>あの人達は、正道を踏み外していると思う人を、誰彼となく自分の方へ
導きたくてたまらないのでございます。そうせずにいられない人達なので
ございます。何分にも自分達の行く道だけが正しいと真実思い込んでいる
のでございますから、別の道を歩む友達がやがて堕落し、それも永遠の
堕落に陥るのを平気で見ていられる筈はございません。また場合によっては
同じ人を、愛しながら同時に憎むこともできるに違いないのでございましょう。<

レッシング作、篠田英雄訳、『賢者ナータン』、p.194