深水黎一郎
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神泉寺が真相を暴いたあと、テノール歌手に、
「もうこの話をお互いにするのはやめましょう」というシーンがある。(文庫版361p)
俺はここがずっと引っ掛かっていたんだよね。何で? 別にいいじゃん、とね。
でもf4LVyJieの説明を聞いて納得したわ。
これ神泉寺も有希子の正体見抜いてるね。
だけどそれが和行に知られることは有希子は死んでも嫌に違いない。
だから神泉寺は「ゼーレンセンとは何食わぬ、顔で今まで通り接してください」と言っている。
そしてあのラスト。最後まで和行は何も知らないまま、女の愛によって救われる、と。
まあ裏設定なんだろうけど、鳥肌もんですな。 有希子は一緒に食事しながらプレゼントもらったんだよね。婚約者から。
その後、メル欄される為に出かける前に。
そしてそれが事件解決の決め手になる。
どんな気持ちだったか。男には推し量れない。
男の方は意識的には何が起こったかは言葉では把握してないけど、
(天然でそれで構わない天才だから)
でも無意識の中では理解してて、自分がどんなに酷いことを、
彼女に強いていたのか、してしまったのか、うっすらとはわかっていて、
喪に伏している感じかな。 話切り替えて。
従来のオペラは美男美女大物天才悪党、エゴの塊、
ドン・ジョバンニじゃないけど、地獄に落ちたって悔い改めない、
現実離れした人間の大立ち回りだから面白いとされてたけど、
トスカの台本作者とプッチーニはそれを脱構築したと言うのが、
トスカの新演出の話だよね。
自由の闘士に、堂々と自己主張する美女。
体制派だが切れ者の悪の権化。
そういうエゴ尖らした人間たちの葛藤のドラマだと思われてた。
従来のオペラみたいな。
しかし、そう考えると歴史に残る革命家でもないし、警察署長では、
微妙にキャラが弱い。わざわざ取り上げる程の存在ではない。 続き
革命家や美女や切れ者のような分かり易い存在がドラマの主役じゃなく、
実はそれらの影に隠れ自分は悪くないかに装いながら、
巧妙に悪をなし、己の欲望を通す私達と等身大の卑小でリアルな悪こそ、
本当に恐ろしいことをして我々を苦しめ破滅に追いやるとの現実。
しかし、それを描いてるのは作中で批判的に言及された、
オセローのイアゴーのが早いんだよね。
あのシェイクスピアの台本虚心に見れば、真の主役は、
高潔の士だったのに、信じられなくなり破滅したオセローではなく。
破滅に追いやり世の中の正義や美徳など何の価値もないと思いのままに、
破壊するイアゴーが主役でもない。
その思いのままに見えるイアゴーが実は妻がオセローと、
不倫しているとの疑念に苛まれだからこそ美徳を壊し、
高潔の士を破滅させずにはいられないんだが、それこそ独り相撲で、
イアゴーこせその卑小さからは逃れられず破滅してしまう。
ラスト美徳や大きな悪とかの大きな物語、ドラマではなく、
人間的な卑小な部分でこそ人間は道を誤り破滅するというテーマは、
実は舞台前方のオセローと共に何もしゃべらず繋がれている、
イアゴーとの二重唱であり、そして絶唱を歌ってるのはイアゴーなんだよ。
完全に主役はイアゴーでそう演出しないといけない。
ヴェルディはそこらへんわかってないし。
深水さんもわかってないでその点は浅い。 一般のオセロー理解はオペラばりの高潔と悪の大物の巨人対決だけど。
高潔の士のオセローが美徳を失い破滅することがテーマではなく、
悪の天才、イアゴーがあらゆる美徳を破壊させることがメインでもなく、
悪の天才であるかにうそぶくイアゴーが実はあまりにも普通な、
嫉妬や疑心暗鬼で見当違いの完全に間違った意味のない過ちを、
冒し続け破滅する、我々の現実と陸続きの、
そのあまりの卑小さ、悪のみみっちさとどうしょうもなさ、
我々の悪の本当のその素性隠しきれない真実が問題で。
トスカにはるかに遠く先行している。 まあ、虚実被膜、どこまで誇張し、ありえないことや嘘を紛れ込ませるか、
反対に真実らしさを整え、読者の日常に引きつける描写するかは、
フィクションである限り永遠の課題だけどね。
荒唐無稽なタイプのオペラの現実離れしたキャラの誇張された言動も、
その中に人間の一面の真実が、出ているから人は楽しむんだし。 深水さん、オペラもいいけどバレエの薀蓄でミステリを書いてくれないかなあ。
バレエは所詮おとぎ話だから無理か… 藤枝和行は不思議な人物で探偵としても凄くて、神宮寺と同格なんだよな。
トスカでは真相にいち早く気付いて。
海埜や神宮寺が馬鹿だから、事件解決が遅れた。
藤枝の指摘してた件を潰してればとっとと事件は収束していた。
ジークフリートではあれを気づけ推理しろと言うのが無理で、
神宮寺は反則。物語のご都合主義。
藤枝が自力で探偵やる番外編があっていい。
歌手としては、自分を最高の楽器として維持できる天才。
プロフェッショナル。 そういう天才が、自分や自分の身の回りに起こっていることに、
全く無知で白痴に近い盲目というのがドラマとして面白いんだけどね。 トスカでジークフリートの事件予告して。
ジークフリートで美人薄命の謎の境涯予告して。
他にそういうのってある? 瞬一郎も微妙にへぼいキャラ、へぼい探偵役で。
確かにものすごい知識量で素人を黙らせる力はあるが、
所詮はアマチュアのディレッタントで。
音楽のことは音楽家にはかなわない。芸術のことは芸術家にはかなわない。
世界的演出家にはオペラの解釈ではかなわない。
オペラハウスでの殺人事件ではオペラ歌手に推理ではかなわない。
探偵としては二流。芸術愛好家としても二流。
どこまでいっても専門家にはかなわない愛好家にすぎないが、
死体現象だ象の生態だ。普通に生きていれば絶対役立つことはないだろう、
無駄な知識蘊蓄で読者を楽しませ想像できないところに連れてく。
そしてミステリーとはそういうもが大切だと肝心なことを教えてくれる。
天才芸人。エンターティナー。 >>84
この作者のことだから、こっそり何かを仕込んでる可能性はあるよな。
俺が驚いたのは美人薄命(2013)の老婆の名前が、
ジークフリート(2010)の中に既にちゃんと出ていること。
つまり作者は2010年の段階で、
あの五十路さんの辞世の句のトリックを考えていたことになる。 >>85
名探偵が何か一つの専門家になってしまうのは良くないだろ。
ホームズも御手洗も無職みたいなもんだ。
(御手洗はのちに脳科学の専門家みたいになって逆につまらなくなった。)
瞬一郎がプロのヴァイオリニストとかだと、やはり活動範囲が限定される。
そこで考えられたのが、FXで食っているという現代的な設定なんだと思うよ。 御手洗は脳科学の専門家とか言っときながら、
言ってることは利根川、立花の対談本の丸写しだからね。
島田荘司のしょぼさには笑った。
ただ御手洗は探偵としては神だし、島荘もほんまもんの天才だ。
神宮寺はアマチュア芸術愛好家としても探偵としても二流何だよな。
そしてそれがいい。
推理とは殆ど関係ない有効性は大してない、
蘊蓄で読者を楽しませるのが彼の神髄。 で神宮寺は面白い魅力的な名探偵だし、
深水は次代を背負う推理作家だし大好きだ。
ジークフリートは掛け値なしの傑作だけど、一言言いたいところがあって。
ジークフリートの剣で指輪論として、ブリュンヒルデの自殺は、
ワグナーがキリスト教徒なのに、云々のところがあって。
だけど、ロミオとジュリエット。トリスタンとイゾルデ。ウェルテル。
心中物が一つのジャンルとして成立し日常的に事件も起きる、
日本はおかしいにしろ、西洋だって文学の主題としても現実にしろ、
自殺は珍しくもないし、ましてワグナーはロマン派ど真ん中。
また、恋する相手に先立たれて残った片割れが、
いつまでも生きて年老いましたではリアルだけと、ドラマになんない。
普通の物語のお約束でも不思議じゃないし、
あそこまでぐだぐだ積み上げ続けた物語。
最後は派手に世界自体全部壊しご破算にしないとカタルシスもくそもない。
当たり前の展開でとてもじゃないが熱弁振るうところじゃないし。
むしろ死なない、世界が壊れなかったら逆に驚く。
神宮寺も深水も馬鹿なんじゃないかとしか思えなかったりする。
そういう間抜けなところも含めてスパイスだけどね。
外れ感、ぐだぐだ感が神宮寺の外れ気味のボールと調和して、適度な荒れ玉。
その推理の組み立てと合わさり読者を三振させる。
絶賛してるんだからねw そういう荒れ球だってことは作品構成の結構核心的なところだとも思う。
藤枝和行は神宮寺をしのぐくらいの名探偵で、プロフェッショナルな、
自分を楽器として最高に保つことに全てを捧げる天才だけど。
同時に有希子の気持ちも知らずに、自分はキャリアの当然の結果として、
裏に何もなしにバイロイトでタイトルロールが来たとうぬぼれてたり。
これから恋人が複数の人間相手にメル欄されるために出かけるのに、
全く何も気づかずに昼飯呑気に食ってたり、
彼女にどんなことがあってもこの男は自分で道を開ける、
余計なことせず黙ってついていけばいいとの信頼を与えるほどではない。
だけど天才。
人間とはそういうものだし、そのリアルさが深みを与えてるからね。 藤枝和行にしろ天才ではあっても、恋人の無念を独力で払って、
不当な世界の鎖を引きちぎる、世界をぶち壊す英雄ではない。
二流の天才。
あれが独力で謎を解き更にその底の悲劇を導き出し、
雄々しく立ち向かったら別の作品になる。
深水の作品には一流の天才は出てこない。英雄はいない。
アマチュア。ディレッタント。
世界は壊れない。世界は壊さない。
世界への視点はどこか冷めて受け入れている。
それが個性で。
ホームズや御手洗はどこか探偵なのに世界をぶち壊すんじゃないかとの、
ただ推理して世界を再構築してるはずが、世界の約束事、
秩序を壊してしまうんじゃないかとの危うさがあるし、
クイーンなんかには英雄じゃない自分への諦観の果てに、
逆説的に世界を壊すカタストロフがある。
そしてこれは言うまでもないがどれがより上と言う話でもないし。
美人薄命とかは英雄を書けない深水が、
クイーン風のカタストロフを狙った作品かもしれないとも思う。 いま手元に本がないので確認できないけど、
あれって自殺じゃなくて遺体が火葬になることが問題なんじゃなかったっけ?
北欧神話ではブリュンヒルデは火に飛び込むけど、
キリスト教の影響を受けた12世紀の「ニーベルンゲンの歌」ではブリュンヒルデはそうしない。
深水が完全無欠な英雄を描かないというのには同意。 というか、完璧なヒーローを描く方がずっと易しいでしょ。
紙の上ならばいくらでも完璧にできるわけで。
人間的な欠点がある主人公を描く方が難しいよ。 ここらへんで一旦集計しておくか。
深水作品で一番の傑作は?
美人薄命 2票
ジークフリートの剣 2票
花窗玻璃 1票
言霊たちの夜 1票
エコールドパリ殺人事件 1票
大べし見警部の事件簿(未刊行)1票
予想通りバラバラやね。ww
投票は随時受け付けてということでよろしく。 一番の傑作とは言えないかも知れないけど、
「世界で一つだけの殺し方」は、一番最初に読むにはいいかも。
深水ミステリーの楽しさがいっぱい詰まってる。 少なくとも本格ミステリー大賞の候補にはなってしかるべきだよな。
デビュー以来のテーマである「信用できない語り手」の技法を先鋭化させて、
それに物語性を融合しているからね。
教場やノックスマシンよりはずっとミステリーしていたよ。 この時期に敢えて主人公を靖国に行かせることに意味がある
たとえ文壇から弾かれても 美人薄命は本ミスでもそんな伸びなかったなあ……
割とミス研とか喰いつきそうだと思ったんだけど。 >>106
東大のミス研が一位に挙げてたよ。このミスだけど。 本ミス確認したら成城大学が一位、筑波大が四位に挙げてるな
東大は本ミスでは挙げてない。 慶応は挙げてないんだな
教授か何かじゃなかったっけ?この人。慶応の 慶応のミス研のやつから聞いた話だけど、
学内では公表していないみたい。
ミス研の顧問も、頼んだけど断わられたって言っていた。 >>114
どうだった?
自分はまだ買えていないんだが(明日買いに行く予定) >>115
んーーーーーーー普通かな。
よかったけどね。
この程度の作品なら他にもゴロゴロあるわけで
特別期待せず読めばいいかなと。 テンペスタはミステリーとして読むもんじゃない。
実際帯にもあらすじにもミステリーという言葉はない。
エンタメとして読めば最高に面白い。 深水センセイ、艦こればっかりやってないで小説を(以下省略) 深水センセイ、中日戦ばっかり見てないで小説を(以下略) 人間の尊厳と800メートル、島田荘司の短編、紫電改研究保存会に似てると思う こんなサイトを見つけた
ttp://www.birthday-energy.co.jp/
熱い試練って何なんだろ? 電波系だね。
でも本に関してはちゃんと読んでるね。 ジークフリートのレビュー読んでると、
「主人公が好きになれない」とか書いてる奴が多くて笑えると言うか萎える。
好きになれないように書かれている理由とか、考えない読者が多いんだな。 「大?見(おおべしみ)警部の事件簿 光文社 (2014/9/18) ¥1728
あと2週間で発売です。 10月3日発売
「ミステリーの最終定理」・河出文庫・¥734
これですね。 その河出文庫、タイトルが「最後のトリック」に変更されたのかな
今amazonにそのタイトルで出てる
そんでもって、書き下ろしではなくてどうもデビュー作の文庫化のようなのだけれど ウルモチを絶賛してた奴らw
全面改稿の失敗作だったわけだw 綾辻の館シリーズはほとんど失敗作だったのか。
いや、文章的には失敗だったけどさ。 おおべしみの事件簿、
なかなかの怪作でした。面白かった! テンペスタの賢一とミドリ達の苗字って描写されてる? ウルチモは現代文学の「信頼できない語り手」を意識したものだが、
アンフェア扱いされたので文庫ではミステリー的にフェアな形に書き直したらしいな。
ソースは深水のツイッター。 今『ウルチモ・トルッコ』を漸く読んでるんだけど、止めて『最後のトリック』を読むべきなのか? 全編推理合戦とか予告されると、つい期待してしまいますな 荒らしにレスしなくても・・・。
「ミステリーアリーナ」はダビンチの来年の隠し玉のコーナーに載っていたが、かなり面白そうだ。 ツイッターでこの作家の本の感想書くと御本人登場するんだな
俺はこき下ろすような事は書かないからいいけどエゴサしてると否定的な意見も目にしちゃうんじゃないのか 作家はほとんどエゴサーチしてるだろ。否定的な意見も当然目にしてる。
この人はスルー力あるけど、それがない作家はキツいだろうね。
相沢某のように鬱になるか、古野某のように訴えると言い出すか、百田某のように噛みつくか。 >>150
IDストーカーで有名なラノベおばさん忘れちゃダメだろ。 『ウルチモ・トルッコ』読了。
文章が上手くて、内容も面白かった。
けど、「犯人はあなた」ではないよ。
ところで、「ULTIMO」は「ウルティモ」じゃないのか? 作中で言及されている「外国語の読者にも有効」という条件は
クリアできていないんじゃないか。
あえてそういう設定にしたようにも読めるけど。 時間的制約の問題の方は、改題された文庫版の方はうまく処理していたと思うけどね >>155
>時間的制約の問題の方は、改題された文庫版の方はうまく処理していた
そうでしたか。
『最後のトリック』を読んでみようかな。 そこが改稿の最大のポイントですね。
あと、最後の方に挿入された「私」という作家の存在意義についての加筆はよかった 大べし見警部読んだけどギャグのセンスが古くて頭が痛くなった
ミステリーの皮肉もあんまり珍しいものでもないし
名探偵の掟は二十年近く前の作品だから許されてたって感じ
でも最後のキリストネタは少しクスリとした おおべしみは古臭いギャグを飛ばすキャラじゃないのかw ここまで言っていいのかなと思うくらいタブーに切り込んでいると思うけどね。
後期クイーン問題とか、西村京太郎批判とか。
名探偵の掟なんて目じゃない。 そうかな、面白かったけどな。
パタリロ読んでる気分になった。 逆にパタリロを知らんのだが、あんな感じなのか。ならば今度読んでみよう。
俺がいいと思ったのは、上にも書いたけど、
「後期クイーン問題なんてくだらない」「西村京太郎どうでもいい話でページ稼ぎすぎ」
等々、みんなが思っていても言えないようなことをズバリ言ったことだな。
そのためにおおべしみを初期から「育てて」いたんじゃないかと思ったくらい。 パタリロの単行本40巻代以降がオススメ。
傍若無人なキャラとか、メタっぽさとか。
話自体もミステリネタが多いし。
おおべしみ警部の事件簿、いろいろ揶揄してる部分はありつつも、
それも含めてミステリへの愛を感じたよ、自分は。 おおべしみの事件簿、本格ミステリー大賞候補記念あげ
だが評論部門とは!
聞いた時は意外だったが、それもアリだな。北村薫の前例もあるし。 あげと言いつつあげ忘れたw
おおべしみが獲ったら面白いんだがどうかな。 霜月が本命だろうが、例年目立たない評論部門に注目が集まるならば、
それだけでも予選委員GJだろ。
今さら千街とか候補にしたってしょうがないし。 それより、最後のトリックの売り上げがまだじわじわ加算してるのがすごい。
じわじわ売れ続けてる。 読者が犯人とか話題性ありまくりの本を、
売れない講談社の営業が無能だったんだろw 河出はニッチで面白そうな本に手を出してくれるから好きだわ 【傍若】悪名高いおおべしみ組の一員だけど質問ある?【無人】 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています