ワイが文章をちょっと詳しく評価する![79]
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オリジナルの文章を随時募集中!
点数の意味
10点〜39点 日本語に難がある!
40点〜59点 物語性のある読み物!
60点〜69点 書き慣れた頃に当たる壁!
70点〜79点 小説として読める!
80点〜89点 高い完成度を誇る!
90点〜99点 未知の領域!
満点は創作者が思い描く美しい夢!
評価依頼の文章はスレッドに直接、書き込んでもよい!
抜粋の文章は単体で意味のわかるものが望ましい!
長い文章の場合は読み易さの観点から三レスを上限とする!
それ以上の長文は別サイトのURLで受け付けている!
ここまでの最高得点は75点!(`・ω・´)
前スレ
ワイが文章をちょっと詳しく評価する[78]
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1504438389/ 第四十三回ワイスレ杯のルール!
名無しの書き込みを必須とする!(名乗った場合は通常の評価に移行する!)
設定を活かした内容で一レスに収める!(目安は二千文字程度、六十行以内!) 一人による複数投稿も可!
通常の評価と区別する為に名前欄、もしくは本文に『第四十三回ワイスレ杯参加作品』と明記する!
ワイが参加作品と書き込む前に作者が作品を修正する行為は認める!
今回の設定!
飲食店にカップルが訪れた! どちらも穏やかな表情であった! 空いていた席に向き合う形で腰を下ろす!
ウエイトレスによって水の入ったコップが運ばれた! 直後に二人の様子に微細な変化が表れた! 唇が戦慄く!
ほぼ同時にテーブルに置かれたコップを鷲掴みにして一気に飲み干す! その後、急激に話が回り始める!
どのような姿の二人が、その店に訪れて何が始まるのか! 作者の素晴らしい発想を大いに期待する!
応募期間!
今から土曜日の日付が変わるまで! 上位の発表は投稿数に合わせて考える! 通常は全体の三割前後!
締め切った当日の夕方に全作の寸評をスレッドにて公開! 同日の午後八時頃に順位の発表を行う!
早朝にひっそりとスタート!(`・ω・´) ここは東京、神宮外苑の銀杏並木。黄葉にはまだ早いが、徐々に水気を失う葉が、秋の深まりを告げる。
一組の男女が、ゆっくりと道を歩いている。午後のほんのり金色ががった光の中、くっついたり離れたり、仲睦まじげな様子。
男性(バイオロジカル・メイル?)は古代でいう丈夫、180cmを超すくらいの身長。女性(バイオロジカル・フィーメイル)も170cmはある。
けれど、女性が男性に密着すると、まるで一つの生き物になったかのように、影も輪郭も溶け合って見える。
神宮球場の裏手から回り、そろそろ再び幹線道路に出るあたり。店先の黒板、「真牡蠣の初物入荷しました 季節のコースをどうぞ」に女性が反応した。
「ねぇ、ここで早めの夕食にしな……しませんか?」
「良いですね。初デートの締めには相応しい。楽しみです」
にこやかな店員が並木に面したテラス席を勧めた。温かみのある木製のテーブルと椅子に、向かい合って座る。ウェイトレスがメニューと水を持ってきた。
少々お高めの料金設定だが、女性も男性も金銭には困っていない。使う機会も限られているので、むしろ金額に見合う満足を与えてくれる店はありがたかった。
再度訪れたウェイトレスに、女性は季節のコースと、追加の生牡蠣、食後に本日のタルトセットを頼む。男性は季節のコースの他、追加に焼き牡蠣と、食後のコーヒーを注文した。
ウェイトレスが店内に去ったのを見て、二人は同時にコップを握りしめ、水を飲み干す。ほどよく冷えた水は、かすかに柑橘の風味がして快い。口火を切ったのは女性だった。
「で、いつまでそうしているつもりなのかしら?」
ジトリとした目で男性を睨む女性。なまじ目が大きいため、きつめの表情に変わると結構な迫力である。
「な、なんのことでしょう?」
唇を引きつらせ、それでもしらを切る男性。
「フゥン、よくできてるわね」
けれど、目が泳ぎかけている状況ではあまり意味が無かった。彼女が女性語を多用し始めたら要注意。一応今日が初対面のはずの男性は、そのことを身にしみて知っていた。
「メンテナンスが長引くとか言って、ちゃっかりヒト型のボディで外出してるんだもんねー」
男性は天を仰ぎ、諦めたように息を吐いた。ああ、緑が目(カメラアイ)に眩しい。
「いつから気づいていたんだい?」
「会って5分後。流石に一瞬はわからなかったけど、見た目を私の好みに寄せすぎたのがまず第一の失敗だったわね。でよく見たら動きはヒトにしちゃ流麗すぎるし、その割に変なところで止まるし? あんた基礎二足歩行プログラムをそのまま使ったでしょ」
反射の再現とか細いところは多分技師の趣味でプリセットされてたんでしょうけど、随意運動はね、と彼女は独言のように続ける。
「ひどいなぁ、せっかく君が喜ぶだろうと選んだのに」
「私を出し抜こうなんて100年早かったわね。だいたい、今日が初対面の相手にあそこまでベタベタするわけないでしょう常考」
頬を染めて横を向きつつ女性は早口に唱える。
「全くナンパなんて古典的な手段使っちゃって一体どこで覚えたのかしらでもちょっと嬉しかった」
最後の言葉を聞いて、男性は花が開いたように笑う。
「良かった、嫌われたらどうしようかと思った」
「あなたを嫌うなどあり得ないって、生命なき暗黒を往く朋よ。私を喜ばせようとしてくれたのは伝わったから。それにあなたと私は文字通り一蓮托生でしょう?」
ウィンクして、ちょうどよく運ばれてきた前菜と生牡蠣に手をつけ出す。哀れな地球の着生二枚貝は、あっと言うまに女性の胃に収まった。潮の香りがたまらない。
「あ、でもせっかくそのボディを手に入れたんだから、次の航海までにちゃんと使いこなせるよう訓練すること!」
ひどいなぁ、と男性ーー彼女の宇宙船の管理AIも兼ねる、東洋竜型自律ロボット(マキナアニマ・タイプ・イースタンドラゴン)は苦笑した。
今は25XX年。ヒトとAIは共に育ち、情報界(イデアル・アース)と母なる地球を自在に歩んできた。そして今まさに、空間跳躍による再びの大航海時代が始まりつつある。
かつての征服者(コンキスタドール)の悲劇を防止するため、惑星調査官は宇宙を駆ける。原住生命、あるいはその兆しを人間の悪意から守るために。
そんな重い責任を負う役職の二人だが、この瞬間は相棒と美味しい料理を楽しむとしよう、そう固く決めていた。 ここは東京、神宮外苑の銀杏並木。黄葉にはまだ早いが、徐々に水気を失う葉が、秋の深まりを告げていた。
一組の男女が、ゆっくりと道を歩いている。午後のほんのり金色ががった光の中、くっついたり離れたり、仲睦まじげな様子。
男性(バイオロジカル・メイル?)は古代でいう丈夫、180cmを超すくらいの身長。女性(バイオロジカル・フィーメイル)も170cmはある。
けれど、女性が男性に密着すると、まるで一つの生き物になったかのように、影も輪郭も溶け合って見える。
神宮球場の裏手から回り、そろそろ再び幹線道路に出るあたり。店先の黒板、「真牡蠣の初物入荷しました 季節のコースをどうぞ」に女性が反応した。
「ねぇ、ここで早めの夕食にしな……しませんか?」
「良いですね。初デートの締めには相応しい。楽しみです」
にこやかな店員が並木に面したテラス席を勧めた。温かみのある木製のテーブルと椅子に、向かい合って座る。ウェイトレスがメニューと水を持ってきた。
少々お高めの料金設定だが、女性も男性も金銭には困っていない。使う機会も限られているので、むしろ金額に見合う満足を与えてくれる店はありがたかった。
再度訪れたウェイトレスに、女性は季節のコースと、追加の生牡蠣、食後に本日のタルトセットを頼む。男性は季節のコースの他、追加に焼き牡蠣と、食後のコーヒーを注文した。
ウェイトレスが店内に去ったのを見て、二人は同時にコップを握りしめ、水を飲み干す。ほどよく冷えた水は、かすかに柑橘の風味がして快い。口火を切ったのは女性だった。
「で、いつまでそうしているつもりなのかしら?」
ジトリとした目で男性を睨む女性。なまじ目が大きいため、きつめの表情に変わると結構な迫力である。
「な、なんのことでしょう?」
唇を引きつらせ、それでもしらを切る男性。
「フゥン、よくできてるわね」
けれど、目が泳ぎかけている状況ではあまり意味が無かった。彼女が女性語を多用し始めたら要注意。一応今日が初対面のはずの男性は、そのことを身にしみて知っていた。
「メンテナンスが長引くとか言って、ちゃっかりヒト型のボディで外出してるんだもんねー」
男性は天を仰ぎ、諦めたように息を吐いた。ああ、緑が目(カメラアイ)に眩しい。
「いつから気づいていたんだい?」
「会って5分後。流石に一瞬はわからなかったけど、見た目を私の好みに寄せすぎたのがまず第一の失敗だったわね。でよく見たら動きはヒトにしちゃ流麗すぎるし、その割に変なところで止まるし? あんた基礎二足歩行プログラムをそのまま使ったでしょ」
反射の再現とか細いところは多分技師の趣味でプリセットされてたんでしょうけど、随意運動はね、と彼女は独言のように続ける。
「ひどいなぁ、せっかく君が喜ぶだろうと選んだのに」
「私を出し抜こうなんて100年早かったわね。だいたい、今日が初対面の相手にあそこまでベタベタするわけないでしょう常考」
頬を染めて横を向きつつ女性は早口に唱える。
「全くナンパなんて古典的な手段使っちゃって一体どこで覚えたのかしらでもちょっと嬉しかった」
最後の言葉を聞いて、男性は花が開いたように笑う。
「良かった、嫌われたらどうしようかと思った」
「あなたを嫌うなどあり得ないって、生命なき暗黒を往く朋よ。私を喜ばせようとしてくれたのは伝わったから。それにあなたと私は文字通り一蓮托生でしょう?」
ウィンクして、ちょうどよく運ばれてきた前菜と生牡蠣に手をつけ出す。哀れな地球の着生二枚貝は、あっと言うまに女性の胃に収まった。潮の香りがたまらない。
「あ、でもせっかくそのボディを手に入れたんだから、次の航海までにちゃんと使いこなせるよう訓練すること!」
ひどいなぁ、と男性ーー彼女の宇宙船の管理AIも兼ねる、東洋竜型自律ロボット(マキナアニマ・タイプ・イースタンドラゴン)は苦笑した。
今は25XX年。ヒトとAIは共に育ち、情報界(イデアル・アース)と母なる地球を自在に歩んできた。そして今まさに、空間跳躍による再びの大航海時代が始まりつつある。
かつての征服者(コンキスタドール)の悲劇を防止するため、惑星調査官は宇宙を駆ける。原住生命、あるいはその兆しを人間の悪意から守るために。
そんな重い責任を負う役職の二人だが、この瞬間は相棒と美味しい料理を楽しむとしよう、そう固く決めていた。 第四十三回ワイスレ杯参加作品
>>6
只今、一作品!(`・ω・´) 触りはできたけどこっからの面白い展開が思い付かないッ!!
今日は私の新しい歳の始まりだからなんとしてでも参加したいのにィィ!! IPv6にはまだ対応していません。IPv4に切り替えてください
これが出て、パソコンで書き込まない
折角、ワイスレ杯の作品書けたのに‥‥
どうも5chになった弊害のようですね
切り替えってどうやるんですか?
検索したら、同様の質問がいくつかあるけど、まだ回答がないし >>10
お誕生日おめでとうございます。
ところでおいくつになられあっ何をする!離s・・・ ありがとうございます。四捨五入して30かもしれないし、そうでないかもしれない……って話してる間に>>12 さんが憲兵に連れていかれちゃったわ。
とにかくネタ探そ。 どうもWi-Fiがいけないらしいが
ウチにはLANケーブルないしなあ。Wi-Fiで飛ばさないと如何ともしがたい (`・ω・´)(なるほど、お題が限定的に見えると作品数が減るのか!
忙しい時に開催する場合にこの手は使える!
今回は限定されているように見えて色々と抜け道を用意してある!
投稿者の何人かは気付くことだろう! ワイは楽しみに待つとしよう!
さて、チロリで湯煎した酒を飲みにいくか!) 相模さんはワイ杯開催宣言直後にぶっ込むの好きですね
わざとですか >>10おめでとうございます(*´ω`*)
コンクール作品泥沼にはまりまくって
創作の闇どころか
ブラックホールに突入した俺は、疲れたので
今回は後半に1作品だけエントリーしようと
思います。
皆様ファイトですヽ(・∀・)ノ ーー妻よ、なぜ裏切った。
駅前のカフェにて。
ーードン!
空のグラスを叩きつけるようにして置いた。
キッと向かいに座っている妻の香奈枝を睨みつける。
「おい! どういうことだよ!」
ーードン!
彼女も同じく威嚇するようにグラスを乱暴に置く。
「どういうことも、そういうことよ!」
プチッと梱包材を潰したような音がした。
逆ギレかよ。もう、許せねぇ!
「意味わかんねぇよ! まずは謝れよ!」
「隠してて悪かったわ! でも、今さらどうしようもないでしょ!」
「どうしようもないって言われてもこっちだって心の準備ってものがあんだろ!」
「心の準備ってなによ! どうせ怒るくせに!」
「あたりまえだろ! 俺たちまだ新婚だぜ? やっと一緒に暮らし始めたってときに……なんで……あんなこと」
「敏夫、私だって……」
「なんか怪しいって思ってたんだ! 一昨日だって電話越しで妙に浮ついてたし。出張に行っている間、おまえは俺を騙してたんだな! あんな奴を家に連れ込んで! あぁ、もうあいつのことを考えるだけで身体がどうにかなりそうなんだ」
「やめて! 鉄をそんなふうに言わないで!」
「おい、まさかあいつをそう呼んでいるのか」
「……それは」
「信じられねぇ。もう名前で呼んでんのか。そうか、俺のことはどうでもいいんだな! えぇ?」
「敏夫っ、お願いだから許してよ!」
「許すもなにも、香奈枝はどうせあいつのほうが大事なんだろ!」
「それは。…………」
「ーー嘘でも、俺のほうが大事って言えないのか……そうか。わかった! もういい!!」
勢いよく立ち上がった。と、香奈枝がおもむろに腕を掴んだ。
「あぁ、敏夫、待って! 私敏夫が好き! でも、どうしても我慢できなかったの!」
「うるせぇ! もう知らねぇ!」
「敏夫っ、戻ってきて!」
香奈枝の手を振り払うと呼び止める声も無視して店を飛び出した。
許せねぇ! 俺のことなんか考えもせずに! なんでだよ、くそぉ! 俺これからどうすりゃいいんだ! 帰りたくねぇ! もう家には帰りたくねぇ! だって、家に帰ったらあいつがいるんだ!
香奈枝の裏切り者!
あんだけ猫は買わないと約束していたのに!
ーー俺、猫アレルギーなんだぞ!! 第四十三回ワイスレ杯参加作品
>>6
>>20
只今、二作品!(`・ω・´) 第四十三回ワイスレ杯参加作品
従業員は二人だけの小さな佇まい、昼下がりの喫茶店は、常連客の流れも絶えて今閑散とした雰囲気に包まれていた。
そんな中現れる中年の紳士は、ラフなポロシャツとジーンズ姿で窓際の目立たない席に着いた。
ゴシックメイドをたっぷりと意識した出で立ちのウェイトレスが黙ってテーブルに二つのお冷やを置くと、紳士の向かいに黒に染まったドレスをまとう若い女性が着席する。
居心地のよい店内で二人だけの男女は、ほっと一息つくと、ウェイトレスが運んだ氷の浮かぶ水のグラスを手に取り、揃って一気にその中身を飲み干した。
カタンと音を立ててほぼ同時にテーブルに置かれるグラス。
男は向かいの席の女性にほがらかに笑いかけたが、女のほうはグラスを置いたあとも動きを止めず、その手を振り上げていた。
「店長、あんたが昼飯作らな誰が作るねん!」
ばしこーんといい音をさせて、男の頭部を殴打するウェイトレス。
殴られた男、この店の店長は
「はい……」
と小さく呟くと、脱いだばかりのエプロンを腕に引っかけるように取りながら、すごすごと厨房のほうへと戻っていった。 第四十三回ワイスレ杯参加作品
>>6
>>20
>>22
只今、三作品!(`・ω・´) ワイ杯始まったのか
参加してもどうせ上手く書けないし見てるだけにしておくか >>24
ブラフなのか!(・`ω・´) 心理戦に突入なのか!
今日は米飯と納豆、とんぶり、卵焼きの朝ごはんにしよう!(`・ω・´) 「ふぅ……やはり喫茶店は落ち着くな」
壁際の隅のテーブル席で、そう独り言を呟いた。
せっかく海外に来たのだからある程度洒落込んでも問題ないだろう。それ位の権利はあるはずだ。
そんな邪な気持ちのようで、小心者のような事を思いつつ、優雅っぽくひと時を過ごす。
言動自体は恥ずかしい行動で満載だが、生憎さま生来の存在感の無さ故に誰にも気づかれることはない。
そんな嬉しくも悲しくもある技術を持って使いながら想いに浸っているとある男女が隣に座った。
そう【同じテーブル席の隣】に、だ。
「しまった……、これだと微妙に出れない……」
自分の存在感の無さのあまり空席と思い込んだのか普通に座り込んで来た。
こうなる事はある程度予想できたはずなのになぜ角の席の奥を選んでしまったのか。
(仕方がない、頃合いを見て逃げ出そうか)
そんな事を逡巡しているとウェイトレスさんが水を持って来た。
穏やかそうに見えている2人はその水を受け取り、一気に水を飲み干すと空気が変わった。
「なんで隣で修羅場るんだよ……」
その空気は以前に何度か見た事があるもので、すぐに察する事ができた。まぁあっちの嫁ズの方が怖いが……。
さっさとこの修羅場から抜けるに限るか、そう思い立ち上がった瞬間、女性の方が机をバンッ叩いて立ち上がる。
「いい加減にしなさいよ!何度目だと思ってるの!」
「常習犯かよ」
思わずツッコミを入れるが誰も聞いてやくれやしない。
しくしく哀しい気持ちになりながら重力魔法を使い天井を歩いて出るのであった。
なお自動ドアが反応せずぶつかりそうになった事をここに記載しておく。
>>24
なんでもいいから適当に書いてみるといいんじゃない?
俺なんてまだこれ合わせて三度目の投稿だし 第四十三回ワイスレ杯参加作品
>>6
>>20
>>22
>>26
只今、四作品!(`・ω・´) 「し、し、審判ってなんですかあ?」
夜を彩る小粋なジャズをかき消すように雷鳴の音が轟き、それに負けじと声をはりあげた背の低いウエイトレス。あっけにとられた彼女に店内の衆目があつまる。ウエイトレスの目の前には水の入ったグラスをまえに緊張のおももちをした一組の男女。
「このひと、結婚詐欺師なんです。もう終わりにしたいんです」
女性は真剣なまなざしをウエイトレスに向ける。
結婚詐欺師にひっかかり、金の無心に応じつづけた女性。彼女がことの真相に気づいたとき、けれども詐欺師は女性に心底本気になっていた。
「おれは、別れたくない。きっかけは詐欺だったけど、金なんてもう、どうでもいいんだ。全部かえす。まともな仕事もさがす。ただ、こいつと、居たい」と男はウエイトレスを一瞥する。
この女性がグラスの水を先に飲み干せば、二人は別れる。男性が先に飲み干せば、何もなかったことにして交際を続ける。
より本気である側が勝つ。
「「その審判をよろしく」」
「困りますよおおっ」と叫んだウエイトレスに店内が大変なことがはじまったとざわついた。
がっとグラスを掴み、二人の唇が水を含む。おおっと人々が声をあげる。
しかし、最初の一口をどちらも飲み込もうとしない。グラスを飲む格好で、かたまっている。
その様子をみてウエイトレスは察した。このふたりは、どちらも迷っているのだ。
「か、彼氏さんは、本気で彼女さんのことが好きなんですか……」
本気であればこそ、男性は飲めない。女性が関係を終わらせたいと心から願っているなら、自分をころして終わらせてやるつもりなのだ。
「彼氏さん、こ、後悔しているんですか……?」
ウエイトレスに応えるように、ごくり、と男性の喉がなってグラスの水が減った。
かたや女性の水が減らないのは、自分の気持ちにふんぎりがつけられないことをしめしている。
「で、でも、彼女さんの方は許せない気持ちもありますよね……彼にこんな嘘つかれたらムカつきますよね……わたしにだって分かります」
女性の目が苦しそうにゆがんで、グラスの水がすうっと半分ほど減った。
「わ、わたしは第三者です。お二人がどれだけの時間をすごしてきたのか、何があったのか、知らない、でも」
近くでどかんと雷がなって、勝負の趨勢に夢中にらなっていた店内がわっとどよめいた。
「でも、お二人がどちらも真剣でいらっしゃることは分かります……」
女性の眉根が苦しそうにゆがんだ。
「そうじゃなきゃ、こんなに悩まれませんよ……」
男性の鼻がふっと空気をはきだし、グラスの水を飲み進めた。あと少ししか残っていない。
「ただ、彼女さんが被害者であったことは確かですよね……また裏切られるかもしれません。お、お仕事だって、これからだって言ってるわけで不安も……」
女性のグラスの水がぐぐっと減っていく。
それをみた男性の目からはみるみる生気がなくなっていく。おい仕事のこと持ち出すなんて卑怯じゃねえか、と中年男性の観客が悔しそうな声をだす。
「でも、お二人には、思い出があるのも確かでしょう……その事実は裏切れません」
女性のグラスの水が減るのをやめ、かわりに苦しそうな目からすうっと涙が頬を落ちた。
もはや互いの水は残りわずか。どちらかが誤って最後の一口を飲んでしまう可能性すらある。
静まり返った店内にウエイトレスの喉がごくりと音を立て、店内の緊張が最高にはりつめた瞬間。
突如、ががんと雷鳴が響いて電気が落ち、動揺が店内を支配した。
数秒後。
灯りがともって驚きの声があがる。
そこにあったのは、カラになった二つのグラス。驚いた男女はグラスの水を一気に飲んでしまったらしい。
しかし、結果は明らかであった。
抱き合う二人のまえをしたウエイトレスの目に涙がひかる。
「……この勝負、お二人の勝利です!」
彼女の声が地響きのような歓声を店内によびおこした。 第四十三回ワイスレ杯参加作品
>>6
>>20
>>22
>>26
>>28
只今、五作品!(`・ω・´) 私の趣味は人間観察だ。現に今もこうして、こぢんまりとした喫茶店で店員として働き、客を観察している。
大きなレストランや商業施設のフードコートも良いのかもしれないが、ぽつぽつと現れる客を真面目に観察するにはこちらの方がよい。
今この店にいるのは、常連の老人が一人、女子会と思しき見慣れない女性の集団。……いや、あの一番右端の女は前に来たことがあった。
前回はこれを気に入っていたから、もし次回があればそっちのメニューをお勧めしてみよう──こんな風に商売の役にも立っているので、馬鹿にできない趣味だ。
おや、客がきた。カランカランと音を立てたドアのベルに視線を送ると、そこにはカップルらしい二人組。
ふん、容姿は二人とも中の下だな。男の方はちゃらちゃらしているし、女の方も少しとがったファッションに身を包んでいる。まあ、お似合いだろう。私はこの手の人間が苦手なのだ。観察対象としては、悪くないのだが。
手早く空いてる席へと誘導する。
カップの水とメニューを抱えて二人のいる席へと足を運ぶ。
──二人の話し声がする。
「あー、ほら、あの子だよ。あの子俺のめっちゃ好み。少しは見習えよ」
男は、女子会集団の一人を顎と指で指しながら女に言う。無神経な男だ。
女の眉がピクリと動く。唇が強張った。
「あんたねえ、私が──あら、店員さん。ごめんなさいね」
びりびりと不穏な空気。割り込みたくない、割り込みたくないが、私は二人に渡さねばならない。メニューを置き、カップの水を二つ並べる。
ごゆっくり、なんて言うだけいうと、すごすごと奥に引っ込む。
いつもの観察スペースへとたどり着くかつかないかと思った瞬間、水音がした。ガチャンと僅かにずれて二つ、ガラスが木に叩きつけられる音が響く。
驚いて振り向くと、男女はそれぞれのカップを鷲掴みにしていて、もう水は残っていない。勘弁してほしい、そのカップは高いんだ。
見渡して気付く。水を飲み干したのは、お互いの喉ではなく──それぞれの洋服だった。
濡れてみっともなく崩れた女の髪、男の透けたTシャツ。
続いて飛んでくるのは、狭い店中に響くほどの女の叫び声だ。
「ふざけないで! 私、あんたが浮気してるの知ってるのよ! 私とあんたのペアリング、どこやったのよ!」
「なっ……浮気じゃねぇ、本気だ! だいたいペアリングだって俺が買ったんだから、好きにしていいだろうが! あげたよ、アキラに!」
負けじと言い返した男からは、水か滴っている。いい男では、ないが。
「何ですって! ……その靴も鞄も、私があげたわよね? じゃあ、返してよ、今すぐ!」
男はギクリとした表情を見せるが早いか、即座に靴を──薄汚れたスニーカーを、床に蹴り捨てた。
まじか。思わず声が出そうになる。どうやって帰るつもりだろう。
続いて鞄の中身を出しながら、時折女が「それも私の!」と口を挟むのに一々舌打ちしていた。
そうして空になった鞄を女の方へやると、手元に残った小物類を大事そうに引き寄せた。裸で全部持って帰るつもりだろうか。
自身が店員である、騒ぎを止めるべき立場であることも忘れて、私はそのカップル食い入っていた。
ああ、老人が帰ってしまう。レジでの会計にクーポンとお詫びを添えて老人を送り出した私は、
女子会集団の様子──野次馬らしく、食い入っている──をちらりと見ると、痴話喧嘩を止めるのをやめた。もうどうにでもなれ。私はまるっきり第三者の気分で、老人の席を片付けながら男女を眺めていた。
「あー可愛くねえ! そんなんだから浮気されんだよ。それに引き替えアキラは良いぞ。気立ても良いし、可愛いし、おまけに頭も……いぶっ!」
最後の方は、男の悲鳴によってかき消される。女のヒールが脛に刺さっていた。これは痛い。
「さっきは情けをかけてあげたけど、もういいわ。そのズボンも私があげたものだったわねえ?」
女の意地悪い声が響く。女子集団はは口をバカみたいに開けながら眺めている
──ヤケになったのか、男はベルトに手を掛けると、一気にズボンを脱いで女めがけて投げつけた。女子会からは「キャー!」だの「やばくない?」だの悲鳴が上がっている。
「このクソアマッ! これだから女は!」
「なんですって! 私だって……あなたがホモだって知ってたら、つき合わなかったわよッ!」
アキラ、男だったのか……。そんな私の思考をよそにそれだけ言うと、女は男から回収したものを鷲掴みにして店から出てしまった。
残されたのは、ブリーフ丸出しの男が一人と
──むなしく響きわたる女子会集団からのカメラのシャッター音。
私はどうすればいい?
あと、せめて注文くらいして行け。
白と黒、ツートンカラーの制服を身に纏いフロアに出る。もうじき開店時間だ。店長の雅さんがカランと玄関ベルを鳴らしながら店頭に出る。
掛け看板をOPENに変えにいったのだろう。12月ということで、外は冷たそうな風が吹いている。
雅さんは店の中に戻ってくると、柔和な顔に申し訳なさそうな色を浮かべる。
「ごめんね、花南ちゃん。突然シフト変更してもらって」
「いえいえ、急病じゃ仕方ありません」
私は雅さんが経営するカフェで、ウェイトレスのバイトをしている。
本来私のシフト日ではなかったが、本日のシフトに入っていたバイト仲間の風香が急病ということで、急遽駆り出されたのだった。
だから、仕方ない。今日という特別な日にバイト三昧も如何なものかと思いシフトを外したが、どうせ彼氏はいないし、一人暮らしをしているので家族が傍にいるわけでもなし。特に断る理由もなかった。
「本当にごめんね〜」
年齢不詳系美女オーナーの雅さんは、顔の前で両手を合わせて見せると、私の横を抜けキッチンの方へと歩を進める。何とはなしにその背を見送っていると、あることに気付く。
「あれっ? 花瓶に花を活けてない?」
ふと空の花瓶が視界に入った。他の花瓶も見る。やはり花を活けてない。
……風香の件でバタバタして、花を活けるのを忘れちゃったのかしら? ……まあ、大した問題でもない、か。
そんな風に自己完結すると、カランと玄関ベルが鳴る。
「いらっしゃいませ!」
店内に入ってきたのは、シルクハットを被った老紳士だった。……今時、こんな帽子を被っている人が本当にいるのね。私は奥の席に案内する。
暫くすると、カランと玄関ベルの音。団体客だ。何人ものお子さんと、そのお母さんたち。それだけなら普通のママ友の集まりだけど、珍しいのは皆外人さんだったこと。
可愛らしい声を上げる西洋人のお子さんは、まるで天使のようではないか。眼福、眼福。天使がより輝くようにと窓辺の席に案内する。
またもカランと玄関ベルが鳴る。入店してきたのは、男女のカップルである。美男美女ではないが、穏やかそうな雰囲気を纏った人たち。席に案内する。
一旦離れて、水の入ったコップをカップルの席まで運ぶ。私が同時にメニュー表を差し出そうとした瞬間であった。ほんの一瞬、女性の方の唇が震えたように見えた。まるで緊張状態にあるように。
でも、それも一瞬のことですぐに穏やかな顔に戻ったから、きっと見間違いだったのだろう。
「こちらがメニュー表に……うえっ!?」
私は思わず奇声を上げてしまった。というのも、カップルさんたちはやわらコップを鷲掴みにすると、猛然と中身を一気飲みし始めたからだ。イメージはあれ! 銭湯での牛乳の一気飲みだ。
ドンと、カップルさんたちはテーブルにコップを置く。
えっ、何々? そんなに喉が渇いていたの? そんなわけないよね。だったら、私の対応に何か不満が? それにしたって、よくわからない不満の表し方だ。
私がオロオロと立ち尽くしていると、カップルさんたちはそれぞれのポケットから何故かハンカチを取り出すや、空のコップを覆うようにかぶせた。そして、さっとハンカチを引き上げる。
「お、おおう……?」
カップルさんたちの空のコップの中には、いつのまにか数字を象ったキャンドルが鎮座している。その先でゆらゆらと火が揺れる。キャンドルの数字は、1と9。
……訳が分からない。目を点にしていると、パン! と店の奥の席から音がする。慌てて振り返ると、あの老紳士が柏手を打った態勢で立っているではないか!
そしてにっこりと笑うと、シルクハットをゆっくりと外す。途端、バタバタバタと、白いハトが勢い良く羽ばたいた。
……ホワイ? まだ終わらない。今度は歌声が響く。そちらに視線を向ける。あの天使ちゃんたちが、美しく清らかなソプラノで一斉に歌を奏で始めたのだ!
「ハッピーバースデイ トゥ ユー♪ ハッピバースデー トゥ ユー♪」
歌声が響く中、カップルさんたちと老紳士は、どこからともなく色とりどりの花を取り出すと、空の花瓶に花を活けていく。……何だ、このカオスな空間は?
「ハッピーバースデイ ディア 花南ちゃん〜♪ ハッピーバースデイ トゥ ユー♪」
そして店内に拍手が鳴り響く。私は目を白黒させていると、キッチンからホールケーキを掲げるように持った雅さんが姿を現す。その後ろには病欠したはずの風香の姿まで!
「19歳の誕生日おめでとう! 私たちからのサプライズバースデーパーティよ!」
ことここに至り、ようやく私は合点がいった。
「滅茶苦茶ですよ、こんなのー」
呆れたように言葉を零しながらも、自然と口角が上がるのを抑えられなかった。 (誤)私は目を白黒させていると、
(正)私が目を白黒させていると、
すみません。こちらに修正願います。 第四十三回ワイスレ杯参加作品
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只今、六作品!(`・ω・´) 餃子屋で飯を食っていた俺は、それを見たときおいおい勘弁しろって思った。
数分前、カップルが店内に入ってきた。カウンターで餃子を食ってた俺は何気なくそいつらを見ていた。穏やかな表情をしたカップルは、空いている席へ腰掛ける。
ウエイトレスが水をカップルの元へ運んだ。と、突然二人同時に水をがぶ飲みしやがった。おいってなった。けど、まぁ喉乾いてんだろ、と思うことにした。
俺は引き続き餃子を食いながら、こっそりカップルの様子を伺った。男のほうが手を挙げた。なに注文するんだろうと思っていた。
「お水おかわりください」
おいーーってなった。いくらなんでもおかわり早くねぇか。まず注文しろよと思った。
店員がやってきて、男のグラスに水を注ぐとテーブルへ置いた。瞬間、男が一気飲み。おいおい。さらに女のグラスに水を注ぐと置いた。同じく女が一気飲み。おいおいおい。
さすがに店員もタジタジ。
「あ、あのおかわりいりますか?」
「「はい」」
おーーーーい!! お、ま、え、ら、なんのために餃子屋来てんだよ!! おいおーーいってなった。思わず口に出しておいって言ってしまいそうになるほど、おいおいって思った。懸命に突っ込むのを堪えた。
早く注文しろよ、なんかもう食べるのに集中できなくなってきた。だが、あんまり見るわけにもいかない。耳だけカップルのほうに傾けながら、餃子とご飯をかきこんだ。
「餃子と炒飯二人前」
男の声にホッとした。ようやくおかわり地獄から抜け出せた感じがする。俺は安堵し、コップへ手を伸ばした。あ、水ねぇな。手を挙げた。
「すみません。水おかわり」
「あ、こっちもお願いします」
男の声。テーブルに置かれたグラスは空。
お、い。だから、お、いって。
飲むの早いって。食う前に腹一杯になるだろ。腹壊すんじゃねえかって心配になるからやめろ。頼む。
もう無理だ。さっさと食って帰ろ。注いでもらった水をぐっと飲むと席を立った。
「すみません」
男の声。振り返る。目が合った。
「とおるくん?」
俺の名前を男が言ったもんだからビビった。
「え?」
「とおるくんじゃない?」
「え、え、誰ですか?」
「僕だよ僕。ほら、小学校一緒だった武史だよ」
そこで思い出した。
あ、なんか見たことあるやつだと思ったら、そうか。小学校の同級生か。蟻とか育ててるやつですげー変わってるやつだった。
「あ、あぁ……なんとなく……覚えてる」
「いやぁ、恥ずかしいところ見られちゃったなぁ」
「み、水好きなんだな」
「好きっていうか実は僕、腎臓が悪くてね。水分しっかり取らないといけないんだ」
「そ、そうだったのか」
「嘘だよ」
嘘かよ!
「ちなみにこの子は僕の妹だよ」
妹かよ!
なんかもういろいろ、おいってなった。
「あ、店員さん。お水おかわり」
おい! 怖えからマジで勘弁してくれ。 訂正
もう無理だ。さっさと食って帰ろ。注いでもらった水をぐっと飲むと席を立った。
を
もう無理だ。さっさと帰ろ。注いでもらった水をぐっと飲むと席を立った。 第四十三回ワイスレ杯参加作品
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只今、七作品!(`・ω・´) >>35
ワイが参加作品と認める前なので修正を可とする!(`・ω・´) 中々の強運! 30番なんですけど、何かミスがありましたか?初めてなのでどこか間違えたかも…… 「わたしとの関係は嘘だったの!?」
「だから誤解だって言ってるだろ!」
私はスプーンで珈琲をかき混ぜながら、横目で隣席のカップルの様子を見ていた。
彼らは険悪な様子で店に入ってきて、ウェイトレスが水を出すなり同時に飲み干すと、注文もとらずに喧嘩を始めた。
昼下がりの小さな喫茶店。そこの奥の窓際が私の特等席だった。
私がその店の常連になった理由は、ひとえに静けさのためだ。
駅から程よく離れており、車の通りが少なく、騒がしい若者を集めるような建物も周囲にない。
音と言えば、客や店員のわずかな話し声と、カチコチと秒針を刻む時計くらいのものだったが、
その時計も数日前に壊れて沈黙しているというのだからますます具合が良い。
そんな環境で、珈琲の香りを楽しみながら読書をするのが、私の何よりの楽しみだった。
こういうのを隠れ家的名店というのだろうか。
しかし、その静けさの中の幸福も長くは続かなかった。
最近になって、店に人気が出始めたのだ。
店に来た他の客から聞いたところによると、何でも芸能人がブログだかツイッターだかで、この店を紹介したらしい。それこそ、「隠れ家的名店」として。
そのせいで、この店は隠れ家としての機能を失っのだから皮肉なものだ。
私は生来運が悪いせいか、電車や飲食店で何かと騒音に出くわす。
たむろする学生、赤ん坊を連れた主婦、音漏れに気づかず大音量で音楽を聞く若者、電話で部下を恫喝するサラリーマン。
今、喧嘩しているカップルも私の不運が引き寄せたのだろうか。
カップルは三十分ほど聞くに耐えないやり取りを繰り返した後、女の方が男の顔に水をかけ、苛立った足取りで出ていった。
それに怒ったのか、それともよりを戻したくて泣きつくためなのかは知らないが、男もそれを追いかけて出ていった。
私も気分が悪くなり、冷めた珈琲を一息に飲み干すと、彼らに続くように店を出た。
一週間後、私は再び喫茶店を訪れた。
ブームが過ぎたのか、店内は静けさを取り戻していた。
私は安心した気持ちでいつもの席に座り、いつも通り珈琲を注文する。
ふと、カチコチという音が店内に響いていることに気がついた。時計が直っていたのだ。
残念だ。もっと入念に壊しておくべきだった。
備え付けのテレビからニュースが流れる。
『次のニュースです。○○駅のホームで男性と女性が二人揃って突き落とされた事件の続報です。監視カメラの映像から犯人が特定され......』
窓の外を見ると、白い車が止まっており、中から制服姿の男が数人、降りてきた。
しばらくこの店には来られないな。
刑務所の中は静かだろうか。 真莉亜は突然の呼び出しに何も言わずにつきあってくれた。僕のわがままな願いに文句一つ言わない彼女に感謝する。
飾り気のない格好。心なしか、彼女の顔は少し痩せたようだ。
「こんなところに一緒に来られるとは思わなかった」
席についてから彼女に言われて、自然と頬が緩む。
「僕だって、思っていなかったよ」
顔を見合わせて笑っていると、ウェイトレスが水の入ったコップを運んできた。水を目の前にして、僕は少し強張った。
喉が鳴る。
震える手を懸命に止める。当然ながら、真莉亜もそれを前にして緊張しているようだ。
意を決してコップを掴み取り、口に運んだ。
最高にうまい。臭くない水が、澄みきった水が、僕の身体にゆっくりと浸透してゆく。コップの中身はすぐになくなってしまった。
「この水一杯でさ、5万円だってさ。はは……。信じられる?」
空になったコップを置いて問いかけた僕に、彼女は首を横に振り、うつむいた。
「でも、今日はせっかくのお食事なんだもの……」
僕は周囲を見回す。高等なスーツを着た人々が、当たり前のように酒やステーキを口に運んでいる。僕は自分のスーツと見比べて、思わず目を反らした。
彼女のコップも、すでに空になっている。僕はおかわりをするために右手を上げて、ウェイトレスを呼び止めた。
“飲食店”が庶民の手にとどかなくなってから、どれくらいの時が経っただろうか。
核戦争の末に地球が危機的な状況に陥った状況下で、僕らのような庶民が飲食店に入る時なんて、限られている。よほど特別な場合を除いて、そんなことはできない。
「今日は本当にありがとうな。僕らの子供ができたって聞いたら、いてもたってもいられなくて」
そう言って笑った僕に、彼女は幸せそうに頷いた。
「嬉しい。とても」
彼女は屈託なく微笑む。僕はウェイトレスが運んできた水を手に取る。
「真莉亜、本当にありがとうな。水で悪いけど――乾杯」
「赤ちゃんがいるんだよ? お酒なんて飲めないわ」
彼女も掴んだ。二人のコップが近づく。淵が触れて、チリン、と綺麗な音を立てた。
注文はコース料理だ。
パリッとした新鮮なサラダを堪能したあとは若鶏のグリル。こうしてきちんとしたものを口にするのは何年ぶりだろう。
おぼつかない手つきでナイフを握る。肉を口にふくむと、塩味が身体に染み渡る。こんなに美味いものが、この世界にあったのだ。
コース料理を全部合わせれば、僕の三ヶ月分の稼ぎも丸々吹き飛んでしまう。そんな考えも塗りつぶしてしまうほど、僕はその味に感激していた。
彼女もおいしそうに食べている。僕の視線に気がついた彼女が、少し恥ずかしそうに微笑んだ。幸せだ。
デザートが運ばれてきた。牛乳と卵を贅沢に使ったプリン。これは僕には少し甘すぎる。けれど、彼女はおいしそうに口に運んでいた。もう、言わなければならない。
「あの、さ」
僕はスプーンを置くと、彼女に切り出す。
「今日、こうして誘ったのは、薄々わかっていると思うけど、僕、終身タイプの保険をかけてあるんだ。受取人は、君にしてあって。それで、これから――」
彼女はプリンを楽しんでいた手を止める。それから、うつむいてしまった。口を横に結び、何も言わない。
「真莉亜」
呼びかけると、彼女は視線をあげた。潤んだ瞳が、その視線が僕を突き刺す。ドキ、と僕の心臓は高鳴った。彼女は目を細めた。
「私、あなたと出会った時は、すごく嫌なことばかりあって、何もかも絶望していたの」
彼女は懸命に言葉をつむいでゆく。決して口が上手い方ではない。一生懸命な感じだ。
「だから、どんなに苦しくても、どんなに辛くても、一緒にいようって言ってもらったの、嬉しかった。愛しているって言ってくれて、本当に、嬉しかったの。今日、一緒にいるのも、すごく幸せ」
彼女はひとつ息を吸う。
「だから、生きましょう、一緒に。愛してる」
僕は、しばらく呆然とした。何も考えられないが一方で、心の奥底で、こんな言葉を期待していたのかもしれない、とも思う。とんだ弱虫、甘ったれだ。
独りよがりで“飲食店”に誘った僕を、こんなにも包み込んでくれる人を、勝手に残して消えようとしていた。自分を恥じた。
「真莉、亜……」
いい年をして、溢れる涙を止めることができない。それに気がついた人々が、ひそひそと嘲笑っている。でも、そんなことは気にならなかった。
皮肉なことに、最期にと思っていた食事が僕を生かすことになりそうだ。頬を伝った雫の味はひどく不味いが、真莉亜の温かい心は、どんな美味い水や料理よりも、僕の身体にしみわたった。 第四十三回ワイスレ杯参加作品
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(`・ω・´) 第四十三回ワイスレ杯参加作品
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只今、九作品!(`・ε・´) うほほほーい。
ジーンジェネシス2.0の結果が出たよ。2017年9月13日に返送してから、10月3日に結果出た。
Y染色体ハプロはOで、ミトコンドリアハプロはDなのは一緒。別に日本深層心理学協会が偽物と入れ替えてることはなさそうだ。
29800円。
細かい検査報告は、ほとんどの検査結果が普通。
筋力、普通。
握力、普通。
頭の良さも、普通で、まあ、どちらかといえば頭はいい方。遺伝的に。
反射神経だけ抜群に高い。中学生の時、二年生でレギュラーになって先輩に勝ったキーパーの実力は本当だったようだ。
気にしていた座高も、普通で、学年一座高が高かったおれはやっぱり、小学生の時に腹筋のやりすぎか?
精子について、精液の量は多く、無精子病になりやすかった。若い頃、オナニストで三十歳から精液少ないおれは遺伝か。
小学生の時に大腸ポリープになったが、大腸がんのリスクは極めて高かった。
あと、糖尿病にはなりやすい。
肥満傾向にはない。
アル中になりやすく、
いっちばん笑ったのが、心因性後天的ストレス障害に極めてなりやすかったこと。おれ、心的外傷を気にするのは遺伝だあ。
あとは普通だねえ。 理系おすすめ本。
これを全部やると、東大模試で数学偏差値80いくらしい。理三はもっと上だけどね。
東京工業大学数学入試問題50年―昭和41年(1966)~平成27年(2015) 聖文新社 >>25
ブラフというか、前に参加してもダメだったから今回も無理だろうと思っただけ
>>26
適当か…てか三回も書けて凄いな その日、私、勅使河原蔦子は、純白のワイシャツに黒のベストを羽織り、『ル・トロ』の鏡の前でギンガムチェック
のネクタイを結んだ。『ル・トロ』は南フランスのニースにある料理屋である。テーブルにクロスを敷き、
花を飾ったりしていたら、開店時間が迫ってきた。雪がちらつく外に出ると、30代の男が2人立っている。一人は痩せ型で塾講師、
もう1人は頑健で肉屋といった風貌だ。私は柔らかい微笑みを作って挨拶。
それから『本日貸切』の掛札を扉にかけて、2人を招き入れる。窓側の席に案内して、向き合う形で腰を下ろした彼らに
注文を伺うと、肉屋が壁の注意書きを指差して、首を傾げた。「お姉ちゃんが障害物なのか?」「はい」
「壊しても構わねえ、てことだな?」「はい。壊される覚悟がおありなら、存分にどうぞ」私は笑顔を作った。
肉屋も豪快に笑ったが、目が氷の表面のように、ぬるっと冷たい。ちなみに注意書きには、
「銃火器の使用禁止。ウェイトレスは障害物として対応すること」としたためられている。
当初、塾講師は珈琲だけを望んだが、私が残念な顔をしたので、「この店の特別な皿を一品だけ」と、
困ったように微笑んでくれた。少し嬉しく思いながら、壷蟻ソースのプディングをお出しする。一方、肉屋は蚕のサラダやら、
蝉と雀蜂のフリッター、タガメと梨のジュレ、野うさぎのロティ、壷蟻と豆乳のアイス、つまりフルコースを頼んできた。
『きもいな、うめえな、でもきもいな』と言う男の声が店内に響く。
年配のカップルが来店した。男性は黒、女性は白のブランド物で全身を固めていた。肉屋たちから最も離れた席に
ご案内をする。紳士も淑女も穏やかな表情で、向き合う形で腰を下ろした。
塾講師も肉屋も、寛いだ体勢で、
ティーカップ片手に沈黙している。紳士淑女にメニューをお渡しし、まずお飲み物を伺うと、食前のシェリー酒を
注文された。目の端で、肉屋が肩をすくめた。
老カップルはフルコースを頼んだ。お出しした料理をゆっくりと切り分け、口に運んで行く。同じ位ゆっくり、
彼らは会話をする。主に昔話だ。補給部隊の全滅による飢餓、飢餓の中で共に食べた虫、政治家としての責任、
紳士の言葉を信じて死んでいった仲間たちなどなど。メインが終わってから、紳士は私を呼んで、水を頼んだので、
グラスを2人の席まで運ぶ。直後に二人の様子に微細な変化が表れる。揃って、唇が戦慄く。
ほぼ同時にテーブルに置かれたグラスを鷲掴みにして一気に飲み干した。
これが開始の合図である。肉屋はテーブルを蹴り上げた。塾講師は横に転がって避ける。テーブルは砕け、
空のカップと小皿とテーブルクロスが宙を舞う。わたしはカップに駆け出し、食器類が割れる前に胸元に回収。
肉屋は塾講師に馬乗りになる。スプーンを握った拳を振り上げた。刹那、私は残念だったな、と思った。
塾講師が蛇のようにぬるっと肉屋の股から抜けて背後に回りこみ、両腕で首をロックして、
その細長い指先につまんだスプーンで目を抉り、奥の脳漿も抉り出したからだ。肉屋もそうすべきだった。
冷静に制圧して、屠れば良かったのだ。
「貴方の勝ちね。あたしは引退するわ」
「……僕も引退するよ。久々に、死を目の前にしたら、よく分かった。僕は老いた。もう、君の傍にいるくらいの気力しかないんだ」
淑女は、信じられないといった様子で目を見開き、それから嗚咽を始めた。紳士はそんな彼女に、黙って微笑みを続ける。
幸せな老カップルと、賭け試合に勝った塾講師をお見送りし、肉屋の遺体の搬出と、砕けたテーブルの
後片付けを終えてから、私は店長と珈琲を啜った。その際に、老カップルの素性と経緯も聴く。
彼らは東欧の革命政権誕生の立役者達らしい。紳士は穏健派で、淑女は過激派。2人は政権の今後について
意見が食い違ったため、『ラ・トロ』を使った。この店では、ごくたまに、裏社会の依頼で賭け試合が行われるのだ。
「愛し合うカップルが仲直りして良かった。虫料理を作った甲斐があったぜ」
「私はお気に入りの皿が割れなくて良かったわ」
店主は満足げに笑顔を作り、私も微笑む。ここの食器は貴重かつ上品な物が多いが、試合で容赦なく叩き割られる。
今回は皿たちは無事だ。出張った甲斐があった。この後、店主から、生ハムメロンをご馳走されたのだが、ふと、首をひねる。
「なんで、生ハムにメロンなんだろ?」「そりゃあ、あれだろ。熟成された塩加減、フレッシュな甘みがロマンチックだからだよ」
「そうなの?」「まあな、熟成された愛も、フレッシュな感動も、ロマンには必要ってことさ」
私は何となく、メロンのポーションを口元に運ぶ彼氏の姿を思い浮かべて、妙に納得した。 第四十三回ワイスレ杯参加作品
>>43
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>>42
>>49
只今、十作品!(`・ω・´)……勅使河原……。 >>49×お気に入りの皿
○お気に入りのカップ
です >>51
間に合わなかったorz
意外とはやく書けたから、エントリーしました
(*´ω`*)b
枯れ木も山の賑わいって奴ですw
皆様ファイトですヽ(・∀・)ノ おバカ! よくワイさんに認めてもらえたなあ
勅使河原とその絵文字はコテハンみたいなものだろうよ
ワイスレ杯のコテハン禁止令を知らんのか。いや、明確にルール違反してるとは言えぬのかもしれんが‥‥
次回からはルールで、作中の登場人物に勅使河原と名付けるのが禁止になりそうだ >>53
はうorz
では次回から、勅使河原蔦子でエントリーは自重しまするorz おいおいちょっと待ってくれよ。
もしかして俺の抜けてないか?
>>34 第四十三回ワイスレ杯参加作品
>>43
>>34⊂(・ω・´;)
>>41
>>42
>>49
只今、十一作品!(`・ω・´) 今のところ
>>31
が一番好きです(*´ω`*)b
こういうほのぼの系って書けるかた羨ましいです。 私の霊魂は戦後にいた。
私が戦争で散華した後、魂は黄泉に行くことなく、現世を彷徨っていた。
一人の女性の行く末が気がかりだったから。
人生最後の日を思い出す。
昭和20年4月25日、私は第一次御楯隊の雷撃機の操縦搭乗員として特攻出撃した。
雲一つない晴れ渡った空、私の乗る雷撃機「天山」は同型機5機、急降下爆撃機「彗星」10機、
露払いの護衛戦闘機は零戦10機、総計25機で出撃し、硫黄島沖の敵機動部隊を目指した。
敵の護衛戦闘機に真上から襲われ、次々に火を吹きながら海上に落下していった。
それでも私の天山は敵戦闘機を振り切り、白いウェーキを引きながら航行する敵機動部隊を見つけた。
胸ポケットから一枚の写真を取り出す。
私の愛する景織子さん、面長でお下げ髪の似合う美しい女性。
数秒ほど見ると、再び写真をポケットに仕舞った。
スロットレバーを引き、降下する。
気付いた敵の艦船から雨霰の如く、対空砲火を打ち出してくる。
間近で対空砲弾が炸裂すると、機体が震え、腹にも響く。
低空で突撃しつつ、魚雷を投下。
そのまま敵の空母に体当たりしようとするが、砲弾が機体に命中した。
一瞬熱い! と感じたが直ぐに意識を失った。
そのまま己の魂が現世を川に落ちた落ち葉の様に漂う。
見える風景は焦土と化した都市、そこから立ち上がろうとする国民の姿だ。
終戦になった日本。
景織子さんは無事だろうか。
真っ先に浮かんだのは彼女の事だ。
青の日の事が走馬灯のように蘇る。
出撃の一週間前、銀座のカフェーで貴女と過ごした一時(ひととき)は私の人生のピリオドを飾ってくれた。
カフェーのテーブルに座って何も話すことなく、ただ穏やかな表情をお互いに見合っていた。
女給さんがテーブルにコップに入った水を運んできた。
それを私が一気に飲み干すと、
「今度ばかりは生きて帰れない」
景織子さんの表情が一変した。
「嘘でもいいから、生きて帰るって言って!」
涙を流し泣き崩れた。
蓄音機からは雑音混じりのベートーベンの英雄第二楽章が流れていた。
それから何を話したか記憶にない。
私の霊魂は終戦から十年後の東京にいた。
景織子さんは幼子と手を繋いで、復興した街を歩いている。
幸せそうだ。
左隣には夫であろうか、背広を着た男性がいる。
微かな嫉妬を感じたが、彼女が幸せに生きている。
僕はそれだけで満足だった。
僕は彼女の耳元で「幸せになってよかった」
そう囁いた。
彼女は声に気づいたのか空を見上げた。
目には薄っすら涙が浮かんでいる。
彼女の青春の一時、僕を愛してくれた。
ありがとう。
これで、憂いなく本当の人生を終え、また新しい誰かとして生まれ変われる。 第四十三回ワイスレ杯参加作品
>>43
>>34
>>41
>>42
>>49
>>59
只今、十二作品!(`・ω・´) >そのまま己の魂が現世を川に落ちた落ち葉の様に漂う。
> そのまま己の魂が現世を川に落ちた枯れ葉の様に漂う。
に訂正出来たらお願いします! >>61
>>2
>ワイが参加作品と書き込む前に作者が作品を修正する行為は認める!
(`・ω・´) みんな、誰が誰の文体とか、推測できるのでしょうか? >>63
多分この人だろうなあ、というのがあるにはある 妻と二人で遠出をするのは久しぶりだ。
今日は結婚して二十五回目の記念日。車を走らせ目指すのは、北関東の田舎にある小さなレストランだ。
川を見下ろす高台にあるログハウスは、景色も良好で店内も落ち着いた雰囲気。そして何より料理が素晴らしい。ここ何年かは、結婚記念日に来るのが恒例になっている。
店に着くと、窓際の眺めのいい席に案内された。
眼下に流れるのは、東の四万十川と名高い那珂川の清流。そして彼方に望むは那須の峰々。その雄大な景色を眺めながら、ゆったりとランチを楽しむのだ。なんという贅沢。
すぐにウェイトレスが水を持ってきた。
「お帰りなさいませ、ご主人様っ! 妖精の森の愛が溢れる泉で汲んだお水でーす!」
「「えっ」」
私と妻は思わず顔を見合わせた。
「幸せいっぱい萌え萌えコースで御予約の中村様でございますね。私、本日のお世話をさせて頂きますキャンディですっ! よろしくね、うふっ!」
ピンクの髪を見つめたまま固まっている私と妻に向かって、ウェイトレスじゃなくてメイドさんは「うふっ」と小首を傾げた。
「それでは早速ですがご主人様方、ニャンコとウサちゃんのどちらがお好きですか?」
「「は?」」
「どちらがお好きですか?」
「えっと…、じゃあネコ」と、私。
「じゃあ私はウサギ」と、妻。
「はいっ、では失礼しまーす」
メイドさんは席の後ろに回ると、私の頭に何かを乗せた。
「ブッ」それを見た妻が吹き出す。
続いてメイドさんは妻の後ろに回り、その頭にウサギ耳のカチューシャを被せた。「ブハッ」
メイドさんが去ると、私と妻は同時にテーブルに置かれたコップを鷲掴みにして、愛が溢れる泉の水を一気に飲み干した。
「ちょっとちょっと、これどういうことよ」
ウサミミの妻がこちらに顔を寄せ、小声で話しかけてくる。ウサギというよりもむしろバニーちゃんだが、悪くはないな。
「俺だってわかんないよ」
「あなたが予約したんでしょ? 幸せいっぱい萌え萌えコースって何なのよ」
「知らないよ。俺、コースって言っただけだもん。店の名前も変ってなかったし」
改めて店の中を見渡すと、あちこちの席で若者とメイドさんがキャッキャウフフと楽しそうに会話をしている。
「どうするのよ、出る?」
「うーん、そうだなあ」
と唸っているうちに、料理が運ばれてきてしまった。
「お待たせしましたあ。前菜の『夢見るハートのテリーヌ』と、『ミルミルミルキーウェイのスープ』でーすっ」
運ばれてきたのは、前回来た時と変わらぬ美味そうな料理だった。
どうやら、シェフの腕は変わっていないようだ。だったらこのまま食事だけでも楽しむか。テリーヌがハートの形だとか、スープの皿がピンクだとかいうことには、この際目を瞑って。
「では、これから美味しくなる魔法をかけまーす。美味しくなーれっ、萌え萌えキュンッ! はい、ではご主人様方もご一緒に!」
妻の顔が引きつる。
「えっと、私もやらなくちゃ駄目?」
「はい、ダメでーす。奥様も旦那様も、こうやって両手でハートを作って。はい御一緒にっ!」
「「「美味しくなーれ、萌え萌えキュンッ」」」
まさかこんな日が来るとは思わなかった。
その後も料理は次々と運ばれてきた。『幸せ畑のポカポカお野菜(地元産温野菜のサラダ)』、『虹の国からやってきたピンクの天使(ニジマスのマリネ)』、そしてメインは『アユたんとキノたんのハートフルダンス(那珂川産天然鮎のムニエル茸ソテー添え)』。
いずれも以前と変わらぬ絶品揃いだ。やたら目が疲れる盛り付けと、いちいち魔法をかけなければならないのはともかくとして。
私と妻は半ばヤケクソになって、運ばれてくる料理に魔法をかけ続けた。最初はボソボソと呟くようだった声が、次第に大きくなっていったのは仕方のないことだろう。
やがてステージでショウが始まった。私達も配られたサイリウムを振りながら、若者達と一緒に大声で歌った。
そして最後にステージの上に呼ばれ、キャンディちゃんに「今日はこちらのご主人様方の結婚記念日なのでーす!」と紹介されると、店中が「「「おめでとうごさーいまーす!!」」」という歓声と拍手喝采で湧き上がった。
「有難うございましたー。またのお帰りをお待ちしてまーす」
キャンディちゃんに見送られ放心状態で店を出た二人は、車に乗り込むと同時に「ハアアーッ」と大きな溜息をついた。
「疲れたな」
「ええ…」
「流石に五十過ぎてあれはキツかったな」
「ええ…」
「また来ようか」
「……ええ…」 妻と二人で遠出をするのは久しぶりだ。
今日は結婚して二十五回目の記念日。車を走らせ目指すのは、北関東の田舎にある小さなレストランだ。
川を見下ろす高台にあるログハウスは、景色も良好で店内も落ち着いた雰囲気。そして何より料理が素晴らしい。ここ何年かは、結婚記念日に来るのが恒例になっている。
店に着くと、窓際の眺めのいい席に案内された。
眼下に流れるのは、東の四万十川と名高い那珂川の清流。そして彼方に望むは那須の峰々。その雄大な景色を眺めながら、ゆったりとランチを楽しむのだ。なんという贅沢。
すぐにウェイトレスが水を持ってきた。
「お帰りなさいませ、ご主人様っ! 妖精の森の愛が溢れる泉で汲んだお水でーす!」
「「えっ」」
私と妻は思わず顔を見合わせた。
「幸せいっぱい萌え萌えコースで御予約の中村様でございますね。私、本日のお世話をさせて頂きますキャンディですっ! よろしくね、うふっ!」
ピンクの髪を見つめたまま固まっている私と妻に向かって、ウェイトレスじゃなくてメイドさんは「うふっ」と小首を傾げた。
「それでは早速ですがご主人様方、ニャンコとウサちゃんのどちらがお好きですか?」
「「は?」」
「どちらがお好きですか?」
「えっと…、じゃあネコ」と、私。
「じゃあ私はウサギ」と、妻。
「はいっ、では失礼しまーす」
メイドさんは席の後ろに回ると、私の頭に何かを乗せた。
「ブッ」それを見た妻が吹き出す。
続いてメイドさんは妻の後ろに回り、その頭にウサギ耳のカチューシャを被せた。「ブハッ」
メイドさんが去ると、私と妻は同時にテーブルに置かれたコップを鷲掴みにして、愛が溢れる泉の水を一気に飲み干した。
「ちょっとちょっと、これどういうことよ」
ウサミミの妻がこちらに顔を寄せ、小声で話しかけてくる。ウサギというよりもむしろバニーちゃんだが、悪くはないな。
「俺だってわかんないよ」
「あなたが予約したんでしょ? 幸せいっぱい萌え萌えコースって何なのよ」
「知らないよ。俺、コースって言っただけだもん。店の名前も変ってなかったし」
改めて店の中を見渡すと、あちこちの席で若者とメイドさんがキャッキャウフフと楽しそうに会話をしている。
「どうするのよ、出る?」
「うーん、そうだなあ」
と唸っているうちに、料理が運ばれてきてしまった。
「お待たせしましたあ。前菜の『夢見るハートのテリーヌ』と、『ミルミルミルキーウェイのスープ』でーすっ」
運ばれてきたのは、前回来た時と変わらぬ美味そうな料理だった。
どうやら、シェフの腕は変わっていないようだ。だったらこのまま食事だけでも楽しむか。テリーヌがハートの形だとか、スープの皿がピンクだとかいうことには、この際目を瞑って。
「では、これから美味しくなる魔法をかけまーす。美味しくなーれっ、萌え萌えキュンッ! はい、ではご主人様方もご一緒に!」
妻の顔が引きつる。
「えっと、私もやらなくちゃ駄目?」
「はい、ダメでーす。奥様も旦那様も、こうやって両手でハートを作って。はい御一緒にっ!」
「「「美味しくなーれ、萌え萌えキュンッ」」」
まさかこんな日が来るとは思わなかった。
その後も料理は次々と運ばれてきた。『幸せ畑のポカポカお野菜(地元産温野菜のサラダ)』、『虹の国からやってきたピンクの天使(ニジマスのマリネ)』、そしてメインは『アユたんとキノたんのハートフルダンス(那珂川産天然鮎のムニエル茸ソテー添え)』。
いずれも以前と変わらぬ絶品揃いだ。やたら目が疲れる盛り付けと、いちいち魔法をかけなければならないのはともかくとして。
私と妻は半ばヤケクソになって、運ばれてくる料理に魔法をかけ続けた。最初はボソボソと呟くようだった声が、次第に大きくなっていったのは仕方のないことだろう。
やがてステージでショウが始まった。私達も配られたサイリウムを振りながら、若者達と一緒に大声で歌った。
そして最後にステージの上に呼ばれ、キャンディちゃんに「今日はこちらのご主人様方の結婚記念日なのでーす!」と紹介されると、店中が「「「おめでとうごさーいまーす!!」」」という歓声と拍手喝采で湧き上がった。
「有難うございましたー。またのお帰りをお待ちしてまーす」
キャンディちゃんに見送られ放心状態で店を出た二人は、車に乗り込むと同時に「ハアアーッ」と大きな溜息をついた。
「疲れたな」
「ええ…」
「流石に五十過ぎてあれはキツかったな」
「ええ…」
「また来ようか」
「……ええ…」 第四十三回ワイスレ杯参加作品
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只今、十三、作品……(`=ω=´) >>67
>>31
がとても好きです(*´ω`*)
とても好きと思える作品がどんどんでてきて嬉しいです! うちは美味しい水が売りの喫茶店としてそこそこ有名だ。
通常のお冷とは別に、一杯あたり千五百円の水をメニューに載せている。
店長である俺が五年もかけて見つけ出し、毎朝採れたてを直送してもらう契約を取り付けた代物である。
今日も今日とて来店したカップルが注文したのは、この極上の水だ。
おそらくネットか何かで噂を見たのだろう、初めて見る顔だった。
そして今は日曜日の早朝、まだこの二人以外に客はいない。
せっかくなのでと、俺はサービスでいつものグラスより、少し大きめのもので水を入れることにしたのだが……
「違うわ。私たちが求めていたものはこんなものじゃない」
「ああ……こんなに遠くまで来たオレらの苦労はこの程度じゃ報われない」
なんだと……
最高級の水を一息に飲み干したカップル共が、しかめっ面で悪態を吐きはじめやがった。
「お客様、何かご不満が!?」
俺は思わずそんなことを聞いてしまっていた。
水を探すまでに五年、店を開いてから四年。今まで水に不満を漏らした客は一人としていなかったからだ。
しかしカップルたちは大きく頷き、矢継ぎ早に不満を口にしだした。
「まず店構えが気に入らないわ」
「うんうん。この店だと看板の色は白じゃなくて茶色にすべきだよな」
「ええ、店内の壁紙の色も一緒よ。センスがまるで感じられない」
……は?
「オレはウェイトレスのお姉ちゃんのスカートが気に入らないね」
「……と言いますと?」
話がおかしな方向に向かっていることを感じながらも、俺はとりあえずカップルの言い分に耳を傾けることにした。
「オレなら……あと四センチ、裾を上げるね。色気がグッと上がるし可愛くなる」
「さすがだわジュンシロウ、そのとおりよ」
俺と同じ名前でその発想はやめてくれ恥ずかしい。
「もちろん、問題はそれだけじゃないわ」
――いよいよか。
女の言葉に、俺は気付かれないよう生唾を飲み込んだ。
こんな態度になったのは水を飲んでからだ。よっぽど水に不満があったのだろう。
俺が長い旅の末にようやく見つけたこの水に、落ち度があると思いたくはない。
だが水の美味さで商売をしている以上、問題があるというのなら新たな水を探す旅にも出る覚悟だ。
「マスターさんの顔も、ちょっとね」
「スミコは面喰いだからなあ」
「そろそろ本題に入ってもらっていいですかねえ!?」
つい叫んでしまった俺に、女が心外だというように唇を尖らせた。
「なによ、私はずっと真剣に話してるわよ」
「……すみません。ええと、水に何かご不満があったように見えましたが?」
カップルは「ああ」と思い出したように頷いた。
「お水は大変おいしかったです。だけど不満点が多いのでお金は払わないわ」
「はあ?」
「逆にオレらへのアドバイス料として、さっきのお水をお持ち帰り用に貰おうか。もちろんリットルで」
「よし、お前らオジサンと警察行こうな」
これ以上こいつらに構っていてもロクなことにならない。俺はそう判断して、カップル共をつまみ出すことにした。
男がなにか喚いて暴れだしたが、こいつをおとなしくさせる作業なんて、長い旅で鍛えられた俺にとってはグラスに水を注ぐよりも簡単だ。
後で聞いた話だが、あのカップルはイチャモンを付けて値切ろうとする常習犯ということで、一部では有名らしいことがわかった。
しかしそのことはまあ、どうでもいいのだが……
「お父さん」
「ん?」
「わたし、上げちゃった」
ウェイトレスとして店を手伝ってくれている我が娘が、少し裾の上がったスカートを履いてニコリと笑う。
「こっちの方が可愛いんだよね?」
あの男を次に見かけたときは死ぬほど水を飲ましてやると、俺は心に固く誓った 第四十三回ワイスレ杯参加作品
>>69
>>73
只今、十四作品!(`・ω・´) むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんがいました。ふたりは互いのことを良く知る間柄で家も隣どうしでした。
ある日、おじいさんはしばかりの帰りに、おばあさんの家へ立ち寄りました。太陽の光がさんさんと降りそそいでいます。
「おばあさんや。甘味処へ行かんか」
「あぁ、これはこれはおじいさん。甘味処ですか」
「そうじゃそうじゃ甘味処じゃ。たまにはいいじゃろう」
そう言ってニコニコとおじいさんは笑います。
おばあさんは川で洗濯をしようと支度している途中でしたが甘味処へ行くことにしました。むかしからの友人であるおじいさんからの誘いが嬉しかったのです。
ふたりは歩いて甘味処へ向かいました。とても楽しそうな雰囲気がただよっています。
太陽がちょうど真上に来た頃、甘味処へ着きました。山のなかにポツンと店が建っています。店内を覗きましたが、だれもいません。
「だれかおらんかのう」
おじいさんが声をかけました。反応はありません。
「はて、どこか買い出しにでも出とるんじゃろうか。おばあさん、どうしようかのう。あきらめて帰ったほうがいいじゃろうか」
その問いかけにおばあさんが目を細めます。
「おじいさん。わたしゃ待つのは一向にかまわんですよ。きっとじきにもどってくるでしょう」
おじいさんとおばあさんはしばらく待つことにしました。外にある腰掛けへ向かい合うように座ります。日当たりも良く、ほのぼのとした時間が過ぎていきます。
おばあさんは空をぼんやりと眺めていました。雲ひとつない空はいつもより高く感じます。
そうやって見上げながら、死んだおじいさんを思い出していました。伴侶であったおじいさんが死んだのは、もうずいぶんとまえのことなので悲しみはありません。ただ、なんとなくおじいさんと過ごした日々のことを思い出していました。
「おばあさんや」
呼びかけに目線をおろしていきます。柔らかな表情をしたおじいさんが視界に入りました。
「なんですか。おじいさん」
風がふたりを優しくなでていきます。
「おばあさんや。ワシらはお互いに夫婦の契りを交わした相手を亡くしてしもうた。独り身どうし、これまでと変わらず声をかけあって、困った時にはたすけあう。ワシはこれはこれで、いいとおもうんじゃ。これはこれでじゅうぶんしあわせなんじゃ」
「おじいさん、なにを言うとるんですか」
「ワシらは年寄りじゃから、そんな形にこだわったところでなんの意味もないかもしれん。けどなぁ、やっぱりワシはこだわりたいんじゃよ」
「おじいさん?」
「おばあさんや」
「なんですか?」
おじいさんは言いました。
夫婦にならんかと。
風がそよそよと吹いています。静かな時間が、ゆっくりと、ゆっくりと流れていきます。おじいさんもおばあさんもとても真剣な顔つきです。
そのとき、店の奥から人が出てきました。
「あぁ、気づかなくてすみませんね。ちょいと奥で仕込みをしとったもんで。お団子ふたつでいいですか。すぐに持ってきますから」
そう言いながら白湯の入った湯のみをふたつ置くと、また奥へと消えていきました。
「おばあさんや」
「……なんですか」
「ひとりよりも、ふたりのほうが楽しいじゃろう」
おじいさんが口もとをゆるめました。おばあさんが唇を震わせました。おじいさんがさらに微笑みました。おばあさんの目から涙が溢れだしました。
「おばあさんや。喉が渇いたじゃろう。お白湯でも飲まんか」
「……はい」
「ワシも喉が渇いた」
おじいさんとおばあさんは合わせるように湯のみを手に取ると傾けました。おじいさんの目からひとすじの涙が流れていきます。
穏やかな昼下がり、おじいさんとおばあさんは夫婦となりました。笑顔の絶えない仲むつまじいふたりは、同じ屋根の下でいつまでもしあわせに暮らしましたとさ。 第四十三回ワイスレ杯参加作品
>>69
>>73
>>76
只今、十五作品!(`・ω・´) 皆、脳内で素晴らしい発想を練り練りですか。
どうですか。
皆、脳内で素晴らしい発想を。
兎にも角にも、ワイさん旅行には行かれたのですか。
どうですか。 日帰りの小旅行のあと、風邪を引いた!
今は布団の横にPCを置いて寝ながら執筆を続けている!
とにかく喉が痛いので固定電話はずっと留守電にしてある!
連絡は文字のみ! 元気を装うことが容易なので何かと助かっている!
そんな時でもしぼりたての生酒は美味い!(`・ω・´) 季節を感じる! >>80
読んでいない論を語るのか!
タイトル詐欺に等しい!
君、何がしたいの?(`・ω・´) >>9
>〜名前も聞かずに若者を上に上げた。
>まだ十七八であろうか、まだあどけなさが残る。
(重複が目に付く!)
語りに終始した話であった!
最後に若者の名前が明かされる!
今回の話が慶安事件にどのように関わっていくのか!
続きの部分が話の肝なのではないだろうか!
故に今回の部分は伏線や前振りの類いに見える!
遅ればせながらワイの感想!(`・ω・´) 口笛を吹いてたら、てっちょんぴーったんだよ。
わかるかなぁ。
わかんねぇだろうな。
とにかく気分がよくてさ、口笛を吹いたんだ。
てっちょんぴーってさ。
穏やかな気持ちだったなぁ。
すごく心がふっかふかしてて、スコンって落ちる感じ。
わかんねぇかなぁ。
そんな感じで歩いていたらなんか良さげな喫茶店を見つけた。
こういう店は、最高にすまっちょな珈琲を出してくれんだよなぁ。ためらうことなくコスコスと喫茶店に入った。
いー感じの店だった。
えー匂いがすんだよ。
「マスター。美味い珈琲を淹れてくれ」
「かしこまりました」
空いてる席にツーテンポール。
ウエイトレスがお水の入ったグラスをぶるんとぅす。
おい、嘘だろ。
レモン水に違いねぇ。
これ、レモン水だろぜったい。
だって、カットレモンがモレロしてるからそうだ。
嬉しくて、もうなんだか最高な気分だ。
俺はグラスをわんようせっちゅうすると一気に飲み干した。
美味い。レモン水めっちゃハニカムボーイ。
「正樹……レモン水だしてくれるところ、久しぶりに出会えたね。嬉しいね」
目の前にツーテンポールする彼女もおなじ気持ちだったようだ。空のグラスをツタンカーしたまま微笑んでいる。
やっぱり俺とお前は相性ばっちりだ。
あぁ、もう堪らなく気分がいい。こんな日は、いやこんな日だからこそ伝えたい。
俺は立ち上がると行動へ出た。
まず、ともねいばさんしした。そして、かっちょんとにっちょんをぬこぬこ紛らわしたあと、マスターへプルタブリス。そのままの流れで、ゲタバコゴリス。ぎざぎざになってしまわないよう気をつけながら柔らかい口調でくっちょんした。
マスターは嬉し泣きしていた。
本当によかった。
レモン水に感謝感謝だよなぁ。
生きててよかった。
そんな俺、実は今日マラライブなんだ。 第四十三回ワイスレ杯参加作品
>>69
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>>85
只今、十六作品!(`゚'ω゚'´) 寒さに耐えながら力うどんを啜るとしよう!(`・ω・´) >唇が戦慄く!
この一文が足を引っ張る。
店に入る時は穏やかだったのに水が運ばれてきた途端、唇が戦慄くわけでしょ?
ここを合理的に辻褄合わせるのがなんとも。 >>93
確かに慄くの部分は難しい
多くの参加作品が無視してるしね
でも、中には何とか頑張っていれてる作品もあるよ >>94
慄く
戦く
戦慄く
これを分けるかどうかも悩むとこだわ。 戦慄く:寒さ、恐れなどのために、体がぶるぶるとふるえる。おののく。by国語辞典先生。
この意味合いで考えると、店内がとても寒い、或いは恐れを喚起させる状況があるという事。
恐れ:恐ろしく思う、怯えるby省略
恐ろしく思い怯えるような状況を抱えるカップル。
しかし水がくるまでは穏やかだった。
水に関する共通のトラウマを抱えていた。
あるいは恐怖におののく事情を抱えながらも、穏やかさを装っていた。
つまり、装えるだけの技量がある人々。
人に恐怖を喚起させるのは、死や加害、暴力、被害の予測、または道徳的な逸脱。
コップを鷲づかみ、一気に飲む。
鷲づかみ:乱暴に物をつかみとることby省略
飲食店において恐怖を隠す技量のある男女が、乱暴にコップを掴み取るという動作をする。
マナー違反をいとわない。マナーよりも動作を取る。
つまり水を飲むという動作に何らかの意味があり、それは、死や加害、暴力、被害の予測、または道徳的な逸脱
と関係する。
水を飲むという動作が何を招くか、男女は知っているからこそ彼らは戦慄き、そして一気に成し遂げる。
結果、予想通りの惨事、死、加害、暴力、被害、または道徳的な逸脱が発生する。
あるいは、水を同時に飲むことで緩和させられる類のトラウマである。
ではどういうトラウマか。
国語辞典先生と相談すると、こんな感じになると思われます。
皆様の健闘をお祈り申し上げます。 デジタル大辞泉によると、
恐怖・緊張・寒さなどのためにからだがふるえる。
となっていて緊張も明記されているけど、「など」とあるから範囲がよくわからんね
「からだがふるえる」という意味からすると、唇が戦慄く、というのは一般的な表現なのだろうか、ということも少し気になる
どうなんでしょうか 恐怖・緊張・寒さなどのためにからだがふるえる
わななきが、
全身に走るところを、唇という局所に限定して発生させることで
強い恐怖・緊張・寒さなどの表現になっているのだと思います。
かつ、体全体でないということは、唇に押しとどめるという、抑制的意識が
強くでていると考えられます。
ということは、
抑制しつつも唇に出るほどの、恐怖、
あるいは
抑制しないといけない事情を抱えていることになります。
それがトラウマなのかどうかは、書く人の好みでしょう。
こういう事情を考え論理的にトラウマの内容を構築し、しかも魅せて面白い内容にする
というのは
難しいというか、自分の力量では厳しいですが、だからこそ、一読者として期待するものが
あります。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています