ワイが文章をちょっと詳しく評価する![82]
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オリジナルの文章を随時募集中! 点数の意味 10点〜39点 日本語に難がある! 40点〜59点 物語性のある読み物! 60点〜69点 書き慣れた頃に当たる壁! 70点〜79点 小説として読める! 80点〜89点 高い完成度を誇る! 90点〜99点 未知の領域! 満点は創作者が思い描く美しい夢! 評価依頼の文章はスレッドに直接、書き込んでもよい! 抜粋の文章は単体で意味のわかるものが望ましい! 長い文章の場合は読み易さの観点から三レスを上限とする! それ以上の長文は別サイトのURLで受け付けている! ここまでの最高得点は75点!(`・ω・´) 前スレ ワイが文章をちょっと詳しく評価する![81] https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1511584351/ 第四十四回ワイスレ杯参加作品 前スレ >723 >722 >738 只今、二十一作品!(`・ω・´) ふぉおおおお! 第四十四回ワイスレ杯のルール! 名無しの書き込みを必須とする!(名乗った場合は通常の評価に移行する!) 設定を活かした内容で一レスに収める!(目安は二千文字程度、六十行以内!) 一人による複数投稿も可! 通常の評価と区別する為に名前欄、もしくは本文に『第四十四回ワイスレ杯参加作品』と明記する! ワイが参加作品と書き込む前に作者が作品を修正する行為は認める! 今回の設定! ワイの決めたタイトルに見合う一レスで完結した物語を募集する! 多くは語らない! 柔軟な発想と作品に仕上げる手腕に期待する! タイトル「背中に回した血塗れの手をあなたは知らない」 応募期間! 今から始まって二十日まで! 上位の発表は投稿数に合わせて考える! 通常は全体の三割前後! 翌二十一日の夕方に全作の寸評をスレッドにて公開! 同日の午後八時頃に順位の発表を行う! 只今、ワイスレ杯開催中!(`・ω・´) 前スレは書き込める文字の容量を超えた! 従って新スレにてワイスレ杯を続行する! 早めに気付いて良かった!(`・ω・´) ワイスレってひょっとして5ちゃんで一番重いスレなのかもねw 拠点である我が家に到着! 新しい投稿作品はないので周回を重ねることにする! 再びトレイルランニング!(`・ω・´) >>12 ありがとう! 冷えたビールが美味い!(`#・ω・#´) 「あー参った参った。降参だよ降参!」 バレット・クロームが両手の拳銃を地表に捨てて、ホールドアップした。 赤くて切り立った大岩に囲まれた、砂嵐の吹きすさぶ山間だった。 バレットの部下は、スティンガー・スコルプの早撃ちで、4人全員あたまに風穴を開けて地面に転がっている。 銃を抜く間もなくあの世に旅立ったのだ。 「観念したかバレット。ブツの在処を言いな! この星のどっかに隠したんだろ?」 スコルプはバレットを睨みつけながら、ケプラー186星人特有の金属音みたいな甲高い声でそう叫んだ。 キチン質の甲殻に覆われたスコルプの右手の銃の照準は、ピッタリとバレットの額に定められていた。 かかげた両手の指先一本動かしただけで、バレットも部下の後を追うことになるだろう。 だが、スコルプは気付いていないようだった。 バレットが、背中に隠した3本目の腕を自分の尻のあたりのガンホルダーに静かに伸ばして行くのを。 バレットは確か……トラピス1E星人のミュータントだったな。 奴の二つ名、三丁拳銃《トライガン》の由来を知っていれば、スコルプもこんなヘマはしなかったかも知れないが。 「さーて。なんの話ですかね……っと!」 バレットがとぼけた声を上げながら、赤金色をした三丁目の拳銃を抜いて、スコルプに撃ち放とうとした。 だがその時だった。 「ガアアアアア!」 悲鳴を上げたのはバレットの方だった。 胸に風穴を開けて、地表に膝を屈していたのは、バレット・クロームの方だった! 「な……なんでだ……!」 「フン。マヌケな野郎だ。『スティンガー』……俺の二つ名の意味を知らなかったのか?」 地表に倒れて苦しげに呻くバレットを見下ろして、スコルプは鼻を鳴らした。 バレットの胸を貫いていたのはスコルプの尻尾だった。 全身をキチン質の甲殻に覆われたサソリのような姿のケプラー186星人。 奴がバレットに気付かれない角度で、地面に潜らせ伸ばした自分の尻尾。 バレットの背中まで回り込ませた伸縮自在の真っ赤な尻尾が、三本腕のトラピス1E星人の胸を刺し貫いていたのだ! 「くたばったか。しゃーねーな。ブツは自分で探すしかねーか」 息絶えたバレットを足蹴にしながら、スコルプは地表に唾を吐いた。 # ひと様の地表をほじくり返したり唾を吐いたり、好き放題しやがって。 もういい余興は終わりだ。俺はスコルプのあたりの地殻に意識を集中させた。 # ドガン! スコルプの背後10キロの地表から、真っ赤なマグマが噴き出した。 「な……なんだ!」 奴が振り返って慌てて逃げ出そうとするが、もう遅い。 俺の血液……煮えたぎったマグマで作った俺の手が、あっという間にスコルプの背中に回り込んだ。 真っ赤に燃える俺の手が、死んだバレットともどもスコルプを燃やし尽くして蒸発させた。 # 「『バレット・クローム』と『スティンガー・スコルプ』……えー確かに『S級犯罪者』二人の生命反応途絶を確認しました……」 俺の地表に降り立った銀河連邦の警官が、戸惑い顔で上にそう報告している。 「超短波のフェイクによる犯罪者の誘導と捕獲……というか削除というか。毎度のご協力、感謝いたします。しかしテラさん……」 警官が不思議そうな顔で、俺にそう呼びかけた。 「恒星ソル系第三「存在」。この銀河でも数少ない知的惑星であるアナタが、なぜバウンティハンターなんかに? 犯罪者二人を始末するのに、地殻まで変動させて……」 「ああ。子供の頃から憧れだったんだ」 俺は電離層から適当な電波を反射させて、唖然とする警官にそう答える。 「今では想像も出来ないだろうがね? 俺が知性体として『ものごころ』がついた頃、この地表には、いろんな生き物が溢れかえっていたんだ。そいつらの一種がやりとりする電波で『放映』されていた『お話』が大好きでね。ずーっと、こういう仕事を探していたのさ!」 👀 Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f) 「あー参った参った。降参だよ降参!」 バレット・クロームが両手の拳銃を地表に捨てて、ホールドアップした。 赤くて切り立った大岩に囲まれた、砂嵐の吹きすさぶ山間だった。 バレットの部下は、スティンガー・スコルプの早撃ちで、4人全員あたまに風穴を開けて地面に転がっている。 銃を抜く間もなくあの世に旅立ったのだ。 「観念したかバレット。ブツの在処を言いな! この星のどっかに隠したんだろ?」 スコルプはバレットを睨みつけながら、ケプラー186星人特有の金属音みたいな甲高い声でそう叫んだ。 キチン質の甲殻に覆われたスコルプの右手の銃の照準は、ピッタリとバレットの額に定められていた。 かかげた両手の指先一本動かしただけで、バレットも部下の後を追うことになるだろう。 だが、スコルプは気付いていないようだった。 バレットが、背中に隠した3本目の腕を自分の尻のあたりのガンホルダーに静かに伸ばして行くのを。 バレットは確か……トラピス1E星人のミュータントだったな。 奴の二つ名、三丁拳銃《トライガン》の由来を知っていれば、スコルプもこんなヘマはしなかったかも知れないが。 「さーて。なんの話ですかね……っと!」 バレットがとぼけた声を上げながら、赤金色をした三丁目の拳銃を抜いて、スコルプに撃ち放とうとした。 だがその時だった。 「ガアアアアア!」 悲鳴を上げたのはバレットの方だった。 胸に風穴を開けて、地表に膝を屈していたのは、バレット・クロームの方だった! 「な……なんでだ……!」 「フン。マヌケな野郎だ。『スティンガー』……俺の二つ名の意味を知らなかったのか?」 地表に倒れて苦しげに呻くバレットを見下ろして、スコルプは鼻を鳴らした。 バレットの胸を貫いていたのはスコルプの尻尾だった。 全身をキチン質の甲殻に覆われたサソリのような姿のケプラー186星人。 奴がバレットに気付かれない角度で、地面に潜らせ伸ばした自分の尻尾。 バレットの背中まで回り込ませた伸縮自在の真っ赤な尻尾が、三本腕のトラピス1E星人の胸を刺し貫いていたのだ! 「くたばったか。しゃーねーな。ブツは自分で探すしかねーか」 息絶えたバレットを足蹴にしながら、スコルプは地表に唾を吐いた。 # ひと様の地表をほじくり返したり唾を吐いたり、好き放題しやがって。 もういい余興は終わりだ。俺はスコルプのあたりの地殻に意識を集中させた。 # ドガン! スコルプの背後10キロの地表から、真っ赤なマグマが噴き出した。 「な……なんだ!」 奴が振り返って慌てて逃げ出そうとするが、もう遅い。 俺の血液……煮えたぎったマグマで作った俺の手が、あっという間にスコルプの背中に回り込んだ。 真っ赤に燃える俺の手が、死んだバレットともどもスコルプを燃やし尽くして蒸発させた。 # 「『バレット・クローム』と『スティンガー・スコルプ』……えー確かに『S級犯罪者』二人の生命反応途絶を確認しました……」 俺の地表に降り立った銀河連邦の警官が、戸惑い顔で上にそう報告している。 「超短波のフェイクによる犯罪者の誘導と捕獲……というか削除というか。毎度のご協力、感謝いたします。しかしテラさん……」 警官が不思議そうな顔で、俺にそう呼びかけた。 「恒星ソル系第三「存在」。この銀河でも数少ない知的惑星であるアナタが、なぜバウンティハンターなんかに? 犯罪者二人を始末するのに、地殻まで変動させて……」 「ああ。子供の頃から憧れだったんだ」 俺は電離層から適当な電波を反射させて、唖然とする警官にそう答える。 「今では想像も出来ないだろうがね? 俺が知性体として『ものごころ』がついた頃、この地表には、いろんな生き物が溢れかえっていたんだ。そいつらの一種がやりとりする電波で『放映』されていた『お話』が大好きでね。ずーっと、こういう仕事を探していたのさ!」 第四十四回ワイスレ杯参加作品 >>12 >>17 只今、二十二作品!(`・ω・´) 日本では楽天はアマゾンの三倍あるんだな。 2016年日本の 小売実売店売上:140兆円 ネット通販:14兆円 (楽天売上):3兆円 (アマゾン日本売上:1.1兆円) 「大丈夫か!? 坊主!」「ううう」 都内某公園の木のふもとに大の字になる坊主頭。 鼻血を出しボロボロの仲間の肩を抱く老人の髪はロマンスグレーである。 「余所見なんかするから」「眼鏡! お前が言うな!」 ロマンスグレーは、きっ! と眼鏡を睨む。 「やめて……下さい」ゆらりと立ち上がる坊主頭。「僕のために争うのは止めて下さい!」 坊主頭の瞳の底に、意志の光が宿る。 「恐竜絶滅サイズの隕石が東京都にもうすぐ振ってくるんです! 昼間から踏ん張ってやっと出して眼鏡の誘導でつなげたワームホールに お師匠様が超隕石砕きって名前の必殺技撃って隕石を破壊する予定だったけれどお師匠様の必殺の闘気渦巻いて風が起きて 通行人女性のスカートがめくれてパンツが見えて眼鏡が『パンツ見えた』っていって思わずちょっとだけだしてしまった衝撃波に僕が吹っ飛んで鼻血 出したとかどうでもいいんです! 今は地球を救わないと!」 まくしたてる少年。「うむ!」と大きく頷くロマンスグレー。やれやれと首をすくめる眼鏡はどこまでもクールである。 その眼鏡が上空を見上げた。 「破壊するのは良いど、さ。ワームホール消えちゃったな」「そりゃ無理やり僕が出してたんだからね。意識が途切れると消えちゃうよ」「うむ、眼鏡、お主が悪い!」 ロマンスグレーは眼鏡を睨んだ。眼鏡は坊主頭を向く。 「ワームホールもう一度出せるか?」「うん! 僕は出して地球を救う! そして明日あの子に告白するんだ!」「それは死亡フラグじゃ! 縁起が悪い! だがその意気やよし! さあ全員所定の位置に着くのじゃ」 3人はそれぞれのポジションに就いた。 「坊主! 気合じゃ! お主の愛のワームホールで地球を救うんじゃ!」「はい! ぬふおお!!!」 両手を夜空にかざす坊主頭。そのこめかみには太い筋が走る。彼の上の空間が小さく歪んだ。 「おお! つながったな! じゃがまだ小さい!もっと気合を入れるんじゃ!」「ぬふああああ!!!」 少年は吐血した。が、まだまだ頑張っている。 「いや無理ですって。こいつ限界です」「ぬふうう!!!」「じゃがこんな小さくちゃわしのは大きすぎて入らんぞ?」「言い方が卑猥です」 気合を続ける坊主頭を傍目に、眼鏡がすたすたと老人に歩く。 「お師匠様。貴方がワームホールを通って巨大隕石を砕いて帰ってくればいい」「無理無理。わしはただの蕎麦店オーナーじゃし。 蕎麦打ち講師のロマンスグレーの髪が素敵なか弱い年配じゃし」「……」 手を小さく横に振って否定する老人を見つめる眼鏡の視線は冷ややかであった。 「いや、ほら。宇宙じゃぞ? 死んでしまうわ。宇宙じゃぞ? 思わず2度言ってしもうたわ」 「なら、こうすればいい」「あいたたたああああ!!!!」 突如眼鏡は左手で老人の額をわしっと掴み、右手で眼前のロマンスグレーの髪をぐわっとまとめて掴み、思いっきり容赦なく引っ張った。 固く接着されたものが剥がれる音は公園に響く前に、老人の悲鳴にかき消される。老人自慢のロマンスグレーはカツラであった。 眼鏡は引き剥がしたカツラを抱えて小窓サイズのワームホールにひた走る。その疾きさまはまさに風であった。 「ぬふひいい!!!!」叫びながら白目をむきかけている坊主頭の頭上向って、眼鏡はカツラを放った。カツラはワームホールに綺麗に吸い込まれた。 「接着ボンドでがっちりくっつけておいたわしの自慢のカツラがああ!!!」 絶叫する落ち武者カットの老人は、必死の形相でカツラを追い、ワームホールに飛び込んだ。 「もう少しだけ頑張れよ。俺が殺人者になってしまう」「ぬ…ひ…ええ……」 白く燃え尽きかけつつある坊主頭に、眼鏡は励ましの声をかけた。 「死ぬかと思ったわ!!! 隕石破壊したったわ!!!!」 消えかけのワームホールから這い出て、地面に落下するも、宙でくるっと体をひねり、三点着地を決めた 老人の頭部は、 見事なロマンスグレーに戻っていたが、着地の衝撃のためかちょっぴりずれている。 「あ、お帰りなさい。無事で何よりです」 眼鏡の声はあくまでもクールだが、その顔は少しだけほっとしていた。その横で坊主頭が仰向けに倒れた。 こうして地球は救われた。 翌日。蕎麦を切りながら、昨夜の大活躍を思い返す老人の脳裏に、突如パンティーの白が鮮やかに甦った。刺繍があしらわれレースがついていたそれは、 夜の薄闇に発光するかの如く淫靡であった。老人は鼻を押さえた。鼻血が出たからである。 刹那、中年のちょっぴり美魔女の女性常連客ががらっと扉を開けて姿がのぞいた。 「こんにちわあ」 老人は慌てて鼻を拭い、血塗れた手をその背に回して隠して 「いらっしゃい」と言った。 今回のみんなのレベルが高すぎて入賞諦めたから、ひたすらギャグを書いてこんな素敵なお題 を出したお師匠様を困らせる作戦しようと 思ったけれど、ギャグって難しいね。かける人尊敬する。 第四十四回ワイスレ杯参加作品 >>12 >>17 >>20 只今、二十三作品?(`・ω・´) もちろん連作ではありませんよ! 連作に見えるけれど連作じゃないように、名前つけませんでしたからね! 設定と特徴が似てるだけです!(小並感) あー、やっぱり容量オーバーか 新しい書き込みがないのを不審に思って、探してみたらやっぱり次スレがあった 前回か前々回のワイスレ杯も確か容量オーバーでしたね 常連は弁えているでしょうが、今回は、ワイスレ杯直前に新人が二人来てたから、 ずっと前スレで待ちぼうけになっているかもね。大丈夫かしら? >>24 心配ですね 新人さーん、いらっしゃったら手を振って下さーい!ノシ ROM専でもワイ杯不参加の方でもかまいませんよー!ノシ 参加しようとして書き込んだらわかるんじゃないのか? 今回は四十作品くらい投稿ありますかね。 入賞できるといいけどな。 でも、今日は書けん。 酔うと書けん。 酔っても書けるワイ氏は凄い。 「オマンジーナせよむよばいばい」 「え、今なんて言った?」 「オマンジーナせよむよばいばい」 「え?」 「オマンジーナせよむよばいばい」 「な、何!? 怖いよ、父さん」 「何言ってるんだ。父さんは父さんだぞ。怖いことなんて、ないだろう?」 最近父さんのことがよくわからない。 なんか突然難しいこと言ってくるというか……なんていうか、意味がわからない。 「父さんなんか気持ち悪ぃよ」 「ぬ……なんでそんなこと言うんだ! 父さんだぞ?」 「うるさいから、あっち行けよ」 「ひどい」 「オマンジーナせよむよばいばいってなんだよ」 「父さんに訊くのか?」 「は?」 「訊くのか?」 「もういいよ」 👀 Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f) ノ ついさっき気づきました。 尚、課題作品も前ワイさんに見てもらった分の直しも誤字以外まだだという……。 他の方の上げる早さと質の高さに焦るばかりです。 直し後回しにして課題作品先にやっちゃおうと思ったら何でそうなったしってやつなるし、どう見ても仕上げるのに時間掛かるやつっぽいし……。 謎の影1「やはりあの隕石を消した者たちがいたのか……」 謎の影2「はい」 謎の影1「我等がめっちゃびびったあの隕石を消し去った者達、これは脅威の芽となりうる……」 謎の影2「お任せ下さい総統。私に良き案がございますわ」 謎の影1「ほう…詳しく申せ」 謎の影2「はい」 ※ 「もうちょい上」「こ、こうか?」「もっと上げて」「お、おう。こうか」「うん、いいね。じゃあ入れるから動かすなよ」「お、おう」 坊主頭の少年は両手の平を前に構えている。その先10cmの空間が歪む。通称ワームホール。眼鏡の長髪少年は、その穴に手を突っ込み、しばらくもぞもぞした後に、引っこ抜いた。 その手は子猫の首根っこをつかんでいる。 「ニャー」鳴く子猫を胸に抱く眼鏡を、坊主頭はまじまじと見た。 「すげえな。お前の遠隔視」「お前のワームホールの方が凄いよ。てか、こいつさっさと届けようぜ」 彼らの横には電柱があり、張り紙がされている。『この子探しています。謝礼さしあげます』迷い猫は眼鏡が胸に抱く子猫であった。 ※ 呼び鈴に出てきたのは美魔女だった。「はーい、あら」「「あ」」坊主頭と眼鏡は驚く。 美魔女は2人のいきつけの蕎麦店の常連であった。 ※ デパートの屋上。美魔女から貰った謝礼金を山分けした2人は、欄干にそれぞれ両肘をついて、アイスを舐めている。 坊主頭がバナナ、眼鏡がミントチョコだったが、坊主頭の方が先に舐めきってしまい、バリバリとコーンを噛み砕いた。 「めっちゃ美味いな」「ああ」満足気な坊主頭に、眼鏡は頷いた。 「超能力あって良かったよな。人助けできるし、隕石から地球救えるし、アイス食えるし」「確かに、な」 眼鏡も舐めきって、視線を遠くに投げる。東京の大都市のパノラマが拡がる。 「蕎麦打ち教室通って良かったよなあ」「ああ」坊主頭に眼鏡は相槌を打つが、その声は沈んでいた。 2人が超能力を獲得した原因は蕎麦打ち教室であった。教室で2人は蕎麦を打ち、講師と3人で試食し、その超絶美味加減に全員ぶっ倒れ、目覚めると超能力に目覚めていたのだった。 ちなみに講師の老人の能力は衝撃波である。あの蕎麦を再現しようと2人は試みているが、未だにできていない。 「どうした? 気分悪いのか?」「いや。……俺たちこのままでいいのかってさ、考えてしまった」「いいだろ? 人助けできるんだから」「小銭稼ぎしてか?」 鼻で笑う眼鏡に、坊主頭は眉をひそめた。「何が悪いんだ?」眼鏡は視線をそらす。 「スカウトされたんだ。悪の組織に」「お前……超能力を見せたのか?」 「いや、この前公園でダッシュしてたらさ。ダッシュ力を買われた。まずはひったくりから始めないかって」 「断るよな?」「お前も行かないか?」「冗談だろ? 悪の組織だぞ?」 「副総統がSMチックなピンヒールにボンテージに露出度の高い巨乳の色っぽい美人らしい」 「え」「唇がやらしい感じでナチス帽被って武器は鞭らしい」「ごくり」坊主頭は息を呑んだ。刹那。 「いかん! いかんぞおお!! 健全な青少年が悪の道に誘われてならんんん!!」 雷のような怒号が響いた。少年たちが振り返ると、蕎麦打ち教室の講師の老人が仁王たちをしていた。 「このデパートに蕎麦を納入しに来て屋上でちょっと休もうかと思ったら、悪に誘われるお前たちを見たわしの悲哀をどうしたらいいのじゃ! お主たち2人とも説教じゃ!」 老人は2人に突進する。 「ワームホールだ。座標は北極」「お、おう。こ、こうか?」 2人の前に出現したワームホールに、老人は吸い込まれて消えた。 「うん、上手くいった。穴、消せよ。戻ってこられないうちに」「……お師匠様、大丈夫かな」 「今、北極熊と闘ってる。大丈夫だろ。あの人宇宙行っても戻ってくるし。明日店休みだし。仕事に情熱ある人だから明後日までには自力で戻ってくるさ」 「そうかなあ。大丈夫かなあ」「で、どうするよ? 一緒に行かないか? 悪の組織。俺たち2人なら、こんな感じで無敵だし、世界征服とかもできるかも知れない」 眼鏡の問いに、坊主頭は迷いを見せた。 「あ」「え?」「早いなあ。今時のカップルは」目を宙に細める眼鏡に坊主頭は首を傾げる。 「お前がこくる前に撃沈した彼女、キスしてる。イケメンの部屋だ。お、ああ、そういう風に、ああ、なるほどな。脱がすのか。慣れてるな、イケメン」 「行く! 行くぞ! 俺は悪の組織に行く! 行って色っぽい副総統の下で頭角を現してやる!」 坊主頭は鼻血を噴き、慌てて手で拭い、背に回して隠しながら叫んだ。眼鏡は坊主頭を見て、にやりと笑う。 「そう言うと思っていたんだ」 こうして少年達は悪の道に堕ちた。 >>31 大丈夫です。 締め切りは20日ですから、それまでに入賞に値するものを書けばいいんですよ。 とかいう俺はもうあきらめて試合終了です。 みんな凄すぎ。 という事でワイ様に嫌がらせするための作品量産なうです。 >>33 いくら何作でもオッケーといってもやり過ぎじゃないかな。 連作のような感じといい、建前とはいえ誰が書いたという匿名性が損なわれている点といい。 全く違う作風ならまだわかるけど、とってつけたように「タイトル入っているからいいでしょ」みたいなやり方といい。 コンペのときに行うには少し行儀が悪いのではないか。 >>34 タイトル入ってりゃいいってのは違いますよね。 やっぱりテーマとして直結していないと。 ハメを外してしまいました。投稿作品の扱いについてはワイ様におまかせいたします。 「所長。”虎は千里往って千里還る”という言葉を知っていますか?」 「知っているさ、中国の諺だろう」 「さすが所長、何でも知ってらっしゃる。でも虎ってそんなに凄い体力を持っているんですね」 「そうだな。一里がおよそ四キロメートルだとすると、千里を行って帰っての二千里だから。だいたい八千キロを一日で走破するという事だものな」 「たった一日でそんな距離を! 虎って本当に凄いですよね」 「距離も凄いが二十四時間で八千キロメートルの移動っていうことは、つまり時速三百三十三キロメートルの猛スピードだぞ」 「信じられない! F1マシン並みじゃないですか」 「しかもだぞ、単純に二十四時間で割るということはつまり休憩時間も含んでいるから。瞬間最高速度は時速四百キロを超えているかも知れないな」 「なるほど。道理で捕まらない訳ですね」 「ああ、それは昨日動物園から子供の虎が逃げ出したっていうあのニュースの事かね」 「ええ。あれから丸一日経つから、もしかすると今はもう海外に逃げているかも知れませんよね」 「そうなると虎は泳ぎもすごいってことになるな。まあ、現実的には物陰か山奥にでも潜んでいるのだろうがね」 「……まだ近くに潜んでいるのだとしたら、人を襲って食べることもあるのでしょうか」 「ないない。まだ狩りができるほどの大きさじゃないそうじゃないか。よほど腹が減ったら残飯を漁るだろうよ」 「そんなもんですか……」 「そんなもんだ」 「ところで虎の体力って、昔の人はどうやって計測したのでしょうね。今のようにサーキットでもあれば簡単だったでしょうに」 「中国には万里の長城があるじゃないか。テレビで見たが、あれは通路みたいになっていて充分走れる広さだったぞ」 「なるほど。そこで測っていたのかも知れませんね」 「そうだな。かつては全長が四千キロにも及ぶと言われていたからね」 「あれ? ちょっと待ってくださいよ。一万里は四万キロじゃないんですか?」 「そこだよ。中国は話を大きく盛るのも好きだが、日本の一里と違って古代中国での一里はおよそ四百メートルだったそうだ」 「え? じゃあ先程の虎の話も距離が十分の一になりますよ。八百キロになっちゃうじゃないですか!」 「そうだね。時速も修正すると、およそ三十三キロメートルアワーだね」 「そうかあ、なんかがっかりだなぁ。F1だと思っていたら軽自動車並みですか」 「まあ今の時代なら、虎でなくともマイカーだって一日で移動可能な距離だよね。でも虎が本当に自力でそこまで走るとなれば充分凄い話だと思うぞ」 「そうですね。でも、ぎりぎり現実的な感じが興覚めだなあ。なんだかこう、夢がないというか、なんというか」 「それも現代的でいいじゃないか」 「そうですよね。科学が夢を現実にして、技術が偽物を本物にする時代ですから……」 話の途中で僕は自分の右手を何となく背中へ隠していた。良く洗ったつもりだが、まだ血が落ち切れていないような嫌悪感が付きまとう。 昨晩、僕は酔っぱらったまま車を運転して帰る途中で路上に彷徨う虎をはね飛ばしてしまった。 最初は犬かと思ったが、車を降りて近付くと子供と虎が死んでいた。 混乱した僕は、飲酒運転なので通報など出来ないと考えた。辺りは自然に囲まれている片田舎だし、人気もない状況に酔いの感覚も手伝って僕の決断は早かった。 血を流して死んでしまったそれらを抱え上げて近くの雑木林に放り込むとそのまま帰宅したのだ。 あれから色々あって僕の居場所は変わった。新しい所長と面談する際に、かつてと同じように虎の諺の話をしてみた。 以前の営業所長とは似ても似つかない、しかめっ面のその所長は探るように僕の瞳を見ていたが、考え込むように腕組みをするとふいに人懐っこそうな笑顔を見せた。 「ふむ、あれは勢いの盛んな様子の例えだ。さらには親が子を思う気持ちの強さをあらわしてもいる。お前もこれからはしっかりと孝行せえよ」 刑務所の所長はそう言うと僕を退室させた。そのまま割り当てられた部屋へと連れていかれる。 僕の意志とは関係なく決められた場所にある、自分の意志では出ることのできないこの部屋で静かにあの日のことを思い返してみる。 血を吐いて死んだ虎の下に重なるように倒れていたあの子供。同じように血まみれだったけれど、何故虎と一緒にいたのだろう……。 >>24 向こうで待ちぼうけてました…。 要領制限というものも存在するのですね。 私の婚約者は、はるか遠い南極にいる。 気象台に努める颯太さんは、南極観測隊に志願したのだ。 彼からその話を聞いた時、正直言って、とてもショックだった。 南極に行ってしまえば、越冬隊は一年半は帰ってはこれない。それがひどく寂しかった。 けれど、結婚して身を固める前に行っておきたいという、その思いに応えたかった。 地方の気象台は、所詮お役所仕事だ。息がつまるような思いの中で、彼は耐えていた。 彼の笑顔がなくなっていくのが、私には何よりつらかった。 彼は本当に空や大地が好きな人だった。その話に、いつも私はひき込まれた。 雨上がりの匂いには名前があること。雨が降る前に吹く下降流のこと。スコールの本当の意味。他にも様々に教えてもらった。 そんな時、彼の瞳は本当に輝いていた。そんな颯太さんでいてほしかったのだ。 昭和基地に行ってからは、彼からの長いメールで、今度は南極のことについて知った。 オーロラのこと。何も見えなくなる暴風雪のこと。工夫された食事のこと生活のこと。それはもう色々なことが書かれていた。 彼が生き生きとしていることが、心からうれしかった。 ただ、胸にせまるような寂しさはどうしても消えない。たまに電話で話すことはできたけれど、やはりとても会いたかった。 そして、さびしい思いを押し秘めた日々も過ぎ、やっと彼が日本に帰ってくる。 世間はある話題で持ちきりだった。女性ばかりを刃物で狙う連続通り魔事件だ。 けれど、そんな物騒なニュースなど、うれしさでいっぱいの私には全く関係のないことだった。 空港の到着口の前は、待ち人を迎える顔でいっぱいだ。 私は黒のワンピースに水色のカーディガン。昔から、好きな水色の服をよく身につけてきた。人混みの中でも、きっと颯太さんは気づいてくれるだろう。 ゲートの奥に背の高い颯太さんの姿を見つけた。褐色に雪焼けしているが、たしかに彼だ。胸がどきんと鳴る。 ガラスの向こう側で、彼が私に気づいた。彼の口が動く。「す・み・れ」彼の唇はそう動いていた。私の名前だ。 それは、彼がゲート内のコンベアで、流れてくる荷物を引き取っている最中だった。 誰かが、すれ違うように肩にぶつかった。その瞬間、体に強い衝撃がはしる。 よろめきながらもなんとか踏ん張り目を上げると、見知らぬ男の顔があった。 その右手に上着をかけていたが、わずかに光るものが見えた。男はすぐに立ち去った。 周りにはたくさんの人がいる。けれど、出迎えに夢中で私などを気にとめる人はいない。気づかないくらい一瞬のことだった。 わけのわからない戦慄と、焼けつくような腹部の痛み。 左のわき腹にそっと触れると、濡れていた。手のひらを見ると、真っ赤に染まっている。 黒のワンピースでは、はた目には全くわからない。 颯太さんが笑顔で顔をくちゃくちゃにしながら、こちらに走ってきた。 私がずっと待ちつづけていた彼が、両手を広げる。 颯太さんが私を抱きしめる。そして、その大きな右の手のひらで、私の頬をつつんだ。 彼の手はあったかい。本当にあったかい。 私も両手を彼の背中にまわし、持てるだけの力で抱きしめる。 涙があふれる。とめどもなく流れる。苦しいほどの愛しさと、苦しいほどのこの切なさは……。 なぜか、幼い頃からの風景がフラッシュバックのように脳裏に浮かぶ。 父の顔、母の顔、妹の顔。そして、最後にそれは颯太さんの顔になる。今、目の前で本当にうれしそうに笑うあなたの顔。 「颯太さん……」そう一言だけ言ったきり言葉が出ない。 彼の顔を見つめながら、精一杯微笑んだ。やはり涙はとまらない。 そして、生温かいものが足を滴り流れるのを感じる。たくさんの何かが流れていくのがわかる。 近くから女性のつんざくような悲鳴が聞こえた。「おい、だいじょうぶかっ!?」という男性の叫び声。 颯太さんが「すみれ?」と、目を見開いた。 彼の顔がにじみ、ぼやけていく。そしてやがて一瞬でホワイトアウトした。 それはきっと、さながら南極の激しいブリザードのように、真っ白に。 雪がきらきらと輝くかのように、永遠の光が私をつつんでいた。 第四十四回ワイスレ杯参加作品 >>12 >>17 >>20 >>32 >>36 >>38 只今、二十六作品!(`・ω・´) 昭和五十四年十二月十日の事であった。 福井県の東尋坊では、既に日が沈みかけていた。 この寒い時期に周りに人の姿はなく、聞こえるのは寒風の風と岸壁に打ちつける波の音だけだ。 断崖を背に七十は過ぎているであろう、杖を持った老人が一人立っている。そして、五十過ぎであろうか、背が高く面長で彫りが深く、黄金色の髪をした女性が対峙していた。 女性は老人の両肩を押して、崖の上から突き落とした。 聞こえたのは老人の断末魔の叫び声と恐怖に慄く顔であった。 女の鼓動は早まり、顔は上気して、ほんのりと頬が朱を帯びていた。 (ついにやった!) 女は達成感を感じていた。 両手を見ると血に塗れていた。 (人を刺していないのに、どうして!?) 一瞬目を瞑った。 恐る恐る、再び両手を見ると、血は消えていた。 (幻覚だったの!?) 女は落ち着きを取り戻し、左手にしている腕時計を見た。 針は午後4時15分を指していた。 女は現場から国道七号線まで約一キロの道を走った。 息を切らせながら、必死で走った。 国道沿いにある公衆電話ボックスに駆け込んだ。 赤い公衆電話の受話器を上げて、110番にダイヤルした。 数秒ほど発信音がした後、 「福井県警ですが事件ですか事故ですか」 という男の声がした。 「事故です、叫び声が聞こえたので崖の下を見たら男性が頭から血を流して倒れていました」 「場所はどこですか」 「場所は東尋坊です」 「となると、東尋坊の国道七号線にある公衆電話ですね」 「はい」 「分かりました、今から警察官がそちらに向かいますので、お待ちいただけますか」 「はい」 「失礼ですが、御婦人のお名前は」 「私は長濱マリアと申します」 「長濱さんですね。では」 男が電話を切った。 電話ボックスを出ると、既に辺りは暗くなっていた。 粉雪が舞い始めた。 そのうち粉雪が吹雪に変わり、辺りの地面がすっかり白くなった。 このままでは雪に塗れ凍えてしまうと思い、ボックスに再び入った。 白く曇った窓ガラスの向こうに点滅する赤色灯が見える。 「長濱さん!」 マリアを呼ぶ声が聞こえた。 それを聞いたマリアはボックスを出た。 外にはヘッドライトを点け、ルーフの上に付けられた赤色灯を廻しているパトカーが三台が国道に停車している。 「長濱さんですか」 五十代くらいの警官が話し掛けて来た。 「はい」 「寒かったでしょう、どうぞパトカーの中に」 警官はマリアをパトカーの後部座席に案内した。 パトカーの中は暖房が利いて、温かかった。 備え付けられている警察無線の交信が雑音交じりに聞こえてくる。 「私は福井県警の白浜と申します、まずは長濱さんはどうして東尋坊にいらしたのでしょうか、まさか自殺ではないでしょうね」 東尋坊は自殺の名所であった。 「いえ、冬の日本海と荒波が見たくて此処に参りました」 「そうでしたか、これはとんだ災難でしたね、まぁ、十中八九、自殺でしょう」 「そんなに自殺が多いのですか」 「ええ、年に十件くらいはあるんではないでしょうかね、観光の名所ならいいんですが、自殺の名所ではね」 白浜は皮肉交じりに言った。 「これから、署で事情を聴くことになりますが、数時間程度掛かると思います」 「分かりました、協力いたします」 「有難うございます」 マリアは数時間事情を聞かれた後、予約していた福井駅前のホテルまでパトカーで送ってもらった。 署ではまさか、マリアが男に手を下したとは夢にも思わず、自殺と断定していた。 あくまで目撃者として扱っていた。夕食にカツ丼まで取り寄せて提供するほど厚遇を受けた。 ホテルのベッドの中で、復讐を遂げた達成感と疑われずに済んだ幸運をかみしめていた。 マリアが三国二郎少尉の部下であった、山野剛の訪問を受けたのは二か月前の事であった。 白髪交じりで背の高い男がホッとした表情で、 「やっと、お会いすることが出来ました」 「貴方は?」 「私は三国少尉の部下でありました山野と申します、インドネシアでは少尉殿に可愛がってもらいました」 「そうでしたか」 マリアは懐かしさから、笑みが零れる。 三国とマリアはかつて恋人同士であった。 革命から逃れた白系ロシア人の両親の下、日本で暮らしていた。 当時の名前はマリア アレクサンドロフスカヤ シュミット。 マリアは高等女学校の女子学生、三国は帝大の露文科で勉学に励んでいた。 二人はロシア文学の講読会で知り合い、意気投合し親密な仲にまで発展していた。 だが、戦後、原住民虐待の罪でBC級戦犯に指名され、重労働二十年を言い渡され、マラリアで昭和二十四年に亡くなった。 一緒に戦犯として服役していたのが山野であった。 山野は三国から、日本に帰ったらこの手紙を渡してくれと託されていた。 「これを」 山野は茶封筒を渡した。 「有難うございます」 マリアは礼を言うと、封のされていない茶封筒の中から手紙を取り出した。 広げてみると綺麗なロシア文字の筆記体で書かれていた。 そこには自分が無罪で上官のシマノという人物に罪を擦り付けられたという内容が書かれていて、 最後にマリアの事を心配する文面が記されていた。 マリアの目に涙が浮かんでいた。 「大丈夫ですか?」 山野がマリアを心配そうに見つめる。 「大丈夫です」 マリアは気丈に振る舞った。 山野にお茶を出し、一時間ほど歓談し送り出した後、とある場所に電話をした。 東京の銀座にある私立探偵だ。 山野から詳しく聞いた三国の上官であった嶋野喜一郎について調べてもらうためだった。 二週間後、調査報告書が届いた。 嶋野喜一郎は元陸軍大佐で駐屯していた歩兵○○連隊の連隊長を勤めていた。 上官としての評判は悪く、酒や女に溺れ、戦後は戦友会に呼ばれることもなかった。 独身で軍人恩給で暮らしているが、大酒を飲み、重度の糖尿病、精神的にも病んでいるという内容であった。 最後に住所と連絡先が記されていた。 その連絡先に電話をし、嶋野に戦争中の話を聞きたいと言ったら是非来てくれと快諾した。 家は木造の平屋建てのアパートで、ドアのブザーを鳴らすと足を引き釣りながら出てきた。 東尋坊から二キロほど離れた場所だ。 その日は曇っていて、凍えるほど冷えていて道を行き交う者はいないほどであった。 嶋野は庭に停めてある古いスバル360にマリアを乗せて、東尋坊に向かった。 「こういう日の荒らしい日本海は素晴らしいですぞ」 ハンドルを握りながら話した。 国道沿いに車を止めると、崖に向かった。 「私は長濱マリアと申します」 「長濱さん?」 「はい。旧姓は三国と申します」 三国という言葉を聞いた瞬間、嶋野の顔が強張った。 「まさか、貴女は」 「ええ、三国の妻でした。彼が亡くなって再婚しまして今の性になったんですよ」 「……」 嶋野の顔は何かに怯えているようだった。 「まさか三国が病死するとは思いませんでした、死刑を免れた以上、何時かは帰ってくると思ったのに……」 マリアが一歩一歩、嶋野に迫ってくる。 無意識にマリアは嶋野の両肩を押した。 崖から断末魔の叫びを上げ落下していった。 嶋野を始末した。 マリアは自首しようと、車窓から見えた電話ボックスに向かった。 ダイヤルを回し、数秒の発信音の後、 「福井県警ですが事件ですか事故ですか」 という男の声がした。 間違った! ゴメンなさい! 2レスになってしまった。 これはワイスレ杯終わったのちの、通常評価で。 若しくは40だけを抜粋して、ワイスレ作品として提出可能でしょうか? >間違った! ゴメンなさい! 2レスになってしまった。 間違う理由がわからん 何をどう間違えばそうなるのかw >>44 本当は40で終わったんですが、勿体ないないので、話を書き足したんです。 寝惚けて、書き込んでしまった次第で。申し訳ないです。 >>45 40だけか二つを凝縮させてはどうですか? せっかくの作品なのでぜひエントリーされては。 2017年12月19日配信「富岡八幡宮殺人事件の背景に女性宮司を認めない神社本庁の“罪”!?」<事件> http://polestar.0510.main.jp/?eid=876707 た、たいへんだああああああああ。 Y染色体ハプログループの研究でついに殺人事件が起こってしまった。 武士の神、天津神の神だと信じられていた八幡宮宮司家が遺伝子解析で天皇家と血筋の異なる渡来系だと判明したことから、 神社本庁が天皇家の血筋にすげ替える策略を練り、それに反発した八幡宮司家の男系子孫が反乱。 八幡宮司家は藤原氏と祖を同じくする弥生人だと判明して、血を見る事件へと発展した。 殺害方法は、神社に奉納してあった宝剣で斬るというもの。 これは神社を守る、国を守るための戦いだとすれば、目的に適った使用方法である。 日本の神社の中には、最も優れた日本刀の販売店よりよく斬れる刀がたくさん奉納してあるところもあり、 治外法権として神域として守られてきた。そこに近代的警備施設はないところもあり、非常に危険である。 応神天皇の正統性を主張するために祭られてきた八幡宮司家が渡来系だと判明した今、 富岡八幡宮殺人事件の真の原因をY染色体ハプログループスレ住人は知っている。 応神天皇は仲哀天皇の血を引いておらず、藤原氏の祖先の子種を神功皇后が宿して生まれた天皇である。 日本人よ、歴史の真実から目を背けてはならぬ。今こそ、真実の歴史に目を向け、日本を真実の国へと導け。 第四十四回ワイスレ杯参加作品 >>12 >>17 >>20 >>32 >>36 >>38 >>40 只今、二十七作品!(`・ω・´) 書き込めない 「来てくれたんだ。嬉しい!」 玄関を開けると、彼が立っていた。久しぶりに見る顔に、思わず頬が緩む。 「ちょっといい? メールでも言ったけど、直接言ったほうがいいってヒナちゃんに言われて」 出てきた名前に、思わず顔がこわばりそうになる。私は表情が変わらないよう、細心の注意を払って彼を招き入れる。 「そうなんだ。ヒナは優しいね。どうぞ、あがって」 「うん、お邪魔します」 身体をずらし、彼を玄関の中に入れる。靴を脱いでいる間に、私は後ろ手に扉の鍵をかける。 「? あれ、すぐ鍵かけるの珍しいね」 「うん、最近変な人がうろついてるって回覧板にあったから」 「そう、気をつけて」 「ありがとう。優しいね」 私がお礼を言うと、彼は曖昧な笑みを浮かべて中に入っていく。 「なんか、変な匂いがする」 「ああ、アロマ焚きすぎちゃって」 「ああ、これか」 部屋へ進んだ彼は、ローテーブルの上にあるアロマポットに気づいたようだ。 「ちょっと、気分を落ち着かせたくて」 「……ごめん」 「いいの。ちょっと待って、先にトイレ」 彼はテーブルから目を離さず、小さな声で謝ってくる。私は適当に返事をして、ユニットバスに駆け込んだ。 適当き水を流し、念入りに手を洗う。 そして、洗面台に置いてあった包丁を手に取る。 足元に飛び散った血を踏まないように気をつける。バスマットに足裏をこすりつけ、脱衣室の扉に手をかける。ドアノブにはべっとりと血がついてる。ああ、これを触ったら、また手を洗わなくちゃいけなくなる。 私はバスタブに引っかけてあったタオルを手に取り、ノブを拭った。タオルの端は、滴りそうなくらい血を含んでいる。洗うのが大変そうだ。 タオルをバスタブに投げ込んだ。これは一緒に捨ててしまおう。 包丁を背に隠し、脱衣室を出る。 彼はテーブルに置いていたアロマオイルの瓶を手に取って眺めていた。 お気に入りのオイルもそこにある。汚れるのは嫌だな。 でも。 「ねえ、たーくん」 「うん?」 彼がこちらを見て、すぐに顔をこわばらせる。 「ずっと一緒だよ」 私は彼の喉を目がけて包丁を突き出した。 包丁はあっさり喉仏に刺さり、刃の半ばまで首に埋まる。 あとは、彼が動かなくなるのを待つだけ。 そしたら、これからはずっと一緒。 お風呂にいる邪魔な女を片付けたら、二人だけの時間が待っている。 愛する人との未来を思って、私は笑みを浮かべた。 第四十四回ワイスレ杯参加作品 >>50 >>55 只今、二十八作品!(`・ω・´) 咳が出る。止まらない。息が苦しい。 「大丈夫?」 咳が止まると、ノックもなく部屋の入口が開いた。心配そうに表情を曇らせた彼女が、覗き込んでくる。 「大丈夫。ちょっとホコリでむせただけ」 「手伝おっか?」 「やだよ、本棚は誰にも触らせたくない」 遠ざけるため、俺はわざと不機嫌に返す。案の定、彼女はちょっと眉を下げただけで姿を消した。 ほっと一息つくと、俺は背中に隠していた手を胸の前に持ってくる。 握っていた手を開くまでの少しの間、不安と恐怖で痛くなるほど心臓が加速する。 「……見られなくて良かった」 手には血のにじむ痰がへばりついていた。 血の量は多くないが、最初の頃よりずっと増えている。 肺に病気があるとわかったのは、つい最近のことだ。 ずっと風邪だと思って放置してたらかなり進行してしまい、医者から入院を迫られている。 入院の説明と共に、今後の治療に関しても説明を受けた。 病気との付き合いが一生になるという話に、目の前が暗くなるようだった。そして何よりも、投薬についての説明を受けたときに人生が終わったと感じた。 『免疫を抑える必要があるので、免疫抑制剤を使うことになります』 要は抗がん剤だ。 まだ30前なのに、そんな薬を飲まなくてはいけない。それにその薬を飲んでいる間は、子供が作れない。 いつまで飲むのかわからない。 一生かもしれない。 そうなったら、俺は自分の子供を持つことができなくなる。 治療が怖くて、結婚を考えていた彼女にまだ病気を告げることができないでいる。 相談したい。けど、相談したら別れることになるかもしれない。 怖い。病気も怖いけど、捨てられるのが怖い。 でも、もう隠しておくのは限界だ。 来月には入院することが決まっている。これ以上治療を先のばしにすると寿命に関わる。と、医者から脅されてしまった。 会社には事情を説明して長期休暇の申請をした。傷病手当の資料集めも始めている。保険は若いしまだいいかと思って入ってなかったが、今は後悔している。 両親にも話してある。二人とも落ち込んでいた。 不甲斐ない息子で本当に申し訳ない。 最後に残っているのは彼女。 今日はその話をするつもりで家に呼んだのに、つい本棚の片付けを始めてしまった。腹を決めなくては。手についた血のにじむ痰を、乱暴に拭い去る。片付け途中の本棚に背を向け顔を叩き、気合いを入れた。 「大事な話があるんだ」 俺は部屋から出て、声を張りあげた。 第四十四回ワイスレ杯参加作品 >>50 >>55 >>58 只今、二十九作品!(`・ω・´) 札幌はススキノの繁華街で、少し膨らんだ名刺入れを拾った。ヴィトン。 落とし主は分かっていた。先ほどすれ違った小柄な女性だ。20代半ば。切れ長の瞳が印象的な美人で、肩のあたりから薔薇の香りがした。それが絶妙に清冽だった。 だからだろう。魔がさした。名刺入れの中身を確認してしまった。 『Vous ne connaissez pas la main brûlée par le sang dans votre dos』フランス語だ。 意味は『背中に回した血塗れの手をあなたは知らない』。 僕の心臓はドクンと鐘を打った。いきなり当たりを引いてしまった。札幌まで来た甲斐があった。 軽く息を吸って、後ろを振り向く。丁度女性が角を曲がって消えるところだった。 今追いかけて声をかければ間に合う。三流オカルト雑誌記者に過ぎない僕だけど、ジャーナリスト魂はちゃんとある。 事情をきちんと話して取材を……申し込める訳がない。危険すぎる。 僕は足早にその場から立ち去り、宿泊先のホテル……から逆方向に歩く。万が一の尾行を撒くためだ。 『Sample札幌』は知る人ぞ知る殺人記録映像のサイト名だ。トップ画像はその月によって変わる。 椅子に後ろ手で拘束された肥満型の白人男性が器具によって無理やり口を開かれ、チューブを突っ込まれて、腹を切開されている画像。 痩せ型の白人男性の腹が切り裂かれ、腸が引き出されているもの。その横のボウルには大量の血液が。 四肢を切除された東洋人男性。その前には大量の細切れの『手足だった肉』。 とまあ様々だが、画像の下には48の選択文と決定ボタンがある。 フランス語、ドイツ語、英語、韓国語、……言語は様々だが意味は1つだ。 『背中に回した血塗れの手をあなたは知らない』。 つまり画像にあった言語を選択して決定。正しければその先の動画に進む。もし間違えるとPCはクラッシュ。僕は2台壊した。 正解したのは東洋人男性と、『你不知道血花绽放的手转向你的背影』の組み合わせだ。東洋人だから中国語という組み合わせは馬鹿馬鹿しいほど単純だ。 これに正解した時胸を高鳴らせたが、すぐに吐き気を催した。予想ないだが酷い動画だった。人間が生きたまま千切りにされていく。 画像と言語には関係がある事が分かった。白人なら英、仏、独、東洋人なら中国語。これは北京語だったり広東語、台湾と細かかったりする。 では細かい国籍を決めるのは何か? どういう関連がそこにあるのか? 闇サイト特集の執筆に取り掛かったのが2週間前。 こういうおぞましいサイトがある、それは云々、と、この情報だけでも書く事はできた。が、ジャーナリスト魂が燃えてしまった僕は、詳細を調べたくなった。 色々上手くいかなくて、三流雑誌の記者として燻っているけれど、僕はまだ上を目指したい。これはその足がかりになると思った。 ……予約していたホテルに戻る。念のためわざと遠回りをして、交通機関も3つ乗り継いだ。 フロントでPCを借りる。 名刺入れの中身を片っ端から検索、チェックしてやる。 あの女はおそらく『Sample札幌』殺人記録映像サイトの関係者だ。どんな癒着構造がこの名刺の束から読み取れるのか。僕は武者震いをした。 とにかく全部の名詞を取り出す。ベッド横の机の上にずらりと並べた。 並べながら、僕は青くなり、吐き気を覚えた。 日本はもとより、欧米、韓国から中国台湾まで、一流企業トップの名刺がずらり。 これはいい。予想の範疇だ。問題は−。 『マリエール札幌』『ル・ぺシェ・ダ・ヴィヨン』『九耀天飯店』……。世界に名だたる一流レストランのオーナーシェフたち。いわゆる三ツ星。 彼らが客という事か。 点だった情報が線として僕の中でつながってしまった。 チューブを突っ込まれている画像のチューブは栄養チューブ。切開で取り出すのは肝臓。フォアグラ。 引き出された腸と血液。ブラッドソーセージ。 細切れの『手足だった肉』は、青椒肉糸。 僕はトイレで1度嘔吐をしてから、もう一度女性の名刺を確認した。ぱっと見確認しにくいが、うっすらと文字が刻まれている。 URL.アドレス。知らないサイトだ。恐らく調理映像などが掲載されているのだろう。 見てはならない。いや、むしろ逃げなければならない。こんなホテルはすぐに見つかる。 どこか人の知られない場所に潜伏しないといけない。くそ、何てものを拾ってしまったんだ。 僕が舌打ちをした時、呼び鈴が鳴った。 覗き窓から確認する。あの女性がうっすらとした笑顔で、こちら側を見上げていた。 『背中に回した血塗れの手をあなたは知らない』の意味が分かった気がした。 予想を超えた作品数! 結果発表は平日になっている! 多くの作者にリアルタイムの興奮を届けたい! 今週の日曜日に発表ってアリ?(`=ω・´) チラチラチラ! 第四十四回ワイスレ杯参加作品 >>50 >>55 >>58 >>60 只今、三十作品!(`=ω・´) チラチラチラチラ! 札幌はススキノの繁華街で、少し膨らんだ名刺入れを拾った。ヴィトン。 落とし主は分かっていた。先ほどすれ違った小柄な女性だ。20代半ば。切れ長の瞳が印象的な美人で、肩のあたりから薔薇の香りがした。それが絶妙に清冽だった。 だからだろう。魔がさした。名刺入れの中身を確認してしまった。 『Vous ne connaissez pas la main ;e par le sang dans votre dos』フランス語だ。 意味は『背中に回した血塗れの手をあなたは知らない』。 僕の心臓はドクンと鐘を打った。いきなり当たりを引いてしまった。札幌まで来た甲斐があった。 軽く息を吸って、後ろを振り向く。丁度女性が角を曲がって消えるところだった。 今追いかけて声をかければ間に合う。三流オカルト雑誌記者に過ぎない僕だけど、ジャーナリスト魂はちゃんとある。 事情をきちんと話して取材を……申し込める訳がない。危険すぎる。 僕は足早にその場から立ち去り、宿泊先のホテル……から逆方向に歩く。万が一の尾行を撒くためだ。 『Sample札幌』は知る人ぞ知る殺人記録映像のサイト名だ。トップ画像はその月によって変わる。 椅子に後ろ手で拘束された肥満型の白人男性が器具によって無理やり口を開かれ、チューブを突っ込まれて、腹を切開されている画像。 痩せ型の白人男性の腹が切り裂かれ、腸が引き出されているもの。その横のボウルには大量の血液が。 四肢を切除された東洋人男性。その前には大量の細切れの『手足だった肉』。 とまあ様々だが、画像の下には48の選択文と決定ボタンがある。 フランス語、ドイツ語、英語、韓国語、……言語は様々だが意味は1つだ。 『背中に回した血塗れの手をあなたは知らない』。 つまり画像にあった言語を選択して決定。正しければその先の動画に進む。もし間違えるとPCはクラッシュ。僕は2台壊した。 正解したのは東洋人男性と、『不知道血花放的手向的背影』の組み合わせだ。東洋人だから中国語という組み合わせは馬鹿馬鹿しいほど単純だ。 これに正解した時胸を高鳴らせたが、すぐに吐き気を催した。予想ないだが酷い動画だった。人間が生きたまま千切りにされていく。 画像と言語には関係がある事が分かった。白人なら英、仏、独、東洋人なら中国語。これは北京語だったり広東語、台湾と細かかったりする。 では細かい国籍を決めるのは何か? どういう関連がそこにあるのか? 闇サイト特集の執筆に取り掛かったのが2週間前。 こういうおぞましいサイトがある、それは云々、と、この情報だけでも書く事はできた。が、ジャーナリスト魂が燃えてしまった僕は、詳細を調べたくなった。 色々上手くいかなくて、三流雑誌の記者として燻っているけれど、僕はまだ上を目指したい。これはその足がかりになると思った。 ……予約していたホテルに戻る。念のためわざと遠回りをして、交通機関も3つ乗り継いだ。 フロントでPCを借りる。 名刺入れの中身を片っ端から検索、チェックしてやる。 あの女はおそらく『Sample札幌』殺人記録映像サイトの関係者だ。どんな癒着構造がこの名刺の束から読み取れるのか。僕は武者震いをした。 とにかく全部の名詞を取り出す。ベッド横の机の上にずらりと並べた。 並べながら、僕は青くなり、吐き気を覚えた。 日本はもとより、欧米、韓国から中国台湾まで、一流企業トップの名刺がずらり。 これはいい。予想の範疇だ。問題は−。 『マリエール札幌』『ル・ぺシェ・ダ・ヴィヨン』『九耀天飯店』……。世界に名だたる一流レストランのオーナーシェフたち。いわゆる三ツ星。 彼らが客という事か。 点だった情報が線として僕の中でつながってしまった。 チューブを突っ込まれている画像のチューブは栄養チューブ。切開で取り出すのは肝臓。フォアグラ。 引き出された腸と血液。ブラッドソーセージ。 細切れの『手足だった肉』は、青椒肉糸。 僕はトイレで1度嘔吐をしてから、もう一度女性の名刺を確認した。ぱっと見確認しにくいが、うっすらと文字が刻まれている。 URL.アドレス。知らないサイトだ。恐らく調理映像などが掲載されているのだろう。 見てはならない。いや、むしろ逃げなければならない。こんなホテルはすぐに見つかる。 どこか人の知られない場所に潜伏しないといけない。くそ、何てものを拾ってしまったんだ。 僕が舌打ちをした時、呼び鈴が鳴った。 覗き窓から確認する。あの女性がうっすらとした笑顔で、こちら側を見上げていた。 『背中に回した血塗れの手をあなたは知らない』の意味が分かった気がした。 >>60 文字化けが多い! 参加作品とワイが認めたので修正はなしで!(`・ω・´) >>65 フランス語の件は日本語の説明がされているので問題ない! 中国語の文字化けにしても、血塗れの手を背に回すとわからない、と云う意味に読み取れる! 文字化けは審査に影響しないと思ってよい!(`・ω・´) >>61 エントリーの締め切りは変わらず水曜日の日付が変わるまでですよね? >>61 発表日曜日で全然オッケーですよ! 楽しみだなぁ! >>67 その通り!(`・ω・´) >>68 だよね、だよね!(`#・ω・#´) >>69 えー(`=ω=´) 三十作品以内で収まれば告知通りの発表が濃厚! 四十台になると少し時間を貰うことになるかもしれない! そんな緩い感じの進行でよろしく!(`・ω・´) ちょっと縁側に布団を干してくる! 約束を反故にしないように鋭意努力する所存であります!(`・ω・´)> 日曜日でも土曜日でもいいけど、週末に一票 平日だと参加出来ないかも(涙) あるところに心優しい雪の怪人がいた。丸く固めた雪の塊を二つ重ね合わせたような身体をしており、手と足もあった。指はなく丸みを帯びていた。雪の怪人は真っ白だった。小さな目だけが黒かった。 怪人は雪山に住んでいた。夜空を見上げて過ごしたり、目を閉じて空想にふけったり、仲の良い兎の為に木の実をとったりした。 穏やかな時間は平和だった。仲間はいないが寂しくはなかった。 ある日、いつものように早朝の散歩へ出かけた。薄暗い中、白い雪に丸い足跡を残していく。途中、親しい兎が現れた。ぴょんと飛び跳ねながらついてきた。怪人は嬉しくなって笑うと木々の間を軽快なリズムで進んだ。 すると、うつ伏せで倒れている幼い少女を見つけた。恐る恐る近づき声をかけた。 「うば」 返事はない。身を屈めると少女を抱き起こした。息はあるが弱々しく身体も冷たい。しばし考えた。空を見上げると、日が昇り始めている。 もう一度少女を見た。僅かに苦しそうな声をあげた。怪人は少女を抱きかかえると村があるほうへ歩き出した。 本来ならば昼間は日陰から出ない。太陽の光で身体が溶けてしまうからだ。それでも、少女を助けたかった。雪の怪人は、力の限り走った。太陽の光が燦々と降り注いでいる。怪人の身体が溶けはじめた。 兎も後をついてきた。心配そうに怪人を見ている。 太陽が昇りきった。沢山の雫が顎や肘から伝い落ち、身体が原形を保てなくなってきた。ドロドロと身体が溶け出し変形していく。 怪人は立ち止まった。肩を落とし疲れた瞳を少女に落とす。溶けた雪が水となり少女の頬を濡らした。 「ん……」と唸った後少女の目が開いた。美しい緑色の瞳であった。 「う、うば」 怪人は慌てて顔を背けた。己の姿を見て怖がって叫ぶと思った。だが少女はそうしなかった。その代わり今にも消え失せてしまいそうな声で「……雪だるまのお化け?」と訊いた。 「うば」 頭をぶんぶんと振ってみせた。少女は小さく微笑むと意識を手放した。赤みのない真っ白な頬。怪人は再び歩きはじめた。黒い目は、揺るぎない信念で満ちていた。 村が見えてきた。外に人はいなかったが、村の入り口から一番近い家の窓から数人の村人が集まっているのが見えた。皆、険しい顔つきである。その中に一際苦心の表情を浮かべる男女がいた。少女の両親だった。 怪人は少女を村の入り口に寝かせた。石を拾い上げ家の窓に向かって投げた。コンという音に家の中にいた村人が外を見た。すぐに少女に気づき出てくるだろう。 怪人は姿を見られる前に立ち去ろうと踵を返した。 「待って」 振り返ると少女が視線を投げかけていた。 「うば」 「待って……お礼を」 その時、家のドアが開いた。瞬間、空気を蹴散らすようなけたたましい銃声が響いた。怪人がのけぞる。胴体に大きな穴がぽっかりと空いていた。 男がドアの所に立っていた。猟銃を構え「化け物め」吐き捨てると再びスコープを覗き込む。 「パパ、やめてっ」少女が叫ぶ。背を向けて逃げ出す怪人。ドンと銃声が鳴った。足に命中し転倒した。 「……うば」 立ち上がれなくなり呻く。と、兎が木の陰から飛び出した。側へ寄ってくる。 「うばっ」 こっちへ来るな。そう言ったと同時であった。銃弾が兎を貫いた。兎はくたりと横たわり動かなくなった。 「…………うば」 原形を留めていない手で兎を引き寄せる。手が血で染まった。怪人の表情に悲しみの色が現れる。 数人の男が太い木の棒を持ってやってきた。そして、高く上げると振り下ろした。怪人の身体が粉々になっていく。少女は止めようとした。 「違うの……助けてくれたのよ」 けれど、その声はあまりに弱く届かなかった。母親は抱きかかえると、嫌がる少女を家の中へ連れて入った。 それから、怪人はぐちゃぐちゃになるまで潰された。地に積もる雪と判別がつかなくなった。小さな黒い瞳でさえも見えなくなったのち、男らは家の中へと戻っていった。 夕焼け空に変わった。日が沈んで夜になった。静寂が訪れた頃、一つの家のドアがそっと開いた。音を立てないようドアを閉めて村の入り口へ駆けてくる幼い姿。 怪人が助けた少女だった。白い息を吐きながら彼女が、かつて怪人がいたであろう場所へ立った。そこは兎の血で赤くなっていた。 少女は身を屈めた。頬を伝い流れ落ちる涙が、はらはらと地に落ちていく。熱を帯びた涙が赤い雪に染みた。 彼女の足元に黒い粒が二つ落ちていた。それが、瞬きをする。その瞳は純粋な心を持つ少女の姿をとらえていた。 喜びの感情が込み上げてくる。己の為に涙するその優しさが嬉しかった。怪人は口元を緩めた。それから、目を伏せると、最後の力を振り絞り赤く染まった手で彼女を包み込んだ。 第四十四回ワイスレ杯参加作品 >>50 >>55 >>58 >>60 >>74 只今、三十一作品!(`・ω・´) 締め切り金曜で発表日曜ってのは相応の取引だな。 お互いにメリットがないとねえ。 ワイもそう思うよね? バカなことをしたな、と思う。 大卒の生涯賃金は2億8000万だが、彼の場合はよほどのことがない限り、今後の人生、その数分の1に満たないだろう。 彼とはここのところ連絡がとれなくなっていたが、ようやく連絡が取れた。 我々はとりあえず酒を飲むことになった。それはよかったのだが。 「すまん、今月はどうしても支払いが厳しくてな。頼む金を貸してくれ」 一杯目の生ビールを飲み干すと、彼はテーブルに頭をぶつけるのではないかと思うほどの勢いで頭を下げた。お通しの肉豆腐に髪がかかっている。 僕は溜息をついた。それほど楽しい酒の席を期待していたわけではないが、こんな姿を見せられると、こちらまで滅入ってくる。 すでに30に近い。新卒というカードを投げ捨てた男の末路だ。 彼とは学生のころからの付き合いだ。彼は当時、ある文芸賞を受賞した。同じく受賞を目指していた僕は、彼がまぶしかった。 ある出来事から、僕は夢をきっぱりと諦めていた。おかげで生活の中心はがらりと変わった。そのために就職できた、と言ってもいい。 彼は作家になり、僕は会社勤めになった。 だが、彼の受賞は幸運といえるだろうか。その後は鳴かず飛ばず。文才はある方じゃないか、と思う。が、少なくとも時代に乗れる才覚、才能はなかった。 ならば文章を書くにしても別の仕事をすればいいのに、そういうつもりもないらしい。 本人がどう思っているのかは知らないが、今のこいつは作家というのには程遠い。 小説を書くだけの落伍者、社会不適合者でしかない。 僕は懐の財布から10万円ほどを抜き取ると、そいつに投げつけた。ボーナスの一部だ。 「ほらよ」 彼はその金を見ると、一瞬、眉間に皺を寄せた。 「……いいのか?」 「いいよ。好きな時に返してくれれば」 すまない、必ず返す、と呟くと、彼は金を集めて自分の財布にしまった。 気まずい時間が流れる。無心をするにしても切り出すタイミングを少しは考えろ、そう思う。だから切り出してやった。 「しかし、人生という一回きりのものを投げ捨ててまで、そんな道を続ける意味はあるのかね?」 僕は若干げんなりしていたから、嫌がらせの意味も込めた。職歴もない。養うべき家族もない。どうせ貯金もない。ないないずくしの男だ。 彼は目を見開く。 「ああ、当然だろ?」 返答は短かった。僕の鼻から息が吹き出る。僕も短く返答してやった。「そうか」と。 「ただな、自分で言うのもなんだが、俺みたいな奴と付き合うのってしんどくないか?」 言われて、僕は頭を掻いた。そう思っていてもやめられないほどに、お前はもう心底、創作の女神に魅入られているんだな。 もう8年も前のことだ。僕は小説に魅せられた。 いつの日からか、ある種の決意のもとで、生活の何もかもを犠牲にして小説を書くようになった。時間はいくらあっても足りない。そのうち、僕は留年を覚悟した。 そういうぶっ壊れた生活を続けていた時のことだ。女神が降臨した。 暗い部屋で執筆を続ける僕。とつぜん現れた女神はとても美しかった。僕の目指す創作の、先の先にあるような、まばゆいほどの輝きがあった。じっさい光っていた。 僕はその時、夢と現の狭間にいたのだろう。ぼうっと立ち上がると彼女に近づいた。彼女はにこりと微笑む。もっと近づきたい。そう思って手をのばすと彼女のなめらかな腕に触れ、ぬるりとした。 なんだろう、よく目を凝らす。鉄の匂い。僕の手には、べっとりと血がついていた。 なぜ血が? 彼女の血だろうか? しかしなんとなく僕には、自分のような名も無き創作者の血なのではないかと思えた。 彼女は両手を広げた。 僕は一瞬のためらいの後に、それを拒絶した。脳裏に山月記の虎のようになった自分の姿が浮かんだ。受け入れば、きっともう後には退けない。女神は消えた。 僕はそれ以来、どうしてか自分の作品に何の価値も見いだせなくなり、そして小説を書く気が起きなくなった。 すでに女神に抱擁されたものは気がつけるだろうか。おそらくその血塗れの手は背に食い込み、やがて心の臓まで届くだろう。しかしお前は女神の存在に気が付かないほど、彼女にがっついてしまったのだ。そうではないのか。 だが、それでも。 「わかるだろ? 僕はさ、お前が羨ましいんだよ。金くらいなら貸してやる。だから、たまには連絡くらい取れよな」 僕は自分で言ったことが気恥ずかしくなって、中ジョッキの残りを飲み干した。彼は答える。 「そ、そうか、ならさ――もう少しだけ金貸してくんないかな」 僕の手刀がしたたかに彼の額を打った。 第四十四回ワイスレ杯参加作品 >>50 >>55 >>58 >>60 >>74 >>78 只今、三十二作品!(`・ω・´)……既に一日で処理できる量を越えているのでは! 古巣の創文板の文字数で考えると六十四作品に相当する! とある切っ掛けで友人の結城網太郎と共に悪の道に堕ちた少年、琴川千里は組織の一員として、 今日も全身強化型戦闘タイツにその身を包み出撃していた。今回は『植え付けろ! 恐怖作戦』。 これは通行人を取り囲み、ゆっくりとヒンズースクワットをするという恐るべき代物であった。 「きゃああ! 助けてヒーロー!」女性の声に呼応するかのように琴川は空を見上げた。 「ヒーロー接近! 総員退避!」彼の掛け声に合わせて戦闘員達は脱兎のごとく逃げ出す。もちろん琴川もだ。 上空に青い光が煌めいた。轟音とクレーター。中央には決めポーズの仮面男性。 「ヒーロー見山! 覚悟しろ! 悪の手先どもめ!」 琴川の背にヒーローの飛び蹴りが直撃。彼は宙を吹き飛ぶ。 『もーしもーし』後方に吹き抜けていく大気の中で、女性の甘い声が響いた。無線だ。 『はい、こちら琴川です』『千里ちゃん交代時間よー』『はい、ただちに帰還します』通信を切った琴川はほっとした。トイレに行きたかったからだ。 悪の組織の本部は男気ヒルズの最上階にある。 帰還してすぐに、琴川は更衣室に備え付けの個室トイレに駆け込んだ。鍵もかけずにスーツとパンツを脱ぐ。便座に腰を下ろし、下着をじっと見つめた。 「あ」「わ! ノックしろよ!」「ごめん」「さっさと閉めろよボケ網!」 ドアをいきなり開けた結城網太郎に、琴川は耳たぶまで真っ赤にして声を荒げた。 鍵をかけ、もう一度下着を見る。血の塊が付着していた。琴川は指を伸ばし、塊をそっとつまんだ。 「さっき悪かったな。ほら」「え」「負傷者用軟膏。効くと思う」「え」「切れ痔だろ。見えちゃったんだ」「あ、ああ」 「恥ずかしいのも分かるけどさ、ガキん頃にちんちんのデカさ比べ合った仲じゃん。気にすんなよ」 「あ、ああ。助かる」「うん。じゃあ行ってくる」 結城は琴川の次の出撃であった。琴川は結城の背に声をかけた。 「結城」「ん?」「気をつけろよ」「おう!」肩越しに笑う結城の歯は白い。 男気ヒルズ屋上。琴川は欄干にもたれかかり、肘と顎を預けていた。長いまつ毛を伏せ、ため息をつく。その肩に手がぽん、とかかった。 振り返る琴川の頬に人差し指が小さくささる。巨乳の美魔女が佇んでいた。彼女は組織の副総統である。 「千里ちゃん。今日の出番は終わりでしょ。タイツ脱がないの?」「自主待機です」「健気ねえ」「え」 「いつでも結城君の救援に、か。恋する女の子って感じね」「え?」「スーツ調子いいでしょ」「はい」「だよね。それ、女の子用だもん。私のお・さ・が・り」 にっこりと笑う副総統に琴川は絶句した。 「……!」「最近悩んでるでしょ」「俺『ついて』ますよ」「両性具有ね。さっき血触ったでしょ。臭うわ」 琴川は表情を硬くし、手を背に回して隠した。美魔女はくすくすと笑う。 「組織に来てから眼鏡やめたでしょ。自分の顔が嫌いだから伊達眼鏡かけてたって教えてくれたじゃない? でもかなりの美形だし変だと思ってたの。 つまりずっと隠したい事があって、組織に来て解決した。男寄りになりたかったのね。でも遅めの生理が始まっちゃった」「何で俺にそれを言うんですか?」 「只の気まぐれ。けどいつかは彼にばれるわよ、性別」「!!」 「怖がっているのね。千里ちゃん。でも言わないのと、言えないのじゃ全然違うわ。いつまで『想像の血塗れの手』で彼を抱きしめるつもり?」 「俺は……」「あ、でもうちって恋愛禁止だったわ。面倒な事になるかもね。今のうちに組織抜けとく? でも私を倒さないとそれは無理。どうする?」「俺は……!」 ※ 「で、かっこつけた末にけちょんけちょんにされたのか?」 「可愛かったからちょこっと苛めたら色々覚醒しちゃって、めっちゃ強かったのですわ」と、ボロボロの美魔女。 「男気ヒルズも半壊させおって……修繕費が何十億だぞ!!」 謎の影は声を荒げた。美魔女は瞳を潤ませる。 「総統様ぁ」「な、なんだ」「……許してっ」彼女はニッコリと笑った。 「……今回だけだぞ」「ありがとうございますう。うふふっ」 ※ 「どうしたよ琴川、お前ボロボロじゃん」「俺は組織を抜けた。結城、お前の分も脱退届け出しといたから」「え」「正義の味方になりたくなった。お前もなれよ」「え」 「あれはモテるぜ」「ごくり」「今日、街の女達、ヒーローに目がハートだった」 「……そうするか! 確かにヒーローはカッコいいもんな」結城に琴川は笑った。 「お前ならそう言ってくれると思ったぜ。だから、いつかは……」「ん?」 「何でもない。帰るか。履歴書作んないとな」「ああ! 気合入れて作るぜ!」 こうして彼らの青春は続いていくのだった。 第四十四回ワイスレ杯参加作品 >>50 >>55 >>58 >>60 >>74 >>78 >>80 只今、三十三作品!(`・ω・´) 文字化けするのか!(`≖ω≖´) 仕様が変わったのか!(((`゚'ω゚'´))) 熱燗でも飲むか! 2段階選別はどうでしょう? 21日に入賞作品を発表(予選通過) 日曜日に入賞作品の順位を発表(最終選考) これならじっくりと読み比べたり、色々できると思います。 >>85 いいですね、それ。こっちもじっくり楽しみたい ただ、予選落ちするとヘコむ期間も長くなるよw 入賞しなかったら日曜には来ないと思うけど、 スレに入賞者しかいないというのはちょっと寂しいかな 自分は参加賞目的なのでノーダメージです。選考の基準はよく分かりませんが、唸る作品は 幾つもあるのが分かります。 参加賞目的の作品とは違う元々の素養、発想、着眼点、作品への仕上げ方。 そういう秀でているものがあるものを、一次で拾い出して、日曜日に発表する。 入選された方は幸せなクリスマス近辺を過ごせると思います。 (頑張っていて落選された方はクルシミマスですが、それもワイ杯の贈り物としてとらえれば良い と思います) やっぱ明日締め切りで日曜日発表でいいんじゃないですか? その間、みんなで感想でも言い合いながらワイワイガヤガヤ楽しみましょうよ ワイ杯だけに! 「わたしの笑顔の中には、いったい何がいるのでしょう」 私がカウンセリングする少女は、そう言いながら微笑む。この少女は普通の子たちとは違って特別で、どこまでも異質た。 少女の身体は、この世界の不浄な物を拒むのだ。この世界に普通に存在する物質は少女の身体を傷つけてしまう。呼吸をするための空気もだ。 少女はこの世界にあって清らかであり過ぎたのだ。 そして、その絶対的な清さを表すように、少女は人々が畏れ慄くほど美しく、女の私でさえ、時折少女から見つめられると戸惑った。 学者たちは、この少女を生かすために特別な水槽と絶えず滅菌されて循環する水を用意した。 不純物のない深い水の世界を作り、少女を沈めたのだ。 レーシングドライバーのような薄い潜水服を着込んだ私は、目の前の少女の背負う生涯の孤独と相対する。 これでも学者の肩書を持つ私は、少女をカウンセリングするため、このように定期的に潜水服を着て水槽に潜り少女のもとへと降りていく。 こんな水の中で、人間はどうやって生きることができるのだろうか。 かならずといっていいほど、この少女に初めて会う人は学者たちに問いかけるが、特殊な水は彼女に酸素や栄養を補給し続ける。 そして、少女が水の中で当たり前に声を発するように、どんな人間でもこの水の中では会話ができるそうだ。 さらに、少女は清いものしか身体の中に取り入れることができない。清い身体は清いものしか生み出さないので、水槽が内部から汚染される心配はなかった。 ただし外部からの汚染物は遮断しなければならないので、不浄の人間はボンベを背負って身体を潜水服に密閉しないといけない。 ヘルメット越しに、私は少女の問いに答えた。 「とてつもない淋しさとか孤独って奴がいるんじゃないか?」 型どおりの私の模範解答に、彼女は少しがっかりした表情をした。 「先生、それはありきたりな答えじゃないですか。もっと詩的な答えを期待していたんだけどな」 「悪いな。生まれてこのかた、あんまりそういう本を読む暇がなかったんだ」 ちょっと不機嫌になった少女に私は正直に謝った。そして何かお薦めの本はあるかと問いかけた。 「あら、じゃあ何か先生にぴったりな本をあつらえましょう」 少女の美しい顔に、上機嫌な笑みが花開いた。すっと優雅に泳ぎだす少女。どれにしようかしらと水槽の底に漂う、滅菌済みで防水処理を施された本たちを品定めする。 そして一つの本を掬うと、私のもとへふわりと舞い戻った。 「これなんか先生にぴったりだと思うわ」 差し出された本のタイトルを読みあげると、それは本を読まない人間でも知っている有名な本だった。 女主人公が、様々な人間関係の中で傷つき、傷付け、そして愛しい人を我が手で殺してしまうという内容だっただろうか。 「なんでこれを選んだんだい?」 問いに答えない代わりに、少女は突然私を抱きしめた。潜水服越しに少女の軽やかな肢体を感じた。 少女はヘルメット越しの私の耳に語り掛ける。 「だって、先生から『血の匂い』がするんですもの。古いものみたいですけど、確かに良い匂いがするわ」 途端に、水の圧迫感を感じた。少女はこの水の世界で優雅に、素早く泳ぐことができる。 しかし私は重い潜水服に囚われており、自由に動けない。 もし、このままボンベの空気が尽きるまで少女に抱き掴まれたままだとしたら。 さらに背中のボンベを弄られた時にはなす術もないだろう。 今でこそ私は、少女のカウンセリングのために潜水士の真似事をしているが元来運動が苦手で力も弱い。 薄く見えるが、鉛の入った潜水服を着てこの少女を振りほどくなんてもってのほかだ。 おまけに、命綱ははるか遠くにある。 しかし、なぜ少女は分かったのだろうか。少女の背中に回した私の手が、過去に血で濡れていることを。 「先生、人の血ってものは特別なものなのよ。穢れていると共に清らかなで、とてもつもない命の匂いがするものなの」 その強烈な匂いはいつまでも永遠に消えないわ、と少女は語る。私は少女が清すぎるゆえに、この忌まわしい匂いが分かるのだと悟った。 私はこの少女に裁かれるのだろうか。それも悪くない、と思った。 だが、少女は私から離れた。解放された事に気が付くと、少し残念に思った。少女は、純粋無垢な笑顔を再び咲かせる。 「先生、本を読んだら感想を聞かせてね。それと『先生のことも』また今度教えて頂戴」 絶対よ、と笑う少女。その時、私は見つけた。血を流したことのある私だからこそ見つけれたのだろう。 少女の笑顔の中には、清くて美しい殺人鬼がいた。 すみません…2作目ができてしまいました。師匠、がんばって… 「わたしの笑顔の中には、いったい何がいるのでしょう」 私がカウンセリングする少女は、そう言いながら微笑む。この少女は普通の子たちとは違って特別で、どこまでも異質だった。 少女の身体は、この世界の不浄な物を拒むのだ。この世界に普通に存在する物質は少女の身体を傷つけてしまう。呼吸をするための空気もだ。 少女はこの世界にあって清らかであり過ぎたのだ。 そして、その絶対的な清さを表すように、少女は人々が畏れ慄くほど美しく、女の私でさえ、時折少女から見つめられると戸惑った。 学者たちは、この少女を生かすために特別な水槽と絶えず滅菌されて循環する水を用意した。 不純物のない深い水の世界を作り、少女を沈めたのだ。 レーシングドライバーのような薄い潜水服を着込んだ私は、目の前の少女の背負う生涯の孤独と相対する。 これでも学者の肩書を持つ私は、少女をカウンセリングするため、このように定期的に潜水服を着て水槽に潜り少女のもとへと降りていく。 こんな水の中で、人間はどうやって生きることができるのだろうか。 かならずといっていいほど、この少女に初めて会う人は学者たちに問いかけるが、特殊な水は彼女に酸素や栄養を補給し続ける。 そして、少女が水の中で当たり前に声を発するように、どんな人間でもこの水の中では会話ができるそうだ。 さらに、少女は清いものしか身体の中に取り入れることができない。清い身体は清いものしか生み出さないので、水槽が内部から汚染される心配はなかった。 ただし外部からの汚染物は遮断しなければならないので、不浄の人間はボンベを背負って身体を潜水服に密閉しないといけない。 ヘルメット越しに、私は少女の問いに答えた。 「とてつもない淋しさとか孤独って奴がいるんじゃないか?」 型どおりの私の模範解答に、彼女は少しがっかりした表情をした。 「先生、それはありきたりな答えじゃないですか。もっと詩的な答えを期待していたんだけどな」 「悪いな。生まれてこのかた、あんまりそういう本を読む暇がなかったんだ」 ちょっと不機嫌になった少女に私は正直に謝った。そして何かお薦めの本はあるかと問いかけた。 「あら、じゃあ何か先生にぴったりな本をあつらえましょう」 少女の美しい顔に、上機嫌な笑みが花開いた。すっと優雅に泳ぎだす少女。どれにしようかしらと水槽の底に漂う、滅菌済みで防水処理を施された本たちを品定めする。 そして一つの本を掬うと、私のもとへふわりと舞い戻った。 「これなんか先生にぴったりだと思うわ」 差し出された本のタイトルを読みあげると、それは本を読まない人間でも知っている有名な本だった。 女主人公が、様々な人間関係の中で傷つき、傷付け、そして愛しい人を我が手で殺してしまうという内容だっただろうか。 「なんでこれを選んだんだい?」 問いに答えない代わりに、少女は突然私を抱きしめた。潜水服越しに少女の軽やかな肢体を感じた。 少女はヘルメット越しの私の耳に語り掛ける。 「だって、先生から『血の匂い』がするんですもの。古いものみたいですけど、確かに良い匂いがするわ」 途端に、水の圧迫感を感じた。少女はこの水の世界で優雅に、素早く泳ぐことができる。 しかし私は重い潜水服に囚われており、自由に動けない。 もし、このままボンベの空気が尽きるまで少女に抱き掴まれたままだとしたら。 さらに背中のボンベを弄られた時にはなす術もないだろう。 今でこそ私は、少女のカウンセリングのために潜水士の真似事をしているが元来運動が苦手で力も弱い。 薄く見えるが、鉛の入った潜水服を着てこの少女を振りほどくなんてもってのほかだ。 おまけに、命綱ははるか遠くにある。 しかし、なぜ少女は分かったのだろうか。少女の背中に回した私の手が、過去に血で濡れていることを。 「先生、人の血ってものは特別なものなのよ。穢れていると共に清らかなで、とてもつもない命の匂いがするものなの」 その強烈な匂いはいつまでも永遠に消えないわ、と少女は語る。私は少女が清すぎるゆえに、この忌まわしい匂いが分かるのだと悟った。 私はこの少女に裁かれるのだろうか。それも悪くない、と思った。 だが、少女は私から離れた。解放された事に気が付くと、少し残念に思った。少女は、純粋無垢な笑顔を再び咲かせる。 「先生、本を読んだら感想を聞かせてね。それと『先生のことも』また今度教えて頂戴」 絶対よ、と笑う少女。その時、私は見つけた。血を流したことのある私だからこそ見つけれたのだろう。 少女の笑顔の中には、清くて美しい殺人鬼がいた。 第四十四回ワイスレ杯参加作品 >>81 >>96 只今、三十四作品!(`・ω・´) 以前にも書き込んだ内容ではあるが、ワイスレ杯の参加作品は一日で読むようにしている! その時のワイの精神状態で全作品を読むことによって評価の揺らぎを最小限に抑えられると考えている! 今回は数が多い! 日を跨ぐ可能性がある! とは云えど、極力、間を空けずに読む気概ではいる! ワイの考え!(`・ω・´) 次から一人一作品にしたほうがいいんじゃないだろうか >>99 ワイさん忙しいのに本当にありがとうございます。無理されないように。でも、結果発表楽しみにしてます。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
read.cgi ver 07.5.5 2024/06/08 Walang Kapalit ★ | Donguri System Team 5ちゃんねる