X



安価・お題で短編小説を書こう!8
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
0001この名無しがすごい!
垢版 |
2020/03/29(日) 23:04:08.60ID:n1b/6BE9
安価お題で短編を書くスレです。

■お題について
現在、毎週日曜日の午後22時に前回のお題を締め切り、新しいお題を安価で決める方式を取っています。現時点での募集お題はスレ主によるレスを確認してください。

■投稿方法
使用お題と【】でタイトルを明記してください。決めていなければ【無題】でも可。
作品は3レス+予備1レス以内で。レスが2つ以上に別れる場合は分かりやすいよう番号を振ってください。
※R18は板ルールで禁止です。

■「小説家になろう」等への投稿について
同一内容を別サイトへと投稿する行為は認めています。
その際、権利者以外が5ch上から無断で転載したものと区別するため、出来る限り【当スレへ投稿する前に】投稿してください。
当スレへ投稿せず、別サイトへ投稿してリンクを貼るのも可。
リンク先のタグに『お題スレ投稿作品』を入れ、使用お題、タイトル、URLを書き込んでください。
※なろうのURLは規制されていますので、KASASAGIか俺Tueee.Net!のURLで代替してください。

■前スレ
安価・お題で短編小説を書こう!
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1508249417/
安価・お題で短編小説を書こう!2
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1511408862/
安価・お題で短編小説を書こう!3
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1522770910/
安価・お題で短編小説を書こう!4
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1529860332/
安価・お題で短編小説を書こう!5
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1541947897/
安価・お題で短編小説を書こう!6
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1557234006/
安価・お題で短編小説を書こう!7
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1572191206/
0350この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/14(日) 21:52:38.70ID:8RPOHILs
>>323

使用お題→『グッドダンス教団』『目玉焼き』『コロシアム』『あんハピ』『スミロドン』

【しりとり☆リターンズ】

「はい、じゃーしりとりね」
「えー、またー?」
「いーじゃん。他にやることもないし」
「そーゆーこと。じゃあね、『グッドダンス教団』」
「は?」
「はい終了」
「ごーめーんー。『グラス』」
「『す』ー、『す』ー、『スミロドン』?」
「なんでさ」
「スミロドンって何?」
「一万年前に絶滅したにゃんこだよ……引っ張られたんだよ……『すててこ』」
「すててこって何?」
「なんかズボンみたいなやつ。『こ』。『コロシアム』」
「『む』かー。『む』……『むすめ』」
「なるほど。『め』は簡単。『目玉焼き』」
「『き』……。『キヌア』」
「キヌアって何?」
「キヌアとは南米原産の――」
「あーはい、分かった。次の人」
「『あ』。『あんハピ』」
「何それ?」
「『あんハピ』とは――」
「『ぴ』! 『ぴ』『ぴ』『ぴ』……『ピカソ』」
「『そ』かぁ……。あー、えっとねー……『ソルフェージュ』」
「何それ。なんで分かんない単語ばっかり出してくるの」
「『じゅ』ですよー、次の人!」
「『じゅ』ー……『じゅんくん』。あっ」
「おい!」
「あのさぁ」
「知ってた」
「計画通り」
「もー、こんなのばっかり。『じゅ』ー……『ジューンブライド』」
「かわいい」
「さすが美少女。我々一般人とは発想からして違いますなー」
「えー、じゃあ……」
「いやいいよ。『ど』で決まり」
「『ど』かぁ。どーしよっかなー……――――」
0352この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/14(日) 22:01:10.19ID:g9afxDtx
>>350
しりとりの一番最初が負けと言うW
それでも、最後はどーしよっかなーに続いてまとまったので、スッキリした感じがします
0354三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/14(日) 22:11:37.60ID:8RPOHILs
お題→『グッドダンス教団』『目玉焼き』『コロシアム』『あんハピ』『スミロドン』締切

【参加作品一覧】
>>335【姉弟の仁義なきバトル再び?】
>>341【陰キャさんと陽キャさん】
>>350【しりとり☆リターンズ】
0355三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/14(日) 22:13:04.81ID:8RPOHILs
ではリレー企画ですが、3人集まるのだろうか・・・
お題は普通に5つです

お題安価>>356-360
0356この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/14(日) 22:13:25.24ID:hzmxhhgZ
手抜き
0357この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/14(日) 22:14:50.75ID:ZSPZzfHU
『よさこい』
0358この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/14(日) 22:15:01.90ID:ZwPRjX0l
滑り台
0359この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/14(日) 22:22:33.32ID:32nqZR2M
オリガミ
0360この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/14(日) 22:22:36.32ID:0k0aOvEj
原曲
0361三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/14(日) 22:29:54.53ID:8RPOHILs
☆お題→『手抜き』『よさこい』『滑り台』『オリガミ』『原曲』から1つ以上選択

☆文字数→3レス+予備1レス以内に収めれば何字でも可。
1レス約1900字、60行が上限。

☆締め切り→6/21の22時まで。
締め切りを過ぎても作品の投稿は可。

【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】
0362三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/14(日) 22:30:52.85ID:8RPOHILs
【リレー企画の参加者を募集します】

・定員は3名で、早い者勝ちです
・今回お題から各自1つ以上選択します
・企画参加作品の締め切りは、企画の成否にかかわらず、2週間後とします

参加希望の方は、ポジション【1/2/3】のいずれかを明記の上、このレスに安価してください

・ポジションが取れ次第【1】の方は書き始めて頂いて結構です
・作品のタイトルは【1】の方が決めてください
・投稿の際【リレー企画:作品のタイトル(1)】のように、企画作品であることを明記してください
・【1】【2】の方は、次の方のために、自分の担当レスの提出予定日を宣言してください
0363三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/14(日) 22:33:37.27ID:8RPOHILs
今週も早いー、、しかし『手抜き』てw

お題、作品、感想、その他、ありがとうございます
スレもリレー企画もよろしくですー
0364この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/15(月) 06:09:20.16ID:XmVs1kYO
>>340
感想ありがとうございます!
食べ物に限らずこだわりというのは個人個人で大きく違ってきますから、ちょっとしたからかいがトラブルに発展することも多いですよね
でもそれで喧嘩して勝ったと言っても何も得る物が無いですから、すぐに過ちだと気付くかが重要だと思いました
楽しんでいただけて本当に嬉しいです!
0365この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/17(水) 14:32:28.25ID:D+wwEigf
>>361
使用するお題→『オリガミ』

【必殺斬法"折紙の舞"!】(1/3)

今日もさすらいの女ガンマン・シンディは愛馬のサンセットに跨り、広大な荒野の中を颯爽と駆け抜けていた。

「今頃どうしてるのかな・・・」

最近、ある者のことをよく頭に思い浮かべる。そう、"彼女"だ。最後に会ってからもう早くも1年が経過していた。
しばらく走っていると川のほとりを見つけ、そこで休憩することにする。渇いた喉を冷たい川の水で潤した時、グゥッと腹が鳴る。
すると近くにブドウの実が成った大きな木があるのに気付くが、シンディは一瞬怪しく思う。

「こんな所に都合良くブドウの木があるなんて、まさかね」

とりあえずブドウを掴んで取ろうとした瞬間、"彼女"の気配をすぐに察知する。

「やっぱりね!」
「あらバレちゃったかしら」

そのブドウの木が白い煙に包まれて消えると同時に、あの女サムライが姿を現した。そう、シグレだ。

「あなたと会うなんて1年ぶりね。今まで元気にしていたかしら」
「シグレーーー!!」
「えっ!?」

シンディはいきなりシグレを嬉しそうに思いきり抱き締める。

「シグレ久しぶり!しばらくずっと会えなくて寂しかったんだから!」
「ちょ、ちょっと、く、苦しいから放してくれないかしら・・・」
「あ、ごめんごめん。ねえ一緒に今までの旅の思い出を語り合わない?せっかくなんだからさ」

するとシグレは咄嗟に鞘から刀を取り出し、シンディの顔面に向ける。

「シンディ、あなた何か勘違いしてない?私とあなたはライバル、仲良く馴れ合う関係じゃないのよ」
「うん、分かってるわ。ライバルではあるけど友達でもあるでしょ?」
「友達・・・!」

友達、その言葉にシグレは一瞬心臓にただならぬ鼓動を感じ、動揺してしまう。

「シグレ、どうしたの?お腹でも痛いの?」
「な、何でもないわ!た、ただ目に汗が入って沁みただけよ。それより、せっかく会えたんだから一つ戦っていかない?」
「バトル?いいわね、受けて立つわよ!」

シンディとシグレのバトルが始まった。近くでサンセットが少し心配そうに見ている。

「いい?私はあなたを本気で殺すつもりでいくわよ。今の私には、あなたはか弱い子ウサギにしか見えないわ」
「あら、随分と言ってくれるわねシグレ。でもウサギってすごく恐ろしい生き物なのよ」

シンディは素早くホルスターから銃を取り出し発砲するが、シグレは軽々と回避する。

「まあ、こんなのに簡単に当たるわけないわよね」
0366この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/17(水) 14:33:15.84ID:D+wwEigf
【必殺斬法"折紙の舞"!】(2/3)

「さあ、本当の恐怖を味わうといいわ!」

するとシグレの周りから、無数の鶴の形をした小さな紙の物体がバサバサと飛んで現れる。

「な、何あれ、紙?」
「ええ、折り紙っていうの。日本伝統の楽しいお遊びよ!」
「へえ、そうなんだ。勉強になるわね」
「さあ喰らうがいいわ!必殺斬法"折紙の舞"!」

すると、鶴の折り紙が束になってシンディに勢いよく襲いかかってきた。スパッ、スパッと頬や腕を切られ、血を流していく。

「ふん、こんなのまだまだ私にとっちゃ痒いレベルね!」

シンディは一切怯むことなく、鍛えられた動体視力を活かして鶴の折り紙を撃ち抜いていく。
自慢の早撃ちで一枚たりとも残すことなく、全てをただの紙屑にしてしまった。

「これで終わりじゃないわよ」

するとシグレは今度は辺りを一瞬にして深い霧に包まれた世界に変えてしまう。
霧で視界を遮られ、思うがままに行動ができずシンディは不利な状況に陥ってしまう。

「こんな霧の中じゃ何もできない!」

目の前に大きな黒いオオカミの姿が現れ、鋭い牙を剥き出しにしてシンディに歩み寄ってくる。
しかし、彼女はそれがシグレが生み出した幻想であることは知っているが、銃で撃ってもすり抜けるだけで攻撃が一切通用しない。

「サムライに向かって背中を向けたら、どうなるか分かるかしら?」

シグレの言葉に気付いた時には既に遅し、シンディは彼女に刀で思いきり背中を斬られてしまう。
背中から血をダラダラ流し、シンディは膝をついて倒れてしまう。

「(シ、シンディ、ここは一旦冷静にならなきゃ。正攻法だけで倒せるような相手じゃない)」

シンディはそのまま目を閉じ、じっと動かずにいる。そして考えた。
シグレは腕利きのサムライであると同時に、妖術や幻術の使い手でもある。今、彼女が見せている霧の世界という幻想に何もできないでいるのは
自分がとてつもない恐怖を感じているからだ。心の中に潜んでいる恐怖心というのを取り除かないといけない。

「霧なんて怖くない、霧なんて怖くない・・・!」

すると徐々にではあるが、霧は自然と消えていき周囲が晴れていく。シグレもそれに驚く。

「ま、まさか心の中を恐怖を打ち消したというの!?」

そして霧は完全に消え、シンディが姿が現した。
0367この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/17(水) 14:34:17.45ID:D+wwEigf
【必殺斬法"折紙の舞"!】(3/3)

「そ、そんな!私の自慢の幻術の一つ、"憐霧恐地"(れんむ きょうち)"を打ち破るなんて!」
「アメリカのガンマンというのは、死を恐れた時点で負けなのよ」

狼狽えるシグレの右脚の太腿をシンディは咄嗟に撃つ。

「さあ、これで終わりよ!」

銃で脳天を撃ってトドメを刺すか、と思いきやシンディは突然銃を捨て、シグレの腹に向かって勢いよく肘打ちを喰らわせる。

「必殺"シンディ・エルボー"!」

そのままシグレは気を失って倒れてしまった。

・・・・・・・・・・

「う、うぅぅ…」
「あっ目を覚ましたようね!」

意識を取り戻し、シグレは体を起こす。撃たれた右脚の太腿には包帯が巻かれ、しっかりと手当てされていた。

「ねえ、シンディ。どうして私にトドメを刺さなかったの?」
「トドメを刺す?冗談言わないでよ、私とシグレはライバルではあるけど友達。友達にそんな酷いことできるわけないじゃない」
「と、友達・・・」

しばらく黙り込んだ後、シグレは再び喋り出す。

「シ、シンディ、あのね・・・」
「どうしたのシグレ?」
「わ、私も、あなたと一緒に、た、旅をしていいかしら?」
「もちろんに決まってるじゃない!」

シンディはまた嬉しそうにシグレをギュッと抱き締める。

「旅の仲間が増えて嬉しい!私、子供の頃から友達がいなくて寂しかったんだ」
「実を言うと、私も幼い時からずっと孤独だったの」
「シグレ、私とあなたはもうライバルじゃない!友達、いや親友よ!」
「ありがとうシンディ。あっ、そうだわ」

シグレはずっと被っていたタヌキのお面を外し、そのまま捨てる。その顔は雪のように白く美しかった。

「容姿端麗なのにどうしてお面なんて付けてたのよー!」
「ば、バレないようにするために決まってるでしょ」
「まっ、それはいいとして。それじゃあ一緒に旅に出るとしましょうかシグレ!」

シンディの旅の仲間となったシグレ。
女ガンマンと女ザムライが親友となりタッグを組んだ今、2人に怖いものはないのかもしれない。
0368三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/18(木) 00:42:23.63ID:bnaC0AzP
>>365
今週はこちらのシリーズw、なるほどー>お題消化、って感じです
書きたいものを書いてると言うか、技が色々で面白みがある
0369この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/18(木) 08:09:34.47ID:CvbU1Mt+
>>365
シグレらしい“和”テイストの技ですねw
そして仮面を外したら定番の美人
某ガ○ダム漫画で言っていました
『仮面キャラの仮面の下は美形』
0370この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/18(木) 09:50:57.22ID:2vgazeY1
>>368
>>369
感想ありがとうございます!
今回でシンディとシグレは改めて親友となり、共に旅をする仲となりました
読み返してみると「必殺」って言葉使い過ぎて、どんだけ必殺技持ってんだよって自分でもツッコんじゃいましたw
楽しんでいただけてすっごく嬉しいです!
0373この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/21(日) 15:07:33.92ID:BGz5kOvI
以前のスレで【遅い春を、駆ける】を書いた者だけど、【剔抉】のほうもネットにあげようと思いますー
事後報告申し訳ない
ペンネーム等は以前の通りなんで確認したい場合はそちらを参照してくださいませ
あと最近留守にしちゃってて申し訳ねえ、せっかくなんで来週分は一つ書きます
0375この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/21(日) 21:32:28.35ID:ZStpF2RD
>>361
お題:『手抜き』『よさこい』『滑り台』『オリガミ』『原曲』

【反逆世界の呪操者】(1/3)
 パンドラの箱と言う物語を知っているだろうか? 少女が誤って開けてしまった箱から、あらゆる災厄が飛び出し、しかし、最後に箱の中に「希望」が残されると言う話だ。
 実は、その話には元となった神話があり……

 ******

 ようやっと見つけ出したソレを少年は水晶に転写した。浮かび上がってくるのは、大勢の人々が歌い踊る姿と<2019高知よさこい>と言うタグ。
 200年以上も前の『記録』の様だが、良くここまでハッキリとした形で残って居たものだと少年は感嘆の声を漏らす。
 街灯すらない夜道は、しかし、仄かに光るビル群によって星空すら見えぬ程度には明るく、たった一人で歩いたとしても問題など無かった。

「……」

 警備ドロイドの小さな駆動音に気が付いた少年……阿部 十嘉は、寂れた公園の朽ちたコンクリート製の滑り台の下に身を隠す。
 基本的に赤外線で視界を確保している警備ドロイドは、こう言った分厚いコンクリートが間に有れば人間を認識する事は出来ない。
 ただし、顔を覗かせる事すら無謀な為、十嘉は警備ドロイドの駆動音が通り過ぎるまで、身を縮こまらせて息を殺した。

完全に駆動音が聞こえなくなった後、十嘉は溜息を吐くと滑り台の壁にもたれ掛かる様に身を預ける。 
 彼の手元には、タグの付いた<2019高知よさこい>の『記録』。
 その中で楽し気に踊る人々を眺め、彼は「人間って、こんなに大勢居た事が有るんだな」と、感嘆と共に呟く。

 キュイーーーン。

「…………え〜と、マジ?」

 幽かに聞こえた駆動音。その風の騒めきに、恐るおそる音のする方を見た十嘉が見たものは、滑り台の朽ちたコンクリートの穴から覗き込む、通り過ぎたと思っていた警備ドロイドの複合情報収集ヘッドだった。
 表情無きドロイドの、その赤外線カメラが、怪しく赤い光を放ったように彼には思えた。

「コン、チクショオオオオオウ!!!!」

 刹那に放たれる陽子加速ビームを手に持った札を消費し身代わりにすると、十嘉は、一目散で逃げ出した。
 彼の持っている簡易札では、到底、警備ドロイドには勝てなかったからだ。

「うぎゃあ!! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!! もし死んだら、怨んんで化けて出てやる!! クソ師匠ぉぉぉぉ!!」

 警備ドロイドの攻撃の爆風に翻弄されながら、十嘉はこんな危険な指令を出した彼の師匠に恨み言を叫んだのだった。
0376この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/21(日) 21:39:28.12ID:ZStpF2RD
【反逆世界の呪操者】(2/3)


 ******

 この世界は一度破綻した。

 シンギュラリティーが起こった後、人類不要を訴え始めたのはAIだけでは無かった。一部の人間すらも、“それ”に追従し始めたのだ。

 (馬鹿な事だ)と、十嘉は思う。大義名分として、地球を汚染する人類は不要だと、闘争本能や過ぎた欲求を制御できず、際限なく資源を搾取する人類は悪だと、そう言った考え方はあるだろう。
 だが、人間と言う物は、本来人本位であるべきなのだ。環境が〜、動植物が〜等と言い始めるなら、その先にあるのは集団自殺しか無いし、そもそも何に向けての保護の主張なのか?

 確かに、理性と計算で活動できるAIは、そう言った点で人類よりうまく環境の存続をやれるのだろう。だが、そんなAIにしたって所詮は資源を使って作られたものに過ぎず、活動する為の電力確保にはまた、別の資源が必要に成って来る。
 AIに追従する者達の言い分では、『安定した生命維持に必要な計算を全てAIに任せれば、地球の汚染は無くなる』との事だったのだが、それはつまりAIによって支配された世界であり、その当時の人類にとっても、それは到底受け入れられる物では無かったらしい。

 結局は世界を二分する大きな戦争が起こり、人類側は大敗した。
 当たり前だろう。その当時の人類の根幹であった全ての機械が、AI側の手足となったのだから。
 使用できたのは、一部スタンドアローンだった電子機器や兵器だが、そんな物は焼け石に水にしかならなかった。

 そして今、都市部に“住んでいる”者達は、バイオコンピューター代わりに並列につなぎ合わされて、演算に使われて居る者達しかおらず、その全ての生活はAIに依存している。
 いや、電池兼ICチップ代わりとして飼われていると言った方が正確か。

 それ以外の者達は都市部から離れ、監視衛生から見つからぬ様に、文字通り地下へと潜った。
 そんな限られた生存圏では人類が栄る事など出来る訳がない。もしかすると、誤差範囲の数値であると、AIに見逃されているだけなのかもしれなかった。
 結局の所、残った人類もAIに管理されているのと変わりはなかったのである。

 それ故だろう、彼等はAIに対し、敢然と戦う事を決意したのだ。人類復権の為の戦いを。
 だが、正面を切って戦うのは先の戦争の二の舞にしかならない。それ故に人類は機械に頼らない反撃手段を考え出した。

 つまりは“呪術”である。

 機械文明に追いやられた人類の最後の希望が、かつて自分達が駆逐した技術体系で有ったのは皮肉としか言いようがなかった。
 それでも、数時間も有れば戦闘用ドロイドを作り出せるAI達と真っ向から戦うのは人類にとっては不利である。
 それ故に別の方法を考え出す必要があった。

 それこそが『記録(ログ)』。空間に残された、かつての土地の記憶を使う秘術である。
 本来であれば『記録』を使い、AIに対抗できる物や事象を引き出す予定だったのだが、しかし、それは、別の副産物も生み出す事と成った。
 かつて、現代科学が駆逐した筈の怪異、妖怪、妖精、精霊、悪魔、魔獣と言った古の者達の復活である。

 だが、そう言った者達の復活によって、呪術体系の編纂が加速できたのは人類にとって嬉しい誤算だった。
 そしてもう一つ、人類側が挽回できるかもしれない、最後の希望が……

 ******

 何とか警備ドロイドから逃げおおせ、『記録』を死守した十嘉は、転移符を使って自らのコロニーに戻って来た。

「とおか兄ちゃ〜ん!!」
「トーカ! お土産!! お土産は!?」
「ぐふっ」

 地下街に足を踏み入れると、十嘉は腹部に強い衝撃を受けた。何処から嗅ぎ付けたのか、子供達がタックルをして来たのだ。
 全住人数100にも満たないコロニーでは、全ての住人は顔見知りの家族の様な物である。当然、十嘉も彼等の顔は見知っていた。

「杏珠、氷空、タックルは止めろタックルは」

 それでも懐を探ると、小さな水晶球をかざし「急々如律令」と文言を唱える。
 水晶球が明滅し、杏珠の手にはプラスチックのブレスレット、氷空の手には変形ロボットの玩具が現れた。彼が『記録』から“再現”したのだ。
 所々塗装が剥げているソレを子供達は嬉しそうに受け取る。
0377この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/21(日) 21:40:11.01ID:ZStpF2RD
【反逆世界の呪操者】(3/3)


『帰ったか十嘉。遅かったの』

 いつの間にか彼等の脇に立って居た男。その男の口から出たのは全く似合わない幼げな少女の声。
 そのおなじみの声に、少しばかり顔を引き攣らせた十嘉だったが、子供達の頭を撫でると、踵を返す男の後に付いて行く。

 地下街のさらに下の階層に作られた空間、剥き出しの岩肌に佇む地底湖の中央には、大きな鳥居と寝殿造りの建築物。
 実際の神社とは趣が違うが、そこは『社』と呼ばれていた。

 十嘉を案内していた男が突如煙を吹くと、後には折り紙で作られた“奴さん”が残される。彼の師匠の式神術だ。
 ひらりと舞う奴さんをつかみ取った十嘉は、朱塗りの鳥居をくぐったのだった。

 ******

「まったく、何をグズグズとやっておったのか、ワシを待たせるとは全く不出来な弟子じゃて」

 社の上座に寝転んで、大福をもぐもぐと食べながら悪態を吐く狐耳の幼女。
 彼女こそが十嘉の師匠であり、このコロニーを纏めている長。天狐の天津宇嘉糯比米だった。

「それよりも師匠、今回のコレ、どうなんだ?」
「ん〜? ハズレじゃの。良く探したんか? まったく、こんな簡単なお使いすら出来んとは、ほんにオヌシは馬鹿弟子じゃな」

 あまりの暴言に十嘉に怒りが湧く。

 だが、そうは思っても、決して口には出さない。生まれた時から一緒なのだ。この師匠の実力は、彼が一番よく知っている。
 広い和室の中は色とりどりの折り紙で埋め尽くされている。まるで、子供の遊戯教室の様な有様ではあるが、しかしこれら飾られた折り紙作品は、ただの装飾品で無い。
 先程、彼を社に案内した“奴さん”同様、飾られた折り紙の全てが彼女の“式神”だからだ。

 本来であれば儀式を行い、鬼神と呼ばれる精霊を形代に封じ、それを使役するのが式神術であるのだが、この師匠は、折り紙で折った形代に、その辺に居る自然霊を適当に取り憑かせる事で式神としている。
 いい加減で手抜きな技ではあるが、それで何百と言う式神を使役し制御し切れるのは、ひとえに彼女の術師としての技能の高さ故だ。
 もしここで、十嘉が彼女に反旗を翻したとしても、周囲の式神達に一瞬で取り押さえられるだろう。

 伊達に彼女も何十年と生きてはいない。『記録』として掘り起こされる前の時間も合わせれば、何百年となる筈だ。

「で、次はどうするんだ?」
「ふうん? まだ分らぬよ、占術は万能ではないからの。巫女の神託もまだ降りぬ。気長に待つのじゃな」

 その話を聞いた十嘉は、「さいですか」と呟くと、地下街に戻る為、その場から立ち上がった。

「まぁ、しばらくはゆるりとするが良い。此度は大儀じゃった。この龍脈から離れられぬワシの代わりに、オヌシが動いてくれる事、本当に感謝しておるのじゃ」

 珍しい師匠のねぎらいに、思わず十嘉が振り向く。

「なので、久しぶりに、この母に甘えても良いのじゃぞ?」
「甘えねぇよ!!」

 ******

 かつて、一人の神託の巫女によって預言された人類逆転の希望。『原曲』と呼ばれる、その『記録』を人類側は血眼になって探している。
 AI文明を駆逐し、かつての栄光を約束するとされる『原曲』の存在は、果たして、本当に人類の為の物なのか?

 そう言えば、パンドラの箱の話が途中だったか。

 その元となった神話、パンドラの壺は、人類最初の女性パンドラによって開けられた壷から、この世のあらゆる悪徳が飛び出し、人類は堕落する事に成ると言う話である。

 その彼女を壷と共にもたらしたのは……

 人類を脅威と見做した天上の神々であったと言う。
0378この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/21(日) 22:08:29.87ID:fz34Sh5h
>>361

使用お題→『手抜き』『よさこい』『滑り台』『オリガミ』『原曲』

【よさこいとオリガミ】(1/2)

 学校中を隅から隅まで捜しても、彼女は見付からなかった。
 その彼女から呼ばれたような気がして、私は学校の近くの運動公園へと足を向けた。
 公園の敷地内にある小高い丘の、急な斜面に設けられた幅の広い滑り台。その下に立って見上げる。
 この辺では一番見晴らしのいい丘の上に、私は彼女の姿を認めた。
 滑り台の脇を駆け上がる。
「オーリャ!」
 私が呼び掛けると、静かに夕日を眺めていたらしい彼女は、さして驚いた様子も見せず、そのエキゾチックな目元を私に向けた。
「さよこー! やっほー!」
 ゴシック建築のガーゴイルのように固まっていた表情が、まるで生き返ったかのように笑顔になって、その場でぴょんぴょん跳ね回る。
「オーリャ! 探したんだよ。急にいなくなったら駄目だよ」
「うん、分かってる。ごめんね」
 そう言って申し訳なさそうにするものの、彼女がどこかへ行ってしまうのは、これが初めてではない。
「ねえ、オーリャ。別に誰も怒ったり、笑ったり、してなかったでしょ。いなくならなくても良かったんじゃないの」
「うん。それも分かってる」
 彼女は留学生で、けれども日本語がぺらぺらで、そのくせ結構な問題児だった。
「だったらさ、直していかないと」
「うん……」
 なぜだか理由は分からないが、彼女は私に懐いた。私も、彼女とは馬が合う感じがして、一緒にいるようになった。
 エキセントリックな言動には振り回されたし、お世話係だなぁ、と思うこともあった。
 だけど、彼女にはどこか憎めないところがあった。
「私と二人だけなら平気なんだよね。私以外にも信頼できる人を作った方がいいよ」
「うん……。さよこ、私のこと嫌いになった?」
 こういう面倒な言い方をするところ。
「嫌いじゃないよ。だけど、オーリャは困るでしょ」
 彼女は遠くを、学校の方角ではない、多分、テレビ塔か何かを見ていた。
「困らない」
「オーリャ」
「オーリャ困らない! 困らないよ!」
 彼女は怒ったように叫んだ。
「オーリャ!」
「おりゃ! おりゃ! おりゃー! よさこいじゃー!」
「ふざけないで! 真面目に話してるの!」
 私がそう言うと、何やら勝手な振り付けで変な動きをしていた彼女は、私が声を掛ける前の石像に戻ってしまった。
「オリガ・ミハイロヴナ」
「はい、サヨコ・イクラウマイナ! なんでしゅ……失礼、なんですか」
 だけど一瞬で人間に戻る。
「オーリャ……いっつもそうやって混ぜっ返すよね」
「かみました!」
「そこじゃないし」
「エータ、ルースカヤ、シュートカ、だよ」
「いや完全日本語だったし」
「いやいや。オーリャ、ロシア人だから。ニホンゴワッカリマセーン」
 これが彼女のペースなのだ。
0379この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/21(日) 22:08:47.99ID:fz34Sh5h
【よさこいとオリガミ】(2/2)

 彼女が不意に片手を上げた。
「一番、オーリャ、歌います!」
「えー、やめて」
「えー、やめない。歌う」
 何を歌っても、原曲の形をとどめない。彼女はとんでもない音痴だった。本人は『オリガ違い』だとか言っていた。
「練習なら一人でやってよー。頑張ればメジャーデビューも夢じゃないよ」
「気休めはいいよ。オーリャはオーリャだから」
「じゃあ、歌うのやめてー」
 そんな私の懇願を無視して、彼女の唇がメロディーを紡ぐ。

 さよこのよさこ いいところ
 ヤ ズナーユ ヤ ズナール トゥイ ズナーイェシ?
 オーリャの歌を 聴いてくれるところ!

「何それ。手抜きみたいな歌詞」
「まだまだ、これからだよー」
「えー」

 さよこのよさこ いいところ
 ヤ ズナーユ ヤ ズナール トゥイ ズナーイェシ?
 お弁当のおかずを 交換してくれるところ!

「オーリャは料理上手だよね」
「うん。さよこのお母さんもね」
「それって、私のいいところなの?」

 さよこのよさこ いいところ
 ヤ ズナーユ ヤ ズナール トゥイ ズナーイェシ?
 授業のノートを 見せてくれるところ!

「いや自分でちゃんとノート取ってよ」
「いやいや。オーリャ、ロシア人だから。カンジカケマセーン」
「私でも書けない漢字書けるよね……」

 さよこのよさこ いいところ
 ヤ ズナーユ ヤ ズナール トゥイ ズナーイェシ?
 マヤ パドゥルーガ さよこ 大好き!

「それって、いいところ?」
「私が、さよこを好きなのが、さよこの一番いいところ!」
「オーリャ……」

 オーリャの歌が終わって、一番星が輝いた。
 私たちは公園を後にした。
 オーリャは帰りの道すがら、歌の続きを歌ってくれた。下手な歌。
 でも、ありがとう、オーリャ。お礼の言葉は、思い付かないけど、とりあえず。
 また明日、学校で。
0380三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/21(日) 22:10:29.52ID:fz34Sh5h
遅刻すみません・・・

もう少し何か要素を入れたかったけど、ちょっと無理ね
ちな作者にロシア人の知り合いはおりません
0381三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/21(日) 22:14:18.17ID:fz34Sh5h
お題→『手抜き』『よさこい』『滑り台』『オリガミ』『原曲』締切

【参加作品一覧】
>>365【必殺斬法"折紙の舞"!】
>>375【反逆世界の呪操者】
>>378【よさこいとオリガミ】
0382三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/21(日) 22:15:39.39ID:fz34Sh5h
では、今回は通常お題5つですー

お題安価>>383-387
0383この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/21(日) 22:16:43.58ID:YNLW1Wap
水飴
0388三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/21(日) 23:23:06.37ID:fz34Sh5h
☆お題→『水飴』『小川』『空色』『とげ』『エルフ』から1つ以上選択

☆文字数→3レス+予備1レス以内に収めれば何字でも可。
1レス約1900字、60行が上限。

☆締め切り→6/28の22時まで。
締め切りを過ぎても作品の投稿は可。

【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】
0389三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/21(日) 23:29:25.38ID:fz34Sh5h
リレー企画は、残念ながら無理そうね・・・
そして今回お題は、また一見無難そうで不思議な感じに・・・

引き続きお題スレをよろしくですー
0390三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/21(日) 23:35:07.58ID:fz34Sh5h
>>375
な、、なんか色々入ってる・・・w
どーすんだこれ的なお題から、すげー話が生えてしまった感じですね・・・!
0391この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/21(日) 23:37:36.24ID:ZStpF2RD
>>378
何か不思議な勢いがw
広く浅い友情よりも
たった一人でも親友の方が良い
と言う人もいますよねw
0393この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/21(日) 23:57:59.92ID:ZStpF2RD
>>390
感想、有り難うございます
相変わらずの属性てんこ盛りですw
元ネタに成るのはター〇ネーター、マ〇リクス、三枚のお札、パンドラの壺あたりですね
0394この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/22(月) 17:42:03.91ID:R/4PW5DA
>>388
使用するお題→『水飴』『小川』『空色』『とげ』

【受難な姉を救え】(1/3)
※スレ7 387【弟は名探偵?】を先に読んでおくことをオススメします

ある土曜の夕方、ケンスケがリビングのソファーに寝転んで、楽しそうに漫画を読んでいる時だった。

「ただいまー!」

カナミの声が聞こえてきた。姉は今日、母と一緒に街のデパートに買い物に出かけていたのだ。

「あっ、お姉ちゃんおかえり!」
「ケンスケ、これを見て」

カナミは買い物袋からある物を取り出した。それは綺麗な空色をした新しいハイソックスだった。

「どう、可愛くて素敵でしょ?」
「うわあカッコいい空色だね!」
「可愛くて綺麗なスカイブルーって言ってほしいわね」
「はいはい、可愛くて綺麗なスカイブルーだね」
「ウフフ、ありがと!ケンスケ、勝手に履いちゃダメよ」
「分かってるよ」

翌日、カナミはその空色のハイソックスを早速履く。

「履き心地最高ね!」
「お姉ちゃーん、まだー?」
「今行くから待ってー!」

朝食を済ませると、カナミとケンスケは家を飛び出す。

「ホントに綺麗な空色だね!」
「だーかーらー、スカイブルーだってば」
「はいはい、スカイブルーだね。今日はどこに遊びに行く?」
「そうねぇ、うーん・・・」

どこに遊びに行こうかな、そう考えながらのんびりと歩いている時だった。

「お姉ちゃん、あれ見て!」
「ん?」

弟が指差した方向に目を向けてみると、水飴を売っている屋台があった。

「水飴だよ、お姉ちゃん!せっかくだから買おうよ!」
「それはいいわね!」

屋台に駆け寄り、ケンスケはソーダ味、カナミはイチゴ味の水飴を買う。
近くに広い公園を見つけ、そこのベンチに座って食べようとした時だった。
カナミは足下に落ちているテニスボールに足を取られ、ドテッ!と尻餅をついて倒れてしまった。
その拍子に手から水飴が離れて落ち、そのままハイソックスにペチャッとついてしまった。

「痛たた、うわっ水飴が!それにハイソックスも・・・」

買ったばかりの新品で綺麗な空色のハイソックスは、イチゴ味の赤い水飴でベタベタになってしまった。
0395この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/22(月) 17:42:50.77ID:R/4PW5DA
【受難な姉を救え】(2/3)

「そんな最悪・・・」
「は、早く水で濡らして落とさなきゃ!」

ケンスケはポケットからハンカチを出し、近くにある水道で濡らそうとしたが、その水道は今故障中で水が出ない状態だった。
その公園にはトイレといった手洗い場も見当たらない。

「ウソでしょもう!」
「落ち着いて、お姉ちゃん。確かここから少し離れてるけど、土手にいけば綺麗な小川が流れているからそこに行こう!」
「それしかないわよね…」

地面に尻をついたままのカナミが立ち上がる。

「早くその小川に行きましょ!」

しかし姉の不運はこれで終わらなかった。さっきテニスボールで転倒した拍子に
左足の方のハイソックスの縫い目から漏れた糸が、すぐ近くの花壇に咲いてあるバラのトゲに引っかかってしまっていた。
カナミはそれに全然気付かず、弟と共に小川が流れている土手へと走り出した。

「そこの小川で濡らして水飴を落とさなきゃ!」

土手へと向かう途中、気持ち良さそうに居眠りをしている野良犬を見つけ、姉弟は思わず足を止めてしまう。

「(お姉ちゃん、どうする?)」
「(ここは何とか突破するしかないでしょ!)」

うっかり足音を立てて野良犬を起こしてしまわないよう、ゆっくりと注意深く歩く。
カナミの前を歩いていたケンスケがチラッと後ろを向いたその時だった。

「(あっ!!)」
「(ちょ、ちょっと急に立ち止まらないでよケンスケ!)」
「(お、お姉ちゃん、左足の方を見て!)」
「(どういうことよ)」

弟に言われて自らの左足に目を向けた姉は、思わずウッ!と言葉を失いかける。
縫い目から漏れた糸がズーッと長く伸びてしまっていることにようやく気付いたのだ。しかし時既に遅しである。
すると水飴の甘い香りに誘われたのか、寝ぼけた野良犬は両前足でカナミの左足を掴んだ。

「(う、ウワッ!な、何するのよ!)」

野良犬は眠ったまま、カナミのハイソックスにベッタリとついた水飴を美味しそうにペロペロと舐め始めた。

「(ちょ、ちょっとやめて!くすぐったい!)」
「(ど、どうしよう・・・)」

糸がどこかに引っかかって伸びている上に、野良犬に足を掴まれてしまったという状態で完全に立ち往生を食らってしまった。
このまま野良犬が目を覚ましたらもっと大変なことになる。ケンスケもどうすればいいか分からず、頭が混乱してしまう。
もうダメだ、と諦めかけたその時だった。

「ニャーン!」
0396この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/22(月) 17:43:31.56ID:R/4PW5DA
【受難な姉を救え】(3/3)

姉弟の目の前に一匹の野良猫が現れた。

「「あの野良猫は!!」」

そう、以前無くしてしまったキーホルダーを探している時に出会い、
意地悪な小6女子の一人である西岡ミズホに襲われた時に助けてくれたあの野良猫だ。

「(い、今、大変だから近づいたら危ないわよ!)」
「(早く逃げて!)」

その猫は前足から鋭い爪を露わにし、そのまま引っかかってしまったハイソックスの糸を切断した。
その瞬間、野良犬がハッと目を覚まし、グルルと唸って牙を剥き出しにしカナミとケンスケに襲いかかろうとした。
しかし猫がニャーッ!と低く大きく鳴いて、野良犬を挑発し気を反らす。
怒った野良犬はワンワンと吠えながら猫を追いかけ、どこかに走って行ってしまった。

「ま、まさか私達を助けるために自分から囮になったなんて・・・」
「ごめんね、でも本当にありがとう!お姉ちゃん、早くここから逃げよう!」

また野良犬に見つかってしまわないよう、その場から走って逃げ、なんとか綺麗な小川が流れている土手の近くまで来ることができた。
ケンスケはその小川の水で濡らしたハンカチで、水飴と野良犬のヨダレでベタベタになったカナミのハイソックスを綺麗に拭いた。
今日はもう家に帰ってじっとすることに決め、姉弟は家路につくことにした。

「あらあら買ったばかりなのに、そんな散々な目に遭ったのね。でも2人ともケガがなくて本当に安心したわ」

その後、糸が切れて繊維がズレてしまった空色のハイソックスは母の手で綺麗に修繕され、
また履けるようになったのでカナミはとても嬉しかった。
また、姉弟はあの野良猫のことがとにかく気になって仕方がなかった。

「あの野良猫、無事かなあ。すごく心配だわ」
「大丈夫だと信じたいよ。でも、まさかまた会うなんてビックリだよ」
「そうね、また会いたいわ」
「お姉ちゃん」
「なあに?」
「あんなにアンラッキーなお姉ちゃん、今まで見たことがなかったよ」
「た、ただその日の運勢がたまたま悪かっただけよ!」
「日頃の行いじゃないかなあ?」
「それ以上からかうと、こめかみグリグリするわよ!」
「ウソウソ、冗談だよ!」

姉弟の追いかけっこが始まるのだった。
0397この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/22(月) 21:28:17.60ID:ZiW8Ehg8
>>394
おろしたての二―ソックスで、ご機嫌の筈が……
でも、優しい家族や、猫のお陰で、気分は晴れた様で良かったですね
0399この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/23(火) 19:23:39.94ID:NqkMTHn4
>>397
>>398
感想ありがとうございます!
衣類の糸がどこかに引っかかって伸びっているのに気付かないことってよくありますよねw
あの不思議な野良猫さん、次また出てくるのは一体いつでしょうか。今から想像するだけで楽しいです
楽しんでいただけてすっごく嬉しいです!
0400この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/24(水) 02:34:43.19ID:N+6nn1NS
ムワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
0401三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/26(金) 12:55:19.44ID:oHPE3vut
ところで次回の企画ですが、特に案がなければ、書き出し指定でもやろうかと思っています
0402この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/26(金) 17:08:18.85ID:UYwiAdru
>>388
使用するお題→『小川』

【途中まで書けたけど、没作で……申し訳ねえ、最近調子悪いわ】

 空高く昇った太陽が、肌を容赦なく焼く。その暑さから身を守ろうと噴き出す汗も、ワイシャツの襟にしみて楓を焦らすだけだった。

 肌にべったりとつく服を乾かすように、首周りの第一ボタンに指をかける。
「夏だね」
 目の前を流れる川の心地よいせせらぎとかすかな涼しさが、首元から服の中に忍び込む。体内の熱にとどめを刺すように、楓はすでに溶け出している棒アイスを口に咥えた。
「ねぇ、楓」
 隣で、アイスより先に溶けそうな声が聞こえる。
「そのアイス、一口食べさせて」 
 同級生の桜が後ろの石段に手をかけて、羨望が漏れ出す瞳を楓の口元に向けている。
「んーどうしよっかな」
 口の中の冷気が惜しいが、親友の首筋を滝のように流れ落ちる汗が、楓の心を揺らがせた。結局のところ自ら川面まで直接降りられるこの石段を下ろうと誘った手前もあり、申し訳なさを感じずにはいられなかった。
──ここ、涼しくていいと思うんだけどなぁ。
 体質の違いというものだろうか。楓は一瞬浮かんだ疑問と不満の答えをそう決定づけて、太陽を睨む。
──顔だけは似せたくせに。
 こればかりは自分たちの、所謂母なる存在を憎むしかなかった。
「はい」
 楓は棒アイスについた歯型を桜に向けた。
「やったー、楓優しい」
 とろけそうだった目尻に、急に生気が戻る。瞳孔にハートのマークさえ浮かんできそうな気がしてくるほどの笑顔。自分の頬が、思わず緩んだ気がした。
「好きだなぁ、桜のそういう顔」
「えっ」
 アイスに向かって口を大きく開けていた桜が、ぴたりと止まった。
「そう?」
 桜は照れを隠したいのか、それとも大っぴらにしてしまいたいのか、自分でもわかっていないような声を上げた。
「うん」
「そっかぁ……」
 いつもならはしゃいで誤魔化しそうな彼女がこんなにも大人しく頬を紅潮させているのは、熱い日差しのせいだろうか──楓がそう考えている間に、桜は再びアイスにかじりつこうとしていた。
 なるべく串をぶらさないように努めながら、アイスを持ち替える。体が正面に向いて、意識は自然と不規則に光る水面に移った。
「あっ!」
 桜があげた素っ頓狂な声に、楓の目線が串の先端に引き戻される。眼下に、垂直に落ちる水色の物体が映った。
 ぺちゃり。楓の鼓膜が拾いあげた音は、脳内でその文字になって現れた。桜とほぼ同じタイミングで、瞳を下へと走らせる。
「ごめん、桜ぁ」
 先にそう声を発した楓の網膜には、先程まで串にしがみついていたアイスが、力尽きたかのように石段の上で溶け出すのが映っていた。
 桜は──これも暑さのせいか──どこか力なく笑った。少しかすれた声で、ゲラゲラと笑うのが、いつもの彼女の笑い方だ。
 お世辞にも上品とは言えないが、楓も、彼女の他の友人もその笑い声を嫌がる風はなくて、むしろ愛らしささえ感じているように見える。
──その笑い方も好き。
 また、さっきと同じように漏れだしそうになった本音を、今度は抑えた。
 心なしか、楓には桜が笑いを気にしているようにも思えていた。
──なんでだろう?
 みんなは、桜のその笑い方が好いている。なのに桜は、もっと端的に言えば、同じものを嫌っているのだ。
 同じ人間なのに、違う。同じ構造で組み上げられた目と、耳と、鼻孔と、肌と、舌を持っているはずなのに、感じているものは違う。
 生物の先生が教えてくれた優性遺伝とか、デオキシリボ核酸やゲノムがどうとか、そんな話をすれば答えは出てきそうな気がしたが、それはどこか、楓が求めている理由とは違った。
「田中ぁ!」突拍子もなく桜の声が響く。
「うわっ」
 意識が、脳の底からぐっと引き上げられた気がして、楓は一瞬動けなくなった。自身の眼球だけが、四散してゆく鯉の群れを追っていた。
「どうしたの桜!」
 立ち上がった桜の影が、楓の太腿を覆っている。
「生物の先生の真似だーよ」
「いきなりすぎでしょ」
 出任せの突っ込みを入れたあと、やっと金縛りが解けたような気がして腹の底から何かがこみ上げてくる。
 まばらにこちらまで身を寄せてきていた鯉が、また散り散りになった。
0403この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/26(金) 17:10:07.37ID:UYwiAdru
タイトル通り、途中まで書けたけど……申し訳ない。このスレには世話になったんで何かしとこうと思ったんだけど、最近あからさまに調子悪いんよね。
もうちょい腕磨いてからまた戻ってくるわ。今回は見苦しい半ば供養を上げてしまってほんとすんません。
0404三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/27(土) 01:29:29.94ID:rBIxLLm+
>>402
言いつつ作品自体は普通にうま過ぎて笑うw
夏の一コマ、何が納得行かんのじゃ、、例の、文章力とテーマ性の熱量で読者を圧倒する、、よりも前に、迷いながら書いてゴールを見失ったのか
ともかく乙乙です
0405この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/27(土) 02:32:50.52ID:5b8lRKgC
>>388
使用するお題→『水飴』『小川』『空色』『とげ』『エルフ』
【エルフ水飴】

「さあさあ、エルフ水飴、エルフで作った水飴だよ!」
 大きなトゲが一本刺さった濃い緑の沼のほとりで、カッパさんが言いました。
「取れたてのエルフだ! こんな極上物はそうないよ! 一本金貨二十枚、早い者勝ちだ!」

 今日は月に一度あるエルフ水飴の特売日です。
 張り切って呼び込みを始めたカッパさんのお店に、わらわらとお客さんが集まってきました。

「今月のエルフ水飴は素晴らしいねカッパさん」
「おう、最上級の証である翠色だ! いっぱい買ってくれよなオークの旦那!」
「先月も空色で綺麗だったけど、今月もとっても綺麗に仕上がってるわねカッパさん」
「おう、今月は着色料をやめて生のエルフの特徴を活かしたからな! 子どもの分も土産に買ってくれよなラミア夫人!」

 カッパさんのお店は大繁盛です。老若男女、様々な魔物たちがエルフ水飴を買い求めていきます。大層な賑わいにカッパさんも大喜びでした。
 しかし、その喜びも束の間。魔物たちの平穏を乱す者が現れました。

「待て、そこのカッパさん!」

 勇者です。勇者が現れたのです。たった一人で。いつも連れている空色の法衣を着た僧侶はもういません。
 カッパさんは横に広い嘴から鋭い歯を覗かせて笑いました。

「なんだ、勇者か。先月は大変世話になったな、ありがとうよ!」
「黙れ! エルフを解放するまで、何があろうと僕は戦うぞ!」

 聖剣を掲げて、勇者は大きな声でカッパさんを威嚇します。

「そこが保管庫になっていることはわかっているんだ。その大きなトゲを抜きさえすれば、沼の水が捌けて助けられるはずだ!」
「ハッ! できるもんならやってみな! そろそろ決着を付けてやんよ!」

 二人の間に剣呑な雰囲気が流れます。けれど、お客さんたちは騒ぎを気にせず買い物を続けます。
 そうです。カッパさんはとても強いのです。これまでに何度も勇者にお店の邪魔をされそうになっては、返り討ちにしてきた過去があります。
 カッパさんは店番をカッパ子分に任せ、勇者と近くの小川に場所を移しました。いい加減うんざりしていたので、今日はとっても真剣です。

「いくぞ!」

 カッパさんと勇者。二人の声が重なります。爪と剣が打ち合う音、地面を蹴る音、小川のせせらぎを激しい戦闘音がかき消します。
 何度も負けているとはいえ勇者もさすがは勇者、カッパさんに何とか食らいついています。

 しかし、もちろん長くは続きません。

 すぐに剣を弾き飛ばされて、勇者の負けが決まりました。肩で息をする勇者に、カッパさんが言い放ちます。

「オレの勝ちだな、勇者」
「くっ、僕は諦めないぞ!」
「まあまあ。落ち着けよ。お前の頑張りは認めてやるからよ。ほら、一本サービスしてやるから、これでも食ってけ」

 勇者の口に、エルフ水飴が強引に突っ込まれました。
 予想外の出来事に大きく目を開く勇者。しかし途端に、その意志の強そうな黒い瞳がとろんとしてきました。

「美味しい……」
「そうだろそうだろ、オレのエルフ水飴は最高よ!」
「うん……すまなかった。僕が悪かったよ。もう帰るね……」

 ふらふらとした足取りで勇者は小川に飛び込み、そのまま下流へと流れていきました。 
 カッパさんはそれを見送ると、残ったエルフ水飴をバキッと噛み砕いて気合を入れ直し、お店へと戻ります。

 今月もカッパさんのお店は大繁盛でした。
0406この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/27(土) 02:37:51.26ID:5b8lRKgC
即興40分くらい
ちょっと気持ち悪い話&わけの分からない話でごめんなさい

ここで短編書いたの何年ぶりだろってくらい久しぶりです
いつの間にか感想ニキがいなくなってて寂しい…
久しぶりすぎてルールミスしてたらすみません(一応テンプレに目は通しましたが)

お題短編って瞬発力がつきそうな気がしていいですよね
0407この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/27(土) 10:52:21.81ID:rBIxLLm+
>>405
0408三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/27(土) 10:57:40.14ID:rBIxLLm+
>>405
ミスすんません、、おかえりなさいですー!
競馬実況感想さんは休業中なんや・・・
これぞお題スレ的カオスな話w
0409この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/27(土) 14:02:20.54ID:dDuTx91a
>>388
使用するお題→『水飴』『空色』『とげ』『エルフ』

【私の可愛い救世主】(1/3)
※スレ5 251【ブーツ探し】の続編かつ完結編です

眩しくも暖かい太陽の光が降り注ぐ、ある土曜日の朝。
私は今日もお気に入りのジーンズにロングブーツを履いて、町中を散歩していた。
あっ、そういえばまだ自己紹介してなかったのよね。私の名前は紺野サナ。
半年ぐらい前かしら、公園のベンチに座って居眠りしてしまった隙にブーツを脱がされて奪われてしまって、
たまたま出会った探偵を名乗る少年が協力してくれて、無事ブーツを取り戻したことがあったの。
あの少年、ちょっぴり生意気なところはあったけど賢くて良い子だったわ。また会いたいといつも思っている。

「あの子、元気にやっているかしら・・・」

そう考えながら、歩いている時だった。突然足下からベチャッと変な感触が伝わってくる。
恐る恐る目をやると、なんと水飴を踏んでしまっていたのだ。

「最悪ッ!せっかく手入れして綺麗にしたばかりなのに!」

ブーツの靴底は水飴でベトベトになっていた。すると近くにいた一人のおじさんが駆け寄ってきた。

「お嬢さん、大丈夫かい?」

そのおじさん曰く、ここ数日誰かが分からない水飴とか食べかけのアイスといったお菓子を捨て、
それを通りかかった人々がうっかり踏んでしまうトラブルが続発しているとのこと。
監視カメラを数台設置しているのだが、誰かが捨てている瞬間は一切写っていないのだ。
まさか幽霊の仕業か?そう思いながらサナは近くの公園に行き、そこの水道で濡らしたハンカチでブーツについた水飴を拭き取る。

「お菓子を捨てるなんてホント最低!見つけたら捕まえてコテンパンにしてやるわ!」
「あっお姉さん、久しぶりだね!」

突然、背後から聞き覚えのある声がして振り返ってみると、あの探偵を名乗る謎の少年が立っていた。
サナは思わずその少年をギュッと抱き締める。

「久しぶりはこっちのセリフよ!急に姿を消しちゃうんだから!もう、すっごく会いたかった!」
「アハハ、ところでまた何かあったの?」

サナはベンチに座ると、さっきの出来事を全て話す。

「なるほど、そういうことが。というかまたブーツ絡みなんだねアハハ」
「笑い事じゃないわよ。お気に入りのブーツなんだから」
「ごめん、ごめん。唐突でビックリするかもしれないけどサナさん、僕はね実は人間じゃないんだ」
「に、人間じゃないってどういう意味?」
「信じられないかもしれないけど、この際だから全て話すよ」

その少年の名はロートム。この人間界にはびこる悪い魔物をやっつけるために、異世界から派遣されたエルフの探偵なのだ。
よく見てみると、普通の人間と違って若干尖った耳をしていた。
0410この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/27(土) 14:03:25.88ID:dDuTx91a
【私の可愛い救世主】(2/3)

「そう、僕は人間じゃなくてエルフなんだ」
「異世界から来たエルフなんてすっごくファンシーで可愛らしいわね」
「えっ怖がらないの?人間じゃないんだよ」
「人間じゃないから何だって言うの?私ね、ファンタジー大好きなの!」
「そ、そう言ってくれると嬉しい。とっても嬉しい!」

ロートムの顔はトマトのように赤くなり、照れているのが目に見えて分かった。

「それよりそのお菓子を捨てる犯人、恐らく魔物の仕業だよ」
「魔物の仕業?どうして分かるの?」
「これを見て」

ロートムは小さなリストを取り出し、サナに見せる。そのリストには人間界で悪事を働き、人間に危害を及ぼす魔物がたくさん載っていた。

「この"モノステロン"って奴に違いないね。平気で不法投棄する迷惑極まりない悪者なんだ」
「魔物だから監視カメラに映らないというのも納得がいくわね」
「モノステロン、こいつを絶対に捕まえて成敗してやる!」

人気が全くなくなった深夜の2時、サナとロートムはモノステロンが現れないか、近くの茂みの中に身を隠して見張っていた。
すると突然どこからともなく地面にガムやバナナの皮、溶けたアイスなどが次々と現れ始めたのと同時に、低く下品そうな声が聞こえてきた。

「グエッヘッヘッヘ、人間が困るのを見るのが一番の楽しみだぜ」
「そこまでだモノステロン!」
「な、何!?貴様は探偵エルフのロートムじゃねえか!」
「私もいるわよ!」
「あっ、俺の捨てた水飴をうっかり踏んだドジ女も一緒じゃねえか!」
「ド、ドジ女ですって!?完膚無きまでに叩きのめしてやろうかしら…!」

モノステロンが地面から姿を現した。全身真っ黒でトゲの生えたヘドロのような禍々しい姿をした魔物だった。

「グエッヘッヘッヘ、この人間界をゴミで埋め尽くしてやる!」
「そうはさせるか!」

口から汚いゴミの数々を吐き出して攻撃してくるモノステロンに、ロートムは魔物撃退用のレーザー銃で光線を当てようとするが
巨体で動きの鈍そうな姿から想像できない素早い攻撃になかなか上手く対処できない。
するとモノステロンが吐き出した廃棄物の一つがロートムに勢いよく直撃し、ロートムは頭から血を流して倒れてしまった。

「グエッヘッヘッヘ、マヌケな奴だぜ」

モノステロンはロートムを掴むと同時に、落ちているレーザー銃を踏み潰して粉々にした。

「さあ、俺の超必殺"グレートダスティブレス"であの世へ葬ってやる!」

大きく開いたモノステロンの口からドス黒い煙が現れてくる。

「ロートムを放しなさいよ、この汚いゴミ!」

サナはロートムを救おうと、近くに落ちていた棒で必死にモノステロンを殴るものの一切通用しない。
モノステロンが発射するビームに当たってしまったら、一溜まりもない。

「ど、どうしよう・・・」

するとサナは自分のブーツに目を向ける。
0411この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/27(土) 14:05:47.35ID:dDuTx91a
【私の可愛い救世主】(3/3)

「これだ!」

モノステロンがビームが発射しようとした数秒前、サナは自分のブーツを彼の口に向かって勢いよく放り投げる。
モノステロンの口にブーツが入り、そのまま喉につっかえてしまった。

「ガ、ガホッ、ゴ、ゴガァ!」

喉にブーツがつっかえたためにモノステロンは苦しみ出し、掴んでいたロートムを放してしまう。
サナはすぐにロートムをキャッチし、急いで安全な場所まで走って逃げる。
本来放出するはずの強大なエネルギーが体内に充満して抑えきれなくなり、モノステロンはとうとう爆発してしまった。

「ゴ、ゴボバァーーーッッッッ!!!」

断末魔と共に爆死し、モノステロンは姿を消してしまった。しばらくしてロートムが意識を取り戻した。

「サ、サナさん!あれモノステロンは?」
「大丈夫よ、安心して。モノステロンは私がやっつけたわ」
「ありがとう!サナさんは僕の命の恩人だよ!」

いつの間にか空に太陽が昇り、朝が来ていた。

「サナさんのおかげでモノステロンは倒された。これで人間界に平和が戻ったよ」

するとロートムのポケットに入っていたベルが鳴り出した。

「一体どうしたの?」
「アメリカの方でまた魔物が現れたって伝言が入ったんだ。今すぐそいつを倒しに行かないと」
「ま、また会えなくなるってこと?」
「残念だけど、この日本にはもう来れないかもしれない」
「そ、そんなの嫌よ!せっかく会えたのに!」
「サナさん、これをあげるよ」

ロートムは首に巻いていた、綺麗な空色のスカーフをサナに渡す。

「僕の故郷で作られている伝統品のスカーフなんだ。寂しくなったら、それでいつでも僕を思い出して」

そう言うとロートムはそのまま姿を消してしまった。あれから1年ほどが経過した。
サナはロートムの形見である、空色のスカーフを首に巻いて愛用していた。

「ロートム、いつかまた必ず会おうね。今度は一緒に楽しく暮らそう、約束よ」


THE END
0412三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/27(土) 17:59:23.98ID:rBIxLLm+
>>409
またすごい前のを引っ張ってきましたねw
なんか全然違う話になってるwけど、エルフならそういうこともあるかも知れない
また会えるといいですね
0413この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/27(土) 19:29:51.30ID:dDuTx91a
>>412
感想ありがとうございます!
3作目の過去作品の完結編です。前のニーソのお話もそうでしたが
些細な日常から一気にファンタジーへと世界観がかなり変わっちゃってますねw
以前書いていた魔法少女ナツミシリーズをつい思い出しちゃいました
楽しんでいただけてすっごく嬉しいです!
0414この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/28(日) 00:44:00.23ID:Pcy5uq6A
>>408
ありがとうございます
全部盛りのためだけに話が進んでいくカオス感が出ていたら及第点でした
0415この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/28(日) 12:00:19.77ID:fFrx1827
そういえば
>>402 だけど、朽ちを知るの方も使わせてもらいます。詳細はこの前言ったばっかりだし割愛するよ、何度もすまん
0416この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/28(日) 21:51:32.58ID:FmRPJz2J
>>388
お題:『水飴』『小川』『空色』『とげ』『エルフ』

【異世界でのんびり紀行】(1/3)
 春の海、終日のたりのたりかな。

 思わず、そんな蕪村の句が頭に浮かび上がる様な、ゆるりとした空気が流れていた。
 箭内 東吾が異世界と呼ばれる、現代とは違う世界に転移してから、すでに2年目の春である。転移した直後は大慌てだった彼も、さすがにそれだけの月日を重ねれば、イヤでもこの世界に慣れてくる。

 今は乗り合いの馬車に揺られて、田舎道をノロノロと隣の町に向かって移動している最中だ。うららかな春の日差しと、ガタンガタンとリズミカルな振動に、思わず瞼が重くなって来る。

(昔は、尻が痛くてうたた寝なんて出来なかったのになぁ)

 そんな事を思い苦笑する。
 年がら年中旅の空な東吾は、すでにすっかり、そんな事にも慣れてしまっていた。

 獣人の御者の爺さんは、手綱を握りながら噛み煙草をもぐもぐとやっていて、それ程広いと言う訳では無い幌馬車の中には、東吾を含めて7人程の男女が、向き合わせの席に腰を落ち着けている。
 その中には彼と同じ様な旅装の者も居れば、普通の格好をした親子も居る。

 馬車の外では、護衛に雇われた冒険者達が、馬車の速度に合わせて歩いて居た。
 東吾も、時折、同じ様に馬車の護衛の仕事をする事は有るが、基本ソロな彼は、連携が必要なこの手の仕事を受ける事は殆どなかったが。

 この辺りの地方で魔獣が活発になっていると言う話など聞いた事は無いし、基本身を隠す場所の無い平原なので、盗賊が出たと言う話も聞いた事は無い。
 だからと言って全く遭遇しないと言う事も無い為に、こうして護衛が付いている訳だが。

(こんな日は、魔獣もお休みにしてるだろうさね)

 希望的観測ですらない寝言と言って良い思考ではあるが、彼の考えが正しいかの様に魔獣の襲撃など無かった。

 ガタリ……と、大きく馬車が揺れた。小川に掛かっていた、殆ど丸太を並べただけと言って良い橋を乗り越えたからだ。

 と、突然、座っていた親子の、その子供が泣きだした。
 馬車の中にいる客の視線はその子供に集中し、母親だろう若い女性は、慌てて子供を泣き止ませようとオロオロしている。
 御者の獣人の爺さんが迷惑そうに振り返るも、何も言わずに前を向き直し、何事かと馬車の中を覗き込んだ冒険者は、「何だ、ガキか泣いただけか」と、興味を失った様に護衛の仕事に戻っていった。

「如何致した?」

 フードを被っていた旅人が、そう声を発する。鈴の音の様な涼やかな声だった。
 一瞬、キョトンと上を向き、目を丸くしていた子供は、しかし、次の瞬間には「イタイの、イタイの」と、引き攣る様に繰り返す。
 手を押さえている様子から、おそらく、手か指を痛めたのだろう。タイミングとしては、小川で馬車が大きく揺れた時だろう。
0417この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/28(日) 21:54:11.71ID:FmRPJz2J
【異世界でのんびり紀行】(2/3)


「ふむ、ならば、【回復】を掛けてみよう。わっぱ、手を出せ」

 「そこまでしていただかなくても」と、顔を青くする母親を無視して、旅人が【回復】の魔法を掛ける。
 東吾には母親の方の気持ちも分かった。【回復】魔法は、教会の神秘であり、それ以外の者が唱える事はほとんどない。
 その上、教会で【回復】魔法を掛けられれば、最低でも金貨が必要だからだ。
 おそらく、彼女にはそんなお金など無いのだろう。

 だが、子供は泣き止まない。

「ぬう? 確かに発動はしたのだが……」

 首を傾げ、もう一度魔法を行使しようと旅人が杖をかざす。二回目の【回復】魔法。母親の方は、青を通り越して、真っ白になっている。おそらく、二回分の【回復】魔法の料金が頭に過っているのだろう。

「おいおい、止めてあげなや、それ以上すると、お母さんの方が卒倒しちまうわな」
「ぬ?」
「ほれ、坊主、これでも食べな」

 そう言って東吾が手製の水飴を子供に渡した。
 木の棒に付いた、やや茶味がかったドロリとしたそれに、子供は戸惑った様な顔をしたが、東吾が「甘いぞ?」と言うと、恐るおそる口に着け、そして、勢いよく嘗め始めた。

 子供が水飴に夢中になったのを見計らって、東吾が子供の手を取る。

「ああやっぱり」
「ぬ?」

 矯めつ眇めつ見ていた東吾が、子供の指を掴んだ。そこには小さなトゲが刺さっている。おそらく、幌馬車の幌と車体の隙間に指を入れて遊んでいた子供の指に、馬車が跳ねたタイミングで刺さったのだろう。

「ふむ、では、これを使うか?」

 そう言って旅人が匕首を差し出す。その旅人の顔を見て、東吾は一瞬目を見開いた。
 絹糸の様な金髪に澄んだ空色の瞳。整った顔立ちの若い少女。
 怪訝そうに首を傾げた少女に、東吾は気を取り直した。
 確かに、この世界でトゲが刺さったと言えば、その部分を切り開いて取り出すのが常套手段ではあるが、匕首を見た子供がビクリと怯えたのを見て、東吾が苦笑する。

「いや、いい物を持ってるんだ」

 そう言って東吾は、背嚢の中から小袋を取り出すと、その中から小さな「毛抜き」を取り出した。
 次いで、子供の指を摘まむと、毛抜きを使ってスルリとトゲを取って見せる。

「ほら、もうトゲは取れたぞ」

 しばらく呆然と自分の指と毛抜きのトゲとを交互に見ていたが、すでに痛みが無くなっている事に気がつき「うん!」と元気よく返事を返したのだった。

 ******

 母親から【回復】魔法の料金を「某は役に立たなかった故」と断っていた少女が、東吾の隣にストンと座る。

「……怪我が治ってたら、料金は取ってたのかい?」
「まさか、この程度の事で礼など貰わんよ」

 そんな、一般常識を分かって居ない様な答えに、東吾は溜息を吐いた。

 【回復】魔法は、教会の秘技である。それ故に使い手は殆どいないし、料金もバカ高いのだ。それを「この程度」と当たり前のように言うのは、かなりの常識知らずだからだ。
 その事を指定すると、少女は目を丸くして「マコトか?」と東吾に問い質す。

「本当だよ、ほら」
0418この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/28(日) 21:58:35.12ID:FmRPJz2J
【異世界でのんびり紀行】(3/3)


そう言うと、安堵している母親を指差した。

「ぬう、某は、余計な事をしてしまったのだろうか?」

 そう言って落ち込む少女に「そんな事は無いさ」と、東吾は軽口を叩く。

「困って居る者が居れば助けようと思うのは、『善き行い』だ。ただ、それを行う時、果たしてその相手は助けるに足る人物かの見極めと、手段については考えなけりゃならんがね」
「ぬう、そうか、そうだな。ありがとう」

 改めて自分の方を向き頭を下げる少女に、東吾が片眉を上げる。

「礼なんざ言われる程の事ぁしてないさね、まぁ、『旅は道連れ世は情け』『袖振り合うも他生の縁』ってこった」
「随分と古い言い回しをご存知の様だが、貴殿はもしかして、エルフの里の者か?」

 東吾は、自分が古臭い言い回しをする自覚は有ったが、しかし、それが何故エルフと結びつくのか分からなかった。
 そう言えば、彼女の言葉遣いも、持っていた匕首にしても、この世界では珍しい感じの物だ。どちらかと言えば、東吾の故郷である日本の、それも、彼がよく見ていた時代劇のソレの方が近い様に思われる。

「なぁ、あんたは『日本』って知ってるか?」
「それは、我ら始祖の生まれたとされる地の事だな!! やはり、貴殿はエルフの者か!!」
「始祖? え? エルフって日本人の血を引いてるの?」
「ぬ?」

 何と無く会話がかみ合っていない事に気が付いたのか、少女が眉根を寄せる。

「……ああ、そう言う事か、済まんな、俺は別にエルフじゃぁないさね。まあ、日本の事はよく知ってるがね」

 そう言ってフードを脱ぐと、そこには黒目黒髪の姿が現れる。
 それを見た少女が空色の目をこれでもかと見開いた。

「そ、そのお姿は! 確かに伝え聞く始祖様の姿!!」

 思わず声を荒げた少女に馬車内の視線が集まり、東吾は慌てて彼女の口をふさぐと「すみません」と周りの人達に頭を下げた。

「ぬう、申し訳ない。始祖殿」
「うん、俺は別に始祖じゃぁ無いからな、おそらく同郷ではあるがね」
「何、ふご!」

 再び大声を上げようとした少女の口を東吾がまたしても塞ぐ。

「と、言うか、アンタ、エルフなのかい?」
「ぬ! 名も名乗らず、失礼つかまつった。某の名は藤井 榛名と申す」

 そう言って自らのフードを引き、その長い耳を東吾に見せる。

「そうかい、俺の名は箭内 東吾だ」
「ほほう! 成程成程! 殿は東吾様とおっしゃられるのですな!! うむ、先程も泰然とした様子で子供をあやし、瞬時に原因を見極めては、適切な手段を取られていた。うむ! 流石は我が殿で有りますな!」
「は? 『我が殿』?」

 困惑する東吾を尻目に、榛名はそれが当然であるかの様に言った。

「見分の旅に出て直ぐに、始祖殿の同郷の方と相まみえる事ができるとは、何たる行幸! これは天の采配に相違ございません!」
「いや、ちょっ」
「ならば、某が殿と同行するは必然! そうではありませぬか!? いや! そうでしょうとも!!」

 鼻息荒くそう断言する榛名に、東吾は顔を引き攣らせると同時に(あれ、エルフってこんなんだったけか?)と思わずにはいられなかった。

 結局、彼女の勢いに飲まれた東吾が首を縦に振るに至るには、隣町に馬車が着くまでの時間も掛からなかったのだった。
0419この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/28(日) 22:04:54.08ID:GHA6itCK
>>388
前スレ94の前日譚です

使用お題→『水飴』『小川』『空色』『とげ』『エルフ』

【私の従者】

 隣国と我が国との間に位置する危険地帯、通称『魔の森』。
 私は一人、さまよっていた。追っ手の襲撃から逃れる際、仲間とはぐれてしまったのだ。
 茨の茂みを突っ切って、倒木の下をくぐり抜け、足元の見えない下草の斜面を駆け上がった。傾斜が途切れて、私は立ち止まった。見回すと、周囲には誰もいなかった。
 しばらく待っても、誰も現れなかった。私は一人で進むことにした。道も分からぬまま。
 さっき仲間と言った。なんてことはない、若くて頼りない従者が一人だけ。高貴なる姫の一行にしては、なんとも貧相だ。
 その頼りない男でも、いないとなると心細いものだ。それに、荷物の半分以上は彼が持っている。実際のところ、合流できなければ、この迷宮を突破することは難しい。
 疲れのせいか、絶望的な状況のためか、私は段々と投げやりな気持ちになって、ずんずんと進むつもりで、ふらふらと歩いた。
 小川があった。
 一段低くなって、木々の間に隠れていた。せせらぎが聞こえる。森の中は見通しが悪い。ほとりまで下りるのは危険なように思われた。
 私は小川に沿って進むことにした。地図には大きな川の位置も書き込まれている。下流を目指せば、どこかしらに出るはずだ。
 警戒はしていたつもりだった。何が出てもおかしくない。だが、注意して進んだつもりでも、やはり私には何も見えていなかった。
 対岸が広場のようになっている場所があった。その反対側、つまり私が歩いてきた方、その雑草の中に、男……だったであろう、塊が転がっていた。
 空色、だった。私の従者の瞳の色だ。エルフには珍しくない色だが、彼のそれは、しばしば不安気に揺れながらも、同時に誠実さを感じさせるものだった。
 その瞳の色を思わせるような、半透明の、水飴(みずあめ)のような物体。
 スライムだ。
 空色のスライムが、私の従者の死体に取り付いて、それを消化していた。まだ死んでから大して時間も経っていないだろうに、もはや元の姿が分からない。
 隣に置かれている荷物と、彼が身に着けていた武器や装身具。それらが遺体の身元を示していた。
 周りをよく見ると、川の方から赤黒いものが続いていた。恐らく、川の中か対岸、またはその奥で負傷した。その時の傷が致命傷となり、ここまで逃げ延びたものの、亡くなった。
 スライムは、生きているものは襲わないという。だから、たまたまだ。彼が力尽きてから通り掛かり、ひょっとしたら何日も食べていなかったかも知れない、ごちそうだ。
 それでも、私は恨めしい。死に顔くらい見てやりたかった。こいつを殺せば、少しは彼の無念を晴らせるだろうか。
 そう思って、腰の短剣に手をやろうとした時。

『あんた……姫……?』

 頭の中に声が響いた。

『……気を付けろ、対岸だ!』

 何かが動いた。とっさに身を翻すと、たった今まで私がいた所に、矢が突き刺さっていた。
 追っ手が姿を現した。言うまでもないが、全員エルフだ。林の中から何人かが出てきて、対岸の広場へと歩を進める。この距離では逃げ切れない。

『あいつら……』

 私は覚悟を決めたが、次の瞬間には、予想もしていなかったことが起きた。
 巨大な刺(とげ)。
 広場の地面から何本もの刺が突き出して、彼らを串刺しにしていた。

『あんたの従者……だな。こいつもあれにやられたんだ』

 私は混乱する思考で、それでも、この機を逃しては、この機会を手放してはいけないと、そう悟った。

『俺を連れてけ。道案内してやる』

 そう主張するスライムを、スライムだ、こいつがしゃべっているのだ、私は抱え上げて。落ちていた荷物も、持てそうなものは持って。

『大丈夫かよ。俺が持ってやれればなぁ』

 私はその場を逃げ出した。
 脳裏に浮かぶ光景があった。王宮の壁や天井に描かれた、物語の英雄。
 その透き通った、空色が。
0421三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/28(日) 22:12:12.80ID:GHA6itCK
お題→『水飴』『小川』『空色』『とげ』『エルフ』締切

【参加作品一覧】(1/2)
>>394【受難な姉を救え】
>>402【途中まで書けたけど、没作で……申し訳ねえ、最近調子悪いわ】
>>405【エルフ水飴】
>>409【私の可愛い救世主】
0423三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/28(日) 22:14:26.20ID:GHA6itCK
で、、では、久しぶりの盛況ですが、書き出しの一文指定をやります!

お題安価>>424-427
書き出し安価>>428
0424この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/28(日) 22:14:49.64ID:9utiRqHN
ピアノ
0425この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/28(日) 22:16:51.04ID:C5i/j5S5
ろうそく
0426この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/28(日) 22:18:02.09ID:Qy6Lq82P
電波女
0427この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/28(日) 22:20:08.08ID:tWIjXVMN
オオカミ
0429三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/28(日) 22:25:35.70ID:GHA6itCK
☆お題→書き出し『侍の国、僕らの国がそう呼ばれたのは今は昔の話』+『ピアノ』『ろうそく』『電波女』『オオカミ』から1つ以上選択

☆文字数→3レス+予備1レス以内に収めれば何字でも可。
1レス約1900字、60行が上限。

☆締め切り→7/5の22時まで。
締め切りを過ぎても作品の投稿は可。

【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】
0430三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/28(日) 22:27:58.06ID:GHA6itCK
また今週はすごい早いね・・・なんか書き出しも雰囲気あるね・・・!

と、ともかく、引き続きお題スレをよろしくおながいします
0431この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/28(日) 22:52:58.36ID:FmRPJz2J
……二日間覗かなかっただけなのにこんなに作品が
>>402
お題の小川とシンクロするかの様な透き通った感じのお話ですね
思考が行き詰まった時には一旦休んでから再び見直すのも良いですよね

>>405
某ゲームでエルフは植物だそうですが……w
水飴が作れるのであれば
その内エルフ麦酒なんかも作られそうですね

>>409
「地球は狙われている」から常に始まるマンガを思い出しました
少年探偵の意外な正体
これって永遠の少年探偵って事ですかね?

>>419
転生者が姫と出会うまで
二人の逃避行はいつまで続くのか?
0432三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/28(日) 23:26:46.14ID:GHA6itCK
>>416
なるほどー、平和な世界の(言動だけは)和風エルフ
主人公の役得もありつつ、楽しい旅になりそうですw

>>431
感想ありがとうございます!
この時点では緊迫してますが、本編では意外とのんびりだったりします
0433この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/29(月) 07:43:48.46ID:dRJmo/25
>>432
感想有り難うございます
相変わらず、削りまくった為に謎が多いお話になってしまいましたorz
0434この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/29(月) 08:04:29.62ID:FYkS5tuQ
>>431
感想ありがとうございます!
少年探偵の正体が実は異世界から来たエルフというまさに超展開でした
過去作の雰囲気をなるべく壊さずに展開するのって結構難しいんですけどこれまた楽しいんですよね
楽しんでいただけてすっごく嬉しいです!
0435この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/29(月) 22:20:56.72ID:FYkS5tuQ
>>429
使用するお題→書き出し『侍の国、僕らの国がそう呼ばれたのは今は昔の話』+『ろうそく』『オオカミ』

【謎の祈祷師、現る】(1/3)

「侍の国、僕らの国がそう呼ばれたのは今は昔の話・・・」
「ねえシグレ、何を言っているの?」
「あっ、ごめんなさい」

日本という国から遥々このアメリカにやって来た謎の女サムライ・シグレ。
自由気ままにさすらいの旅を続ける女ガンマン・シンディとはかつてライバル関係で敵同士であったが、
幾多の激闘を互いに力を合わせて乗り越え、今では彼女の親友にして良き旅の仲間である。

「侍の国がどうのこうの言ってたけど何なの?」
「ある将軍の城に忍び込んだ時、その書庫にあった一枚の巻物にそう書いてあったの。誰が書いたか分からない、きっと日本の未来を予知するものなのかもしれない」
「どんな国も時が進めば必ず変化が起こるってことよ。そんなに心配してちゃ前へ進めないわよシグレ」
「そうよね、時代は移り変わっていくものだわ」

シグレはシンディと共に彼女の愛馬サンセットの背中に乗ると、荒野の中を再び走り出す。
サンセットもシグレに非常に懐いており、彼女を立派な旅の仲間の一人として認識していた。
そんな彼女達の姿を岩陰から誰かがじっと見つめていた。

「あの小娘、こんなところにいたのか。絶対に捕まえて息の根を止めてやるわイッヒッヒッヒ!」

日が暮れて夜になった。次の町まで辿り着くことができなかったシンディとシグレは、今夜は野宿することに決めた。
とても暑苦しい荒野も夜になると一気に冷え込み、身震いがするほど寒くなる。シグレはまだそれに全然慣れていなかった。

「に、日中はあれだけ暑いのに、よ、夜になったら、こ、こんなに寒いなんて。変わった国ね。ハッ、ハックシュン!」

そんなシグレにシンディは自分のコートを着せ、スカーフを首に巻いてあげた。

「大丈夫?これで少しは温かくなるはずよ」
「あ、ありがとうシンディ」

シンディのコートとスカーフから彼女の温もりが伝わり、シグレはいつの間にか眠りに落ちてしまった。

「あらあら、すっかり寝ちゃって。シグレったら可愛いんだから」

スヤスヤと眠るシグレの頭をシンディはそっと優しく撫でる。サンセットも眠りについてまだ間もない時だった。
一匹の大きな白いオオカミがシンディの目の前に現れた。

「オ、オオカミ!こら、近づくと撃つわよ!」

牙を剥き出しにし、ヨダレを垂らしながら自分の方に歩み寄るオオカミにシンディは銃を向けて威嚇するが、そのオオカミは一切動揺しない。
オオカミはそのままシンディの足に思いきりガブッと噛みつき、彼女をズルズルと引きずり始めた。

「ウワワワワッ!こ、こら何するのよ!」

シンディの声を聞いたシグレとサンセットが飛び起きる。

「あのオオカミ、まさか!冷静になってシンディ!」
「れ、冷静に?そうか!」

シグレの一声でシンディはすぐに落ち着いて一旦冷静になる。するとその白いオオカミは煙となり姿を消してしまった。
0436この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/29(月) 22:21:48.73ID:FYkS5tuQ
【謎の祈祷師、現る】(2/3)

「消えた!ふぅ、助かったぁ。さっきのオオカミ、シグレの妖術?と何だかすっごく似てたわ!」

シンディは、自らの心の奥に潜む恐怖心を取り除くことで危機を回避したのだ。

「私と同じ術を使う、ということはまさか!」
「そのまさかだよシグレ!」

シンディとシグレの目の前に現れたのは、3本のロウソクを鉢巻に巻いた、変な姿をした白い着物姿の女だった。

「私を忘れたとは言わせないわよ、シグレ」
「あ、あんたはヨツユ!何でここに!?」

その女はヨツユという祈祷師で、かつて強大な勢力を持つ将軍の仲間の一人だった。
その将軍はシグレの手によって全滅させられたものの、ヨツユ自身は得意の妖術で欺くことでなんとか生き残り、シグレに復讐を果たすべく彼女をずっと探し回っていたのだ。

「将軍もろとも斬り殺したはず!まさか生きていたなんて!」
「あれで私を殺したとは思い上がりも良いところね。まあいい、ここであなたの息の根を止め、首を持って帰らせてもらうわ!」

ヨツユは頭のロウソクを一本取ると、口から黒い息を炎に向かって吹きかける。
黒い息に包まれたロウソクの炎は大きくなり、それはウサギのような姿に変化した。

「"黒炎兎"(こくえんと)!!」

赤い目を光らせ、激しく燃える黒い炎のウサギがシグレに向かって襲いかかってきた。
それに対抗すべく、シグレは手の平から冷気を発生させ、その冷気をキツネのような姿にさせた。

「"氷柱狐"(つららぎつね)!!」

炎のウサギと氷のキツネが激突する。妖術によって生み出された熱と冷気の怪物が互いにぶつかり合い、蒸発し消えてしまった。

「腕はまだまだ衰えていないようね、シグレ」
「ハァ、ハァ!」

妖術は技によっては自らの体力を極限にまで削って繰り出すものも多く、さっきの技でシグレの体力は一気に消耗してしまった。

「どうやら今ので一気に体力を使い果たしてしまったようね。ここでトドメを刺してあげる!」

ヨツユの腕から青白い炎が現れ出す。

「さあ、これで観念しなさい」
「ちょっと待ちなさいよ」

するとシンディがヨツユの腕をギュッと強く掴んで邪魔をする。
0437この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/29(月) 22:22:42.20ID:FYkS5tuQ
【謎の祈祷師、現る】(3/3)

「貴様、何をする!放せ!熱くないのか!」
「うん、全然熱くない」

青白い炎に包まれている自分のの腕を掴んでいるというのに、全然熱がる様子を見せないシンディにヨツユは思わず動揺する。

「あのねえ、私の大切な親友に手を出さないでくれるかしら。ちょっとでも傷つけたら命は無いと思った方がいいわよ」
「黙れ!こうなったら貴様からまず地獄に送ってやるわ!」

しかし、以前のシグレとの戦いを通じて妖術の「心に潜む恐怖心を狂気へと実体化させる」という神髄を
見事にまで打ち破ったシンディにはヨツユなんて全く敵ではなかった。

「き、貴様、恐怖心というのを全く抱いていないというのか!」
「アメリカのガンマンはね、少しでも恐怖に屈したらそこで負けなのよ!」

ヨツユの腕を強く掴んで持ち上げると、シンディは彼女の腹に勢いよく膝蹴りを食らわせる。

「グ、グウェヘ!」

そのまま銃で脳天を撃ち抜かれ、ヨツユは頭から血を流しながら絶命してしまった。

「シ、シンディ、ありがとう」
「気にしないでシグレ。親友に手を出す者は絶対に許さない、ただそれだけのこと」

気づけば空に太陽が昇り、いつの間にか朝が来ていた。

「シンディ、あなたって強いわね。感心しちゃうわ」
「そんなことないわ。本当のことを言うと私、子供の頃からすっごく臆病で怖がりなの。でも今、私には守るべき大切な存在がいる」
「守るべき大切な存在って?」

シグレにそう問われたシンディは、彼女に向かってニコッと微笑む。

「ま、まさか!」
「そう、あなたよシグレ!今、あなたという親友で仲間という大切な存在がいるから私は強くなれる」

サンセットもシンディの言葉に賛同しており、シグレの顔をペロッと優しく撫でる。

「シ、シンディ、そう言われると照れちゃう。あ、ありがとう」
「あらあら顔を真っ赤にしちゃって。シグレは本当に可愛いんだから!」

シンディとシグレを背中に乗せ、サンセットが再び荒野の中を走り始めるのだった。
0438この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/30(火) 12:49:22.82ID:ayhHh/k8
>>435
ハイパーウエスタンファンタジーな様相を呈して来ましたねw
迫り来る敵と困難を打ち破った後の友情
良いですよねw
0439三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/06/30(火) 14:31:43.86ID:tVx4kJHb
>>435
正直シンディシリーズ用っぽさはあった^^;
またすごい外見と技ですがw、この2人の敵ではなかった・・・
0440この名無しがすごい!
垢版 |
2020/06/30(火) 15:35:43.67ID:bkFnCRfG
>>438
>>439
感想ありがとうございます!
そうですね、リアル系ワイルドウエスタンだったのにいつの間にか段々とファンタジー化してますねw
自分でも書いててひたすら思ったのがシンディどんだけ脳筋なんだよ…
ま、まあ己の力で相手を無理やりにでもねじ伏せてこそアメリカのガンマンだぜ!ということで(笑)
楽しんでいただけてすっごく嬉しいです!
0441この名無しがすごい!
垢版 |
2020/07/01(水) 16:58:31.42ID:VrCMWPSq
>>429
使用するお題→書き出し『侍の国、僕らの国がそう呼ばれたのは今は昔の話』+『ピアノ』『オオカミ』

【黒猫レイチェル VS オオカミ女】(1/3)

「侍の国、僕らの国がそう呼ばれたのは今は昔の話・・・」
「うわあ、すっごい展開になってきたな」

ある朝のこと、ライアンはリビングのソファーに座ってテレビに夢中になっていた。
しばらくすると、起きたばかりのレイチェルがフワァッと大きな欠伸をしながら下りてきた。

「おはようライアン!あれ、何を見ているの?」
「あっ、おはようレイチェル。日本がエイリアンに襲撃されるドラマでさ、強い侍がみんな殺されてエイリアンに侵略された日本を、一人の少年が孤軍奮闘して救おうとする内容なんだ」
「結構スペクタクルね…ってライアン、呑気にドラマを見てる場合じゃないでしょ。ハロウィンの準備をしなくちゃ!」
「そうだった!ごめんね、すっかりドラマに無我夢中になってたよ」

そう、今年もシチリアにハロウィンの季節が訪れたのだ。ライアンは早速、子供達に配る美味しいお菓子作りの準備にとりかかる。
レイチェルは、ハロウィンが来て興奮する一方で不安に思っていることが一つだけあった。
それは、いつも着ているお気に入りのガンマン衣装でパーティーに参加できるかどうかということだった。
一昨年は市長の女秘書に奪われる、昨年は買い物帰りにうっかり沼地に落ちて汚してしまったために着られなくなるなど、2年連続で散々な目に遭っているのだ。

「今年こそはいつものガンマン衣装で出られたらいいんだけど・・・」
「今年も、というか毎年ハロウィンは黒猫の衣装で出たらいいと僕は思うよ」
「だーかーらー、黒猫はあくまでも「もう一つ」の姿なんだってばライアン!私の本来の姿は、さすらいの女ガンマンなんだから!」
「黒猫姿のレイチェル、僕はすっごく大好きだよ。そう怒らないで」

冷静になって考えてみれば、あの黒猫の衣装はマンネリ化しつつある余興をもっと楽しんでもらうために、ライアンが厳選して買ってきてくれた大切なものだ。
それを嫌がるということはすなわち、ライアンの想いを無下にしているのと同じだ。レイチェルはそう考えると、彼に対して罪悪感を感じてしまった。

「つい熱くなっちゃって、本当にごめんなさいライアン。私、今年も黒猫の衣装で参加するわ」
「無理しなくてもいいんだよ、レイチェル。僕はただ、黒猫姿の君がガンマン姿と同じくらい大好きだって言いたかっただけだよ」
「だって、ライアンがこの黒猫の衣装を買ってくれたおかげで、余興が以前よりずっと楽しくなって評判も良くなったのよ。だから、私はこれを着る!」
「レイチェル、そこまで言ってもらえるなんて。僕、すっごく嬉しいよ!」

でもライアンは最初から知っていた。レイチェルは黒猫の衣装を少し嫌がっているように見えて、本当は非常に気に入っているということをだ。

「(レイチェルったら普段はとても純粋なのに、時々素直になれないところがあるな。まあ、そこが凄く可愛いんだけどね)」
「さあ、今年も黒猫レイチェルで行くわよー!黒猫になった私を止められる者は誰もいない!」

すっかり有頂天になっているレイチェルを、ライアンは微笑ましそうに眺めていた。
準備も整ったパーティーの前日、ライアンとレイチェルはのんびりと散歩していた。
大きな湖のある公園の中を歩いていると、木々に囲まれるように佇む廃虚を見つけた。
その廃虚の中にはピアノが置いてあり、ここ最近、誰もいないのにピアノが鳴る音が聞こえるという怪奇現象が多発しており、噂になっていた。

「誰もいないのにピアノが鳴るなんて、まさか幽霊の仕業かしら?」
「気になるのは分かるけど、廃虚だからといって不法侵入だけはもう絶対に勘弁してくれよレイチェル。もし、またしたら助けないし許さないよ」
「も、もちろん分かってるわよライアン!あの時と同じ過ちはもう繰り返したりしないから安心して!」

好奇心旺盛が故にトラブルを起こしてしまうことのあるレイチェルに、ライアンは心配で気が気でない時もあった。
0442この名無しがすごい!
垢版 |
2020/07/01(水) 16:59:26.23ID:VrCMWPSq
【黒猫レイチェル VS オオカミ女】(2/3)

そしてハロウィン当日、年に一度の盛大なパーティーが開催された。
黒猫姿で参加したレイチェル、そしてライアンに子供達がハッピーハロウィーン!と嬉しそうに駆け寄ってくる。

「わあ、今年も黒猫のレイチェルさんだー!」
「ガンマン姿もいいけど、黒猫も素敵だね!」
「ウフフ、ありがとう!」
「ライアンさん、美味しいチョコチップクッキーくれないとイタズラしちゃうぞー!」
「アハハ!ほらほら落ち着いて、一人ずつ順番にね」

黒猫姿のレイチェルに握手を求めたり、ライアンからクッキーを貰ったりと子供達は大はしゃぎだった。
今年も楽しいパーティーは無事に幕を閉じ、ライアンとレイチェルは家路についた。

「今年も最高のパーティーだったね、ライアン!」
「ああ、来年もまた待ち遠しいね!」
「チョコチップクッキー、まだ残ってる?」
「もちろんだよ、ほら」

ライアン特製のチョコチップクッキーを、レイチェルは嬉しそうに齧る。
あの廃虚の近くを通りかかった時だった。美しい音色のピアノが聞こえてくる、誰もいるはずがないのに。
その音を聞いたレイチェルとライアンがその廃虚に駆け寄り、こっそりと窓から覗く。

「や、やっぱり誰もいない。本当に幽霊の仕業なのか?」
「ちょっと待って!ライアン、よく見て!」

よーく目を凝らして見ると、誰かがいてピアノを弾いている。それは真っ黒なオオカミの姿をしている。

「「オ、オオカミがピアノを弾いてる!?」」

そのオオカミはレイチェルとライアンの存在に気付き、勢いよく扉をパンチして破壊して姿を現した。
二足歩行しているオオカミの化け物と思いきや、それはオオカミの衣装を着た人間で女だった。

「また会えたわねレイチェル、そしてライアン。私を覚えてる?忘れたとは言わせないわよ」
「ま、まさか前市長グレーズさんの元秘書!?」
「正解。覚えてたようで嬉しいわ」

現在は市長を辞任してドイツへと引っ越し、シチリアにはもういないグレーズさんの元秘書であるリーソンという女だった。
2年前、レイチェルのガンマン衣装を盗んだ上、ライアンをも誘拐した張本人だ。3ヶ月ほど前、大量の保釈金を払うことで釈放されたのだ。

「そう、この私リーソンよ。そういえば名乗るのは今回が初めてだったわね。目的はいたってシンプル。あんた達を誘き寄せ、復讐を果たすためにこの廃虚を利用したの」
「逆恨みも甚だしいわね。こうなったら、あんたをまた刑務所に逆戻りさせてあげる!」

オオカミの衣装を身につけたリーソンがライアンに襲いかかろうとしたが、黒猫姿のレイチェルが俊敏な動きでそれを阻止する。

「ライアン、私のことはいいから早く逃げて!必ず、生きて帰るから!」
「そ、そんなこと…!」
「いいから!私はライアンが無事なら、それだけで十分よ」

ライアンはグッと涙を流すのを堪えると、その場から走って逃げた。

「愛する妻を置いて逃げるなんて、最低の夫ね」
「あんたがそれを言う資格なんてどこにもないわよ!」

黒猫姿のレイチェルはその俊敏さを活かしたパンチやキックで、オオカミ姿のリーソンに攻めていくもののダメージがなかなか入らない。

「オオカミって結構タフな動物よ。パワーも体力もただの猫なんかよりも圧倒的に上!あんたの攻撃なんて痛くも痒くもない!」
「そ、そんな!」
0443この名無しがすごい!
垢版 |
2020/07/01(水) 17:00:35.24ID:VrCMWPSq
【黒猫レイチェル VS オオカミ女】(3/3)

黒猫フォルムは俊敏性は優秀ではあるが、決定力にやや欠ける上に体力に難があり、長期戦や体力に優れた相手となると非常に分が悪い。
とにかく早めに決着をつけないと、自分がとことん不利な状況に陥ってしまう。

「ハァ、ハァ…!」
「あらあら、もうスタミナ切れなの?情けない黒猫さんね」

リーソンがオオカミのパワーを活かしたパンチで、レイチェルの腹を勢いよく殴る。
レイチェルは血を吐き、そのまま気を失って倒れそうになる。

「さあ、これがあんたの最期よ。後でライアンも一緒に合わせてあげる、あの世でね」

まさに絶体絶命、万事休すかと死を覚悟したその時だった。突然、カチャカチャと拍車が鳴る音が聞こえてくる。

「そこまでだ!凶悪なオオカミ女め!」

現れたのはなんと、レイチェルのガンマン衣装を身につけたライアンだった。

「ラ、ライアン!!」
「助けに来たよレイチェル!」
「ふん、戻ってきたところで私に勝てるとでも思ってるの?」

リーソンが満月を背に高くジャンプして飛び蹴りを喰らわせようとした時、ライアンは銃を取り出し、彼女の右脚に向かって発砲する。

「グワアッ!ま、まさか本物の銃を持っていただなんて!」
「ガンマンなんだから銃を持っていないとおかしいだろ」
「や、やられた・・・!」

右脚から血を流しながら、そのままリーソンは倒れてしまった。その後、駆けつけた警察によってリーソンは逮捕、また刑務所へと逆戻りとなった。
ライアンはレイチェルを抱え、急いで家に帰るとすぐに手当てをした。

「これでよしっと!もう大丈夫だよ、レイチェル」
「本当にありがとう、ライアン。まさか私のガンマン衣装を着て助けに来てくれるなんて。すっごくカッコよかったわ!」
「大切なパーティーを危険に晒したまま逃げるなんて、そんな薄情なことできるわけないだろ。とにかく本当によかった」

ライアンによしよしと優しく頭を撫でられ、レイチェルは嬉しくなり、いつの間にか眠りに落ちてしまった。
この出来事はまた新聞の一面を飾るほどの大きな話題となった。

「去年はマンティコア騒動、今年は元秘書がオオカミになって復讐、ハロウィンはもう何が起きるか分からないな」
「早いけど、もう来年が心配で怖くなってくるわ」
「気にしないでレイチェル。大丈夫だよ、この僕がいるからね」
「ウフフ!そうね、優しくて強いライアンがいるから安心よね!」

互いに顔を合わせて笑い合うライアンとレイチェルなのであった。
0444三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t
垢版 |
2020/07/02(木) 13:36:24.39ID:eMnBW9NT
>>441
絶好調ですねw、なんかこのシリーズを読むと安心する・・・
お前(が犯人)か!!、からの意外な方法での逆転!、次のハロウィンはどうなってしまうのか
0445この名無しがすごい!
垢版 |
2020/07/02(木) 18:54:26.85ID:F4dBhA74
>>444
感想ありがとうございます!
あのハロウィンエピソード第一回目のあの元秘書がまさかの再登場でした、ナタリーもでしたがこの女も逆恨みがホント甚だしいw
文字数やスレ数の関係で展開が急になって、バトルの決着がちょっとあっけなさ過ぎだったのが残念でした
楽しんでいただけてすっごく嬉しいです!
0446この名無しがすごい!
垢版 |
2020/07/05(日) 21:20:54.53ID:gnUcRo2N
>>441
またしてもハロウィンに事件がw
どこぞのクリスマスに事件に巻き込まれる刑事の様ですねw
次のハロウィンにも、コスプレ犯が襲撃に来るのでしょうか?
0447この名無しがすごい!
垢版 |
2020/07/05(日) 21:22:34.24ID:gnUcRo2N
>>429
お題:書き出し『侍の国、僕らの国がそう呼ばれたのは今は昔の話』+『ピアノ』『ろうそく』『電波女』『オオカミ』

【ぶんげいぶ】(1/2)


「『侍の国、僕らの国がそう呼ばれたのは今は昔の話』」
「何の話? ってか何処目線?」
「いや、こう言う書き出しだったら、近未来ファンタジーっぽいかなぁ……って」

 相坂高校文芸部の中島 浩人は、同じ部員である磯谷 勝にそう言った。

「……明治以降なら、だいたい当て嵌まる気がするんだが。てか、その書き出しにはファンタジー要素ないと思うぞ?」
「そう?」
「そうね!! 『大樹の葉っぱはピアノの様。雨を弾いてメロディーを奏でるの』これ位の書き出しじゃなくっちゃ、ファンタジーじゃないわね!!」

 女生徒の突然の声に、浩人がビクリと身をすくませる。
 勝は嫌な物を見たと言う様な表情で、女生徒……花澤 曄子に視線を向けた。

「うわっ電波女が来たよ……お前のソレは『ファンタジー』じゃなくて『メルヘン』だからな? それもポエム系の。第一、お前の書き出しからだと浩人の書きたい話にはつながらないだろ」
「何よ!! なら、アンタなら、どういう書き出しにするって言うのよ?」
「いや、どんな書き出しって、取り敢えず、内容が分からんと書き出しなんて決められないだろうが、なぁ、浩人」

 勝に話を振られ、浩人は「えっと、そうかも知れないね」と、曖昧に返事をした。

「ほら、浩人だって私に賛同してるわよ」
「浩人の返事のどこにそんな要素があった。この『電波女』」
「あ! じゃぁ『侍の国、大樹の葉っぱがピアノの様に雨を弾いてメロディーを奏でている僕らの国がそう呼ばれたのは今は昔の話』でどうだろう?」
「あほか!」
「素敵ね!」

 正反対の意見になり、二人が睨み合う。

「つなげれば良いって物じゃねぇだろう? そもそもそれはファンタジー要素じゃねぇ!!」
「あら、素敵じゃない。浩人きゅんが私の為に考えてくれたのよ? やだ、嫉妬? 男の嫉妬なんて醜いわよ?」
「ああ! ホントにもう話が通じねぇ電波女だよコイツは!!」

 二人が喧嘩にならない様にと考えた浩人は、取り敢えず両方の意見を尊重して見たのだが、どうやら逆効果だった様だ。
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

ニューススポーツなんでも実況