有名な小説家を何人もデビューさせたという編集者が講師をする教室に一年ほど通った。
「小説に形式はない」
「いい小説とという定義はない」
早稲田出身のその講師は言っていた。
「いい小説と悪い小説だけがはっきりしている」
とも言っていた。
教室に通っていた間、気がついたのは、その講師は
生徒間の評価の高い作品ほど、批判して貶めた。
「いい作品じゃないよね」と開口一番に言い、その人がスランプに陥ると、
「苦しんでからが本物だよ。順調に書いているうちはまだまだだね」
その人は次の授業から来なくなった。
(長文済まない)

彼が育てたという作家は、今や文壇の重鎮となっている女性作家ばかり。
しかし彼の授業を受けて、私は、その講師が有能なのでは決してない、
彼のひどい指導に屈しなかった作家こそが素晴らしいのだと気がついた。
結果的にそう考えるに至ったとしても、自分ひとりで苦悩しているよりは、
講師やいろいろな生徒の面白い作品と接して経験したことは、貴重な経験だった。
行けるなら、決して無駄にはならないと思うので、小説教室には、行った方がいいと思う。