぐに気が付いた。
それだけで顔に当たる圧が増し、五回蹴っただけで海底が後ろへと勢い良く流れていく。
不本意ではあるが、この身体は想像以上に素晴らしいことを認めなきゃならないな。
『意識接続は良好のようね。一度接岸しなさい』
俺の頭に直接響く女王様の声に従い、砂浜へと身を投げる。
水から顔を出してその場に座り込むと、隣には体長5メートルを越えるシャチが横向き状態になっていた。
胸びれで腹太鼓を叩きながらかもめの水兵さんを歌っているが、ビールっ腹を叩く中年オヤジのようでみっともない姿この上ない。
俺のこの身体も隣のシャチも本物じゃない。
人形とペアリングすることで意識を移動させ、その人形を自在に操る魔術によるものだ。
ちなみに俺のこの身体はウェーブ掛かった長い金髪の美形人魚である。
闘神大学海洋武芸科に所属し、三人編成となる俺の班に与えられた人形は、ダイオウイカ(♀)、シャチ(♀)、人魚(♀)だ。
男である俺があからさまな女型である人魚は選べず、残りのどちらにしようかと僅かに迷っていると、班の女子二人は即座にシャチとダイオウイカを選んでいた。
なんでどっちも人魚を選ばないんだよ!
結局交換にも応じられなかったため、俺は人魚になるしかなかった。
くそっ、何が悲しくてこの俺が女体化せにゃならんのか。
「あんたはこれからそれで生きていけよ。めっちゃ似合うぞ、リョウタロウちゃん」
シャチの人形を選んだユウカが全身を震わせながら、そのシャチの口で俺を茶化すが冗談はやめろ。
なぜ女子である二人が人魚を選ばなかったのか、なんとなく察しは付いている。
二人とも本体は水の抵抗がなさそうな体型をしているうえに、コンプレックスを感じているからな。泳ぐのに特化したこの人魚の体型と同一視されるのが嫌だったとみえる。
特にユウカなんて同じ大学生だと言うのに落ち着きのない行動と服装、背丈も相まって、この間は小学生男児だと間違われたくらいだ。
思い出して笑いがこみ上げてしまい、ユウカに対して思わずボク、元気いいねえとこぼしてしまった。
うつ伏せに戻ったシャチは、ドッタンバッタンと巨体を跳ねさせながらアニメの主題歌を口ずさみ、ビーチチェアの上で仰向けになっている俺の本体へ近づく。
おいやめろ、だんだん俺に惹かれなくていいし、俺の笑顔は眩しくない!! 俺をそのまま押し潰す気か、マジで謝るから!!
「痴話喧嘩をやめなさい。説明するわよ」
胴体長だけで10メートルを超えるダイオウイカを操る我らが女王様……もとい、班長のアンナが声を上げた。
さすがに砂浜へとは上がれないようで、横倒しになって胴体部分の一部を水面に浮かべている。
二本の触碗を揺らしながら50cmに迫る目玉で睨まれるとか、どんなホラーだ。
砂の上で胴体を横に揺らしながら移動し、俺と並ぶユウカ。さすがのこいつもアンナの言うことは黙って聞く。
闘神大学海洋武芸科二年でありながら最強の称号を欲しいままにし、優れた顔立ちや整ったプロポーション、雰囲気だけではなく、実際に良家の生まれということもあって女王とあだ名されているくらいだ。
もっとも胸周りは虚飾にまみれているが、その事を知るのは俺とユウカくらいだろう。
知ってはいけないことを知ったがために、あろうことかユウカは同科ブービーである俺の命を差し出して助かろうとした。
まあ先に同科次席であるユウカの命を差し出して命乞いを始めたのは俺なのだが。
結局生かされて女王様の傍に置かれることとなったが、ユウカの斜めになった機嫌を戻すのにニ月分のバイト代がお菓子に変わった。 【唄うシャチとオモチャの人魚】(2/2)
今日はテスト探索ということで、まずは深度1,000メートルを目指すと言う。この深度でもすでに深海だ。
太陽の光なんてとっくに届かないし、生身の人間など呼吸できずに窒息死するだけだ。
だがこの人形があるおかげで、過酷な環境を無視しておきながらその場の感触を得ることが出来る。
潜水艦なんて比較対象にもならないくらい融通性や応答性が高いし、マイナス110℃から500℃まで運用できるらしい。
さすが我が大学の誇るマッドサイエンティスト様が生み出した傑作だ。
造形にもこだわりがあり、人魚はもちろんシャチやダイオウイカの出来栄えは素晴らしいものがある。
もっとも本人はダッチワイフのつもりだったらしいが、そんなこぼれ話は曲がりなりにも女子である二人にはとても言えん。
アンナの説明は簡潔ながら要領を押さえたものでわかりやすい。
後々の探索では他の班や他科と共同し5000メートル級での生態調査、水質・地質調査、化学実験、武闘大会を予定しているようだ。
深海で行われる武闘大会…………どんなものになるのか今から楽しみだが、間違いなく当日は腹痛でお休みすることになるだろう。実に残念なことだ。
「さて、説明も済んだし早速潜りましょう。まずは沖合まで行くわよ」
アンナの扮するダイオウイカが海中に沈むと、つられてユウカの扮するシャチが動き出す。
俺(人魚)の尻尾をパクリ。
わけが分からないまま水中に引きずり込まれると激しい水の流れを感じ、気が付いた時には空中を舞っていた?
え、どういうこと!? 砂浜とはあっという間に200メートルほど離れてしまっている!?
なんとか姿勢を安定させると、もう落下を始めている。水面までの高さは30メートルくらいありそうだ。
この人魚がどのくらい強靭なのかはわからないが、普通の人間や人魚であれば水面に叩きつけられて死ぬか大怪我を負うだろう。
突き指覚悟で指の先まで手をまっすぐ伸ばし、両腕に頭を挟んで水面へと突入する。
よかった、ダメージどころか痛みもまったくなかった。人形であるこの身体は存外に頑丈なのかもしれない。
それにしてもユウカはよほどお怒りなのか? まずいな、今月のバイト代が総力を挙げてご機嫌取りをしなけりゃならないかもしれん。
貰ったばかりのバイト代に羽が生え、早くも俺の財布に氷河期がやってきそうだ。
でんでんむしを歌いながら迫りくるシャチの背びれを見て腹に力を入れる。
今日はこのまま弄ばれることだろう。
俺がこの班で生きていくのはとても難しい。
精神的な強さが求められることはもちろんだが、ユウカに優しくしなければ生きていく資格が得られない。
だが他者に伝わるとあら不思議、綺麗な言葉へと改変され、今では闘神大学海洋武芸科の公式スローガンになってしまっている。
それは――――強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない。
〈おしまい〉 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています