自分はなろう系もSFに含めていて、昔ならSFの読者になる若年層がそちらに流れているため、早川のようなSFの老舗が衰退していると見ている
まずは、自分の知るなろう系作品から、各作品のシリーズ累計発行部数を見てみよう

「魔法科高校の劣等生」 累計1,500万部、「幼女戦記」 650万部、「縦の勇者の成り上がり」 780万部、「本好きの下剋上」 300万部、「この素晴らしい世界に祝福を!」 900万部
上にあげた作品はすべてWeb上で発表されたもので、そのうち魔法科高校以外は、すべて物語が異世界転生という設定になっており、「幼女戦記」以外すべてなろう発の作品

また、上の作品はすべてアニメ化&英語版の本が出版されており、米アマゾンではどの本にも数百件のレビューが寄せられ、いずれも☆の数4.5以上を獲得する人気作品となっている

個人的に驚かされるのは作者の執筆ペースと、物語の枠組みの広さや設定の複雑さで、このあたりは(風呂敷を広げ過ぎて未完に終わりそうな点も含め)伝奇小説に近いところがある
ネット上にポッと出てきた作者が、これだけ大きな枠組みの物語を書けるということ自体、むかし芥川龍之介と谷崎潤一郎が小説論争を展開した時代からすると隔世の感がある
戦前の小説化には、芥川龍之介や梶井基次郎のように長編の書けない作家がいたし、何巻にもおよぶ長い作品の場合、大抵は時代小説であることが多かった
ある意味、当時は、空想だけで現在のラノベのような長い小説を書くという技術は、まだ確立されていなかったといっていいと思う
そのため、日本の純文学では、私小説というものが異常に繁殖し幅を利かせることになる

こういった状況の変化について自分なりの意見をざっと述べると、一番大きな要素は、現代のなろう系やラノベがリアリズムという軛を捨てたことが大きいのではないかと見ている
要は、むかしの小説は本当っぽく書くことに価値を置いていたのに対し、現在のこれら小説は、ウソでも面白ければいいという自由な立場にいる点が大きい